映画『マイスモールランド』予告編
《 第72回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門 正式招待 作品 》
クルド人の家族とともに生まれた地を離れ、幼い頃から埼玉で育った17歳のサーリャ。
すこし前までは同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていた。
しかし在留資格を失った今、バイトすることも、進学することも、埼玉を越え、
東京にいる少年・聡太に会うことさえできない。
彼女が日本に居たいと望むことは“罪”なのだろうか―?
是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」の気鋭の新人監督・川和田恵真監督の
商業映画デビュー作。
5カ国のマルチルーツを持つ主演の嵐莉菜が、在日クルド人の高校生・サーリャを演じ、
聡太を注目の若手俳優・奥平大兼が演じている。
出演:嵐莉菜、奥平大兼、平泉成、藤井隆、池脇千鶴、韓英恵、サヘル・ローズほか
監督・脚本:川和田恵真
主題歌:ROTH BART BARON 「N e w M o r n i n g」
企画:分福 制作プロダクション:AOI Pro. 共同制作:NHK FILM-IN-EVOLUTION
配給:バンダイナムコアーツ
5月6日(金)新宿ピカデリー他全国公開
©︎2022「マイスモールランド」製作委員会
映画『マイスモールランド』 特別映像
『万引き家族』×『ドライブ・マイ・カー』スタッフが贈る
国境を越え、胸に響く感動作。
ここに居たいと願うことは“罪”ですかーー?
日本に住む、難民申請中のクルド人の家族に告げられた過酷な現実。
在留資格を失い、普通の高校生としての日常が奪われてしまった
17歳の主人公サーリャが、理不尽な社会と向き合いながら、
自分の居場所を探し、成長していく物語。
2022年ベルリン国際映画祭のアムネスティ国際映画賞・特別表彰。
映画『マイスモールランド』 本編映像1 【5月6日公開】
主⼈公サーリャを、5カ国のルーツを持ち、ViViモデルとして活躍する嵐莉菜が演じ、サーリャが心を開く少年・聡太を注目の俳優・奥平大兼が演じる。是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の川和田恵真監督の長編デビュー作。2022年ベルリン国際映画祭・アムネスティ国際映画賞/特別表彰。
奥平大兼、ナレーション初挑戦 嵐莉菜主演「マイスモールランド」特別映像
モデルの嵐莉菜さんが主演し、俳優の奥平大兼さんも出演する映画「マイスモールランド」(5月6日公開)の特別映像が4月1日、公開された。本作のストーリー、テーマを、本編映像とメーキング、インタビュー映像で紡いだ映像で、主人公が心を開く少年・聡太役の奥平さんがナレーションを担当した。
奥平さんはナレーション初挑戦といい、「とても難しかったです。いろいろなしゃべり方があることが分かって勉強になりました」と振り返っている。
映画は、是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」の気鋭の新人監督である川和田恵真監督の商業映画デビュー作。嵐さんが埼玉に住む在日クルド人の高校生・サーリャ、奥平さんが東京に住む少年・聡太を演じる。
クルド人の家族とともに生まれた地を離れた後、幼い頃から日本で育った17歳のサーリャ。同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていた彼女と家族は、あるきっかけで在留資格を失い、これまで当たり前だった日常が一変する……という物語。藤井隆さん、池脇千鶴さん、平泉成さん、韓英恵さん、サヘル・ローズさんらも出演する。
奥平大兼がナレーションに初挑戦した特別映像~映画『マイスモールランド』【2022年5月6日公開】
この動画は、本作のストーリー、テーマを、本編映像とメイキング・インタビュー映像で紡いだ特別映像。奥平がナレーションに初挑戦している。「初めてナレーションを務めさせていただいて、とても難しかったです。いろいろなしゃべり方があることが分かって勉強になりました。今回ナレーションをさせていただいてこの作品を客観的に見るきっかけになり、見た人によって解釈が変わる作品だと思いました。改めて少しでも多くの方に見ていただきたいなと思いました」とコメントしている。
特別映像では、在留資格を失ったことから、日常が奪われ、戸惑いながらも希望を持って生きようとするサーリャとその家族の姿を映し出す。自身も5ヶ国のルーツを持つ現役の高校生であり、主人公・サーリャを演じた嵐莉菜が「ここで暮らしているクルドの方々とか、辛い思いをしてる子が本当にいっぱいいて、その子の気持ちも入れて、悲しいけど、でも強いサーリャを考えて」と役柄への思いを語る撮影時のメイキング映像も映し出される。
またベルリン国際映画祭に登壇した川和田監督のスピーチの様子など、キャスト・監督の想いが伝わる映像に仕上がっている。
映画『マイスモールランド』ベルリン国際映画祭レポート
第72回ベルリン国際映画祭でのワールドプレミアの模様をレポート!
