(1)要約 日本国民のメディア接触の特徴は、マスメディア接触が長時間なことである。オルタナティブ・メディアは市民が情報発信手段としてアクセスしたり自主的に番組製作・放送に参加することである。市民メディア・オルタナティブ・メディアとしての映画の可能性について注目していく。その可能性の中に「幸せの経済学」という映画がある。この映画では消費文化に翻弄されるラダックの人々を通して本当の豊かさはなんなのか、ということを見つめていく。グローバリゼーションとは対極にある「ローカリゼーション」を提案。人と人、人と自然のつながりを取り戻し、地域社会との絆を深めていく。また生物学的多様性を回復させるためグローバル経済から脱却することが人を幸せにし、豊かな暮らしをもたらすと言っている。 この映画ではグローバリゼーションを経済過程、規制緩和、自由化であり、それは私たちがいま直面しているあらゆる問題の根本原因であると捉えられている。グローバリゼーションは人を不幸にし、不安定を生み出し、自然資源を破壊し、気候変動を加速させ、暮らしを破壊し、対立を増大させ、大企業への補助金で成り立っており、偽りの会計・経理に基づいているのである。 社会はGDP成長させようと必死になり、豊かさをそれで測っている。現在の経済成長や人間の活動は限界を超えている。有限の地球で無限の経済成長はありえない。社会としての解決でなにかやっていかなくてはならない。今こそ政治・経済・文化・精神をローカル化するべきなのであると提案している。さてさっきから出ている「ローカリゼーション」は法人資本主義に代わる体系的な代替案であるとされる。そのローカリゼーションにシフトしていくために、以下のようなムーブメントがある。コミュニティに基づいた銀行業、ファーマーズマーケットなどのローカルな食物、再生可能エネルギーなどのローカルなエネルギー、地域社会の結束の強い社会を目指すなどのローカルなアイデンティティ、ローカルな知識、持続可能な暮らしを目指しグローバルにローカル化する、他者や自然的世界との相互依存感覚を再確立していく。ローカリゼーションとはつながりのことなのである。 グローバリゼーションとローカリゼーションが対立概念になっているのが特徴だ。多国籍企業本位の規制緩和・自由化に対し経済規模の縮小、消費者資本主義や法人資本主義に対する地産地消、コミュニティ本位といった具合に対立が概念になっている。 (2)理解点 グローバリゼーションは地域の垣根を越えて交流するという良いイメージがあるかもしれないけど、経済の中心で実はそういう面もある、ということに気付けない人々がいて、うまく乗せられてしまう。だけど地球のほうも限界で無限に経済成長はできない。だから「ローカリゼーション」に変えていくっていう方法もあるよ。これからの経済は質の高い、満足のいく仕事を供給し、本当に必要とする商品やサービスを生産するものであるべきだ。 ローカリゼーションはグローバリゼーションを否定しているのではなくて、国際協力や相互依存を排除しようとしてるわけではない。グローバルにローカリゼーションを展開する必要があり、それ自体は「グローカリゼーション」と言われる。 (3)疑問点 1995年(いわゆる阪神大震災)をきっかけにオルタナティブ・メディア運動が多少見られるようになった、とあるが、なぜ阪神大震災がきっかけなのか?国籍の多様な被災者の生活に必要な情報を多言語で発信する必要があったため。