アカデミー賞インド代表‼1/20公開『エンドロールのつづき』60秒予告【公式】
《アカデミー賞国際長編映画賞インド代表!》&《世界中で観客賞を受賞!》
サマイ、9歳、チャイ売り。恋に落ちたのは”映画”だった―。
珠玉のインド映画の数々が彩る、驚きの実話から生まれた感動作!
2023年1月20日(金)
新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開!
監督・脚本:パン・ナリン
出演:バヴィン・ラバリ
2021年/インド・フランス/グジャラート語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/英題:Last Film Show/日本語字幕:福永詩乃/応援:インド大使館
配給:松竹
ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLP
2023/1/20公開「エンドロールのつづき」30秒特報【公式】
https://eiga.com/movie/94775/
インドのチャイ売りの少年が映画監督の夢へ向かって走り出す姿を、同国出身のパン・ナリン監督自身の実話をもとに描いたヒューマンドラマ。
インドの田舎町で暮らす9歳の少年サマイは、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものと考えているが、信仰するカーリー女神の映画だけは特別だと言い、家族で映画を見に行くことに。初めて経験する映画の世界にすっかり心を奪われたサマイは再び映画館に忍び込むが、チケット代を払えず追い出されてしまう。それを見た映写技師ファザルは、料理上手なサマイの母が作る弁当と引き換えに映写室から映画を見せると提案。サマイは映写窓から見る様々な映画に圧倒され、自分も映画を作りたいと思うようになる。
主人公サマイ役には、約3000人の中から選ばれた新人バビン・ラバリを抜てき。
2021年製作/112分/G/インド・フランス合作
原題:Last Film Show
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/endroll/
INTRODUCTION

チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる――。監督自身の驚くべき物語を映画化し、本年度アカデミー賞®国際長編映画賞インド代表に選出!世界中の映画祭で5つの観客賞を受賞し、さらにバリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞するなど、世界中の映画祭から喝采を浴びた話題作。大きな夢を抱く主人公には3,000人の中から選ばれた新たな才能、バヴィン・ラバリ。そして“映画”への溢れんばかりの愛情を込めて本作を監督したのは、主人公のモデルでもあるパン・ナリン。観客が一体となった映画館、スパイスたっぷりの手料理、陽気な音楽とダンス…どこか懐かしいインドの魅力が満載で贈る、幸せで希望溢れる物語が誕生した。

監督・脚本はインドのグジャラート州出身者として初の米アカデミー会員に選ばれ、世界中の映画祭で輝かしい功績を持つパン・ナリン。BBCやディスカバリーチャンネルのドキュメンタリーを手掛けた経験を活かし、本作では自身の故郷であるグジャラート州でのロケを敢行。大自然の音や光の撮影方法にこだわり、映画は映画館でしか観られなかった時代のゆったりとした時間の流れや、幼い頃の飽くなき探求心を、見事な美しい映像で表現した。オーディションを勝ち抜いた主演のバヴィン・ラバリは、本作が演技初挑戦とは思えないような豊かな表情で、観客の心を虜にする。父親役のディペン・ラヴァルやファザル役のバヴェーシュ・シュリマリ、そしてサマイの仲間たちを演じた愛嬌溢れる子役たちも全員グジャラート州出身であることにこだわり、監督の幼少期の思い出が詰まった故郷の、独特な雰囲気や風情を見事に再現した。
監督が敬愛するリュミエール兄弟、エドワード・マイブリッジ、スタンリー・キューブリックなど、ちりばめられた数々の巨匠監督たちに捧げるオマージュを見つけるのも本作の楽しみ方のひとつ。世界で一番の映画ファンだと語る監督が、世界中の映画ファンへ贈る映画へのラブレター。今もなおインドに存在する階級制度や貧困というテーマを背景に、大きな夢を抱き未来を照らす光を追い続ける少年の姿に希望をもらえる、宝箱のような感動作!