嵐莉菜×奥平大兼 共演した嵐莉菜の実の家族も登場!映画『マイスモールランド』公開記念舞台挨拶【トークノーカット】
(見どころ頭出しあり)2022年5月7日、新宿ピカデリーにて、映画『マイスモールランド』公開記念舞台挨拶が行われ、映画初出演&初主演の嵐莉菜(18)、奥平大兼(18)、川和田恵真監督、そして、同作に家族役で出演で、且つ、嵐莉菜の実の家族でもあるアラシ・カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、リオン・カーフィザデーが登壇。撮影時のことを振り返った。また、川和田監督が所属する文福の師匠でもある是枝裕和監督からの手紙の朗読も行われた。
【見どころ頭出しチャプター】
00:00 オープニング
00:11 最初のあいさつ
02:12 嵐莉菜の実の家族の舞台挨拶登壇について
04:04 嵐莉菜の実の家族との共演について(奥平大兼)
05:29 撮影から映画公開までを振り返って
07:18 思い出に残っているシーン
13:08 是枝裕和監督からの手紙
18:06 18歳新成人の嵐莉菜と奥平大兼
19:32 娘(嵐莉菜)が成人となった父の気持ち
20:04 最後のあいさつ
22:48 フォトセッション
23:06 降壇シーン
https://eiga.com/movie/95843/
在日クルド人の少女が、在留資格を失ったことをきっかけに自身の居場所に葛藤する姿を描いた社会派ドラマ。是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の若手監督・川和田恵真が商業映画デビューを果たし、自ら書き上げた脚本を基に映画化した。クルド人の家族とともに故郷を逃れ、幼い頃から日本で育った17歳のサーリャ。現在は埼玉県の高校に通い、同世代の日本人と変わらない生活を送っている。大学進学資金を貯めるためアルバイトを始めた彼女は、東京の高校に通う聡太と出会い、親交を深めていく。そんなある日、難民申請が不認定となり、一家が在留資格を失ったことでサーリャの日常は一変する。自身も5カ国のマルチルーツを持つモデルの嵐莉菜が映画初出演にして主演を務め、「MOTHER マザー」の奥平大兼が共演。2022年・第72回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に出品され、アムネスティ国際映画賞スペシャルメンションを贈られた。
2022年製作/114分/G/日本・フランス合作
配給:バンダイナムコアーツ
公式サイト:https://mysmallland.jp
INTRODUCTION
埼玉に住む17歳のクルド人サーリャ。
すこし前までは同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていた。
あるきっかけで在留資格を失い、当たり前の生活が奪われてしまう。
彼女が、日本に居たいと望むことは“罪”なのだろうか――?
