『TITANE/チタン』本予告 4.1公開
カンヌ史上最も奇天烈にして、最高賞パルムドール受賞!
2018年『万引き家族』、2019年『パラサイト 半地下の家族』、2020年【開催中止】――
そして2021年、すべての価値観が一変した世界で、カンヌ国際映画祭が頂点に選んだのは、突然変異の如く現れた、まさに【怪物】。新時代の申し子と呼ぶべき圧倒的怪作が2022年、遂に日本でもその全貌を明かす!
監督は、鮮烈なるデビュー作『RAW~少女のめざめ~』(16)で、世界にその名を知らしめたジュリア・デュクルノー。長編2作目にしてカンヌの最高賞を奪取するという偉業を成し遂げた。行先不明の映像体験により困惑と混乱、驚愕を超え、あなた自身の価値観を覆す、未知なる108分の旅。
STORY
幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。彼女はそれ以来車に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──
STAFF
監督・脚本:ジュリア・デュクルノー
CAST
ヴァンサン・ランドン
アガト・ルセル
配給:ギャガ
提供:ギャガ、ロングライド
2022年4月1日(金)新宿バルト9ほか全国公開
公式サイト:https://gaga.ne.jp/titane/
公式twitter:@titane_movie
カンヌ史上最も奇天烈にして、最高賞パルムドール受賞!
幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。彼女はそれ以来車に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴィンセントと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──
監督・脚本:ジュリア・デュクルノー
キャスト: ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル
配給:ギャガ
提供:ギャガ、ロングライド
2022年4月1日(金)新宿バルト9ほか全国公開
https://eiga.com/movie/95183/
「RAW 少女のめざめ」で鮮烈なデビューを飾ったフランスのジュリア・デュクルノー監督の長編第2作。頭にチタンを埋め込まれた主人公がたどる数奇な運命を描き、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた。幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴィンセントと出会う。ヴィンセントは10年前に息子が行方不明となり、現在はひとり孤独に暮らしていた。2人は奇妙な共同生活を始めるが、アレクシアの体には重大な秘密があった。ヴィンセント役に「ティエリー・トグルドーの憂鬱」のバンサン・ランドン。
2021年製作/108分/R15+/フランス・ベルギー合作
原題:Titane
配給:ギャガ
https://ja.wikipedia.org/wiki/TITANE/チタン
公式サイト:https://gaga.ne.jp/titane/
Introduction

2018年「万引き家族」、2019年「パラサイト 半地下の家族」、2020年【開催中止】——
そして2021年、すべての価値観が一変した直後の世界で、カンヌ国際映画祭が頂点に選んだのは、突然変異の如く現れた、まさに【怪物】。新時代の申し子と呼ぶべき圧倒的怪作が2022年、遂に日本でもその全貌を明かす!
監督は、鮮烈なるデビュー作「RAW~少女のめざめ~」(16)で、カンヌ国際映画祭フィプレシ(国際映画批評家連盟)賞に輝いたジュリア・デュクルノー。そして本作、長編2作目にしてカンヌの最高賞を奪取するという偉業を成し遂げた。さらに99ノミネート23受賞(22/02/21時点)と世界各国の映画祭・映画賞を席捲!行先不明の映像体験による困惑と驚愕、感動を超えて、新たな時代を生き抜く存在に、あなた自身が生まれ変わる、未知なる108分の旅。

Story
幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。
彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──
Cast & Staff

1959年7月15日生まれ。80年代には多くの映画で助演をつとめた。ジャン=ジャック・ベネックスの「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」(86)、クロード・ソーテ監督「僕と一緒に幾日か」(88)に出演。89年、その年活躍した若手に贈られるジャン・ギャバン賞を受賞。92年には、コリーヌ・セロー監督「女と男の危機」でセザール賞主演男優賞に初めてノミネートされる。2015年に「ティエリー・トグルドーの憂鬱」でセザール賞主演男優賞、カンヌ国際映画祭男優賞を受賞。98年の「パパラッチ」では、脚本も担当した。近年の代表作に、「君を想って海をゆく」(09)、「母の身終い」(12)、「ロダンカミーユと永遠のアトリエ」(17)がある。

1988年6月14日生まれ。初主演にして、本作が長編映画デビュー作。キャスティング・ディレクターがインスタグラムで発掘した新人である。20代では俳優学校に通っており、2015年には短編映像作品「5 vagues de l ’avenir」(15・未)に出演。女優活動のほか、ジャーナリスト、モデル、写真家として活躍。自身のブランドも立ち上げる。フェミニスト雑誌「Peach」の編集長を務めた経験など、ジェンダーへの造詣も深い。