9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、ある日特別に家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返ったギャラクシー座で、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再びギャラクシー座に忍び込むが、チケット代が払えずにつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが――。
横浜ブルク13: 11:45-13:45 (112分)
監督・脚本・プロデューサー
パン・ナリン Pan Nalin
インド共和国・グジャラート州出身。ヴァドーダラーのザ・マハラジャ・サヤジラオ大学で美術を学び、アーメダーバードにあるナショナル・インスティテュート・オブ・デザインでデザインを学んだ。初の長編映画『性の曼荼羅』(01)がアメリカン・フィルム・インスティテュートのAFI Festと、サンタ・バーバラ国際映画祭で審査員賞を受賞、メルボルン国際映画祭で“最も人気の長編映画”に選ばれるなど、30を超える賞を受賞し、一躍国際的な映画監督となった。BBC、ディスカバリー、カナル・プラスなどのTV局でドキュメンタリー映画も制作しており、“Faith Connections”(13・原題)はトロント国際映画祭の公式出品作品として選ばれ、ロサンゼルス インド映画祭で観客賞を受賞した。2022年にグジャラート州出身の映画監督として初めて映画芸術科学アカデミーに加入。他の代表作に『花の谷 -時空のエロス-』(05)、『怒れる女神たち』(15)などがある。
プロデューサー
ディール・モーマーヤー
2018年にJugaad Motion Picturesを立ち上げ、長編映画、TVシリーズ、ミュージック・ビデオ、TVコマーシャルの製作に関わる。初長編映画となる“Teen Aur Aadha”(18・原題)はサンタクルーズ国際映画祭ほか、18以上の映画祭で賞を受賞、本作が長編映画製作の3作目になる。Jugaad Motion Picturesが手掛けたミュージック・ビデオであるPrateek Kuhad の“cold/mess”は米ローリング・ストーン誌が選ぶベスト・ミュージック・ビデオに選出された。ほかリーバイス、フォルクスワーゲン、バカルディ、Netflixなどの企業コマーシャルも手掛けている。


Bhavin Rabari
バヴィン・ラバリ(サマイ役)
グジャラート州・ヴァサイ村に住むラバリ族出身。撮影当時9歳。村の学校に通いながら、祖父のお茶売りを手伝っている。本作の撮影前まで実際に映画館で映画を見たことが無かった。同じクラスのリヤという女の子に恋をしているが、まだ一度も会話を交わしたことはない。

Richa Meena
リチャー・ミーナー(母役)
ムンバイ生まれ、ラジャスタン州のジャイプルで育ち、演劇をやりながら演技への情熱に目覚めた。ドイツ人写真家のジョージ・クリアン氏の目に留まり、その後ナショナルジオグラフィック制作のドキュメンタリードラマ“Secrets of Taj Mahal”(11・原題)で主役を務める。この作品はエミー賞にノミネートされた。アメリカの長編映画“Red Gold”(14・原題)、“Running Shaadi”(17・原題)、“Teen Muhurat”(18・原題)、フランスの短編映画“Ghumantu – The Wanderer”(20・原題) などインド以外の国の作品にも出演している。映画“Kasaai”(19・原題)でムーンライト映画祭最優秀俳優賞を受賞した。「アフガンの少女」で有名なアメリカの報道写真家スティーブ・マッカリーのミューズを務めた経験もある。
Bhavesh Shrimali
バヴェーシュ・シュリマリ(ファザル役)
グジャラート語の映画とテレビシリーズに何度か出演しているが、本作が初めての大きな役となる。20年間歌手として活動しており、舞台役者としても知られている。多彩な才能を持ち、ものまねパフォーマーとしても有名である。
