映画『金の糸』予告編
『金の糸』
原題:OKROS DZAPI
英題:THE GOLDEN THREAD
上映期間:2022年2月26日(土)~2022年4月15日(金)
女性作家エレネとその人生に関わった人々の過去、そしてソウィエト連邦下の記憶。
伝説的な女性監督ラナ・ゴゴベリセが91歳にして、日本の“金維き”に着想を得て描いた過去との和解の物語。
トビリシの旧市街の片隅。作家のエレネは生まれた時からの古い家で娘夫婦と暮らしている。今日は被女の79歳の誕生日だが、家族の誰もが忘れていた。娘は、姑のミランダにアルツハイマーの症状が出始めたので、この家に引っ越しさせるという。ミランダはソヴイェト時代、政府の高官だった。そこへ、かつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話がかかってくる。やがて彼らの過去が明らかになり、ミランダは姿を消す・・・。
3人を結ぶ過去が語られ、ソヴィエト連邦下の記憶が重ねあわされていく。ジョージアの伝説的女性監督ラナ・ゴゴべリゼ’が、自身の過去を投影し、91歳にして発表した過去との和解の物語である。音楽は2019年に亡くなった世界的作曲家ギヤ・カンチェリ、映画監督でもあるナナ・ ジョルジャゼが主演のエレネを演じている。
監督・脚本
ラナ・ゴゴベリゼ
2019年/ジョージア=フランス映画/ジョージア語/91分/カラー/配給:ムヴィオラ
https://eiga.com/movie/96080/
ジョージア映画界を代表する女性監督ラナ・ゴゴベリゼ監督が、日本の陶器の修復技法「金継ぎ」に着想を得て、過去との和解をテーマに描いた人間ドラマ。ジョージア・トビリシの旧市街の片隅にある古い家で娘夫婦と暮らす作家のエレネは、79歳の誕生日を迎えたが、そのことを家族の誰もが忘れていた。娘は姑のミランダにアルツハイマーの症状が出始めたため、この家に引っ越させて、一緒に暮らすという。ミランダは、ジョージアのソビエト時代に政府の高官だった女性だ。そんなエレネの誕生日に、かつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話がかかってくるが……。
2019年製作/91分/G/ジョージア・フランス合作
原題:Okros dzapi
配給:ムヴィオラ
公式サイト:http://moviola.jp/kinnoito/
解説&物語
女性作家エレネとその人生に関わった人々の過去、
そしてソヴィエト連邦下の記憶。
伝説的な女性監督ラナ・ゴゴベリゼが91歳にして、
日本の“金継ぎ”に着想を得て描いた過去との和解の物語。
トビリシの旧市街の片隅。作家のエレネは生まれた時からの古い家で娘夫婦と暮らしている。今日は彼女の79歳の誕生日だが、家族の誰もが忘れていた。娘は、姑のミランダにアルツハイマーの症状が出始めたので、この家に引っ越しさせるという。ミランダはソヴィエト時代、政府の高官だった。そこへかつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話がかかってくる。やがて彼らの過去が明らかになり、ミランダは姿を消す……。
3人を結ぶ過去が語られ、ソヴィエト連邦下の記憶が重ねあわされていく。ジョージアの伝説的女性監督ラナ・ゴゴベリゼが、自身の過去を投影し、91歳にして発表した過去との和解の物語である。音楽は2019年に亡くなった世界的作曲家ギヤ・カンチェリ、映画監督でもあるナナ・ジョルジャゼが主役のエレネを演じている。
トビリシ、という古都への
ラブレター
映画の舞台は、かつてグルジアと呼ばれていたジョージアの首都、トビリシ。旧市街の古い石畳から一歩中に入ると、中庭をかこむように古い木造の集合住宅がある。住人たちは中庭を囲んでいまだ人情を感じさせる付き合いをしている。そこに主人公エレネの家がある。この中庭をうまく生かした作劇と撮影の見事さも本作の大きな魅力の一つである。
ラナ・ゴゴベリゼ監督 Lana Gogoberidze 1928年10月13日生
監督プロフィール
ジョージアを代表する映画監督の1人。1928年、貴族の出身でボリシェヴィキの政治家であった父レヴァン(1896−1937)と、