「国家を持たない世界最大の民族」と呼ばれるクルド人。埼玉県には2000人ほどのコミュニティが 存在するが、クルド人が難民認定された例はこれまでないに等しい。そして、本作の企画が動きだした2017年 当時より、出入国管理及び難民認定法(入管法)を巡る状況は、悪化の一途をたどっている……。
この現状を、17歳の少女の目線を通して描いたのは、是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」に在籍する新鋭・川和田恵真監督。イギリス人の父親と日本人の母親を持つ監督が、成長過程で感じたアイデンティティへの想いを元に、理不尽な状況に置かれた主人公が大きな問題に向き合う凛とした姿をスクリーンに焼き付け、本作を企画段階からサポートした是枝監督の『誰も知らない』(04)の系譜に連なる“日本の今”を映し出した。
主演は、5カ国のマルチルーツを持ち、ViVi専属モデルとして活躍する嵐莉菜。現役高校生である彼女が、主人公サーリャが抱く複雑な感情を、デビュー作とは思えない堂々とした演技で、みずみずしく体現。そして、サーリャが心を開く少年・聡太役を『MOTHER マザー』(20)で多くの新人俳優賞を受賞した奥平大兼が演じ、次世代を担う感性豊かな俳優たちと、新鋭監督とのフレッシュなタッグが実現した。さらに平泉成、池脇千鶴、藤井隆、韓英恵、サヘル・ローズらが、この新たな才能を支えている。
また、主題歌「N e w M o r n i n g」を書き下ろしたのは、注目のアーティストROTH BART BARON。スタッフに『ドライブ・マイ・カー』(21)の撮影・四宮秀俊、美術・徐賢先らが参加。そして、日本初の栄誉となる第72回ベルリン国際映画祭/アムネスティ国際映画賞スペシャル・メンションに輝き、世界からも大きな注目を集めている。
現代社会の矛盾をとても美しく映画らしい構成で物語にした
―――― ベルリン国際映画祭
世界中で起こりうる出来事を、力強く語った作品
―――― アムネスティ国際映画賞
嵐莉菜の魅力的な演技は特筆すべき
―――― THE FILM VERDICT
STORY
17歳のサーリャは、生活していた地を逃れて来日した家族とともに、幼い頃から日本で育ったクルド人。
現在は、埼玉の高校に通い、親友と呼べる友達もいる。夢は学校の先生になること。
父・マズルム、妹のアーリン、弟のロビンと4人で暮らし、家ではクルド料理を食べ、食事前には必ずクルド語の祈りを捧げる。 「クルド人としての誇りを失わないように」そんな父の願いに反して、サーリャたちは、日本の同世代の少年少女と同様に“日本人らしく”育っていた。
進学のため家族に内緒ではじめたバイト先で、サーリャは東京の高校に通う聡太と出会う。
聡太は、サーリャが初めて自分の生い立ちを話すことができる少年だった。
ある日、サーリャたち家族に難民申請が不認定となった知らせが入る。
在留資格を失うと、居住区である埼玉から出られず、働くこともできなくなる。
そんな折、父・マズルムが、入管の施設に収容されたと知らせが入る……。
CHARACTER
チョーラク・サーリャ(17)
クルド人の高校三年生。
夢は学校の先生。
嵐 莉菜 あらしりな 2004年5月3日
PROFILE »
2004年5月3日生まれ、埼玉県出身。「ミスiD2020」でグランプリ&ViVi賞のW受賞。2020年よりViViで専属モデルとして活躍中。日本とドイツにルーツを持つ母親とイラン、イラク、ロシアのミックスで日本国籍を取得している父親がいる。本作が映画初出演にして初主演となる。
https://eiga.com/movie/95843/interview/
新鋭・嵐莉菜を突き動かした原動力、俳優として芽生えた欲
崎山 聡太(17)
サーリャのバイト先の
同僚。高校三年生。
奥平 大兼
PROFILE »
2003 年9 月20 日生まれ、東京都出身。演技未経験ながら初オーディションで数百人の応募者の中からメインキャストの周平役に大抜擢され、映画『MOTHER マザー』(20)で俳優デビュー。その存在感と演技が評価され、第44 回日本アカデミー賞 新人俳優賞、第94 回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第63 回ブルーリボン賞新人賞、第30 回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞。その後、ドラマ「恋する母たち」(TBS/20)、「ネメシス」(NTV/21)、に出演。2022年は「アクターズ・ショート・フィルム2」の『物語』(WOWOW)、「早朝始発の殺風景」(WOWOW)でW主演を務め、ドラマ「卒業式に、神谷詩子がいない」(NTV)、ドラマ「サヨウナラのその前に」(NTV)で火曜日の主演を務める。
