ポーラ美術館「ピカソ 青の時代を超えて」に行ってきました!見どころ / 感想 / 混雑状況 / グッズ紹介など
公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
〒250-0631
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
https://ja.wikipedia.org/wiki/ポーラ美術館
公式サイト:https://www.polamuseum.or.jp
箱根の自然と美術の共生。
私たちが、いちばん大切にすることです。
2002年、ポーラ美術館は神奈川県箱根町に誕生しました。開館以来、「箱根の自然と美術の共生」というコンセプトを掲げつづけています。箱根の自然と景観に配慮した建物は、高さを地上8mに抑え、建物の多くを地下に置き、森にとけこむようです。展示室は、ひとつひとつの作品が美しく鑑賞できるように独自開発の照明を採用。約10,000点のコレクションは、ポーラ創業家2代目の故・鈴木常司が40数年にかけて収集したものです。西洋絵画、日本の洋画、日本画、版画、東洋陶磁、ガラス工芸、古今東西の化粧道具など、多岐にわたります。優れた作品、豊かな自然、そして光に満ちた建築空間…。「共生」という理念が、美術館のすべてに息づいています。
ポーラ美術館開館20周年記念展 ピカソ 青の時代を超えて
https://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20220917c01/
パブロ・ピカソは20歳の頃、悲しみを抱えた貧しい人々を見つめ、青の絵具を用いて絵画にその姿を捉え、比類のない人間像を生み出しました。
画家の原点であるこの「青の時代」を超えて、実験的なキュビスムの探究、さらに円熟期から晩年に至るまで、91年の生涯を通して旺盛な制作意欲を絶やすことのなかったピカソ。その絵画は歿後から半世紀を経てなお、生きた表現の力を鮮烈に放ち続けています。
本展覧会は、国内でも屈指のピカソ・コレクションを誇るポーラ美術館とひろしま美術館が、これまで欧米の美術館の協力を得て深めてきた作品研究をもとに、制作のプロセスに焦点を当て、絵画芸術に挑んだ「描く」ピカソの作品を初期から捉えなおそうとする共同企画展です。
両館のコレクションをはじめ国内外の重要作とともに、最新の科学技術を用いた調査や研究を通して20世紀の巨匠が遺した創造の軌跡に迫ります。
「青の時代」(1901-1904年)
ピカソが20歳から23歳の頃に、青を主調色に貧しい人々の姿を描き、生と死や貧困のテーマの深奥に踏み込んだ時代。
バルセロナとパリを往復しながら生活し、親友カサジェマスの自殺を経て、精神的な苦悩に向き合った。ピカソ自身も困窮していたため、この時期に制作された絵画の多くは、同じカンヴァスに何度も描き直しがなされている。
ポーラ美術館とひろしま美術館は、ともに「青の時代」の最重要作である《海辺の母子像》(1902年)と《酒場の二人の女》(1902年)を各館の代表作として収蔵している。
パブロ・ピカソ(1881-1973年)スペイン・アンダルシア地方のマラガ生まれ。美術教師の父のもと、幼少期から早熟な画才を発揮する。
1899年にバルセロナの近代文化の中心であったカフェ「4匹の猫」に通い、気鋭の画家として頭角を現す。1901年以降、青を主調色とした絵画を描く。1904年以降はパリに移住し、やがてジョルジュ・ブラックとともに「キュビスム」を創始して前衛芸術における主導的な役割を果たす。
絵画、彫刻、版画、舞台装飾において表現の方法を拡張し、1937年に大壁画《ゲルニカ》を発表。第二次世界大戦後は南フランスで陶芸も始め、晩年まで制作活動を続けた。
https://www.polamuseum.or.jp/sp/picasso2022/
展覧会について
パブロ・ピカソは20歳の頃、悲しみを抱えた貧しい人々を見つめ、青の絵具を用いて絵画にその姿を捉え、比類のない人間像を生み出しました。
画家の原点であるこの「青の時代」を超えて、実験的なキュビスムの探究、さらに円熟期から晩年に至るまで、91年の生涯を通して旺盛な制作意欲を絶やすことのなかったピカソ。その絵画は歿後から半世紀を経てなお、生きた表現の力を鮮烈に放ち続けています。
本展覧会は、国内でも屈指のピカソ・コレクションを誇るポーラ美術館とひろしま美術館が、これまで欧米の美術館の協力を得て深めてきた作品研究をもとに、制作のプロセスに焦点を当て、絵画芸術に挑んだ「描く」ピカソの作品を初期から捉えなおそうとする共同企画展です。
両館のコレクションをはじめ国内外の重要作とともに、最新の科学技術を用いた調査や研究を通して20世紀の巨匠が遺した創造の軌跡に迫ります。
【作品リストはこちら】
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みどころ
1. 「青の時代」を原点として、ピカソの画業を捉えなおす大規模展