ジョージア映画黎明期の女性監督である母ヌツァ(1903−1966)の間に生まれる。
母ヌツァは1934年『ウジュムリ(Uzhmuri)』を発表。ジョージア初の女性監督による長編映画となった。父レヴァンはグルジア社会主義ソヴィエト共和国人民委員会議副議長(1923−1924)、グルジア共産党中央委員会第一書記(1930)などを歴任した政治家だったが、1937年にスターリンの大粛清により処刑された。それに伴い母ヌツァも逮捕され、およそ10年もの間、極寒地の強制収容所に流刑された。残されたラナは孤児院に収容されたのち、おばに引き取られ育てられ、成長後、強制収容所から帰還した母と再会する。
ラナは、トビリシ国立大学で哲学と英米文学を学び、1950年に卒業後、教職につく一方で翻訳家としても活躍。その後、モスクワの全ソ国立映画大学(VGIK、現・全ロシア国立映画大学)に進学。卒業後は故郷に戻り、ジョージア映画スタジオで勤務した。1961年には初の長編作品『同じ空の下で』を発表し、以降およそ60年のキャリアの中で10本以上の作品を監督する。多くの作品でジョージアの近代史・社会とそこに生きる女性の人生を重要なテーマとしており、キラ・ムラートワやラリーサ・シェピチコとともにソ連体制下の「女性映画」監督として知られた。
特にジョージア社会における女性たちの生きづらさを描いた『インタビュアー』(1978)は高く評価され、西側世界でも広く名前が知られるようになる。1984年にはベルリン映画祭の審査員を務め、1986年の『転回』は東京国際映画祭で最優秀監督賞を受賞し、来日も果たしている。1988年にジョージア・フィルム撮影所所長に就任。さらに映画業界における女性のさらなる進出を目指す団体「キノ・ウーマン・インターナショナル(KIWI)」の初代代表を務めた。
1991年にソ連が崩壊し、ジョージアは独立を果たす。その翌年に公開された『ペチョラのワルツ』以降、ラナは長く映画製作から離れた。1992年から1998年まで、2期連続でジョージア国会議員に選出され、1999年から2004年まではジョージアの欧州議会大使、2004年には駐仏ジョージア大使に任じられた。2015年にはジョージア映画への長年の貢献を認められ、トビリシ映画祭でプロメテウス賞を受賞。そして2019年、27年の沈黙を破って本作『金の糸』を発表した。
私生活ではトビリシ・スポーツ・パレスなどの建築で知られる建築家ヴラディメル・アレクシ=メスヒシヴィリ(1915−1978)と結婚し、二女をもうける。そのうちの1人、本作のプロデューサーでもあるサロメ・アレクシ(1966−)も映画監督として活躍しており、ゴゴベリゼ家の女性監督の系譜を継いでいる。
フィルモグラフィー(監督作)
1958 Gelati(ゲラティ)Gelati
1959 Tbilisi 1500 tslisaa(トビリシ、1500年)Tbilisi, 1500 years
1961 Erti tsis kvesh(同じ空の下で)Under One Sky
*初の長編映画
1965 Me vkhedav mzes(太陽が見える)I See the Sun
1968 Peristsvaleba(変容)Limits
1972 Rotsa akvavda nushi(アーモンドの花咲く頃)When Almond Blossomed
*全ソ連映画祭 最優秀監督賞(1973)
1975 Aurzauri salkhinetshi(大騒ぎ)Commotion
1978 『インタビュアー』
Ramdenime interviu pirad sakitkhebze
(個人的な問題についてのいくつかのインタビュー)
Some Interviews on Personal Matters
*サンレモ国際映画祭 グランプリ(1979)
*全ソ連映画祭 最優秀映画賞(1979)
*ソヴィエト連邦国家賞(1980)
1984 Dges game utenebia(夜より長い昼)Day Is Longer Than Night
第37回カンヌ映画祭 コンペティション部門出品(1984)
1986 『転回』Oromtriali(騒動)Turnover
*第2回東京国際映画祭 最優秀監督賞(1987)
