映画『ドリームプラン』日本版予告 2022年2月23日(水・祝)公開
ウィル・スミス主演最新作!アカデミー賞Ⓡ6部門ノミネート!
世界最強の姉妹を育てた父親の<驚きの実話>
テニス未経験の父親が立てた常識破りの計画とは!?
過去に2度アカデミー賞®にノミネート、人気、実力共にトップのハリウッドスター、ウィル・スミス自身が主演、プロデューサーを務める最新作『ドリームプラン』が、2022年2月23日(水・祝)より、全国公開!
世界最強のテニスプレーヤーとも称されるビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を、ゼロからテニスのワールドチャンピオンに育て上げたテニス未経験の父リチャードが独学で作り上げた「計画書=ドリームプラン」にまつわる<驚きの実話>。2022年第94回アカデミー賞®最有力と早くも注目されている。
姉妹の実父、リチャードは彼女たちが生まれる前にTVで優勝したテニスプレーヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿を見て、「子どもを最高のテニスプレーヤーにしよう!」と決意。テニス未経験にも関わらず、独学でテニスの教育法を研究し、78ページにも及ぶ成功への計画書を作成。誰もが驚く常識破りの“ドリームプラン”を実行した。ギャング蔓延るロサンゼルス郡南部・コンプトン市の公営のテニスコートで、リチャードは途方もない苦難、周りから批判を受けながらも、数々の問題を乗り越え、娘たちを史上最強のプロテニスプレイヤーに育て上げていくー。父の指導のもと、ウィリアムズ姉妹がいかにしてその才能を開花させ、世界の頂点へ上りつめたのかー⁉揺るがぬ信念と子供たちの可能性に人生のすべてを捧げ、不可能を可能にするリチャードの姿が心を揺さぶる感動作。
リチャード・ウィリアムズを演じたウィル・スミスの演技に海外メディアは大きく注目。鑑賞した批評家たちは、「ウィル・スミスはアカデミー賞Ⓡ受賞確実!」(Los Angeles Times)、「本作のウィル・スミスを打ち負かすのは、困難だ。」(The Hollywood Reporter)など、彼の演技を大絶賛。『ALI アリ』、『幸せのちから』に続いて、3度目のアカデミー主演男優賞ノミネートが確実視されている。また本作は、全米最大映画レビューサイト Rotten Tomatoesで92%(2021/10/12時点)と高評価を獲得。「心を掴んで離さない映画。」(Vanity Fair)、「今年の最高作のひとつ。」(Awards Daily)、「今年最も心温まる作品。」(Black Film & TV)と、数多くの評論家のハートをつかんでおり、主演男優賞だけでなく、作品賞へのノミネーションにも期待がかかる。今後の賞レースの行方からも、目が離せない2022年最重要映画の1本。
■映画『ドリームプラン』2022年2月23日(水・祝)全国公開
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/dreamplan
製作:ウィル・スミス、ティモシー・ホワイト、トレバー・ホワイト、セリーナ・ウィリアムズ、ビーナス・ウィリアムズ
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
脚本:ザック・ベイリン 撮影:ロバート・エルスウィット(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)
出演:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン、ジョン・バーンサル
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
映画『ドリームプラン』US版予告 2022年2月23日公開
https://eiga.com/movie/92519/
ウィル・スミスが主演・製作を務め、世界最強のテニスプレイヤーと称されるビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てあげたテニス未経験の父親の実話を基に描いたドラマ。リチャード・ウィリアムズは優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見て、自分の子どもをテニスプレイヤーに育てることを決意する。テニスの経験がない彼は独学でテニスの教育法を研究して78ページにも及ぶ計画書を作成し、常識破りの計画を実行に移す。ギャングがはびこるカリフォルニア州コンプトンの公営テニスコートで、周囲からの批判や数々の問題に立ち向かいながら奮闘する父のもと、姉妹はその才能を開花させていく。2022年・第94回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞(ウィル・スミス)、助演女優賞(アーンジャニュー・エリス)ほか計6部門にノミネートされた。
2021年製作/144分/G/アメリカ
原題:King Richard
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督
Reinaldo Marcus Green
出身アメリカ/ニューヨーク
米ニューヨーク州スタテン島出身。大学で教育学を専攻し、ウォールストリートで働いた後にニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アーツで映画制作を学ぶ。2011年から短編映画を制作しはじめ、ブルックリンで起きた警官による黒人銃撃事件を題材にした長編監督デビュー作「Monsters and Men」(18)でサンダンス映画祭の特別審査員賞を受賞。その後、ロンドンの麻薬密売人を主人公に据えたNetflixドラマシリーズ「トップボーイ」(19)で3エピソードの監督を手がける。21年には、ウィル・スミスが主演・製作を務め、女子テニスプレイヤーのビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を育てあげた父親の実話を描いた映画「ドリームプラン」のメガホンをとった。
Will Smith
ウィラード・クリストファー・スミス・ジュニア
The Fresh Prince誕生日
1968年9月25日
出身アメリカ/フィラデルフィア
幼少期からラップ・ミュージックに親しみ、1986年、ジェフ・タウンズとDJジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスを結成、プリンスの愛称で瞬く間に人気者となる。90年にはテレビ界に進出し、「ハートブレイク・タウン」(92)で映画デビュー。マイケル・ベイ監督の「バッドボーイズ」(95)に主演し、トップスターとなる。以降、「インデペンデンス・デイ」(96)や「メン・イン・ブラック」3部作(97~12)、「アイ・アム・レジェンド」(07)などの大ヒット作に主演し、最も稼げる黒人ハリウッドスターとして活躍。実在の伝説的ボクサーを演じた「ALI アリ」(01)と、息子ジェイデン・スミスと初共演した「幸せのちから」(06)で2度オスカーの候補となる。近年の主演作に「コンカッション」(15)、「スーサイド・スクワッド」(16)、「アラジン」(19)など。「ドリームプラン」(21)では、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てあげたテニス未経験の父親役を演じ、第94回アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ドリームプラン
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/dreamplan/
全米映画俳優組合賞(SAGアワード)でウィル・スミス《主演男優賞》受賞!
ウィリアムズ家族を熱演したキャストが語る『ドリームプラン』特別映像解禁!
本日発表された全米映画俳優組合賞(SAGアワード)にて、ウィル・スミスが見事《主演男優賞》を受賞!
母オラシーン役のアーンジャニュー・エリスをはじめとする共演キャストやビーナス・ウィリアムズ、製作を務めたウィリアムズ家の長女イシャ・プライスが見守る中、涙で言葉を詰まらせながらも「おそらく今は僕のキャリアの中で一番素晴らしい瞬間です。僕が演じたリチャード・ウィリアムズは他に類を見ないドリーマーです。彼は一見破天荒とも思える事でも信じ続ける力を持っていた。それはまさに、ありえないことを可能にするために必要不可欠なことです。」とリチャードについて言及したのち、キャストやウィリアムズ一家に対し、「アーンジャニュー、君は毎日本物を追い求め、本当に美しく寡黙でパワフルに、オラシーンの素晴らしい正義を表現しました。そしてサナイヤ、デミ、君たち二人の若い女優と共演できたのは本当に光栄でした。彼女たちとの共演は僕の人生の中でも最も素晴らしいもののひとつになりました。ビーナスとセリーナ、ウィリアムズ一家は私やチーム、ストーリーを信じてくれました。心からウィリアムズ一家に感謝し、この素晴らしい家族の物語を世に広められたことを本当に誇りに思います。ありがとうございます!」と感謝と喜びのコメントを語りました。
ノミネートされている作品賞を含むアカデミー賞主要6部門の受賞へ期待も高まる中、キャストが撮影を振り返る特別映像が到着しました。テニス界最強姉妹の破天荒な父を体現し3度目のアカデミー・ノミネートとなったウィル・スミスをはじめ、母オラシーンを演じアカデミー賞【助演女優賞】にノミネートされたアーンジャニュー・エリス、テニス界最強姉妹ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を演じたサナイヤ・シドニー、デミ・シングルトンらの演技と、ウィリアムズ家の絆に迫る内容となっています。
「爽快な物語展開で自然と涙が…大傑作!」絶賛の声続出で大ヒット上映中!
