映画『国境の夜想曲』予告編
『海は燃えている~ イタリア最南端の小さな島~』などのジャンフランコ・ロージが監督や音響などを手掛けたドキュメンタリー。3年以上をかけてイラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で暮らす人々の暮らしを撮影した。『海は燃えている~ イタリア最南端の小さな島~』でもロージ監督と組んだ、ドナテッラ・パレルモやセルジュ・ラルー、カミーユ・レムルをはじめ、オルワ・ニラビワ、エヴァ=マリア・ヴェールツらがプロデューサーに名を連ねる。
作品情報:https://www.cinematoday.jp/movie/T002…
配給: ビターズ・エンド
公式サイト:https://bitters.co.jp/yasokyoku
(C) UNO FILM / STEMAL ENTERTAINMENT / LES FILMS D’ICI / ARTE FRANCE CINEMA / Notturno NATION FILMS GMBH / MIZZI STOCK ENTERTAINMENT GBR
劇場公開:2022年2月11日
映画『国境の夜想曲』イニャリトゥ×ジャンフランコ・ロージ監督対談動画
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が『国境の夜想曲』を絶賛!!生と死の間で生きる人々を描き続けるイニャリトゥとジャンフランコ・ロージ監督の熱い対談動画到着!
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』と『海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜』でベルリン、ヴェネチアを2作連続でドキュメンタリー映画で初めて制した名匠ジャンフランコ・ロージ監督最新作。
『国境の夜想曲』はジャンフランコ・ロージ監督が3年以上の歳月をかけて、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影した。ここでは2001年の9.11アメリカ同時多発テロ、2010年のアラブの春に端を発し、最近ではアメリカのアフガニスタンからの撤退と、今に至るまで侵略、圧政、テロリズムにより、数多くの人々が犠牲になっている──。
ジャンフランコ・ロージ監督が、『バードマンあるいは(無知がもたらす予期きせぬ奇跡)』『レヴェナント:蘇りし者』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と対談し、『国境の夜想曲』を絶賛する動画を入手した。この中でイニャリトゥ監督は「『国境の夜想曲』の静謐さは、まるで俳句のようだ。感動し圧倒された」と発言し、本作に熱烈な賛辞を送っている。
『国境の夜想曲』は2022年2月11日公開
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「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」でベネチア国際映画祭の金獅子賞、「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」でベルリン国際映画祭の金熊賞と、それぞれドキュメンタリー映画で最高賞を受賞しているジャンフランコ・ロージ監督が、3年以上の歳月をかけ、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影したドキュメンタリー。9・11米同時多発テロやアラブの春、そしてアメリカのアフガニスタンからの撤退。さまざまな情勢によって巻き起こる侵略、圧政、テロリズムなどにより、多くの人々が犠牲となり、数多の痛みに満ちた土地を、ロージ監督は通訳も伴わずにひとりで旅をし、土地に残された母親や子ども、若者たちの声に耳を傾ける。母親たちの哀悼、子どもたちの抱える癒えない痛み、精神病院の患者たちによる政治の無意味さについての演劇など、ロージ監督が旅の中で見聞きしたものを通し、暗闇の中に一条の希望を見いだし生きようとする者たちの姿を浮かび上がらせる。2020年・第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。第33回東京国際映画祭では「ノットゥルノ 夜」のタイトルで上映。
2020年製作/104分/イタリア・フランス・ドイツ合作
原題:Notturno
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://bitters.co.jp/yasokyoku/
INTRODUCTION
9.11から20年、戦争に翻弄され、分断された世界
しかしそこには、夜の暗闇から一条の光を待ちわびる人々のささやかな営みがあった
『国境の夜想曲』は、ドキュメンタリー映画の名匠ジャンフランコ・ロージの最新作だ。第77回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出され、ユニセフ賞、ヤング・シネマ賞 最優秀イタリア映画賞、ソッリーゾ・ディベルソ賞 最優秀イタリア映画賞の3冠を獲得した。
本作は3年以上の歳月をかけて、イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯で撮影された。この地域は2001年の9.11米同時多発テロ、2010年のアラブの春に端を発し、今年2021年8月のアメリカのアフガニスタンからの撤退とそれに伴う悲劇に至るまで、現在と地続きで、侵略、圧政、テロリズムが数多くの人々を犠牲にしている。そんな幾多の痛みに満ちた地をロージ監督は通訳を伴わずにひとり旅をし、そこに残された者たちの声に耳を傾け続ける。