Dipen Raval
ディペン・ラヴァル(父役)
グジャラート語の舞台、映画、テレビで活躍するアーティスト。75本を超えるグジャラート語の舞台と映画に出演した経歴を持つ。2014年にはチトラレーカー・ドラマ・コンペティションで最優秀助演男優賞を受賞した。
道を照らしてくれた人々に感謝を込めて
パン・ナリン
リュミエール兄弟
エドワード・マイブリッジ
デヴィッド・リーン
スタンリー・キューブリック
アンドレイ・タルコフスキー
マンモーハン・デサイ
シャー・ルク・カーン
アミターブ・バッチャン
アーミル・カーン
サルマーン・カーン
ラジニカーント
グル・ダット
カマール・アムローヒー
サタジット・レイ
ミケランジェロ・アントニオーニ
チャールズ・チャップリン
マヤ・デレン
ジャン=リュック・ゴダール
フランシス・フォード・コッポラ
キン・フー
アルフレッド・ヒッチコック
勅使河原宏
イングマール・ベルイマン
フェデリコ・フェリーニ
チャン・イーモウ
小津安二郎
スティーヴン・スピルバーグ
スパイク・リー
ジェーン・カンピオン
クリス・マルケル
ヴェラ・ヒティロヴァ
クエンティン・タランティーノ
黒澤明
リナ・ウェルトミューラー
キャスリン・ビグロー
アレハンドロ・ホドロフスキー
『エンドロールのつづき』
映画
2023年1月20日(金)公開
サマイ、9歳、チャイ売り。恋に落ちたのは“映画”だった―。
珠玉のインド映画の数々が彩る、実話から生まれた感動作!
作品情報 INTRODUCTION
《世界中で観客賞を受賞!》
サマイ、9歳、チャイ売り。恋に落ちたのは“映画”だった―
珠玉のインド映画の数々が彩る、実話から生まれた感動作!
STORY
9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、信仰するカーリー女神の映画は特別と、家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返った映画館、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再び映画館に忍び込むが、チケット代が払えずつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが―。
キャスト・スタッフ – キャスト –
バヴィン・ラバリ
– スタッフ –
監督・脚本:パン・ナリン
横浜ブルク13:11:45-13:45 (112分)
https://ttcg.jp/human_yurakucho/movie/0909000.html
https://eiga.com/movie/94775/special/
2023年1月16日更新
【世界一の映画ファンはインドにいた!】
その人が、映画愛全開の作品を撮ったら…どうなる!?
少年が映画に恋し、自力で映写機を開発したほぼ実話!
世界中の映画祭で観客賞に輝いた“珠玉の一本”が、日本へやってくる。1月20日から公開される「エンドロールのつづき」だ。
物語は驚きに満ち、映像は美しい。そして映画愛にあふれ、観れば必ず幸福な気分に浸れる。貧しい少年が映画に恋し、映画を撮る……のではなく、なんと自力で映写機を開発するのだ! しかも、監督のほぼ実体験というからまたすごい。
さらにさらに、その監督も「世界で一番の映画ファン」を自負するほどの人物で、持てる知識と愛をフルにぶち込み製作した――。もうこの時点で“すごい事実”が波のように打ち寄せてくるが、映画.com編集部が実際に観てきたので、その魅力を詳細にお伝えしよう。強烈にオススメ、この作品!
世界中の映画祭で5つの観客賞を受賞し、規格外な絶賛を受けるとともに、アカデミー賞の国際長編映画賞にインド代表として選出。辛口で知られる映画批評サイト「ロッテントマト」では、2022年8月30日時点で100%支持を得ている(90%以上は歴史的傑作にのみ与えられるハイスコア)。
【特徴】新時代の「ニュー・シネマ・パラダイス」! 貧しい少年の異常級の映画愛、驚きの日々…ほぼ実話!