“お前は史上最高の選手になる かつてない偉大な選手に”
父が娘の未来を予言する本編映像解禁
「大傑作」「胸が熱くなる」「本物の愛を感じた」…待望の公開を迎えた本作が日本列島を熱い感動で包む中、姉ビーナスの活躍を複雑な心情で見つめる妹セリーナに父リチャードが語りかける感動の本編映像が解禁しました。
Twitter では「爽快な物語展開で、自然と涙が…大傑作!」「笑いあり、涙ありであっという間だった」「エンドクレジットで我慢できずに(涙が)溢れ出た」と感動の涙が溢れた人や、「みんなに勇気と夢を与えた家族の物語に乾杯」「娘の人生を全力で応援する姿に親としての本物の愛を感じた」「夢に向かって諦めずに戦う姿には胸が熱くなる」「愛と努力の限界突破劇!」「頑張り続けている人に是非見てほしい」など、自分と家族を信じ、練習を続けた父と姉妹、家族の奮闘に心を揺さぶられたという絶賛の声が発信されています。
感動が吹き荒れる中、父リチャードが妹セリーナの未来を予言する本編映像が解禁されました。コーチによる練習もプロデビューも、常に優先される姉ビーナスが出場する試合会場を羨望の眼差しで見つめている妹セリーナに父リチャードが語りかけるシーン。
セリーナに、「お前は、史上最高の選手になる。かつてない偉大な選手に。パパはお前のためにもプランがある」と娘の未来を予言し、娘の心を読み取るかのように「よく見ておけ。次はお前だ」と、姉の活躍を胸に刻めと励ますリチャード。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたウィル・スミスの渾身の演技が垣間見えます。
リチャードが驚きの“ドリームプラン”語る、物語の導入部分となる本編映像到着!!
今回、テニス未経験でテニス界最強姉妹を生み出した父リチャードが、パンフレット片手に姉妹を売り込む、物語の導入部分となる本編映像が到着しました!
「トレーニングや指導のためクラブが必要なんです。“神童”の娘たちを一流のプロにするために」とテニス経験なし、独学で2人の娘を世界最強選手に育て上げる計画に挑戦する父リチャードは、自作のパンフレットで姉妹を売り込みますが、指導者たちはありえない、ばかげていると、耳を貸しません。「娘たちの誕生前に78ページのプランを書いた」、「1977年、テニスの試合を見た。バージニア・ルジッチ選手が4日間で4万ドルも稼いだ。当時俺の年収は5万2000ドル。職業を間違えたよ。その夜女房に言った。“あと2人子供を持とう”」と、姉妹が生まれる前に「計画書」=“ドリームプラン”を作ったことを明かします。「きっとあなたは“ゲットー出身の一家だ。金はない”と思ってる」、「心配いらない。あなたを金持ちにする」と、畳みかけますが、当時富裕層かつ白人のスポーツだったテニスの世界。黒人が多く活躍する「バスケにしとけ」と突き放されてしまいますが、リチャードは信念を貫きます。
誰も信じなかった“常識破りのドリームプラン”とは!?
過去に2度アカデミー賞®にノミネート、人気、実力共にハリウッドのトップを極めたウィル・スミスの最新作『ドリームプラン』。彼が映画化を熱望したのは、世界最強のテニスプレイヤー、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育て上げた実父リチャードの「計画書=ドリームプラン」にまつわる〈驚きの実話〉。
リチャードは姉妹が生まれる前にTVで優勝したテニスプレーヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿を見て、「娘を最高のテニスプレイヤーにしよう!」と決意。テニスの教育法を独学で研究し、「世界チャンピオンにする78ページの計画書」を作成。誰もが驚く常識破りの“ドリームプラン”を実行し続けた。お金もコネもない劣悪な環境下で、途方もない苦難、周りからの批判を受けながらも、そのプランでいかにして2人の娘が世界の頂点へ上りつめるのか―― ⁉ どんなに無謀だと言われても揺るがぬ信念を持ち、娘たちの可能性に人生のすべてを捧げるリチャード。不可能を可能にしていくその姿に心を揺さぶられる、一生忘れられない感動作。2022年の第94回アカデミー賞®最有力として注目されている。
「俺は2人の娘を世界チャンピオンにする78ページの計画書を書いた。2人が生まれる前にね」
Story
2人の娘を世界最強のテニスプレイヤーに育てる夢を持つ破天荒な父親リチャード。テニス未経験の彼は、娘たちが生まれる前から「常識破りの計画=ドリームプラン」を独学で作成。
その無謀なプランと娘たちの可能性を信じ続けた父は、どうやって2人の世界チャンピオンを誕生させたのか?
CAST
ウィル・スミス(リチャード・ウィリアムズ)
WILL SMITH (Richard Williams)
俳優/プロデューサー/ミュージシャン。2度の米アカデミー賞ノミネート歴をもち、グラミー賞と全米黒人地位向上協会(NAACP)イメージ・アワードを受賞している。映画、TV、複数のプラチナレコードを保持する音楽の世界などで幅広く活躍し、華々しいキャリアを築いている。2019年にメディア会社ウエストブルック社を立ち上げ、アーティストがストーリーを語り、世界中の視聴者とつながりをもつことを応援するプロジェクトに力を入れている。
1985年にラッパーとしてキャリアをスタート。俳優としてはTVシリーズ「The Fresh Prince of Bel-Air」(90~96)の全148エピソード、『最後の恋のはじめ方』(05)、『アイ・アム・レジェンド』(07)、映画「バッドボーイズ」シリーズ(95,03,20)、「メン・イン・ブラック」シリーズ(97,02,12)、『アラジン』(19)などでよく知られている。数々の出演映画には、斬新な演技で実在の象徴的な人物を演じた『ALI アリ』(01)、『幸せのちから』(06)と『コンカッション』(15)がある。『ALI アリ』と『幸せのちから』では米アカデミー賞にノミネートされた。最近では、20年の最高興収を記録したヒット作『バッドボーイズ フォー・ライフ』(20)に出演し、製作も担当。また、番組開始から30年後に再会を祝い、感動を呼んだHBO Maxの特別番組「The Fresh Prince of Bel-Air Reunion」(20)でも製作と出演を兼ねた。さらに、アメリカ合衆国憲法修正第14条をめぐり、現代の思想的指導者や専門家が掘り下げ、意見を交わすNetflixの6部構成のドキュメンタリーシリーズ「自由の国アメリカ:闘いと変革の150年」(21)では製作総指揮と司会を務めた。
現在、アントワーン・フークアが監督し、自身のウエストブルック・スタジオが製作するApple TV+のアクションサスペンス「Emancipation」の撮影に入っている。ウエストブルック社は、ウエストブルック・スタジオ/ウエストブルック・メディア/デジタル・コンテンツ・スタジオ/ソーシャル・メディア・マネージメウィル・スミス(リチャード・ウィリアムズ)
WILL SMITH (Richard Williams)
俳優/プロデューサー/ミュージシャン。2度の米アカデミー賞ノミネート歴をもち、グラミー賞と全米黒人地位向上協会(NAACP)イメージ・アワードを受賞している。映画、TV、複数のプラチナレコードを保持する音楽の世界などで幅広く活躍し、華々しいキャリアを築いている。2019年にメディア会社ウエストブルック社を立ち上げ、アーティストがストーリーを語り、世界中の視聴者とつながりをもつことを応援するプロジェクトに力を入れている。
1985年にラッパーとしてキャリアをスタート。俳優としてはTVシリーズ「The Fresh Prince of Bel-Air」(90~96)の全148エピソード、『最後の恋のはじめ方』(05)、『アイ・アム・レジェンド』(07)、映画「バッドボーイズ」シリーズ(95,03,20)、「メン・イン・ブラック」シリーズ(97,02,12)、『アラジン』(19)などでよく知られている。数々の出演映画には、斬新な演技で実在の象徴的な人物を演じた『ALI アリ』(01)、『幸せのちから』(06)と『コンカッション』(15)がある。『ALI アリ』と『幸せのちから』では米アカデミー賞にノミネートされた。最近では、20年の最高興収を記録したヒット作『バッドボーイズ フォー・ライフ』(20)に出演し、製作も担当。また、番組開始から30年後に再会を祝い、感動を呼んだHBO Maxの特別番組「The Fresh Prince of Bel-Air Reunion」(20)でも製作と出演を兼ねた。さらに、アメリカ合衆国憲法修正第14条をめぐり、現代の思想的指導者や専門家が掘り下げ、意見を交わすNetflixの6部構成のドキュメンタリーシリーズ「自由の国アメリカ:闘いと変革の150年」(21)では製作総指揮と司会を務めた。