ラ・フェミス(国立高等映像音響芸術学校)脚本科の卒業。短編映画「Junior」(11・未)がカンヌ国際映画祭の批評家週間に選出されてアンジェで開催されたプレミア部門の観客賞を受賞し、デュクルノーは一躍注目を集めることになった。彼女初の長編映画、「RAW~少女のめざめ~」は2016年のカンヌ批評家週間のコンペティション部門で上映されて衝撃を生み、フィプレシ(国際映画批評家連盟)賞を獲得した。同作品は上映されてさまざまな国際的映画祭(トロント、サンダンス、ジェラールメ、シッチェス)において賞を獲得し、世界中に配給された。デュクルノーは、彼女の2作目の長編映画「TITANE/チタン」で2021年カンヌ国際映画賞の最高賞パルムドールを獲得した。

仏パリ出身。名門ラ・フェミス(フランス国立映像音響芸術学院)で映画制作を学び、2011年に初短編「Junior」を発表する。ベジタリアン一家に育った少女が初めて肉を食べることで変貌していく姿を描いた長編監督デビュー作「RAW 少女のめざめ」(16)で第69回カンヌ国際映画祭の批評家連盟賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭の最優秀長編作品賞ほか、多数の映画祭で受賞を重ねた。長編第2作「Titane」(21)は第74回カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞し、アカデミー賞国際長編映画部門に向けたフランス代表作にも選ばれた。
完全解説ページ
2016年5月、カンヌ国際映画祭での『RAW~少女のめざめ~』(16)との邂逅は事件であり運命だった。繊細で詩的な青春物語にカニバリズムというタブーを融合した独創性に心を掴まれ、アドレナリンが全身を駆け巡り、満席の観客の熱気もリアクションも規格外という極上の映画体験だったからだ。ジュリア・デュクルノー監督の、あの衝撃の傑作デビュー作に続く『TITANE/チタン』がカンヌ映画祭でパルムドール受賞の報を聞いた時、歓喜はしたが驚きはなかった。手前味噌な話で恐縮だが、僕が監督したフレンチホラー・ムーブメントのドキュメンタリー映画『BEYOND BLOOD』(18)で『RAW~少女のめざめ~』を取り上げさせてもらうため、16年10月にパリのカフェでジュリアと対面した。彼女の映画観と嗜好、独創性への強いこだわり、情熱がひしひしと伝わってきた。凄くストイックな人で、よりハイレベルな次回作が生まれるだろうと確信した。そして『TITANE/チタン』を観て圧倒された。新たなるタブーに挑んだ想像を超える飛躍ぶりだったからだ。簡単な映画ではないが、この作品の完全な答えは存在しない。ここでは謎をひも解くためのヒントを書くにとどめたい。このヒントを元に、自分なりの答えを是非見つけてみてください。
小林真里(映画監督/映画評論家)
過去のジュリア監督作品同様、今回も1ワードのこのタイトルを初めて聞いた時「おお、神話の映画なのか」と思ったのを覚えている。ギリシャ神話に登場する巨大な神ティタン(Titan)のことである。これは映画冒頭に登場するチタン(チタニウム)の語源でもあり、ここからすでに神話や神というテーマを匂わせているのだ。ちなみにチタンは生体適合性に優れた金属で、義手や義足、人工骨、インプラントなどの医療機器として使用されている。

冒頭の手術シーンでアレクシアの頭部を金属機器で固定しているシーンは、パスカル・ロジェ監督のエクストリームなフレンチホラー『マーターズ』(08)の冒頭で監禁されている坊主頭の少女を少し想起させるが、アレクシアの頭部に埋め込まれるチタンのメタリックなテイストとデザインは、『エイリアン』(79)に登場するH・R・ギーガーがデザインしたエイリアンを彷彿とさせられる。脳みそとチタンの組み合わせと対比も非常に興味深い。

22分のデビュー短編『Junior』(11・未)、『RAW~少女のめざめ~』、そして『TITANE/チタン』と女性主人公の肉体と精神のトランスフォーメーション(変容)は、ジュリア・デュクルノー作品の普遍的なテーマとして一貫して描かれている。『TITANE/チタン』では主人公アレクシアが肉体的にドラスティックな変化を遂げるが、冒頭のモーター・ショーでダンスをするシーンと、消防隊員たちの前で踊るシーンでの彼女の表情と目の輝きの違いから精神的な変化も見てとれる。これはアレクシアと同様に孤独で、自分を必要としてくれる慈愛に満ちたヴァンサンとの出会いと彼との生活、妊娠が大きく影響を及ぼした結果だろう(そう、『TITANE/チタン』は愛の物語でもあるのだ)。