あらすじを知りたい人は、ぜひ予告編などから確認してもらえればと思う。ここでは、今作の特徴をご紹介していこう。
●世界一の映画ファンがつくった、愛にあふれる感動作…観ればもっと、映画が好きになる
メガホンをとったのは、インド出身のパン・ナリン監督。早くからアメリカやトロント国際映画祭で評価された、映像センスに長けた俊英クリエイターである。
同監督の最大のポイントは、自称「世界一の映画ファン」! 異常なまでの映画愛を持つ彼が撮った作品となると、どのような仕上がりなのか気になるが……これが素晴らしかった!
今作はタイトルが出る前に「先人たちに感謝を」との文言、そしてリュミエール兄弟ら数々の名監督たちの名前が表示されるから、もう気合いの入り方が違う。
やがて、まるで現代版「ニュー・シネマ・パラダイス」とも言える物語が展開。映画に恋した貧しいチャイ売りの少年・サマイ(3000人のオーディションから選ばれた新星で、むちゃくちゃ演技がうまい!)と、映写室のおじさん・ファザルとの交流が描かれる。
そこに、インドの固定的な身分制度ゆえのドラマも。サマイは「映画を作りたい」と告白するが、父親は「チャイ売りの少年はチャイ売りにしかなれない」などと反対する。サマイは葛藤する。夢を叶えるにはこの町を出るしかない。だが家族は賛成などしない。そして何より、挑戦は親友・ファザルとの別れを意味する――。
さて、あなたはおそらく“胸のときめき”を感じたはずだ。それに抗わず、まっすぐに今作を観に行くといい。
●ありがちな物語じゃない…映画を観るため、映写機をつくるところから始める
物語の驚きとは? 今作は映画の魔力にハマったサマイが、映画を撮るために脚本を練ってみて……などという話ではない。いつでも好きなときに映画が観られるように、なんと映写機をつくろうとするのだ。観ていて、思わず「そこからかよ!」とツッコんでしまった。
なかでも興味深いのは、サマイの好奇心や探究心だった。鏡やガラス玉を通じた“光の屈折”に気がつき、映写機の原理を自力で発見。さらに壊れた荷車や扇風機などの鉄くずを集めてきては、解体・溶接(!)して、あれよあれよと新たな機械を組み立てたりするのだ。
この子たちにとって、生きる世界はすべて“映画”なのだ。その姿に、深い感銘と強い興奮を覚えた。
●さらなる“信じられないエピソード”の数々…しかしこれ、“ほぼ実話”!
そう、今作の見どころのひとつは、実は“サマイの行動力”。映画を観るためならなんでもする情熱をほとばしらせ、「そんなことまで!?」と観客を楽しませてくれる。
ほか、一例を挙げると……。
・父親が経営している売店の売り上げをくすね、映画鑑賞代に充てる
・母親が丹精込めて作ってくれる弁当を、映写室のおじさんにあげ、代わりに映写室に入り浸らせてもらう
・駅に保管されているフィルム(各地の映画館で上映する用)を勝手に盗み出し、切り貼りして編集し、オリジナルの映画をつくる
これでもまだまだ全体の一部。驚くべきエピソードの数々だが、なんとほぼ全てが監督の実体験=実話だというから何度も何度も驚かされる。
今作は静ひつなストーリーテリングが特徴で、「RRR」や「バーフバリ」シリーズとはまた異なるテイストの作品。だが、根底に流れる“異常なまでのエネルギー”と“印象に残りまくるシーン”において共通するものがある……この点が、今作を映画ファンにおすすめしたい最大の理由である。
【もっとグッときた所】A24ばりの映像センス! 極上&大満足の映画体験と、余韻残すラストに注目!