DIRECTOR
監督・脚本 / 川和田恵真
1991年10月15日生まれ、千葉県出身。イギリス人の父親と日本人の母親を持つ。早稲田大学在学中に制作した映画『circle』が、東京学生映画祭で準グランプリを受賞。2014年に「分福」に所属し、是枝裕和監督の作品等で監督助手を務める。本作が商業長編映画デビューとなる。2018年の第23回釜山国際映画祭「ASIAN PROJECT MARKET (APM)」で、アルテ国際賞(ARTE International Prize)を受賞。
MUSIC
音楽/ROTH BART BARON
主題歌「N e w M o r n i n g」
ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)は、シンガーソングライターの三船雅也が中心に集まる日本のインディーロックバンド。これまでに4枚のEP、5枚のオリジナルアルバムを発表している。フジロックやサマーソニック、ライジングサン、ビッグマウンテン(タイ)、PLAYTIME FESTIVAL(モンゴル)などアジアの大型フェスにも出演。4thアルバム『けものたちの名前』は、アジアン・カンフー・ジェネレーション・後藤正文が設立した<Apple Vinegar Music Award>で大賞を受賞。5thアルバム『極彩色の祝祭』収録のリード曲「極彩|IGL(S)」は、テレビ朝日系「関ジャム∞完全燃Show」番組内にて音楽プロデューサー・蔦谷好位置の年間1位に選出。
STAFF
撮影:四宮秀俊
照明:秋山恵二郎
音響:弥栄裕樹
美術:徐賢先
装飾:福岡淳太郎
衣裳:馬場恭子 中村祐実
ヘアメイク:那須野詞
編集:普嶋信一
カラリスト:アレクサンドラ・ポケ
ダビングミキサー:グザヴィエ・トュラン
キャスティング:森万由美
クルド監修:ワッカス・チョーラク
助監督:森本晶一
PRODUCTION NOTE
企画のはじまり
企画のはじまり 川和田恵真監督が初めてクルドに興味を持ったのは、ISISが勢力の拡大を続けていた2015年頃。土地を奪われたクルド人が、自分たちで兵隊を作り、ISISに立ち向かうという状況の中、「私と変わらない年代の若い女性が大きな銃を持って、自分たちの暮らす土地を守るために最前線で戦っている写真を見て、衝撃を受けました」と監督は振り返る。クルドについて調べるうちに、日本にも難民申請中のクルド人が2000人近く住んでいることが分かった。この日本で、自分の居場所を求めて、闘っている人たちがいる――。彼らのことをもっと知りたい、話を聞きたいと思って、実際に会いに行ったことが、この映画の出発点となった。
映画の企画として立ち上げた2017年頃から、在日クルド人の方々への本格的な取材をスタート。取材期間は2年近くに及んだ。主人公のサーリャと同じ女子高生のいる、いくつかの家庭の取材のほか、そこで知り合った家族の親戚や知人で、入管に収容されてしまった方たちにも面会に行き、収容所の実情について詳しく話を聞いた。監督の心に強く残ったのは、クルド人の当事者の方の「難民申請中というのは“不治の病”にかかっているような気持ちだ」という言葉。長い間、出口が見えないつらい状況に置かれ続け、精神的にも肉体的にも追いつめられてしまう心理をリアルに言い表している。
コロナ禍により、仕事を失ったり、入管法が改悪されそうになったりと、クルド人の現在の境遇は、映画の制作を始めたときより、さらに過酷になっている。「本作の制作も何度か延期になり、実現が危ぶまれることもありましたが、自分ができることとしては、この映画を作って伝えることだと思ったので、あきらめずにやり通すことができました。本作が今の不条理な状況を知る糸口になったらいいなと思っています」(川和田監督)
オーディションでの運命的な出会い