カテゴライズが困難なジュリア・デュクルノーの映画だが、あえてジャンルに当てはめるとするとボディ・ホラーということになる。ボディ・ホラー(Body horror)はホラー映画のサブジャンルで、視覚的に残酷でグロテスクな、見る者の心を激しくかき乱す人体の破壊や変性を提示する。その恐怖は人体の自然に反する動きや変容、肉体の切断、病気(感染)、そして暴力などを通して幅広く描かれる。代表的な監督としてデヴィッド・クローネンバーグ、スチュアート・ゴードン、フランク・ヘネンロッター、ブライアン・ユズナ、クライヴ・バーカーが挙げられる。

『TITANE/チタン』は、本作の「ショック・バリュー」である車とのセックス(対物性愛=Objectophilia)を見てわかるとおり、ボディ・ホラーのマエストロにしてカナダが産んだ鬼才、デヴィッド・クローネンバーグと、彼の自動車事故へのフェティシズムを題材にした『クラッシュ』(96)からの影響が顕著だ。同作はジュリア監督の思い入れが強い作品だが、他にも胎児が母体を脅かすビザールな恐怖シーンのサイコロジカル面はロマン・ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』(68)を、ビジュアルはクロネーンバーグの『ヴィデオドローム』(83)と『ザ・ブルード / 怒りのメタファー』(79)を、ラストのベイビーは塚本晋也監督の『鉄男 TETSUO』(89)を少し想起させる。また『RAW~少女のめざめ~』の序章ともいえる『Junior』は、クローネンバーグの『ザ・フライ』(86)からの影響が感じられるビジュアルが鮮烈な作品だ。

実は『TITANE/チタン』だけではなく、昨今フランスでは奇しくも対物性愛を題材にした映画が作られ続けている。一本がカンタン・デュピュー監督、ジャン・デュジャルダン、アデル・エネル主演の『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』(19)。鹿革のデザイナージャケットに取り憑かれた男がシリアルキラーに転身する、デュピュー監督らしいシュールで独創的なブラックコメディだ。もう一本が、ノエミ・メルラン主演の『恋する遊園地』(19)。移動遊園地のアトラクションに恋した女性のファンタジックなラヴストーリーで、『TITANE/チタン』よろしく裸の主人公がエンジンオイルにまみれるシーンもある。ちなみに、この二本の主演女優二人はセリーヌ・シアマ監督の傑作ロマンス『燃ゆる女の肖像』(19)で共に主演を務めた。

ジュリア監督は『RAW~少女のめざめ~』のプロモーションの際に「次回作は、女性シリアルキラーについてのジャンル映画になる。とてもダークな作品よ」と話していた。女性シリアルキラーの映画といえば、シャーリーズ・セロンがアカデミー賞主演女優賞を受賞したアイリーン・ウォーノスの伝記的なクライム映画『モンスター』(03)があるが、あまり多くは存在しない(そういえば実在のシリアルキラーは男性が多い)。
『TITANE/チタン』では動機が不明なままアレクシアは残忍な殺人を重ねるが、警察の指名手配から逃れるために行方不明者のアドリアンになりすますところから展開が劇的に変わり、物語は一気に加速する。

『RAW~少女のめざめ~』の主演ギャランス・マリリエは『Junior』『TITANE/チタン』と三作通してジュスティーヌというキャラクターを演じているが、この名前はマルキ・ド・サドの官能的なゴシック文学「美徳の不幸」の主人公ジュスティーヌから取っていると思われる。また『RAW~少女のめざめ~』と『TITANE/チタン』にはアレクシアとアドリアンいうキャラクターも共通して登場し、両作ともオープニングシーンは自動車事故だ。『RAW~少女のめざめ~』でジュスティーヌがベッドの上でシーツに覆われている印象的なシーンがあるが、『TITANE/チタン』でアレクシアが同じようにかぶっているシーツはまったく同じものを使用したという。ジュリア監督はギャランスのことを「とても大切な妹のような存在」と語っており、次回作以降も2人のコラボレーションが見られそうだ。