現在、アントワーン・フークアが監督し、自身のウエストブルック・スタジオが製作するApple TV+のアクションサスペンス「Emancipation」の撮影に入っている。ウエストブルック社は、ウエストブルック・スタジオ/ウエストブルック・メディア/デジタル・コンテンツ・スタジオ/ソーシャル・メディア・マネージメント/クリエイティブ・ブランド・インキュベーター/直接販売会社グットグッズを傘下に置いている。妻とともに、ウィル・アンド・ジェイダ・スミス・ファミリー・ファウンデーションを設立し、都心部過密地域のコミュニティ開発、青少年教育プロジェクト、恵まれない子どもたちとその家族のための慈善事業に取り組んでいる。
STAFF
レイナルド・マーカス・グリーン(監督)
脚本家/監督/プロデューサー。初監督長編映画『Monsters and Men』(18)が2018年度サンダンス映画祭でプレミア上映され、審査員特別賞初作品賞を受賞した。また、ドレイクとスプリングヒル・エンターテイメントが製作総指揮を務めたNetflixのシリーズ「トップボーイ」(11,13,19)のシーズン3の3エピソード(19)を監督した。その後、2作目の監督長編映画『Joe Bell』(20/主演:マーク・ウォールバーグ)が20年度トロント国際映画祭でプレミア上映され、21年夏にAmazonとロードサイド・アトラクションズにより配給された。
現在、デビッド・サイモンとジョージ・ペレカノスが脚本/製作総指揮を務めるHBO放送の待機ミニシリーズ「We Own This City」でメガホンを執っている。また、脚本と監督を務める予定のボブ・マーリーの伝記作品に取り組んでいる。
ザック・ベイリン(脚本)
現実味があり、生き生きとしたキャラクター主導の物語を紡ぎ出す脚本家。「バラエティ」誌の2021年の注目すべき10人の脚本家のひとりに選ばれた。
現在、「ロッキー」シリーズ(76,79,82,85,90,06)のスピンオフ映画第三弾『Creed III』の脚本を執筆中である。22年11月23日全米公開予定の同作で、主演のマイケル・B・ジョーダンが監督デビューを飾る。これまでに、ライオンズゲート、イマジン、TNT、スタジオ8、WIIP向けに、また、ジェームズ・グレイ、ジェレミー・ソルニエ、フランチェスコ・ムンズィ、ジョナサン・レビンといった高い評価を得ている監督たちのためにさまざまなプロジェクトの脚本を執筆している。
脚本に加え、ニューヨークで製作された数多くの映画やTV番組の美術部門で仕事をしてきた。携わった作品に、『ブロック・パーティー』(05)、「GIRLS/ガールズ」(12~17)、『サイド・エフェクト』(13)、『ユージュアル・ネイバー』(13・未)などがある。
ジョンズ・ホプキンズ大学卒業。同大学のアメフト部の最も活躍したワイドレシーバーのひとりとして名を残している。
ヤングブラッド・ピクチャーズの共同設立者。妻とふたりの子どもたちとともに、ロサンゼルス在住。
PRODUCTION NOTES
“プランにしくじるのは、しくじるプランだから”リチャード・ウィリアムズ
本作の主演俳優で、製作も担当するウィル・スミスは『ドリームプラン』の物語についてこう語る。「叶わないような夢の物語だ。たいていの場合、夢というのは叶わないものだよね。一方で、実現できそうだと感じたり、叶うと信じられるならば、やってみようと思うこともあるだろう。リチャードとその家族の物語は、アメリカンドリームの実現を描いているんだ。ビーナスとセリーナのようなことは、そう滅多に起こらない。だが、この物語の根底にあるのは、最高の自分になりたいという強い思い、そして環境に恵まれなかったとしても、強い精神力があれば逆境を乗り越えられるということだ。これはすべての人々に贈る夢の実現の物語なんだ」
レイナルド・マーカス・グリーン監督は、夢を叶えるために心をひとつにして取り組む家族の力に共感を覚えたと言う。「言うまでもないが、これは家族全員を描く物語だ。ウィリアムズ家のみんなと話をしたとき、話題に上ったのは食べ物を調達するために働きづめだった母親のオラシーンのことだった。リチャードはいくつもの仕事を掛け持ちしていた。一方、三人の姉たち――イシャ、リンドリア、タンディは、ビーナスとセリーナとともにコートで過ごした。彼女たちは放課後から電灯が消えるまで、球拾いをしたり、貼り紙を掲げたりして、コートの周辺にいた。姉たちが妹たちの面倒をみていたんだ。この話を聞いたとき、私は信じられない気持ちになった。ぜひ脚本に起こし、映画にしなくてはならない話だと思ったよ」
実際に、ウィリアムズ姉妹が自宅周辺のテニスコートを後にして、爆発的な勢いでプロテニス界に登場した1990年代半ばから終わりのころ、同じくテニス選手であった若き日のティム・ホワイトは、リチャード・ウィリアムズがビーナスとセリーナが生まれる前に作成していた計画書の話を聞いたことがあった。1999年のリプトン・チャンピオンシップ(現在のマイアミ・オープン)の決勝戦で姉妹が対決したときのことを本作の製作を担当するティム・ホワイトはこう回想する。「そこには姉妹と一緒に父親である彼がいた。いろいろな人がさまざまな意見を言いながら彼に注目していた。私が惹かれたのは、周囲のすべての人から無理だろうと思われていた夢を、彼がもち続けていたということだった。彼女たちが決勝戦で試合をしているとき、彼は『ほら、言ったとおりだろ!』と手書きしたプラカードを掲げていた。結局、彼が言ったこと、予言したことはすべてそのとおりになったんだ。彼が語られるべきストーリーをもつすごい人物であることに気づいた。そして私にとっては、これが映画化への着想を得た瞬間だった」
2015年ごろ、ティムと彼の製作会社スター・スロワー・エンターテイメントの製作パートナーで弟のトレバー・ホワイトは、本格的にリチャード・ウィリアムズについて調査し始めた。彼は、ジム・クロウ法と呼ばれる人種差別政策がおこなわれていたルイジアナ州シュリーブポート南部で育ち、のちにあらゆる冒険的事業の計画を立てるようになる。その中には、オラシーンとの間に生まれる娘たちがテニス界に君臨する方法の概要も含まれていた。
製作のトレバー・ホワイトはこう言う。「ティムは、知られざる偉大な指導者の物語として筋書きを立て、さらにそれ以上の要素、つまり不可能を可能にする家族の物語という線でも構想を練っていた。私はリチャードについて、物議を醸す人物としてマスコミから位置づけられてきたということ以外はよく知らなかった。実際に彼がどんな人物なのか調査し始めると、実に複雑な要素をもつこの男性が家族に成功をもたらすと決意していたこと、そして妻オラシーンと上の娘たちとが一丸となり、いかにしてビーナスとセリーナを傑出した女性かつチャンピオンに育て上げたのかが分かったんだ」
ウィル・スミスはこう説明する。「この物語を絶対に伝えなくてはならないと決意する前のことだが、確か僕がいちばん驚きを感じたのは、リチャードがすべてを予言していたことだったと思う。彼はテニスの試合で優勝したバージニア・ルジッチが4万ドルの賞金を受け取るのをTVで見て、娘たちが生まれる2年前に彼女たちが辿るキャリア全般について計画書を書き上げたんだ。実際彼はオラシーンのもとへこの夢、つまり予言書を持って行った。そこには歴代1位と2位の座を占めるテニス選手になる予定のふたりの娘をもたなくてはならないと書かれていた。それを聞いて僕は『ちょっと待ってよ。そんなことありえないだろ!?』と思った。だが再度徹底的にリサーチをしたとき、これは信念、愛情、家族と神について描く力強い物語になるということに気づいたんだ」
ティムとトレバーは、リチャード、オラシーン、そして娘たちが中心の物語にしたかった。突きつめれば、これは家族を守る父親の話だからだ。2017年秋、彼らはほかのプロジェクトの件で脚本家のザック・ベイリンと会った。その日、彼はニューヨーク市クィーンズにあるフラッシング・メドウズで開催される全米オープンの夕方の試合観戦に行くと言った。
ティム・ホワイトはこう語る。「彼がテニス好きだと明らかに分かったので、私は『もう一度座って。手短に話したいことがあるんだ』と言ったんだ。そして、リチャード・ウィリアムズと物語の登場人物についてとても大まかなアイデアを投げてみると、彼の気持ちがこの話に共鳴したことが瞬時に見て取れた。そして彼は『検討するので1日ほしい。すぐに返事するよ』と言った。翌日、彼から映画の核心部分の概要がメールで届いた。それから4年たち、あの日彼から送られてきた内容は、今もこの映画そのものを表しているよ。彼は、強く前向きな感情を導き出し、読む者が泣いたり笑ったりする脚本を書き上げたんだ。このプロジェクトが実現する足がかりとなったすばらしい脚本だった」