オーディションでの運命的な出会い 当初はメインキャストも日本に住むクルド人に演じてもらう方向で考えていたが、難民申請中の方が記録として残る映画に出演することで、彼らのその先の人生に危険が生じる可能性もある。検討を重ねた末、結婚などで在留ビザを持っている人たちにだけ、サブキャストで出演してもらうことになった。そして、サーリャ役には、日本以外のルーツも持っている人に広く声をかけ、オーディションをおこなった。
制作スタッフが嵐莉菜と会ったのは、すでにオーディションがかなり進んでいた頃。面接で監督が「自分は何人だと思いますか?」というセンシティブな質問をした際、嵐が「自分のことを日本人だと言っていいのか分からないけれど、私は日本人って答えたい。でも、まわりの人はそう思ってくれない」と、自身がこれまでに感じてきた葛藤をはっきりと打ち明けたことが決め手のひとつとなった。オーディションが始まっても、クルド人ではないキャストがサーリャを演じることに不安を抱いていた監督は、「その気持ちを理解できる彼女なら、この複雑な環境にいる主人公を任せることができると思いました。そのとき見せてくれたナチュラルな演技もすばらしく、オーディションのときから、サーリャ役を生きてくれていたという感覚でした」と語る。
また、数多くの応募者が集まった聡太役のオーディションで選ばれたのが、本作が2本目の映画出演となる奥平大兼。「サーリャとのシーンを演じてもらったとき、これから失われてしまうかもしれないような一瞬の恥じらいというか、まだ青年になりきっていないものを感じました。聡太はサーリャの言葉を受け取ることが多い役なので、作りすぎず、自分の感性を持って寄り添ってくれる人だと思いました」(川和田監督)
撮影前におこなわれたワークショップ
撮影前におこなわれたワークショップ まず、出演が決まった嵐莉菜とサーリャの家族を演じるアラシ・カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、リオン・カーフィザデーに、自分たちが演じる役はどういうものなのかを身体的に理解してもらうため、監督と共に、クルド人の家族と会って話をしたり、作法を教えてもらいながらクルド料理を一緒に食べる時間などを設けた。嵐と奥平が初めて顔合わせをしたのは2020年12月末。それから2021年5月中旬のクランクインまでの間に、嵐×奥平や、嵐×家族という組み合わせで、計5~6回ほどのワークショップがおこなわれた。
ワークショップの一番の目的は、壁を取り払い、人前で芝居をするという行為自体に慣れてもらうこと。嵐×奥平の回では、橋の下でサーリャと聡太が初めてゆっくり話をするシーンの芝居をひととおり実演したほか、劇中の大事なシーンについて、ディスカッションを重ねていった。その過程で、奥平が「絵が好き」という話をしたことから、聡太の美大志望という設定やスプレーアートのシーンなどが、新たに脚本に加えられた。
嵐莉菜が、サーリャ役に与えた影響も大きい。そもそもサーリャ役をクルド人ではない嵐に決めた時点で、当初の脚本のリアリズム路線よりも、フィクション性が高まった。監督は「最初の脚本では、サーリャをかなり反抗的な子に描いていましたが、莉菜さんを見て、キャラクターを変えました。サーリャが小学生だったときのワールドカップで『自分が日本を応援していいのかなと思った』というエピソードは、莉菜さんの幼少期の話と私自身の体験から生まれたものです」と語る。
「本人たちの持っているものからエピソードを追加し、作品がよりよくなるための選択をする」という川和田監督の柔軟な姿勢は、是枝作品の監督助手として経験を積んで培われたものだ。「現場で意識したのは、みんなが自然体でいられる環境を作ること。自分の描きたい感情に繊細であり続けると同時に、まわりのスタッフやキャストから『違う』という意見をもらったとき、閉じずに、じゃあ、どうすればこのシーンがよくなるのかを考え続けることを心がけていました」(川和田監督)
子どもたちのリアルな表情
子どもたちのリアルな表情 子どもを演出するときは脚本を渡さず、リハーサル時に口伝えで教えるという演出方法を、是枝裕和監督はおこなってきた。川和田監督も今回それを踏襲し、本作の撮影では、サーリャの妹アーリン役のリリと、弟ロビン役のリオンには、最後まで脚本を渡していない。そのため、チョーラク一家が、出入国在留管理局で難民申請を却下されるシーンでは、リリとリオンは、ここで何が起こるか、撮影まで分かっていなかったという。
