2001年9月11日の同時多発テロ(のニューヨークWTCビル崩壊)で父親を亡くした少年(11歳)が、父親のクローゼットで見つけた鍵の鍵穴を探すなかで様々な人と出会い、母親と共に、少しずつ自分の父親の死を受け入れようとしていく様子(喪の映画です)が描かれている。
少年の父親は、おそらくアスペルガー症候群の息子に(自分で考案した)「調査探検ゲーム」をさせて、外に出たり人と話したりする機会を作っていた。苦手なことが多いから日常生活に支障が出てしまうという状況をそのままにせず、苦手なことと付き合っていく練習をゲームを通して行っていた。(日本の家庭環境・学校環境ではこの練習がほとんどありません。我慢するのでもなく、劣等感を抱くでもなく。)映画のなかでオスカーは日常生活のなかで強いこだわりや苦手なことが多いということ(これがアスペルガー症候群です、こだわり・過敏・鈍感)以外には、アスペルガー症候群ということを理由に何か特別なことをしているようには見えなかった。(特別なことはしているのですが、それが他人には理解されません。一般にはコミュニケーションできないと判断されます。)日本とアメリカではアスペルガー症候群自体の認知度も異なるが、対応の仕方はどのように違うのだろうか。日本では、東大生で有名になったので、大学関係者には認知度が高いですが、一般社会では「発達障害」系の理解度は高くありません。アメリでは、アスペルガーを「障害」としないとする議論がなされています。また、オスカーは自分の苦手なものやことを自覚し、それに対処しながら日常生活を送っていた。他の精神疾患(うつ病など)でも、苦手なことが増えて日常生活を送ることが困難になってしまうこともあるが、病院を受診して終わり、薬を飲んで終わりということではなく、自分の生活にとって何が障害になっているのかを理解し、それに対処していくことも重要だと思った。はい、程度にもよりますが、自分のアスペルガー(発達障害)のライフスタイルを自覚することが第一です。
映画を見終えた後、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」ものは音(音声かな?)だと思っていたが、「それはトラウマではないか」という意見を聞いて納得した。トラウマ(についての自分の声かな?)はいつも自分の中にあり、些細なことがきっかけで当時の出来事の様子などが再生される。そうした時は毎回嫌な気持ちになったり怖くなったりし、思い出す自分が嫌になることもあるが、そうした記憶を再生しているのは自分であることに気づいた。はい、そうですね。トラウマ(心の傷)も、精神疾患が原因の生きづらさと同じように、何が自分を困らせているのか、何に苦しんでいるのか(傷の原因)をまず理解したり認めたりしなければ、大きな塊として自分のなかに居続けるのではないだろうか。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の場合は、特にそうですね。
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
|岡部 さよ子