続けてトレバー・ホワイトもこう語る。「それに、ザックは作品で描く特定の時期を適切に割り出した。それは、コンプトンで家族が過ごした時代の終わりの頃、最初のコーチのポール・コーエンを見いだし、ビーナスはジュニア時代に突入する。そののち一家はリック・メイシーの訓練プログラムに参加するためにフロリダへ引っ越しして、ビーナスはプロに転向するかどうか悩むというところだ。これらは家族の物語を描くうえでなくてはならない部分だった。そしてビーナスの初プロトーナメントで締めくくっているなんて、天才的だと思った。面白くて説得力のある物語の運び方だった」
一方、脚本のベイリンはこう説明する。「当時、私は物語の概要は知っていたが、細かなニュアンスは分からなかった。張り切って仕事に取りかかると、わくわくする感動的な要素のすべてが含まれる一定の時期を見つける必要があると分かった。計画書やこの家族が乗り越えたことがらについて調べて、この物語の要となる部分を見いだしたんだ。まず、リチャードが娘たちと一緒に取り組むとても特別なことを周囲に理解してもらおうとする、彼の旅の始まりの時期。そしてビーナスがプロ入りするにあたり心の内を明かさざるをえなくなるまで。ずっと彼らが味わわなくてはならなかった苦闘と逆境がそれだった」
トレバー・ホワイトはこう強調する。「これは、リチャードがいかに見事に娘たちを今日の姿であるスーパースターにしたのかを描く物語ではない。絶対に違うんだ。これは、リチャードがどのようにビジョンを打ち立てたのか、彼とオラシーンと3人の姉たち家族全員が結束してどのように成功を築いたのかを描いた家族の物語であり、ひとりの男の物語ではないんだ」
また、途中にいくつか信じがたい瞬間が出てくる物語の信憑性について、ベイリンはこう説明する。「脚本のほぼすべての内容が事実に基づいている。物語についてよく知らなかった私のマネジャーに、脚本を読んでもらおうと初めて送ったとき、返ってきたメッセージは『これ全部、本当に起こったことじゃないよね? そうだろ?』『違った。すべてが事実に忠実なんだね』だった。この家族は、信じがたい驚きの人生を送っている。その理由のひとつは、リチャードのカリスマ的なキャラクターにあると思う。まるでユニークなアメリカンドリームの物語のようだ。大きな出来事や思いがけない相乗効果をうまく表現することが私にとって難題だった」
すばらしい脚本を準備した製作のふたり、ティムとトレバーが、最初にこの脚本を見せた相手は、彼らにとって“夢の”コラボレーターであるウィル・スミスだった。協議が始まり、スミスが3人目の製作を務めること、かつ理想的な俳優であるとしてリチャード・ウィリアムズ役を演じることが即座に決まった。
スミスはこう述べる。「この物語と家族には、その中心に信仰があることが美しいと思う。信仰という点では、リチャードが“ブランディ”と呼んでいる妻オラシーンが、家族の中心的存在であり、リチャードは夢に向かうための推進力なのだ……。そしてこの家族は世間をあっと言わせた。彼らはひたすら目標に向かって進んでいた。そのおかげで、自分たちがしていることに自信がもてた。優先順位はまず神様、次に家族、教育、そしてテニスだった。彼らには特別で衰えることのない意欲があると感じたよ」
スミスとタッグを組んだのち、製作陣が何よりも望んだのは家族の参加であった。ティム・ホワイトはこう言う。「ビーナスとセリーナの姉で製作総指揮のイシャ・プライスが足がかりとなった。彼女は家族の参加を招いてくれただけでなく、貴重なコラボレーターとしてプロジェクトを支援し続けてくれた。制作の場に彼女が同席し背景の些細なディテールや具体的なことを教えてくれたので、作品のクオリティが上がり、家族の雰囲気をリアルに表現することができたんだ」 トレバー・ホワイトは同意して言う。「家族からのサポートがなければ、私たちは作品を完成させることはできなかった。イシャ・プライスは、あらゆる面で欠かせない存在だった。ウィルの協力を得たのち、彼女は最初のコラボレーターとして脚本を展開し続けてくれたんだ。彼女が提供してくれたディテール、正確性、見識は、私たちがどれだけ文書を読み、調査をしても得られるものではなかった。イシャと家族の方々は惜しみない協力をしてくれた」
製作総指揮のイシャ・プライスはうなずいてこう語る。「これまで、私の家族に関する他人の見解をいやと言うほど目にしてきたから、ずい分長い間脚本を読む気にならなかったの。私たち家族がこのプロジェクトに参加できると確信するには、ストーリーに信憑性と誠実さがあることがとても重要だった。ようやく脚本を読んでみると、少し笑えるところもありつつ、そのほかの部分には完全に魅了されたわ。それから、少し違和感を覚えるところもいくつかあった。家族として話し合い、プロジェクトに取り組むことを全員で決めた。ただし、作品の信憑性を確保するため、つまり私たちが何者か、確実に真実を映し出すために私が必ず参加するという条件を提示したの。これは、譲れない大切な部分だった。そうでなければ、他人が作り話をしているにすぎないわ」
「こういうかたちで作品に参加したことで、私たちは自分たちで家族の物語を語り、これまで人々が知らなかった多くのことを伝えることができた」と、プライスは続けて言う。「それが、まるでスナップ写真で切り取ったかのような過去のある時点について、すばらしいストーリー展開を組み立てるのに役立ったと思うわ。言ってみれば承認スタンプのようなものね。他人が捏造したものではなく、これは実際に本当に起こったことだということを認めているの」
そしてこの家族主導の物語を伝えるために、製作陣が本作の監督に起用したのは、確かな腕をもつレイナルド・マーカス・グリーンだった。トレバー・ホワイトはこう語る。「レイはとても思慮深く、念入りに細部まで気を配る特別な監督なんだ。同時に、彼はキャストに自然体でいられるような雰囲気をつくりながら、作品に信憑性をもたらす術を身につけている。ほかの多くの監督たちよりもそれがうまいと思うよ。彼の作品からは生活感が感じられ、少しも嘘くささがない。この映画では、家族を実物そのままの存在として表現したかったんだ。有名人たちを俳優たちが演じていると捉えられてしまうことは、こういう映画では危険なので避けたかった。レイならこの映画に含まれるすべての要素を理解し、リアルな生々しさをもって感動的に描けると信頼できたし、任せられると思ったんだ」
スミスはこう回想する。「(妻で製作総指揮の)ジェイダとレイについて話したんだ。初めて彼に会ったとき、彼が話してくれた父親との関係がすばらしく、すぐさま腑に落ちた。彼はかつてプロ野球選手になるための道を歩んでいたんだ。父親との関係が自分と似ている子どもの立場からこの物語について話していて、ある意味とても複雑に理解していたことに、僕は驚き感心した」
グリーン監督はこう説明する。「この映画に取り組むにあたり、この作品と自分との間に強い相乗効果を感じたし、自らの兄弟の育った環境と似ている点がたくさんあった。見てのとおり、私は史上最強のテニス選手ではないが、父に言われて人生の前半は野球に明け暮れた。父はどうにかして私たち兄弟をメジャーリーガーにさせたがっていたんだ。私はかなり上達し、メジャー2球団のトライアウトを受けた。大学野球でもプレーしたのだけれど、メジャーリーガーにはなれなかった。そして映画制作の世界に入ったんだ。セリーナと同じ年に生まれ、コンプトンではないが治安の悪い地域で育った。なぜか試合やピッチングの練習にはコソコソと隠れるように出かけていたんだ。これらすべてが私の身の上話の一部だ。それから私はとても粘り強くてくじけなかったよ。そのあとのことは、みなさんがご存知のとおりだ」
信憑性のある家族を描くというグリーン監督が負う任務は、当然リチャードの描写にも及んだ。監督はこう語る。「実在の彼に忠実に描こうと取り組んだ。多くの映像や、彼が執筆した本、それに家族から提供された情報もあった。イシャ・プライス、本作の衣装係を務めたリンドリア・プライス、そしてビーナスとセリーナが加わってくれたおかげで、私たちは家族について生(なま)の情報を得られた。リチャードは生身の人間だ。彼を完璧な人物として描くつもりはなかった。それに、観客はどんな映画においても現実味のあるキャラクター、つまりあらゆる面をさらけ出すことができる人物を好むと思うんだ。ウィルはこういうところがものすごくうまいんだ。見せかけの演技は絶対にしない。必要に応じて深い闇を見せるし、そこから戻り今度は明るい面を見せる。私たちが知っているリチャードに可能な限り忠実に描けたと思う」