1992 Valsi Pechoraze(ペチョラのワルツ)A Waltz on the Pechora
*第49回ヴェネチア国際映画祭 コンペティション部門出品(1992)
*第43回ベルリン国際映画祭 フォーラム部門エキュメニカル審査員賞(1993)
2019 『金の糸』Okros dzapi(金の糸)Golden Thread
※日本公開されたものは『』で上映時の邦題を記し、未公開のものはアルファベット表記の原題、その訳、英語題を記した。
キャスト
* エレネ ナナ・ジョルジャゼ Nana Djordjadze
* ミランダ グランダ・ガブニア Guranda Gabunia
* アルチル
ズラ・キプシゼ
* Zura Kipshidze
キーワード
金継
きんつ
ぎとは、割れや欠け、ヒビなどの陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる日本の伝統的な修復技法である。金繕
きんつくろ
いとも言う。破損部を漆で修復した痕跡は縄文土器にもみられるが、室町時代以降、蒔絵など漆を使う工芸技術と、修理した器もありのまま受け入れる茶道精神の普及により、金継ぎに芸術的な価値が見いだされるようになった。本阿弥光悦作の赤楽茶碗(銘「雪峰」)のように、文化財に指定されたり、骨董として珍重されたりする金継ぎ陶磁器もある。現代においても、愛用の器を修理して長く使い続けたり、金継ぎの過程や跡をアートとして楽しんだりするために、趣味として楽しむ人も多く、金継ぎ教室は人気が高い。
本作中でエレネの部屋に飾られている「金継ぎ」アートについて
映画に登場するのは「金継ぎ」アート作品で、英国ブライトンを拠点とする芸術家シャーロット・ベイリーによるもの。これは、金継ぎとダーニング(繕い・かがりもの)のハイブリッドアートで、壊れた各部分を布で包み、金の金属糸を使用してそれらの部分を丹念にパッチワークしている。
ジョージアという国
ジョージア(英語名称Georgia)はユーラシア大陸の奥深く、コーカサス山脈の南に位置する、人口およそ400万の国。南北を山々に囲まれ、西は黒海に面している。ヨーロッパとアジアの間に位置するこの国は、古くからキリスト教圏とイスラーム圏の双方の文明の交差点となりつつも、独自の文化を守ってきた。日本における国名呼称は、2015年4月22日以降「グルジア」から「ジョージア」へ変更となった。ジョージア語の国名は「サカルトヴェロ」である。世界最古のワイン生産地ともいわれ、ワインのみならず豊かな食文化がある。また多くの詩人を輩出する文化の国でもあり、美術の分野では映画にもなった画家ピロスマニがよく知られる。独自の舞踊や多声合唱をはじめとする音楽も有名。スポーツの分野ではラグビーやサッカー、また日本では栃ノ心など大相撲でもジョージア出身力士が活躍している。

■ 基本データ
首都 トビリシ
貨幣 ラリ(₾)
*1ラリ=約36円(2021年11月現在)
面積 69,700㎢ (日本の約5分の1)
公用語 ジョージア語 *およそ1600年以上の歴史を持つ、独自の文字で書かれる
最大の宗教 ジョージア正教
民族 カルトヴェリ系 (86.8%)、アゼルバイジャン系 (6.2%)、アルメニア系 (4.5%)、ロシア系 (0.7%)、オセチア系 (0.4%) (2014年、ジョージア国勢調査)
トビリシ旧市街
首都トビリシの南北に広がる街の南側が旧市街、北側が新市街。新市街はヨーロッパ調のメインストリートを中心とする一帯。旧市街には、庶民的なたたずまいの路地や中庭を囲んで隣近所が仲良く暮らすトビリシの日常がある。映画の中でエレネが暮らす古い家は、伝統的な集合住宅で、中庭があり、住民たちは親密な関係を築きながら暮らしている。
岩波ホール:15:30-17:01 (91分)
https://www.iwanami-hall.com/movie/thegoldenthread
https://www.iwanami-hall.com/
https://tabicoffret.com/article/80040/index.html
『ジョージア映画祭2022』映画王国ジョージアの歴史的作品を一挙上映中!(2022年2月25日まで)