さらにさらに、実際に観てグッときたところは無数にある! 映像と音楽のセンス、そして物語のエモーションとラストの余韻だ。
●映像美と音楽のセンスが「A24」を彷彿… 全身で浸れる幸福な映画体験も◎
人間の生理にバチッとはまる映像美をもって、今作は“光”の魅力にクローズアップしていく。
サマイはさまざまな色のビンを拾っては、それを通して世界を見てみる。赤、青、黄色。毎日見ているはずの電車からの風景も、また別の景色に見えて、世界がぐっと広がった気がする――。
パン・ナリン監督は「ミッドサマー」「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」などで知られるA24を彷彿させる“全身で浸れる”映像と、いつまでも聞いていられる音楽で物語を彩る。暑苦しさや居心地の悪さはほぼ皆無。まさに“光の魔術師”ともいえるセンスと、アイデアを実現できる手腕は、世界でもトップクラスだと確信するほどだった。
この監督は要注目。必ずや、さらなる活躍をみせてくれることだろう。
●映画を愛するすべての人に捧ぐラスト… あらゆる人におすすめしたい超良作
“主人公・サマイが映画を楽しむ姿”自体が、映画好きとしての筆者の胸の扉をノックし続けた。
映画が始まると、サマイや大人たちはみんな、斜め上にスクリーンを仰ぎ見ながら、非日常の世界に浸る。映写機の光が劇場内の埃を照らし出し、それに手にかざすと、映画そのものも手に入れられたような気がした。
全身で映画を感じ、楽しんでいるようなサマイたちを見て、筆者も幼少のころに観た作品や思い出に考えを巡らせていた。こんな作品に出合えて、映画が好きで良かった――涙がこぼれる瞬間が何度も何度もあり、いろんな人に今作を伝えてまわりたいとも思った。
そしてラストシーンも“最高”の一言に尽きる余韻。まだ見ぬ良作を求める人や、「RRR」にハマった人や、A24作品が好きな人には特におすすめの超良作。映画館での鑑賞ならば魅力は三倍増するので、ぜひ映画館でご覧あれ。
PRESENTED BY 松竹
https://screenonline.jp/_ct/17598756
映画『エンドロールのつづき』パン・ナリン監督インタビュー/映画作りに大きな影響を与えた創意工夫のスピリット
チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる。映画『エンドロールのつづき』はパン・ナリン監督自身の自伝的物語の映画化です。キャストは全員グジャラート州出身であることにこだわり、故郷であるグジャラート州でロケを敢行。監督の幼少期の思い出が詰まった故郷の独特な雰囲気や風情を見事に再現しています。2022年度アカデミー賞®国際長編映画賞インド代表に選出され、バリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞。世界中の映画祭から喝采を浴びた話題作です。本作に込めた思いをパン・ナリン監督にうかがいました。(取材・文/ほりきみき)
映画は物語よりも光に心を奪われた
──冒頭で主人公のサマイが線路に色の入ったガラスを並べているなど、映画の中に様々な形で色が取り入れられていました。本作は監督ご自身の幼いころのことをモチーフにしているとのことですが、監督も幼いころから色や光に興味を持たれていたのでしょうか。
僕も電車で通学していたので、サマイが映画でやっていたように、風景を色ガラス越しに見たりしていました。電車に乗っているお客さんは窓からいろんなものを捨てるので、友だちと一緒にレール伝いを歩いて、たばこの箱やマッチ箱、飲み物の瓶などを拾い、色ガラスを見つけると、家で洗ってこっそり登校カバンに入れておいたのです。
パン・ナリン監督
そのうちに初めての映画を見ることになるのですが、幼かったのでカメラを見たことがありませんでしたし、映画の原理だけでなく、映画は撮影して作るということさえ知りませんでした。そんな僕が最初に魅了されたのが映写機でした。スクリーンの中で展開する物語よりも光に心を奪われたのです。
当時の映画館はバルコニー席があり、そこに座っていると手を挙げれば、映写室からの光に直接触れることができました。それをすると他のお客さんが映像を見られなくなってしまうとは気がつかずに、つい手を挙げてしまったのです。映画の中でサマイがつまみ出されて、「二度と来るな」と怒られていましたが、あれはかつての僕の経験です。