戦争で失った息子を想い哀悼歌を歌う母親たち、ISIS(イスラム国)の侵略により癒えることのない痛みを抱えた子供たち、政治風刺劇を演じる精神病院の患者たち、シリアに連れ去られた娘からの音声メッセージの声を何度も聞き続ける母親、夜も明けぬうちから家族の生活のため、草原に猟師をガイドする少年。
平和な日常に生きる我々からは想像もできない、夜の闇のような絶望に満ちた生活。4つの地域を映しながらも、映画の中ではその地域を明示しない。それは、国境の向こうでもこちら側でも、どちらにも同じように“ただ毎日を生きる人々”がいるからだ。油田と、銃声と、軍隊の行進と隣り合わせの世界。そこに暮らしているからこそ感じられる一条の希望と、懸命に生きようとする人々の姿が確かに見えてくるはずだ─。
ベルリン、ヴェネチアをドキュメンタリー映画で初めて制した名匠ジャンフランコ・ロージが
美しくも詩情豊かな映像とともに照らし出す、痛みとその先にある希望

ジャンフランコ・ロージは、2013年度ヴェネチア国際映画祭金獅子賞『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』、2016年度ベルリン国際映画祭金熊賞、2017年度アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞ノミネート『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』でベルリン、ヴェネチアをドキュメンタリー映画で初めて制し、アカデミー賞®ノミネートも果たした名匠。『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』では、ローマを囲む環状高速道路の周辺につつましく暮らす市井の人々、続く『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』では、イタリア最南端にあるランペドゥーサ島の島民と、その島に中東やアフリカから命懸けで辿り着いた難民や移民の姿とを対比して描いた。
本作の原題「NOTTURNO」は、「夜想曲」あるいは「夜」を意味するイタリア語である。「『国境の夜想曲』は光の映画であり、暗闇の映画ではありません、人々の驚くべき、生きる力を物語っています。この映画は戦争の闇に陥った人間への頌歌です」とロージ監督は言う。
ロージ監督はインタビューやナレーション、テロップなど通常のドキュメンタリー映画で使用される手法を一切用いず、その場所で暮らす人々や、風景の中にカメラを構え、話を聞き、ただ静かに彼らを見つめる。そこに腰を据え、彼ら自身が語り始めるのを待って、はじめて紡がれる真実の言葉。テレビやインターネットで毎日流されるニュースでは決して報道されることのないその地を生きる人々の日々の営み。悲しみの中でも輝きを放つ“生”を映し出したその映像の詩的な美しさに誰もが圧倒される。それこそが本作を唯一無二の至高の作品と至らしめる理由だ。



STORY
舞台はイラク、シリア、 レバノン、クルディスタン。
哀悼歌
かつて牢獄として使われたであろう小部屋の中、女性たちが亡き家族の痕跡を探し、嘆き悲しむ。息子を失った母親が哀悼歌を歌い上げる。
釣り人
油田の炎が夜空を染める中、遠くに銃声が響く。バイクを川辺に止め、小舟に乗り込み川を下り、男は釣りの仕掛けを投げ入れる。銃声と隣り合わせに毎日の糧を得る方法。
恋人たち
活気あふれる夜景を見下ろし、シーシャ(水たばこ)を嗜むカップル。部屋で正装に着替え、太鼓を片手に詠いながら、男性は夜の街をねり歩く。
ペシュメルガ
自分たちの国を持たないクルド人たちの自治区の治安部隊ペシュメルガ。ISISの襲撃を見張りつつ、クルドの独立を目指す。一時も休まらずに、銃を構え続ける兵士たち。
精神病棟での演劇
精神科病楝。患者たちが芝居の練習をしている。祖国で起こった悲劇を描いたシナリオ。「我々は祖国を売らない」
少年
夜明け前から家族のために、海で魚を捕らえ、草原で猟をする少年。時には猟師のガイドをして日銭も稼ぐ。幼い兄弟たちが起きてきたころ、また少年は眠りにつく。自分の時間などない生活。
難民キャンプ
アメリカ国旗がたなびく難民キャンプでは子供たちの声が飛び交う。また今日も、新たな家族がやってくる。
子供たちの記憶
まだ幼いヤジディ教の子供たちが描いた絵。「夜眠れなくなるの」ISISに襲われた記憶を語る。「もう大丈夫、ここは安全よ」と語りかけるカウンセラー。
囚人たち
オレンジ色の囚人服を着た大勢の男たち。高い壁に囲まれた刑務所の広場の中で、思い思いに歩き、身体を伸ばす。そんな時間もつかの間、また、暗い部屋で折り重なるように身をひそめる。
娘のメッセージ
ISISに連れ去られた娘が残した音声メッセージ。「すごく怖い」「これが最後かもしれない」スマートフォンの中に残された音声を、涙をぬぐいながら何度も聞き続ける母親。
廃墟となった街々、訓練をする兵士たち、油田の炎と銃声。
それぞれの国境地帯で、それでも生きていく人々の生活が映し出される。

監督・撮影・音響
ジャンフランコ・ロージ
Gianfranco Rosi