アーンジャニュー・エリスは、自身が演じるオラシーン・ウィリアムズが妻・母として家族の成功に関与していたという意外な事実を知った。エリスはこう考察する。「初めは、母親なら皆そうであるように、彼女について子どもたちを応援するチアリーダーだと思っていたの。実際、彼女は試合では傍らで待機し、リチャードのビジョンを支持していた。だけど、このオラシーンさんという女性は、リチャードさんと同じぐらい成功に貢献した存在だったことを知って、私はわくわくしたの。この映画の原題は『King Richard(キング・リチャード)』だけど、『Queen Oracene(クイーン・オラシーン)』とも言えるわ。かつてこの女性が観客席にいるのを見ていた世界中の人々が、実は彼女がビーナスとセリーナのコーチを務め、コートで一緒に練習をおこない、戦略を考えだし、娘たちをトレーニングし、さらにテニス界の歴史の流れを変えてしまう対戦方法を考案していたと知ることになるなんて、胸が熱くなるわ。彼女はこれだけのことをしていたのに、これまでその功績が認められていなかった。今、人々にこの事実が知れ渡ることがとても嬉しい」
脚本のベイリンが加えて言う。「この物語のなかでは、テニスは興味深いサブカルチャーとして描かれている。だが、私たちはこの映画を最高のスポーツを舞台にした感動を呼ぶ家族のドラマだとみなしている」
製作のティム・ホワイトはさらにこう語る。「当時、何の手段もなく、しかも父母ともにテニス選手ではない黒人男性とその家族が、ふたりの娘たちをトレーニングして世界一にするというアイデアを思いついたなんて、まったくお笑い種だし実現できるわけがない。だが、リチャードとオラシーンは娘たちにテニスを教えた。そして、自ら習得し、結果としてテニス界全体にいくつかのとても見事な技術的革新をもたらし、組み入れたんだ」
キャスティング:家族を見つける
ウィル・スミスはウィリアムズ家の物語を、困難を克服したり、環境の壁を乗り越えたりするものとは考えていなかった。スミスはこう指摘する。「彼らは自由な心をもっていたので、どこかに閉じ込められていたとは僕は思えない。その心が彼らの信念、自分自身を信じることの重要な部分を占めていたんだ。だから、献身的に働き、お互いに愛し合うという彼女たちの能力以外の何かに捉われているとは思ってもいない。この信念は強力で、非常に生産的だよ。こういった精神は、どこにも閉じ込められないと思う」
製作陣にとって、スミスを主演に射止めることは究極の第一希望であり、彼の実生活での経験は、過保護な父親の物語と見事に一致していた。グリーン監督はこう説明する。「リチャード・ウィリアムズについて私たちが知っていることは、メディアで見たことだけだ。しかし、ひとりの人間を立体的に描くことで、違った面が見えてきた。つまり、彼は父親であり夫であり、さらに娘たちを深く思いやり、成長を願い、思春期の娘たちを守ることがどんなことか知っている人物だ。ウィルはふたりの息子とひとりの娘の父親として、身をもってそのことを知っている。彼は謙虚さと保護者としての姿勢をもち合わせていて、注目を浴びる親である自分と家庭にいる男である自分の間でバランスを取っている」 スミスは役作りのために、単に本人に似せただけではなかった。スミスはこう打ち明ける。「リチャードが歩んだ道筋を辿ろうとした。彼はテニスについて何も知らなかった。ビーナスが生まれる前の2年間、彼とオラシーンはテニスについて独学で学び、一緒にそのスポーツを習得したんだ。家族で学んでいて、その一歩一歩が新しいことばかりだった。何もかもが真新しく、リチャードは自分のことを素質のあるアスリートだと思い込む。そして、自分が生きている間に子どもたちをプロとしてプレーさせることができると思っていた。確かに、子どもたちの人生と自分を重ねている部分もある。でも、彼は親として理解する前に、子どもとして理解して、それらを身につけたんだ」
演技をつくりあげることについて、スミスはこう振り返る。「役を理解するために俳優の経るプロセスは本当に不思議で、何がその役に入り込めるきっかけになるのかわからない。警察官を演じる場合、初めて銃を腰につけて歩くことで、何かが目覚め、その心情を理解することができる。リチャード役の場合、僕の実娘ウィローとのつながりが役づくりのきっかけとなった。ウィローとの関係や彼女のキャリアを活かすことで、僕はリチャードがビーナスやセリーナとの間に築いた距離感を見いだすことができたんだ。そこでは、押し付けたり、追い込んだり、叩き込んだりしない。ビーナスから聞いたすばらしい逸話がある。彼女たちが子どもの頃に問題を起こしたとき、その罰はテニスができないということだったそうだ。そこでリチャードは、押し付けるのではなく、家族として選んだ夢に向かう彼女たちに従っていくという、すばらしい考え方を見つけたんだ」
夫ほど脚光を浴びていないが、間違いなく同等な立場にいるのが、アーンジャニュー・エリスが演じるオラシーン・ウィリアムズだ。スミスはこう述べる。「アーンジャニューにはスキルがある。シーンや人間関係に対する彼女の考え方にそれを感じる。僕らはオラシーンについて話し合い、計画書のことやこの家族の核心に迫ろうとした。そしてアーンジャニューが共感したのは、オラシーンが神と通じているというコンセプトだった」
グリーン監督は同意する。「アーンジャニューは本当にすばらしく、無からものを生み出すことができる。そして、間違いなく魅力的なのが、時折見せてくれる彼女の最も静かなシーンだ。彼女は思慮深く力強いすばらしい女優で、仕事に対する倫理観や提案してくるアイデアもすてきだ。彼女には本当に嘘偽りがない。カメラというのは嘘をついていることを見抜くが、彼女は常に見事に演じてくれる」
エリスは、演じるオラシーンにはさまざまな事情が絡んでいるとコメントしながら語る。「リチャードにはやりたいことのビジョンがあった。それは、アスリートやテニス界のスターを育てるということ。テニススターに育てるために、彼らは子どもを授かったのよ。オラシーンさんは、テニスのコーチになるために独自のトレーニングをしながら、同時に仕事もしていた。リチャードさんは少し現実離れしていて、自分の考えや夢をもっていた。オラシーンさんは、このプロジェクトのなかではどちらかというと地に足がついた理知的なタイプだった。自分がすべきこと、つまり仕事をすべきこと、テニスのプレーの仕方を独学で学ばなければならないこと、娘たちをトレーニングしなければならないことを知っていた。彼女はそれを諦めることができなかったし、諦めようともしなかった。大きな困難が立ちはだかったときはいつも、リチャードに諦めさせなかった。それは『夢を諦めるわけにはいかない』というよりも、『娘たちへの責任を諦めるわけにはいかない』という思いだったの。そしてもうひとつ、彼女は結婚以上の責任をもっていた。彼女の宗教がそうさせた。それが彼女の特徴よ。そして、その結果が今、ウィンブルドンのコートで見られるわ」
家族の努力がコート上で証明される何年も前に、いつの日かテニスの歴史をつくる新しいスキルをもつふたりの少女が存在していた。制作陣は、その幼き日のビーナスとセリーナのキャスティングの重要性をこれ以上ないほど強く感じていた。ティム・ホワイトはこう語る。「興味深いのは、サナイヤ・シドニーとデミ・シングルトンは、スタジオが関わる前のごく初期のオーディションに参加していて、私たちの頭から離れなかったんだ。監督のレイが加わり、オーディションテープをすべて見てもらい、彼も同じように感じたと思う。ふたりとも非常に特別な少女であり俳優であり、彼女たちに出会えたことはとても幸運なことだと思うよ」
グリーン監督はこう語る。「妹のプレーを見るためなら、メジャーの試合でも棄権したいと思うと、ビーナスは言っていた。コートの中でも外でもふたりがいかに仲が良いかがわかるエピソードだけど、それがこの物語の重要なポイントであり、彼らの家族としての在り方を表している。それは作り物ではない。すべてが真実であり、今日までその姿を見ることができる。また、サナイヤ・シドニーとデミ・シングルトンという幸運にも恵まれた。ふたりは自然に相性がよく、年齢の割にしっかりしていて、経験豊富な若い俳優なんだ。そして、そのすべてが発揮されている。彼女たちは、家族とのコミュニケーションを大切にし、宿題もきちんとこなしていた。それにつけても、ふたりの相性が良かったのは、幸運だったね」
製作総指揮を務めたイシャ・プライスは同意する。「ビーナスはとても静かな強さをもっていて、セリーナは気が短い。だから常にそれを意識して演じる必要がなく、それが個性の一部になっている俳優を見つけることが重要だったわ。彼女たちに頑張って演じてもらいたくなかったの。サナイヤとデミは撮影現場ですばらしい友人になったわね。ふたりの性格が合っていて、とてもうまくやっていたわ」