人間の肉体へのオブセッションもデュクルノー作品の特徴の一つ。特に『TITANE/チタン』では男女問わず多くの裸体が登場する。アレクシアは肉体を武器に踊るダンサーであり、妊娠による肉体の変化をこれでもかと見せつける。フランスを代表する名優、ヴァンサン・ランドン扮するヴァンサンもマッチョなボディを披露しつつ、老化への恐怖から臀部にステロイドを打つ。常に変化する肉体の脆弱性や奇妙な側面もジュリア作品の重要なテーマなのだ。これはジュリア監督の両親が医者であることも影響していると思われるが、そういえば劇中アレクシアの父親は医者であることを示唆している(そういえば『RAW~少女のめざめ~』の主人公の両親は獣医だった)。

男性客ばかりが目立つ序盤のモーターショーのシーンで、人気ショーガールのアレクシアはゴージャスなマッスルカーの上でセクシーなダンスを披露しファンたちを魅了する。「車」はまさに男らしさの象徴であり、『TITANE/チタン』では逆に女性が車を支配することで一般的なイメージを破壊し、ジェンダーというテーマをこれでもかと感じさせる。ちなみにパリジェンヌのジュリア監督は車に興味がなく、自動車免許も持っていない。

映画中盤、火事のシュミレーションのシーンでヴァンサンが幻覚として見る、燃えている謎の子供は、手にロボットのおもちゃを持っていることから、行方不明になった息子アドリアンだと推測できる(アドリアンの部屋にはロボットがたくさん置かれている)。ここからヴァンサンの精神状態をうかがい知ることができるだろう。

ヴァンサンたちが駆けつけた現場で、突然発作で倒れた女性の心肺蘇生を試みるアドリアンにアドバイスを施すヴァンサンが、心臓マッサージのリズムの参考例として歌い出す曲が「恋のマカレナ」(Macarena)。1996年にアメリカのビルボード TOP100でナンバー1を記録するなど世界的に大ヒットした、1962年に結成されたスペイン人デュオ、ロス・デル・リオのキャッチーなダンスナンバー。

ジュリア・デュクルノー作品に欠かせないのがセンス光るユーモア。過激でショッキングな作品だけに、それをバランス良く中和するユーモアの要素が必要になる『TITANE/チタン』は、過去のジュリア監督作以上にユーモラスなシーンが多いと感じた。まず冒頭のシャワーシーンで、アレクシアの髪がジュスティーヌの胸ピアスに引っかかる場面は痛々しくもユニークでセンセーショナル。「マカレナ」のあの名シーンも意表を突かれる。そして、映画の一番のサプライズである衝撃のエンディングに思わず笑ってしまう人もいるかも?

この奇跡の赤ん坊だが、『Junior』『RAW~少女のめざめ~』に続き本作でもスペシャル・エフェクトを担当したフランス映画界の第一人者にして映画監督でもある、オリヴィエ・アフォンソに、どのように創り上げ撮影したのか聞いたところ「フェイクの赤ちゃんとCGのミックスだよ」と教えてくれた。

件の消防署のダンスシーンで、フロアにいるアドリアンの目に一瞬、顔に火傷を負った恨めしそうな男の姿が映る。これはアドリアンの正体に気づいていた、同僚のライアンだろう。山火事の消火活動のシーンで爆発音がした後、苦しそうに息をしながら倒れている誰かをヴァンサンが見つめている場面があったが、あれはライアンであり、姿を現したのは命を落とした(事故死?それとも…)彼の亡霊なのかもしれない。

背骨と右側頭部にチタニウムが見える人間と金属の融合のような赤ん坊が誕生する衝撃のエンディング。これは聖書的なイメージといっていいだろう。赤ん坊を抱くヴァンサンの姿は神々しく、背景では荘厳で宗教的な音楽が流れている。処女懐胎をしたアレクシアは聖母マリアであると同時に、救世主イエス・キリストなのかもしれない。映画中盤、消防隊員たちの前でヴァンサンはこう言い放ったではないか。「私は神だ。息子はイエス・キリストだ」。これは新しい人類の誕生を示唆しているのかもしれない。

消防車の上でダンスを披露するアドリアンと、それを見つめる若いマッチョな消防隊員の男たち。このシーンはイタリアの鬼才、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の代表作の一つで、テレンス・スタンプ主演『テオレマ』(68)で女性が屋根の上で奇跡的に宙に浮かび、村人たちがそれを目撃するシーンを少し彷彿とさせる。そういえば『RAW~少女のめざめ~』にも、パゾリーニのセンセーショナルなアート・ホラー『ピエル・パオロ・パゾリーニ/ソドムの市』(75)からの影響を感じさせるシーンがあった。