ピカソがオリジナリティを初めて確立した「青の時代」を、初期の一様式としてではなく、「キュビスム」をはじめ革新的な表現を次々と生み出していった画家の原点として捉えなおします。初期から「青の時代」を超えた晩年までの画業を、国内外の選りすぐりの名作約70点によりご紹介します。
2. “巨匠”以前、二十歳のピカソ
20世紀を代表する芸術家として知られるピカソも、かつては自分なりの表現を模索する駆け出しの画家のひとりでした。若くして生と死や貧困と向き合ったピカソの絵画は、今なお私たちの心をゆさぶります。深い精神性をたたえる「青の時代」の傑作を集め、若きピカソの葛藤と格闘の軌跡をひもときます。
3. アート・ヒストリー×サイエンス 最新のピカソ研究
「青の時代」にピカソはカンヴァスの再利用(リユース)を頻繁に行っていたため、この時期の多くの絵画の下層には、異なる構図の絵画が隠されています。国内外の研究者と協働して得られた、科学的な作品研究の成果を盛り込んで、「青の時代」の絵画に隠された制作プロセスとテーマ(主題)の変容に迫ります。
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「青の時代」を探究する—最新の科学調査から
ピカソは1901年に開催されたヴォラール画廊での展覧会では成功を収めるも、その後の「青の時代」の作品はほとんど売れることがなく、旺盛な制作意欲を満たしつつ制作活動を進めるために、一度描いたカンヴァスを再利用(リユース)して、他の構図の絵画に描きかえていきました。近年の科学調査技術の進展により、絵画の下層の状態など、人間の目では捉えられなかった制作の過程を可視化できるようになってきました。
ポーラ美術館では、これまで東京文化財研究所をはじめ、スペインのバルセロナ・ピカソ美術館、カナダのアート・ギャラリー・オブ・オンタリオ、アメリカのフィリップス・コレクション、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの協力により、《海辺の母子像》の作品調査を進めてきました。本作品をはじめ、「青の時代」の絵画作品の光学調査が明らかにしたピカソの制作の軌跡を、本展覧会のために製作した特別な映像を通して会場で紹介します。
ピカソ作品の足取りが判明
《海辺の母子像》(図1)の表面にパリの日刊紙『ル・ジュルナル』(1902年1月18日付)の紙面の文字が見つかりました(図2、赤外線反射イメージング分光法による画像*1)。これによって本作品はパリで制作され、絵具が乾ききらないうちに新聞紙で表面を覆われてバルセロナに持ち帰られたことがわかりました。
このたびバルセロナ・ピカソ美術館とワシントン・ナショナル・ギャラリーの研究者との共同調査により、《鼻眼鏡をかけたサバルテスの肖像》(1901年、図3)の画面にも、同じ日付の新聞紙の文字が残されていることが判明し、この2点は同じ足取りをたどった作品であることがわかりました。
*1 赤外線反射イメージング分光法
顔料ごとの吸収特性を利用して、様々な顔料の特定やマッピングを行うこと。赤外光の吸収や散乱は可視光より少ないため、表面下の隠れた絵具層を可視化することができる。
左:図1
《海辺の母子像》
1902年
油彩/カンヴァス
ポーラ美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
右:図2
《海辺の母子像》(部分)
赤外線反射イメージング分光法による画像
© John Delaney, National Gallery of Art, Washington, 2018
図3
《鼻眼鏡をかけたサバルテスの肖像》
1901年
油彩/カンヴァス
バルセロナ・ピカソ美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
塗り重ねた下層のイメージの解明
バルセロナ・ピカソ美術館が実施した最新の科学調査により、《青いグラス》(図4)の下層に、男性像が浮かび上がりました。画像からは、下層のイメージを活かして男性像の左目を囲むように赤い花弁を描いていることがわかります(図5、赤外線反射画像*2)。
本展覧会では「青の時代」における下層のイメージを解明することで、作品に隠された制作のプロセスを探ります。
*2 赤外線反射画像
絵具層と支持体との中間層の情報を集めるために撮影された画像。炭素を含む線を明瞭に可視化するだけでなく、顔料の厚みなどの状態も映像化される。
左:図4
《青いグラス》
1903年頃
油彩/カンヴァス
バルセロナ・ピカソ美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
右:図5
《青いグラス》
赤外線反射画像
© Museu Picasso Barcelona / Photographic Reproduction: IFAC-CNR, 2019
04
展覧会構成
プロローグ. 1900年の街角―バルセロナからパリへ