──映画に興味を持ったサマイがフィルムを上映するために試行錯誤しながらも、自分で映写機を作り出したことに驚きました。これも監督ご自身のご経験でしょうか。
映画はメカニズムをいったん理解してしまえば、とても単純。光とフィルムのリール、シャッターが必要ですが、ミシンをリールにして、ファンをシャッターとして使ったら見ることができました。
ただこの段階では音がついていません。しかもリールの動きがマニュアルでしたから、映写スピードによって映像が早くなったり、遅くなったり。それでも、そこまでできたことは奇跡だったと思っています。
子どもが拾ってきたごみクズを使っておもちゃを作るというのは、インドのどこに行っても見られる光景です。貧しいからこそ創意工夫を凝らして大いなるイノベーションを生み出し、いろんなおもちゃを作る。そういうインドの“作ってしまえ”というスピリットは未だに残っていますし、僕の映画作りに大きな影響を与えていると思います。
映画はストーリーテリングの延長線上にある
──音がついていない映像に合わせて、サマイたちは音を作り出し、物語を紡いでいました。映写技師のファザルも「映画と物語には深い歴史があり、語り手にこそ未来がある。何をどう語るかが腕の見せどころ」と語っていました。監督はこの作品で何をどう語ろうと思ったのでしょうか。
本作の場合、2つの物語を伝えたいというところから企画が始まりました。1つは1980年代の12歳くらいの自分の物語。もう1つは2011年のデジタル化の際、映写技師のファザルのモデルとなったモハメッドさんは英語が読めないので仕事を失ってしまったということ。これらを併せて1つの物語にしたのです。
ストーリーテリングは映画に出会う前から自分の中で大きなものでした。インドの場合、どの村にも必ずストーリーテラーと呼ばれる人がいて、村の人たちに語り継いできたという歴史があります。サマイも拾ったたばこの箱やマッチ箱に描かれている絵を使って、友だちとお互いに物語を作って話すという遊びをしていますが、そもそも僕がそれをしていたのです。
マッチ箱に農夫と踊り子、銃の絵があれば、それらを映画で出てくるように並べて、「農夫が踊り子に出会って、銃を使って誰かを殺してしまう」といった感じの物語が作れます。ですから、映画と出会ったときに「これはストーリーテリングの延長線上にある」と思ったのです。
その後、モハメッドさんと知り合い、カットされて使わないフィルムをもらって、1コマずつ見ながら、友だちとストーリーを作って聞かせ合っていたので、ストーリーテリングは自分の中では普通にしていたことでもありました。
──映写技師役のファザルのモデルとなったモハメッドさんはできあがった作品をご覧になりましたか。
音楽がついていない2時間半のラッシュ版のみ、ご覧いただきました。モハメッドさんは2021年に2回目のコロナに罹患されて亡くなってしまったのです。でも、ラッシュ版をご覧いただいたときに、ご自身の言葉がセリフとして使われていたのを聞き、「盗まれた」と笑っていました。僕は「ファザルはあなたがモデルなのだから、これは全部あなたの言葉です」と伝えたのです。
そのときに「久しぶりにフィルムの匂いを嗅ぎたいのだけれど、近くにないか」と聞いてきたので、後日、僕のところにあったものを送りました。10年くらい嗅いでいなかったようで、本当にうれしかったのでしょう。フィルムの匂いを嗅いでいる写真をホワッツアップというラインのようなアプリでたくさん送ってきてくれ、彼はムスリムだったので、「アラーに感謝を」と言っていました。
──サマイのお母さんが作る料理も赤や緑の色が鮮やかでした。作品に登場した料理は監督の故郷、グジャラート州ではお馴染みの料理なのでしょうか。
グジャラート州では9割近くの人が完全菜食主義なので、肉だけでなく卵や魚も食べません。食は大きな文化的な伝統でもあり、州の外、例えばデリやムンバイに行ったら、グジャラートの菜食主義の食事に出会うことはほぼないのです。海外でインド料理と呼ばれているものは北インドのものが多く、グジャラート州で食べられているものとは全く違います。食がグジャラート州の歴史の大きな部分を占めるということもあって、映画を通じて知ってほしいという気持ちもありました。
僕の生まれ育った家庭は母だけでなく父も料理が上手で、兄弟たちも食に対してすごく興味と執着がある。今でも家族に電話を掛けると「今日、何食べた?」という話題になることが多いです。手を伸ばせばハーブや野菜があって、それらを使って母が料理を作っているというのは子どもの頃の大きな記憶です。映画に出てくるキッチンは母のキッチンをイメージして作りました。