父マズルム役のアラシが職員に足の傷を見せ、「これでも難民じゃないんですか!?」と怒鳴るシーンにビックリしたリオンが、リハーサル終了後、「もう無理……」と泣き出して、一度、席をはずしてしまう。「しばらくリリにリオンのそばにいてもらい、その間、2人が映らないカットを先に撮りました。最後はリリと一緒にリオンに来てもらって、残りのカットを撮影。本当の子供の反応をみて胸が締め付けられました。その瞬間を撮ってあげられたらと思いましたが、少し落ち着いたところで来てもらうことになりました。そのおかげか、泣かずにギリギリ持ち堪えているその時にしか出せない不安定な表情が映っていました。」と伴瀬萌プロデューサー。職員が家族全員の在留カードにパチンパチンと穴を開けていく様子にショックを受けているロビンの反応には、その時のリアルな感情が記録されている。
心を震わせたクライマックスシーン(※ネタバレあり)
心を震わせたクライマックスシーン(※ネタバレあり) 嵐やスタッフにとって、最も強く印象に残っている撮影といえば、サーリャと父マズルムが、入管の面会室で最後に話をするシーンだ。嵐は「お父さん役のオーディションでもやりましたし、監督の思い入れが強いシーンだったので、一番緊張しました。この1ヵ月間の想いが積み重なった、父マズルムとの最後の撮影だったこともあり、私も出せるものをすべて出し切ったシーンでした」と話す。
リハーサルの時点から、サーリャとマズルムがラーメンを食べる仕草をするシーンの後に、感情が高まって泣いてしまう嵐。涙はできるだけ取っておこうと、川和田監督は一連の長いシーンを前半と後半で分け、後半から嵐の向きで撮影することに決める。しかし、撮る直前に撮影の四宮秀俊が監督のところに来て「このシーン、頭から撮っていいですか?」とだけ言い残し、嵐のフルショットの寄りを頭から撮り始めた。その圧倒的な映像にスタッフ一同が感動。監督やプロデューサーたちも涙を流しながら、嵐の芝居を見守ると同時に、撮影監督としての四宮の力量を再認識したシーンでもあった。
フランスとの共同制作
フランスとの共同制作 日仏共同制作である本作。監督は2021年10月から渡仏し、約2カ月滞在して、画の色を1枚1枚調整するグレーディングと、音の仕上げ作業となるダビングをおこなった。日本では、グレーディングもダビングも、基本的にメインスタッフと呼ばれるカラリストやミキサーが事前にかなり仕込んだ上で、監督に確認してもらうという流れになる。しかし、今回は撮影の四宮秀俊と録音技師で音響の弥栄裕樹もパリに行き、フランスのカラリストやミキサーと一緒にコラボレーションすることになった。「日本だと通常3~5日でやる作業を、グレーディングで1ヵ月、ダビングで1ヵ月と、かなり時間をかけてやらせていただきました。四宮さんも今回は、色をどう組み立てるか、というところから参加できたので、とても喜んでいましたね」(伴瀬プロデューサー)
ダビングに関して、配信での視聴を中心に考える今の世界的な傾向としては、セリフがすべてしっかり聞こえることに重きをおき、声を太くするのが主流になっている。しかし、「是枝監督をはじめ、『分福』の監督たちは、隣の部屋から聞こえる話し声は、自然に音が小さくなるなど、カメラとの距離感を大事にしています。本作も最初は音を太く出してきていたのですが、そこから環境をちゃんと感じられるような音作りにする方向にシフトしていきました。あと、日本語は話していくうちに、どうしても声がすぼんでいく言語なので『ぜんぶ太くしなくていい』という話もして。そういう繊細なニュアンスも、フランス人スタッフがちゃんと分かって作ってくれたのが心強かったですね」(伴瀬プロデューサー)
森重宏美プロデューサーは「フランスのミキサーの方が『ふだん自分が関わった作品で、こんなに観客みたいに感動することはない。この物語がこれほど心に刺さるとは自分でも驚いた』と話していたのが印象的でした」と振り返る。“映画は国境を超える”ことを、改めて体感させてくれたフランスでの最終の仕上げ作業を経て、ついに本作は完成を迎えた。
横浜ブルク13: 13:45-15:45 (114分)
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/461338.html
国際共同制作ドラマ『マイスモールランド』放送決定!
