Immersive Museum -dive in art- (60sec) 日本橋三井ホール2022.7.8-10.29
Dive in Art。鑑賞する絵画から、体感する絵画へ。ここはあなたとアートの関係を変える場所。視界一面に写し出された数々の名画たち。あなたは一瞬で絵画の中の世界へ入り込む。そして名画たちが幾年の時を超え動き出す。それはかつて画家たちが目にし残したかった物語が、動き出すということ。モネが、ドガが、ルノワールが見た世界を、あなたも体感してみませんか。
日本橋三井ホール(中央区室町2-2-1 コレド室町1 5F)
公式サイト:https://immersive-museum.jp


Immersive Museum
“印象派”IMPRESSIONISM
パラダイムシフトの
時代
歴史には「時代の変わり目」と呼ばれる時期がある。
19世紀のパリは、様々なイノベーションでパラダイムシフトが起きていた。
産業革命による工業化は新しい労働形態をもたらした。蒸気機関車は大衆に移動の自由を与えた。ある者は職を探して、ある者は旅行者として、ある者は夢を追って、都市部に人々が押し寄せた。急激に人口が増加したパリは大規模な都市改造を行い、道路や広場の拡張に合わせて、現在まで残るオペラ座やルーブル宮のような文化施設を整備した。
街並みや市民のライフスタイルが日々変わっていく熱気と興奮に包まれたパリ。
モネやルノワール、ピサロ、ドガなど、野心と情熱に満ちた若い絵描きたちはそこで出会った。
絵画のアップデート
テクノロジーの進化はアートに新しい可能性を開く。
この時期、絵画にとって重要な二つのテクノロジーが登場した。一つはチューブ型の絵の具。それまでの顔料と違い持ち運びに優れたチューブ型絵の具により、画家は屋外制作が容易になった。もう一つは写真。遠近法をはじめとする「現実を再現するための」絵画の技法は、写真には到底かなわなかった。
アトリエを飛び出した画家たちは街や郊外へ出かけ、オペラ観劇のような新しい人々の生活や、季節により様相を変える風景など、それまでの伝統的宗教画とは異なる主題を取り上げた。さらに、絵の具を混ぜて色を作るのではなく、原色をキャンバスにおくことで鮮やかな色を出す、その手法においても絵画ならではの表現を試行した。
自分たちが生きる現在という「瞬間」、その「光」と「色」を、自らの感覚に忠実に描き出す新しいスタイルを、仲間と切磋琢磨しながら築き上げていった。
反逆者たちのムーブメント
いつの時代も、新しい価値観が世の中に受け入れられるには時間を要する。
当時、画家として生計を立てるには、年に一度開かれるサロンに出展し名前を売り出すしかなかった。しかし、権威あるサロンの審査員たちは、若い世代による新しいスタイルの絵画を認めず作品はことごとく落選した。
自らの絵画の革新性を信じ、保守的なサロンに見切りをつけた画家たちは、自分たちだけで展覧会を開くことにする。後に「印象派展」と呼ばれるこの展覧会は、既存の美術業界へのカウンターであると同時に、他に選択肢が無い逼迫した状況から産まれたものでもあった。
印象派によるグループ展は、メンバーの入れ替えや意見の相違による分裂など紆余曲折を経て、全8回で終了する。現代では巨匠と呼ばれる印象派の画家たちだが、当時の人々にとっては、既存の価値を大きく揺さぶる反逆者たち、今でいうイノベーターたちの運動だったのだ。
イマーシブな美術体験
本展は、単なる「絵画の映像化」ではない。
瞬間の光をとらえた印象派絵画に「時間」を与え、鑑賞者との距離や大きさという「スケール」を変え、編集や音楽の「文脈」を加えることで、印象派を解体し再構築する。
数十台のプロジェクターを制御する最新の映像技術で実現される絵画の没入(イマーシブ)体験は、テクノロジーの進化が開くアートの可能性、美術を拡張する視覚表現、既存の美術館に対するオルタナティブな展示空間として、印象派の偉大なイノベーターたちの精神を2020年代なりのやり方で復元する。
モネは、ルノワールは、ピサロは、ドガは、何を見て、どう捉えて、どのように表現しようとしたのか。「絵画対自分」ではなく画家の視点に乗り移る、新しい美術体験を試みる。
坂上 桂子サカガミケイコ
東京都生まれ。早稲田大学教授。専門は近現代アート。主な著作『ジョルジュ・スーラ 点描のモデルニテ』(ブリュッケ)、『ベルト・モリゾ ある女性画家の生きた近代』(小学館)等。
印象派は、光を描くことを探求したアートです。移り変わる一瞬の色合い、眩い輝き。
モネやルノワールたちは、それらを一筆一筆、細かいタッチで画布に留めようとしました。そんな印象派の世界観を現代のテクノロジーで味わう。それがイマーシブミュージアムです。
モネは人生の最後に、睡蓮の巨大な絵で、楕円形の部屋の壁をぐるりと取り囲むスペースをつくることを構想しました。オランジュリー美術館にある睡蓮の間がそれです。温室だったオランジュリーの建物は、ガラス張りの天井から光がさんさんと入ります。心地よい光のなか、まるで睡蓮の池のなかに身を置いたように感じられる空間。生涯、光をただひたすら求めて描き続けたモネが、最終的に目指したのは、光とともに絵画の世界へ没入(イマーシブ)体験できる場でした。
モネの構想からおよそ100年。21世紀の映像技術を駆使してつくられるイマーシブミュージアムではモネの夢見た世界からさらに展開して、新たな印象派が表現されています。小さなタッチは拡大され、踊り、私たちを取り囲み、現代的印象派の世界へといざないます。ここでは通常の展覧会や画集では知ることのできない絵画のミクロの世界と出会うことができます。これまでにないアート体験ができる貴重な場といえるでしょう。
Spcial Artwork by ETERNAL Art Space
2022年3月に実施された、MUTEK.JPが新たに手掛ける創造性を誘発する
イマーシブアートエクスペリエンス“ETERNAL Art Space”より、特別作品を上映します。
Stillness
THINK AND SENSE & Intercity-Express (JP)
新たな価値を 「複合性」で社会実装するテクノロジカル・クリエイティブファーム・THINK AND SENSEと音楽家・大野哲二によるサウンド/ビジュアルプロジェクト・Intercity-Express が手掛ける「Stillness」。 禅をテーマにした本作品は、 京都 両足院 副住職伊藤東凌氏の協力の元、高精度レーザースキャン技術により三次元化したデータを、最もミニマルな「点」のランドスケープと収録された両足院内外の音を再構築したサウンドスケープにより禅の世界観の一端を表現する。「緊張と緩和」の中にある、静寂を通して見つけることができないもの、聞くことができないもの、禅の思想を通して、自己に没入するイマーシブな体験の一端をデジタルで構築する。
上映期間:2022年9月1日(木)-10月29日(土)