岡部さよ子
先進国において低価格で流行の服を、「使い捨て」のように提供するファストファッションが、先進国(の消費者)に流通するまでの過程を取り上げたドキュメンタリー作品(2015)。アメリカで生まれ育ち、これまで自分が着ている衣服について特別な関心を持ったことがなかった監督が、バングラデシュの縫製工場の崩壊事故に衝撃を受け、世界各地を取材し製作した。
この映画を私が上映映画として取り上げようと思ったのは、まず自分が幼い頃から現在に至るまで、ほぼファストファッションでしか服を買ったことがなかったことと、国際学部にいて「フェアトレード」や「エシカルファッション」という言葉を耳にするようになったことと、「ファストファッションにはどうやら問題があるよようだ」と知りながらも、そこ(ファストファッション店)から服を買い続けてしまっていたということが理由としてあった。また、ゼミや椎野先生の授業などで、日本の労働環境について学んだり、『下層化する女性たち』を読んで日本社会で自分のような若年女性が生きていくことの困難さや不条理な社会保障制度について学び、日本社会のことに関しては「おかしい」と思っていたりするのにもかかわらず、ファストファッションについては特にそういったことを気にせず買ったりしている自分の矛盾に気づき始めたということもあった。はい。
映画自体の情報量が多いうえにテンポが早く、なかなか追いつくことができなかった(もう一度みてください)。見る前に持っていた「ファストファッションの問題点」では、「労働環境が劣悪な工場で服を大量に縫わせている」程度のイメージしか持っていなかったが、服を縫う過程だけでなく、原材料の綿花や皮の生産過程でも、環境汚染や周辺住民への健康被害が出ていることがわかった(農薬問題、モンサント問題)。環境汚染と健康被害という点では、スウェットショップがあるような国だけでなく、農薬を大量に使用し綿花を生産するアメリカの農家でも同じことが起こっていた。そのことに関して、私は率直に「アメリカでも『途上国のような』健康被害が起きているのか」と意外なことのように感じてしまった。自分も、ファストファッション、ファストフードで育ってきた先進国の人間だと自覚した。はい。
またディスカッションでも話があったが、この映画が問題提起していることはファストファッションそれ自体ではなく、大量生産大量消費と消費主義(と映画の中で言われていた)経済システムの仕組みについてだった。映画の最後の方は「システム」という言葉が頻繁に出てきて、理解が追いつかなかった。現代社会では「ものをたくさん所有すること」が「豊か」であることを意味するため、現在では大量消費によって「豊かになったつもり」を味わうために大量生産している。映画の中では近代社会(もしくは近代の資本主義だったような)は、ものを生産し消費することによって豊かになり、物質主義の文脈では、消費は経済成長に繋がるという話があった(消費資本主義)。そこで疑問に思ったのだが、1990年代から地球規模での環境問題(地球温暖化問題)が国際社会で問題になるようになり、二酸化炭素の排出量削減を世界的に目指したりしている(京都議定書1997年議決、2005年発効)が、それは現在ある「消費が経済成長に繋がるような経済の仕組み」と矛盾するのではないだろうか。はい、そうですよ。地球サミットは、「環境と開発に関する国連会議」のことであり、環境と開発(の矛盾の解消)がテーマなのです。21世紀になってからは「持続可能な開発」と言われ、「環境」と「開発」は共存可能であり、環境保全を考慮した節度ある開発が目指されています。国連気候変動枠組条約第21回締約国会議COP21「パリ協定」が昨年、採択され、今年11月4日に画期的に発効しました。日本は、条約批准が、この「発効」までに、間に合いませんでした(TPP優先のため)。第1回締約国会議(CMA1)に参加できないのです。現実的に、仕組みを見直す時間がないためとりあえず今できることとして、毎年世界各地で気候変動枠組み条約会議をやっているだろうが、根本的に矛盾があるのではないかと思った。