計画書については、リチャードと同等の影響力があるオラシーンを演じるエリスはこう述べる。「オラシーンとリチャードが意見を異にする、あるシーンがある。すばらしいのは、リチャードとは違った形で、ビーナスとセリーナをオラシーンが信頼しているところだわ。リチャードは彼女たちをコントロールしたがっている一方で、ふたりはどんなチャレンジにも準備できていることを内心わかっているの。その場面では、トーナメントでのプレーのことを指すわ。母親と父親の間で押し合いへし合いがあり、さらに彼らには入りたくて仕方がない別の世界がある。サナイヤとデミのふたりの若い女性たちは本当にすばらしかった。彼女たちと一緒のシーンでは、ありのままに演じてもらって、私はただそれに合わせて演技するだけだったのよ。共演シーンはふたりのおかげでできたわ。ふたりは役の複雑さを見事に捉えていたわ」
ビーナスの立場に立つことは、シドニーにとって軽々しくできることではなく、一夜にして実現したものでもない。彼女はこう語る。「デミと私はイシャと一緒に多くの時間を過ごし、セリーナとビーナスについてじっくり話し合い、テニスプレーヤーとしてだけでなく、人間としての彼女たちを知っていった。彼女の人生の物語について学んで、幼い頃から彼女がいかに静かで謙虚だったかを知ったわ。彼女が日常的におこなっていることや、リチャードが彼女たちに日記を書かせていた習慣などを教わったの。彼女が今日まで続けていることは、彼女が子どもの頃に学んだこと。彼女がどれだけやさしくて、どれだけ親切であるか、そして、どれだけ大きな心をもっているかを知れたのはすばらしいことだった。人としての彼女を知ることができて、彼女のすばらしさがわかったわ」
その後、撮影中に役者とテニス界のアイコンが対面したとき、さらに多くの情報がふたりの間で交換された。シドニーは自分が演じたビーナスついてこう語る。「彼女は陽気で、おっちょこちょいで面白いの。そこが私たちの共通点ね。彼女から、コート上での癖や、ポイント間の気持ちのもち方、プレー中の自分との向き合い方などを説明してもらった。彼女は大きな態度をとることもなく、感情をあらわに出すこともなく、すべて内に秘めているの。それは彼女の顔を見ればわかる。彼女の表現を借りれば、“虎のような目”を見ればわかる。また、セリーナとの決して切れることのない絆についてももっと聞けたわ。それを知ったことで、私にとって妹のような存在であるデミをどのように面倒見ていけばいいのか、とても参考になった。また、彼女がいかにテニスというスポーツを愛しているかということも痛感させられたわ」
シングルトンにとって、セリーナを演じることは驚きの連続だった。彼女はこう述べる。「非現実的な気分だった。彼女は生きる伝説だもの。彼女のキャラクターを演じ、彼女の物語を伝えることができて、とても感謝しているわ。同時に、彼女は存命の実在の人物なので、少し緊張もした。でも、自分の仕事として考える必要があった。彼女たちに関することがあまり世の中に知られていないなか、彼女たちのストーリーを伝えるためにベストを尽くすのが私の仕事よ。今、私たちはふたりについて、すばらしいテニスプレーヤーとして知っている。でも、彼女たちがどのように育ったのかはあまり知られていない。だからこそ、この映画をしっかり作って、正しいかたちで彼女たちの物語を伝えることが重要だと思ったわ」
シングルトンも23回のグランドスラムの優勝を勝ち取った本人と出会ったときに、セリーナとビーナスのふたりについて直接知ることができた。シングルトンは詳しく語る。「彼女とビーナスは、いろいろなことを話してくれたわ。姉妹で何をしていたかとか、セリーナはいつもみんなを困らせていた!とかね」と、彼女は笑う。「ふたりの仲の良さには驚いたわ。私たちがアイコンとして知っている彼女たちを、人間として知ることができたのはすばらしいことだった。彼女とのおしゃべりは本当に貴重だったわ」
ビーナスの最初のプロコーチであるポール・コーエン役のトニー・ゴールドウィンも、情報源である本人からの知識を活用することができた。ゴールドウィンはこう語る。「ポールは、ジョン・マッケンローやピート・サンプラスが活躍していた70年代、80年代、そして90年代のトップコーチだった。彼は大成功を収めた多くのジュニアを指導していて、リチャード・ウィリアムズはテニス雑誌で彼がマッケンローのコーチをしているのを見て、彼に売り込みの電話をかけたんだ。レイが僕にリサーチ資料をたくさん送ってくれたことはとても役に立ったけど、実のところ、僕は自分からポールに連絡を取ったんだ。彼にメールでこの映画の企画について伝えたところ、彼は信じられないほど好意的で、とても親切でやさしかった。彼は風変わりといえるほど、すばらしい人なんだ。彼と脚本について話し合うことはしなかった。それよりも僕が望んでいたことは、彼の人生や考え方、彼の現実がどんなものなのかという話を聞きたかっただけなんだ」 ゴールドウィンは続ける。「映画のなかでは、ポールの視点から見ると、リチャードには強烈な個性があり、あらゆる物事のあるべき姿についてとても強い考えをもっている。リチャードは主に本能で動いていて、経験を伴った知識では行動していないと思う。少なくとも、ポールがもっているような知識では動いてはいないね。でも、リチャードが愛と応援の気持ちから行動していることに、ポールは気づいている。彼はどうにかしてふたりの少女をここまで導いた。そこにはお互いに尊敬する気持ちがあふれている。ポールはリチャードをうまく扱おうとするけど、そこには尊敬の念があるんだ」
ジョン・バーンサルは、伝説的な超ポジティブなテニス・アカデミーの指導者リック・メイシーを演じている。バーンサルは、この作品には多くのレベルで共感を覚え、つながりを感じた。バーンサルはこう指摘する。「おそらく多くの人がそうであるように、私もリチャード・ウィリアムズに対して、スポーツに熱心な威圧的な親であるかのような先入観をもっていた。私自身もスポーツ選手の親として、このテーマは私にとって身近で大切なものなんだ。だから、子どもとスポーツ、父親としての立場、プレッシャーといったテーマについて、レイと私は最初から意気投合した。父親であること以上に重要な仕事はない。それが私の人生の要だ。そして、若いアスリートを育てるには、何がベストな進め方なのかを常に考えなければいけない。スポーツは、子どもたちが人生の教訓を学び、深く意味のある人間関係を築き、世界を知るためのすばらしい機会を与えてくれるんだ」
「リックはふたりの少女たちだけでなく、その家族にも信じられないほどの特別なものがあることに気づく」と、バーンサルは続ける。「それは、彼らの気概、決意、労働意欲、そしてお互いへの愛情だ。リックのアカデミーはとても家族的な場所なんだ。彼は、4歳から20歳までのそこにいるすべての人に対して愛情をもっている。私は、リチャードと同様に、リックを異端者であり独自のユニークな存在でもあるキャラクターにしたかった。私にとってこの作品は、父性について考えさせるものであって、また、決して諦めず、揺らぐことなく独自の子育てを続けてきた男の物語なんだ。それをとても美しいと感じたよ。そしてこの作品には是が非でも参加したいと思った」
また、この家族の物語の鍵を握るのは、ビーナスとセリーナの姉たちだ。制作陣は、ミケイラ・ラシェ・バーソロミュー、ダニエル・ローソン、レイラ・クロフォードをそれぞれタンディ、イシャ、リンドリア・プライス役にキャスティングした。また、スポーツエージェントのジョージ・マッカーサー役には、ディラン・マクダーモットが扮している。
グリーン監督は気の利いたことを言う。「『フォルクスワーゲンの小さなバスに5人の黒人女性が乗っているのを見たことがない』と思い、それを大きなスクリーンに映し出すことがどれほどすばらしいことかと思ったんだ。このキャストで、この家族に命が吹き込まれた。彼女たちはお互いを愛して、とても大切にしている。そうやって私も兄弟と一緒に育ったんだ。それを生かして、この作品のすべてに命を吹き込むことができたのは喜びだよ」
試合をリアルに再現
映画のなかでテニスの試合をリアルに見せるために、製作陣は若いスターたちを厳しいトレーニングプログラムにどっぷりと参加させた。スミスはこう説明する。「サナイヤの場合、やらなければならないことの量が半端なかった。テニスをプレーしていたわけではなかった彼女は、この作品に加わってからテニスのやり方を学んだ。俳優として、私を驚かせたのは、サナイヤが左利きだということなんだ。彼女は史上最高のテニスプレーヤーのようにプレーする方法を学んだだけでなく、それを利き手ではない手でおこなう方法も学んだ。これはすばらしいことだと純粋に思う」
出演が決まる前から、シドニーとシングルトンはそれぞれ定期的にコートに立っていた。その後、プロであるエリック・タイノの協力のもと、トレーニングはより激しく、厳格なものになっていった。テニスコンサルタントとして本作品に参加したタイノは、かつてロジャー・フェデラーに勝ったことがあるだけでなく、ビーナスやセリーナと同じ時期にリック・メイシー・アカデミーでトレーニングを受けたことがある元ATPツアープレーヤーだ。また、ティム・ホワイトは、テニスのスキルについてもっている知見を提供した。当初、シドニーはタイノと週5日のトレーニングをおこなっていたが、その後、彼女とシングルトンは制作期間中ずっと練習を続け、腕前を向上させていた(ふたりとも、現在もテニスを続けていて、テニスが大好きだ)。