ピカソが10代を過ごしたバルセロナでは、スペインでいち早く近代化が進み、パリの影響を受けた新しい美術が隆盛していました。15歳頃の自画像には、伝統的な描き方を残しつつも、印象派などの絵画から影響を受けた洒脱な筆遣いが見られます。ピカソはラモン・カザスやサンティアゴ・ルシニョルといった、当時のバルセロナを代表する画家たちとの交流を持ち、しだいに新しい芸術の潮流に加わりました。
《自画像》
1896年
油彩/カンヴァス
バルセロナ・ピカソ美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
I. 青の時代―はじまりの絵画、塗重ねられた軌跡
1900年に初めてパリを訪れたピカソは、その後4年近くバルセロナとパリを往復する生活を送りました。1901年以来、後に「青の時代」と呼ばれた3年程の期間のなかで、ピカソはそれまで制作したカンヴァスを何度も塗り替えて模索を繰り返し、青を主調色に深い精神性を纏う重厚な作品を制作しています。酒場でグラスを前にした二人の娼婦を描く《酒場の二人の女》は、近年の科学調査によって、かつてうずくまる母子像が描かれていたことが判明しました。
《酒場の二人の女》
1902年
油彩/カンヴァス
ひろしま美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
《スープ》
1903年
アート・ギャラリー・オブ・オンタリオ
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
II. キュビスム―造形の探究へ
ピカソは1904年にパリに定住し、ブラックとともに前衛芸術に身を投じ、幾何学的に対象を分析して再構成するキュビスムを生み出しました。はじめは《裸婦》のように、人物を鉱物の結晶体のように描くなど、ストイックな造形性を探究します。しかし1912年以降、平面の重なりやモチーフの組み替えによって、静物から人物へと主題を変え、軽やかに意味を変容させていく実験的な手法に魅せられていきました。
《裸婦》
1909年
油彩/カンヴァス
ポーラ美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
《葡萄の帽子の女》
1913年
油彩/カンヴァス
ポーラ美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
III. 古典への回帰と身体の変容
第一次世界大戦の終結後、「秩序への回帰」という時代の機運のもとピカソも古典に回帰しました。しかし同時にキュビスムを思わせる幾何学的で平面的な作品も制作しています。多様な方法を用いながらも、主題のない抽象絵画を否定し、現実と結びついた作品を制作し続けました。愛人の姿を描いた《マリー゠テレーズの肖像》では、幾何学的に分割した色面の上に、彼女の姿を重層的に描き出しています。
《仔羊を連れたポール、画家の息子、二歳》
1923年
油彩/カンヴァス
ひろしま美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
《マリー゠テレーズの肖像》
1937年
油彩/カンヴァス
吉野石膏コレクション(山形美術館に寄託)
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
IV. 南のアトリエ—超えゆく絵画
第二次世界大戦後のピカソは、南フランスに住まいを移し、なおも制作を続けます。美術史上の巨匠たちを参照した連作を手がけ、「画家とモデル」というテーマのもと絵画における愛とエロティシズムを探究します。晩年には自己の内面をみつめ、再び「青の時代」のように生と死のテーマに還り、魂の表出というべき作品群を描きました。《ラ・ガループの海水浴場》が登場する映画「ミステリアス・ピカソ天才の秘密」(1956年公開)のなかで74歳のピカソは、大胆かつ自在にイメージを変容させていくプロセスを明らかにしています。
《ラ・ガループの海水浴場》
1955年
油彩/カンヴァス
東京国立近代美術館
©2022-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)
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関連プログラム
ポーラ美術館 森の遊歩道 Nature Train in Pola Museum of Art
箱根にあるポーラ美術館の森の遊歩道。
2021年秋の様子です。背の高い木々の森のなかに、板東優、アイ・ウェイウェイ、佐藤忠、ロニ・ホーン、スーザン・フィリップスなどのアート作品が埋め込まれています。
The Nature Train in Pola Museum of Art in Hakone is the outdoor gallery exhibiting the art works by Ai Weiwei, Roni Horn, Masaru Bando, Chu Sato, Susan Philipsz, etc. Filmed in Nov, 2021.