主演アレクシア役に抜擢されたのが、これが演技初挑戦となったアガト・ルセル。モデル業ほか様々な職を転々としてきた彼女のアンドロギュノスなルックスは、アレクシア/アドリアンという二つの性を一人で演じるにはうってつけだった。フィジカル的に非常にハードで、寡黙なためセリフも少ない分、多彩な表現力が必要になる難役を見事にこなした。彼女はなんとインスタグラムを通じて、突然オーディションのメッセージをもらったという。

アレクシアの父親役で出演しているベルトラン・ボネロの本業は、実は映画監督。『サンローラン』(14)、ホラードラマ『Zombie Child』(19・未)といった作品でメガホンを取り、今年2月のベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映された最新作『Coma』(22)は、ロックダウン下のパリに住むティーン女子の葛藤を描きつつ、時々アニメになったり、バービー人形が近親相姦をしたりする実験的な作品。悪夢と辺獄を繋げるなど全体的にダークなテイストながらも、ラストには希望のメッセージが込められている。劇中、6人の少女がZoomでお気に入りのシリアルキラーについて語り合うシーンは『TITANE/チタン』に出演した影響か。次回作はレア・セドゥー主演のSF『La Bête』。

ジュリア監督が『TITANE/チタン』を製作する上でインスピレーションを受けた映画として具体的に挙げたのが、意外にもサム・メンデス監督の戦争映画『1917 命をかけた伝令』(19)。さらにアメリカを震撼させたシリアルキラー、ヘンリー・リー・ルーカスを題材にした『ヘンリー』(86)からの影響についても言及している。またカラヴァッジオの数々の絵画や、ウィンスロー・ホーマーの「夏の夜」、マグリットの代表作の一つ「光の帝国」といった絵画も参考にしたという。

『TITANE/チタン』の全米配給を手がけたのが、ニューヨークを拠点にしたインディペンデントの製作・配給会社、NEON。カンヌでパルムドールに輝き、アカデミー賞で作品賞を含む4部門に輝いたポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』(19)や、セリーヌ・シアマ監督『燃ゆる女の肖像』、本年度アカデミー賞で脚本賞と国際長編映画賞にノミネートされた『わたしは最悪。』(21)といった話題作を全米配給するなど、『ミッドサマー』(19)や『ライトハウス』(19)のA24の最大のライバルとも言える映画会社だ。NEONは映画の撮影が始まるかなり前、2019年9月に『TITANE/チタン』の全米配給権を獲得した。

T・ジョイPRINCE 品川: 17:05-19:00 (108分)
RAW 少女のめざめ (吹替版)
姉と同じ獣医科大学に入学したジュスティーヌに、上級生による新入生歓迎のハードな儀式としごきの日々が始まる。手荒い歓迎の一環として、全身に動物の血を浴びせられ、ベジタリアンであるにもかかわらず、うさぎの生の腎臓を強制的に食べさせられた彼女は、今までにない異変を感じ始め、次第に自分の内に秘めた恐ろしい本性と秘密に気づいていく……。 – ( 原作 – Raw )
提供元
NBC Universal Asia
レーティング
R15+
公開日
2018年
再生時間
1:38:33
音声
日本語
字幕
利用できません
俳優
ガランス・マリリエール
エラ・ルンプフ
ラバ・ナイト・ウフェラ
ローラン・リュカ
監督
ジュリア・デュクルノー
プロデューサー
ジャン・デ・フォレ
ジュリー・ガイエ
ナディア・トリンチェフ
脚本家
ジャン=イブ・ルバン
ジャンル
ホラー
インディペンデント
支援する
YouTube ヘルプセンター
https://youtu.be/dx39U168iLQ
映画『RAW〜少女のめざめ〜』日本版予告
https://youtu.be/hVPWx6Z9zFU
【町山智浩の映画時評】失神者続出映画~『RAW』~
町山智浩さんが『RAW』の解説をしています。世界各国の映画祭で失神者が続出し、昨年のカンヌ国際映画祭で終映後に5分間にも渡るスタンディングオベーションを巻き起こしたという話題作。フランス人女性監督Julia Ducournau(ジュリア・デュクルノー)の長編デビュー作です。
(「たまむすび」アメリカ流れ者より)
【ヤバい映画】これを見れば「TITANE/チタン」を100倍楽しめる!【映画紹介】
RAW 〜少女のめざめ〜 でおなじみの
ジュリア・デュクルノー監督の最新作、
パルム・ドール受賞の映画「TITANE/チタン」。
これを見れば、
頭にチタンを埋め込まれた女性の物語、
「TITANE/チタン」を100倍楽しめます!
チタン
https://ja.wikipedia.org/wiki/チタン
https://kotobank.jp/word/チタン-96218