サマイは母親の作ったお弁当と交換で、映画をタダで見せてもらっていますが、それは僕自身の経験です。物語のポイントの1つで、いかに食から友情が生まれるかということのメタファーでもあるのです。
映画も食もいろんな材料が1つになって作られているということも伝えたい思いでした。この企画は4つのFがキーワードになっています。フィルム(Film)のFと食べ物(Food)のF、友人(Friend)のF、そして未来(Future)のFです。
──リュミエール兄弟、スタンリー・キューブリックなどの巨匠たちをさまざまな色で表現されていましたが、ご自身を色で表現するとこの作品のどの辺りになるでしょうか。
色ではないのですが、子どもたちが通学のときに電車の中で遮光をして、穴を空けて、ピンホールカメラのようにして光だけを使って映像を作るシーンが映画作家としての自分を表現しているシーンではないかと思っています。そのシーンを見るたびに、幼いながら本当に粋なことをしていたなと思います。
女性のバングルでさまざまな色を映し出したのは、実際に似たような場面に遭遇したことがあるのです。モハメッドさんと会って、映写機がスプーンになり、フィルムがバングルになったという話をした後、バスで街に帰ったのですが、そのバスで結婚式に向かう女性たちと一緒になったのです。彼女たちはさまざまな色のバングルをしていました。
6時間のバス旅でしたから時間を持て余し、バングルを見ながら、「あれがキューブリックかもなぁ」、「この女性は気がつかずに黒澤明のバングルをしているんじゃないか」といったことをふっと思いついたのです。それが自分の映画の一部になるとは、そのときはまったく想像もしていなかったのですが、今になってみると印象深い思い出です。
PROFILE
監督:パン・ナリン
インド共和国・グジャラート州出身。ヴァドーダラーのザ・マハラジャ・サヤジラオ大学で美術を学び、アーメダーバードにあるナショナル・インスティテュート・オブ・デザインでデザインを学んだ。初の長編映画『性の曼荼羅』(01)がアメリカン・フィルム・インスティテュートのAFI Festと、サンタ・バーバラ国際映画祭で審査員賞を受賞、メルボルン国際映画祭で“最も人気の長編映画”に選ばれるなど、30を超える賞を受賞し、一躍国際的な映画監督となった。
BBC、ディスカバリー、カナル・プラスなどのTV局でドキュメンタリー映画も制作しており、“Faith Connections”(13・原題)はトロント国際映画祭の公式出品作品として選ばれ、ロサンゼルス インド映画祭で観客賞を受賞した。2022年にグジャラート州出身の映画監督として初めて映画芸術科学アカデミーに加入。他の代表作に『花の谷 -時空のエロス-』(05)、『怒れる女神たち』(15)などがある。
<STORY>
9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、信仰するカーリー女神の映画は特別と、家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返った映画館、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再び映画館に忍び込むが、チケット代が払えずつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが―。
『エンドロールのつづき』
2023年1月20日(金)新宿ピカデリー他全国公開
監督・脚本:パン・ナリン
出演:バヴィン・ラバリ
2021 年/インド・フランス/グジャラート語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/英題:Last Film Show/日本語字幕:福永詩乃/G/応援:インド大使館/
配給:松竹
ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLP
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/endroll/
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