イシャ・プライスはこう強調する。「私の妹たちのレベルに達するには、何年も練習する必要がある。だからこそ、本物のテニスプレーヤーを代役に起用することが必須だった。これまでのテニス映画では、彼女たちのような腕前をもつアスリートになるために必要なことが必ずしも描かれていなかったと思う。ラケットを手にしない限り、テニスは『ただボールを打つだけ』と思われている。でも、ラケットを持つと『ちょっと待って。どうやってコントロールするのか? どうやってあの箱のなかに入れるのか? それをどんな力でやるのか? どうやってボールを下に落とすのか? どうやってトップスピンを使うのか? これって物理学だ。コート上で考えながら、走って、同時にいろんなことをやらないといけないのか?』って思うわ」
グリーン監督はこう語る。「サナイヤとデミは最初からテニスプレーヤーだったわけではないが、運動能力が高いので、生まれつきの才能を生かすことができた。彼女たちは走り、スイングし、ラケットで構えることができるので、作品に信憑性をもたせることができた。私たちは、どの映画でもそうするように、すばらしい代役を見つけて、可能な限りリアルな試合をつくることができたんだ。代役たちは全員プロをめざしていて、ビーナスやセリーナに影響を受けていた。一方で、サナイヤとデミが自分自身の力で上手になっていく姿には驚いたね」
シドニーは笑いながらこう語る。「最初はテニスを知ることだけで精一杯で、かなり下手だったし、私は左利きなの。長いプロセスだったけど、ビデオを見返すと自分がどれだけ上達したかがわかるわ」
また、ビーナス・ウィリアムズ本人からのアドバイスを受けられたのもプラスに働いた。シドニーは続ける。「彼女は、バックハンドでの手首の使い方、フォアハンドでの腕の出し方、構え方、歩き方など、彼女のように打つ方法を正確に教えてくれたの。私はそのすべてを身につける必要があった。彼女がそばにいてくれたので、とても助かったわ。それを身につけるのは私の仕事だけど、迷ったときには『ビーナスならここでどうするの?』と聞くと、彼女はアドバイスをしてくれた。ありがたかったわ!」
製作のティム・ホワイトがこう裏付ける。「エリック(・タイノ)と私はふたりともテニスをする。そしてイシャは、おそらく史上最も重要なテニス一家の出身だ。だから、ちゃんとしたものをつくらないといけないという大きなプレッシャーがあった。その結果、そうできたと思う」
映画のなかで少女たちが成長していくにつれ、彼女たちは次第に立派なテニスコートでプレーするようになっていく。トレバー・ホワイトはこう説明する。「この物語には3つの章がある。コンプトンとカントリークラブのテニス界があるロサンゼルスのパート。フロリダのリック・メイシー・アカデミーのパート。そしてプロツアーのパートだ」
ティム・ホワイトはこう語る。「フロリダのパートは、ロサンゼルス郊外にあるラケットクラブ・オブ・アーバインで撮影した。幸運なことに、カーソンにあるディグニティ・ヘルス・スポーツ・パークというスタジアムを見つけることができた。このスタジアムは、壮大なスケールや広さを感じさせるもので、プロツアーの試合の場面で使用した。さらに、コンプトンのパートは、どこかで再現するのではなく、すべての始まりの地である現地で撮影する必要があると感じた」 南ロサンゼルス地域での撮影に加え、クレアモント、カマリロ、ウェストレイクなど、ロサンゼルスから車で簡単に行ける場所でもテニスの撮影をおこなった。
「プロのテニスプレーヤー選手になるために必要なことは多岐にわたる」と、プライスはまとめる。「はっきり言って、私の妹たちが変革をもたらした。私の父はユニークで、誰が何と思ったり言ったりしようと、時代の流れに逆らうことを選んだから、彼女たちが変革をもたらした。その結果、彼女たちは、それまでの女子テニスに存在しなかったパワーと技巧を取り入れた。それをスクリーンで見ることは重要なことだったわ」
90年代への回帰:デザイン、準備、撮影
製作陣は時代を遡るために、美術のウィン・トーマスとウィリアム・アーノルド、衣装のシャレン・デイビスといった優秀な各部署のメインスタッフに期待を寄せ、撮影監督のロバート・エルスウィットと協力して、1990年代のウィリアムズ家の設定に真実味をもたらした。さらに、映画に登場するすべての人物の時間を巻き戻し、スミスやほかのキャストがそれぞれのキャラクターに溶け込むために重要な役割を果たしたのは、メイクアップ部門のトップであるジャセンダ・バーケット、ヘア部門のトップであるカーラ・ファーマー、ウィル・スミスのメイクアップアーティストのジュディ・マードック、特殊メイクアーティストのケンタロウ・ヤノだ。
マードックはこう語る。「最初は特殊メイクを全体に使うことを検討したが、少し思い直したんだ。特殊メイクを付けたり外したりした結果、できるだけ人工的なメイクを使わずに、自然な感じで役を表現したほうがウィルにとって良いと判断した。最終的には、非常に細かい作業だけをしたんだ。それが何か気づく人はいないと思う。彼を見ても、本物に真似たとは思わないだろうね。そこにはリチャードのエッセンスだけが見て取れて、まさにそれがウィル自身によって表現されているんだ」
レイナルド・マーカス・グリーン監督は、スミスの外見上の変化についてこう語る。「彼は役にふさわしい老け方を見せてくれた。それはウィルだと見てわかるが、今までとは違った感じに見える。ウィルはこのキャラクターや南部のアクセントなどに取り組んでいたから、ウィルにはすでに多くの変化が起こっていて、リチャードらしくなっていった。外見上の変化は信じられないほど微かなのに、ウィルは完全に役に没入していたね」
スミスは難しくて手間のかかる役づくりを自分でおこなったにもかかわらず、変身の鍵となった外見上のある部分があった。「ショートパンツは、リチャードについて僕がピンと来たことなんだ。なぜかはわからないけど、ショートパンツはいつもぴっちりしていて、それが彼のテニスのスタイルだ。タイトなショートパンツとハイソックスが、僕をリチャードの考え方に導いてくれた」と、スミスは笑う。
「リチャードは、自分はコーチだと思い込んでいたと思うし、彼の見た目の至る所がコーチそのものなの」と、衣装のデイビスは語る。「彼はあらゆるテニスの試合でコーチを全員研究し、チェックしたうえで、コーチがはくようなショートパンツをはいている。彼のもっている服はそれが反映されていて、プライベートな旅をしているとき以外は、そのスタイルから外れることはない」
スミスと同様に、エリスも自分のキャラクターを見つけるために、リサーチに基づいた方法を採用した。彼女はこう証言する。「オラシーンさんの音源をたくさん聞いて、そこから多くのことを得たわ。それから、デタラメかどうかを確認してくれるイシャがいた。私たちがアイデアを出すと、彼女は『あなたの努力には感謝するわ。でも違う。そんなことはなかった』と言ってくれることがある。彼女は、見た目も含めた物語の信憑性を保つだけでなく、私たちのクリエイティブな面でのガイド役でもあったの。ウィリアムズ家には彼らのやり方がある。そういったこと全般で彼女は私たちが本筋からそれないようにしてくれた。傍観者として、私たちを制止してくれる貴重な存在だった」
製作陣は、ビーナスとセリーナについてプライスの実体験に頼るだけでなく、貴重な歴史的記録にも期待することができた。シドニーとシングルトンのために、デイビスはまず、ふたりの姉妹が歩んできた人生の旅路を捉えた写真を、衣装部屋全体に掲示した。
メイクアップ&ヘア部門を担当したバーケットとファーマーも、製作陣の指示に従い、信憑性を最優先に考えた。バーケットはこう語る。「レイは、この映画をつまらないものにしたくないと強く思っていた。彼女たちをハリウッドのアスリートに仕立て上げるのではなく、リアルな姿を描くことをめざした。とくにコート上の彼女たちや試合中のほかのテニスプレーヤーについて、それが私の心にずっと残っていた。彼女たちに汗をかかせて、息づかいを荒くさせて、すべてを有機的に生み出させた。そして、必要に応じて私がそこに入って、追加していくの。レイはとても打ち込んでいて、とても具体的に物事を考えていた」
ファーマーはこう語る。「俳優を実在の人物に合わせる際、レイは、本人に認めてもらって心に刻まれるぐらいに、その人物にできるだけ近づけてほしいと考えていた。でも、俳優がおかしく見えるほどにしてほしくはなかったの。ビーナスの髪の毛にビーズがついているシーンではレイはとても明確だった。言葉にしなくてもその人がどういう人なのか、裏で何が起こっているのかがよくわかるようになっていた。リチャードは、このふたりの若いお姫さまを女王に育てるという使命を神から与えられたんだと思うわ。そしてオラシーンは、『あなたたちはコンプトン出身のアフリカ系アメリカ人のテニス選手。私たちは堂々と社会に出て、私たちとあなたたちの家族の象徴になる。それを言葉にしなくても、これがあなたたちの姿よ』と伝えるビジョンをもっていた。これは見事な行動だったわ」