日本で育った“私”の居場所はどこにあるのか・・・
在日クルド人の女子高生の視点を通して描く すぐそばの物語
“国を持たない世界最大の民族”クルド人。トルコからシリア、イラク、イランにかけて国境を越えて広く暮らすこの民族は、差別や迫害などによりふるさとを追われている。クルド人は日本に2000人以上、その多くが埼玉に住み生活をしているが、難民として認められず、いつ強制退去を命じられるかわからない、不安な毎日を送っている。
番組では、日本で育ったクルド人の女子高校生の姿を通して、自分が何人であるのか?というアイデンティティーへの思いと、日本で暮らし続けることの「困難」や「葛藤」を浮き彫りにしていく。心を開く日本人の少年との交流と未来への希望が、社会によって分断される切ない青春ドラマ。
【第72回ベルリン国際映画祭】にて日本作品で初めてアムネスティ国際映画賞・特別表彰を授与された映画「マイスモールランド」のテレビドラマ版。
【あらすじ】 クルド人の家族とともに生まれたちを離れた後、幼い頃から日本で育ったサーリャ(嵐莉菜)。同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていた彼女と家族は、ある日突然在留資格を失い、これまで当たり前だった日常が一変する。そんな過酷な環境の中でも、アイデンティティーに悩む主人公サーリャが、東京に住む日本人の少年・蒼汰(奥平大兼)との出会いをきっかけに成長していく―。
<嵐莉菜さんコメント>
私が演じるサーリャは、クルド人の家族とともに生まれた場所を離れ、幼い頃から日本で育った女子高生なのですが、同級生と同じような日常を過ごせない環境に葛藤しています。
在留資格を失ってから、不自由な生活を強いられ、家族のためになんとか頑張るサーリャに私自身もとても胸を打たれました。
生活する中で様々な難題がサーリャに降りかかりますが、バイト先で出会う聡太はサーリャにとって大切な存在になります。
聡太と出会ってからのサーリャの成長にも注目して観て頂けると嬉しいです!
<奥平大兼さんコメント>
僕はこの作品を最初に見た時、心の底から多くの方に見てもらいたいと思いました。
なのでこのようにドラマ版で放送させて頂けるのがとても嬉しいです。
僕はこの作
品を通して初めて日本に住んでいるクルドの方々について知ることができました。このようなことが日本で起きているということ、そしてその人達が感じていることも知ることができました。
これらのことを知ることだけでも、『マイスモールランド』を見る意義があると僕は思います。
そして、この作品を見て感じる事は人それぞれだと思います。僕も僕なりに考えることがあるように、見ていただいた皆様にも考えてもらえる機会になればいいなと思います。
<川和田恵真監督コメント>
ドラマ版としてNHKで放送していただくことは、より多くのかたに、身近な環境へ届けられる大変意味のある機会をいただいたと思います。
そして、テレビ画面を通して見ていただく皆さんの個人の生活のなかに、この映画の登場人物たちが生きる。そのことに、純粋な喜びを覚えています。
テレビ放送では、劇場で見るのと違って途中で簡単に止めることもできます。それでも、ラストまでご覧いただきたいと思って私はこの作品を作りました。
ある一人の少女の物語から目を背けないで欲しい、と思います。
そして、私たちの生活のすぐ近くで起きていること、この作品の地続きにある現実を知ってもらう機会になることを願っています。
国際共同制作ドラマ『マイスモールランド』
【放送予定】
2022年3月24日(木)
BS1 (前編)よる8時~8時50分 (後編)よる9時~9時49分
【出演】
嵐莉菜、奥平大兼、平泉成、藤井隆、池脇千鶴、アラシ・カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、韓英恵、サヘル・ローズほか
【制作統括】
藤並英樹
【共同制作プロデューサー】
澁谷悠
【プロデューサー】
倉崎憲・伴瀬萌
【作・演出】
川和田恵真
【国際共同制作】
FILM-IN-EVOLUTION
お知らせ
”日本で育ってきたのに、働けない” クルド人難民申請者のこどもたち
在留資格がないから、しょうがない?(2)国際人権法研究者・阿部浩己さんと考える
在留資格がないから、しょうがない?(1)サヘル・ローズさんの思い
BS1 2022年3月24日(木) (前編)よる8時~8時50分 (後編)よる9時~9時49分
国際共同制作ドラマ「マイスモールランド」
初回放送日: 2022年3月24日
日本で育ったクルド人の高校生の姿を通して、自分が何人であるのか?というアイデンティティーの葛藤と日本で暮らし続けることの「困難さ」を浮き彫りにしていく物語。【第72回ベルリン国際映画祭】にて日本作品で初めてアムネスティ国際映画賞・特別表彰を授与された映画「マイスモールランド」のテレビドラマ版。