リサーチやインターネットで当時の情報は簡単に手に入ったが、当時の服はそれほど簡単に入手できなかった。デイビスはこう説明する。「1980年代後半から90年代にかけてのファッション界は、数年ごとに大きく変化して、衣服は長持ちするようなものではなかった。本物のテニスウェアを実際に手に入れて、自分たちで生地を調達し、そのウェアから同じシルエットを保ったままデザインしたの。そして、シューズについてだけど、40年前の靴をもっている人はいないでしょう。これまでに手がけた4本の自伝映画のなかでも、誰もが当時のファッションを知っている本作が最も難しかったわ。元々のデザインコンセプトから離れることはできなかった。一部の衣装は、オリジナルの服を探し出す借り物競争のようになったわ」
また、家族のスポーツウェア以外の服について、デイビスは5人の子どもをもつ自分自身の経験を活かし、お下がり服を利用した衣装プランを考案した。「家族の形や愛を表現するために、家のなかではふたりの少女はお互いの服を着ているの」
映画の環境を整えるために、撮影はすべてロケでおこなわれた。ロサンゼルス南部にある家が、ウィリアムズの家として選ばれた。実際の家は、撮影に必要なスタッフや機材を収容できるほど広くはない。レオン・ワシントン・パークは脚本で描かれた公園となり、地元のグラフィティアーティストが雇われ、近くを走る列車の線路を隠すために作られた壁に作品を提供した。
美術のトーマスも信憑性という信念に賛成しながら、こう語る。「この物語の課題は当時の時代と場所を再現することであり、それがうまくいけば、僕の仕事は目に見えないんだ。僕は、彼女たちが住んでいた家や、子どもの頃に使っていたコート、テニス・アカデミーやフロリダでふたりが住んでいた家などが実在する場所すべてに行った。あらゆるリサーチやその道中に彼女たちを知る人から聞いた貴重な話、見た場所すべて、そういった細部が映画のデザインに影響を与えた。今回はロケーションを演出するような仕事ではなく、限りなく現実に近づけようとしたんだ。このような映画の美術デザインは目に見えず、ストーリーの展開の邪魔にならないようにするんだ。登場人物が主役だからね」
試合の終盤
『ドリームプラン』の撮影は、2020年2月21日金曜日にカリフォルニア州コンプトンで開始された。典型的な美しい南カリフォルニアのその午後には、スミスが1978年式の象徴的なフォルクスワーゲンのバスをコンプトンにある地元のテニスコートまで運転し、ビーナスとセリーナの練習を始めるために5人の少女が車から降りてくるシーンの撮影のため、キャストが集まっていた。グリーン監督の思い描いていたバスとそこに乗る人物たちの場面が、たちまちに現実のものとなった。
グリーン監督と同じように、スミスも若いサナイヤ・シドニーとデミ・シングルトンを見たときのことをこう語る。「ふたりは別々にキャストされたのだけど、一緒に歩いてきた彼女たちを初めて見た日のことを覚えている。ふたりの姿を見て目に涙が浮かんだよ。彼女たちが幼少期に見て育ったビーナスとセリーナに敬意を表す機会を得て、そして、この作品が彼女たちにスポットライトを当て、才能を示せたチャンスになったことに、僕は深く感動したね」
3月10日、ロサンゼルスの中心部にある小さな家でおこなわれた撮影で、キャストとスタッフは感慨深い一日を過ごした。この日、本物のビーナス・ウィリアムズとセリーナ・ウィリアムズが撮影現場を訪れたのだ。ふたりはBNPパリバ・オープンに出場するためにカリフォルニアにいた(そのトーナメントがキャンセルになったばかりだった)。プライスがこの訪問を取り計らい、ビーナスが先に到着し、その後すぐにセリーナが到着した。
撮影の合間の休憩で、テニス界のレジェンドふたりが家のなかに招かれ、ウィルやキャストに紹介された。その後はみんな分かれて、本物のウィリアムズ姉妹は裏庭で、映画のなかで彼女たちの若い頃を演じる少女たちや“家族”に囲まれて、写真撮影がおこなわれた。
この日のことは、5日後に『ドリームプラン』の制作が中断されたことで、後になってさらに重要な意味をもつようになった。
トレバー・ホワイトは、この長期中断の間のことを思い出す。「レイは隔週で、ズームでキャストと製作陣が集まるミーティングを企画してくれた。2週間に一度、一堂に会して、みんなの様子をひとりずつ私たちはうかがっていったんだ」
撮影は10月19日にセンチュリーシティで再開され、12月11日金曜日にサンタクラリタで50日間の撮影を終えた。
米アカデミー賞にノミネートされたこともある作曲家のクリス・バワーズは、『ドリームプラン』の音楽の曲調を決定するにあたり、感情を呼び起こしかつ内面を描く形で90年代の設定を解釈することにした。「当時の時代はスコアにあまり影響しなかったが、現実的な側面から、リチャードとオラシーンのように犠牲になって、子どもに愛情を注いでいる多くの黒人家族や親たちのことを考えたね。あの時代にあの場所で若い黒人女性でいることがどういうことを意味するのかを考えることで、スコアが映画全体を通してどのように感じられ、どのように構築していくべきか理解することができた」
4歳から音楽を追求することに両親から熱心に擁護されたバワーズは話を深める。「この映画のストーリーに感じた個人的なつながりのために、ピアノとプリペアド・ピアノ(弦の間や上に異物を置いて音を変化させたピアノ)を多用することにした。さらに、テニスの音と感覚を喚起したいために、弦楽器、ハープ、ピアノ、プリペアド・ピアノ、パーカッションのみを使用することにしたんだ。プリペアド・ピアノとパーカッションは、白人の多いこのスポーツのなかでウィリアムズ姉妹の独自性を表現する場面で登場するんだ。パーカッションとプリペアド・ピアノは、ある意味、彼女たちとこの家族の気概と粘り強さを反映しているといえる。最後に、この物語がリチャードの計画から始まったという考えに基づいて、テーマとなる曲はすべて同じテーマのバリエーションにしている。リチャードのテーマから始まり、ビーナスのテーマ、そして試合のテーマへと発展していくんだ」
撮影の大半はテニスコートやその周辺でおこなわれたが、ひとりでふたつの仕事をこなすウィル・スミスはこう主張する。「これはテニスの映画ではないんだ。家族の映画であり、信念、愛情、そして勝利についての映画なんだ。そう、これはめずらしいことの組み合わせでできたもの、つまり、世界で最も有名なテニスプレーヤーが登場したことと、この映画のポイントを書き出したリストの6番目ぐらいにテニスが入っていることが組み合わさったんだ。僕は過去に何度か人の人生を描いた映画をつくったことがあるけれど、そのときに気づいたのは、物語で語られる家族という観客が存在することだ。イシャ・プライスが毎日現場にいて、ビーナスとセリーナがすべての段階で関わってくれたことが必要不可欠だった。そして最終的に、映画を観た家族からハイタッチをしてもらって、『やったぞ! ほかにはもう何もいらない』と思ったね」
レイナルド・マーカス・グリーン監督は最後にこう締めくる。「この映画は、世間が知っていると思っている人間を立体的に描いた物語であり、父親であり俳優でもあるウィルは非常にうまくやっている。脚光を浴びる親であると同時に、夫であり、父親であり、幼い子どもたちとその成長を見守る保護者であることをバランスよく表現している。リチャードとオラシーンは娘たちに学校で優秀な成績を収めさせた。この家族は、コートの中でも外でも一生懸命に取り組んだからこそ、今の姿がある。リチャードがこの計画書を書いたのだけど、みんながそれを実現するのを手伝ってくれたんだ」
T・ジョイ横浜 :17:45-18:20 (144分)
https://miyearnzzlabo.com/archives/79101
町山智浩『ドリームプラン』を語る
町山智浩 映画『さがす』『ドリームプラン』2022.02.08【今年暫定1位&アカデミー賞受賞確実な2本】
ドリームプラン(原題:King Richard)
劇場公開日 2022年2月23日
・世界最強のテニスプレイヤーと称されるビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てあげたテニス未経験の父親の実話を基に描いたドラマ。
監督 レイナルド・マーカス・グリーン
主演 ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー
#町山智浩 #たまむすび #アメリカ流れ者