1964年、エリトリア国アスマラ生まれ。イタリアとアメリカの国籍を持つ。エリトリア独立戦争中、13歳で家族と離れてイタリアへ避難。青年期をローマとイスタンブールで過ごす。イタリアの大学卒業後、1985年にニューヨーク大学フィルム・スクール卒業。その後、インドを旅し、1993年に制作と監督を務めた、ガンジス河岸の船乗りについての中編「Boatman(原題)」が、サンダンス、ロカルノ、トロントを含む様々な国際映画祭で上映され、成功を収めた。2008年、カリフォルニア州スラブ・シティで海抜40メートルの砂漠平原に暮らすホームレスのコミュニティについての初長編ドキュメンタリー「Below Sea Level(原題)」が、ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門ドキュメンタリー賞、Doc/It賞を受賞したほか、シネマ・ドゥ・リールでグランプリとヤング審査員賞、ワン・ワールド国際人権映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞、バーリ国際映画祭ではヴィットリオ・デ・セータ賞を受賞、ヨーロッパ映画賞で最優秀ドキュメンタリー賞にノミネートされた。2010年、メキシコの麻薬カルテルの殺し屋から、警察協力者となった人物のインタビュー映画「El Sicario, Room164(原題)」を撮影。ヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞、Doc/It賞を受賞、リスボン国際ドキュメンタリー映画祭とテルアビブ国際ドキュメンタリー映画祭でそれぞれ最優秀映画賞を受賞。2013年の長編映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』はベルナルド・ベルトルッチ監督、坂本龍一ら審査員に絶賛され、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。ドキュメンタリー映画では初の快挙として話題を呼んだ。この作品がジャンフランコ・ロージ監督初の日本劇場公開作品となり、連日満席のロングランヒットとなった。2016年、ランペドゥーサ島の住人や漁師、移民の物語『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』では、審査員長のメリル・ストリープが絶賛し、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。ヴェネチアに続き、ドキュメンタリー映画で初の最高賞受賞、その年のアカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされた。本作『国境の夜想曲』はヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出され、ユニセフ賞のほか、3冠に輝いた。
Filmography
(表記は制作年)
* 1993
Boatman (原題)
* 第10回サンダンス映画祭 正式出品
* 第14回ハワイ国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞
* 2001
Afterwords(原題)|共作|
* 第58回ヴェネチア国際映画祭 ニューテリトリー部門正式出品
* 2008
Below Sea Level(原題)
* 第65回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門 ドキュメンタリー賞、Doc/It賞
* 第31回シネマ・ドゥ・リール賞
* グランプリ、ヤング審査員賞
* 第10回ワン・ワールド国際人権映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞
* 第1回バーリ国際映画祭 ヴィットリオ・デ・セータ賞(最優秀ドキュメンタリー賞)
* 2010
El Sicario, Room 164(原題)
* 第67回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門、国際批評家連盟賞、Doc/It賞、バイオグラフィルム・ランチア賞
* 第8回リスボン国際ドキュメンタリー映画祭 最優秀映画賞
* 第13回テルアビブ国際ドキュメンタリー映画祭 最優秀映画賞
* 2013
ローマ環状線、めぐりゆく人生たち
* 第70回ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞、若い批評家賞
* 第10回セビリア・ヨーロッパ映画祭 銀賞
* 第28回チャック・ドーロ 最優秀音響賞
* 2016
海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~
* 第89回 アカデミー賞®外国語映画賞イタリア代表選出、長編ドキュメンタリー賞ノミネート
* 第66回 ベルリン国際映画祭 金熊賞〈グランプリ〉エキュメニカル審査員賞、アムネスティ・インターナショナル賞、ベルリーナー・モルゲンポスト紙読者審査員賞
* 第56回 イタリア・ゴールデングローブ賞 大賞
* 第70回 ナストロ・ダルジェント賞 特別ドキュメンタリー賞
* 第7回 バーリ国際映画祭 編集賞
* 第21回 カプリ・ハリウッド国際映画祭 年間最優秀ヨーロッパ映画賞
* 第31回 チャック・ドーロ 最優秀編集賞
* 第10回 シネマ・アイ・オナーズ アンフォゲッタブルズ賞
* 第32回 国際ドキュメンタリー協会賞 撮影賞
* 第29回 ヨーロッパ映画賞 ドキュメンタリー賞
* 第37回ロンドン映画批評家協会賞 ドキュメンタリー賞
* 2020
国境の夜想曲
* 第77回ヴェネチア国際映画祭 ユニセフ賞、ヤング・シネマ賞 最優秀イタリア映画賞、ソッリーゾ・ディベルソ賞 最優秀イタリア映画賞
* 第33回東京国際映画祭正式出品
* 山形国際ドキュメンタリー映画祭2021コンペティション部門正式出品
* 第25回カプリ・ハリウッド国際映画祭 ヨーロッパ映画賞
* 第75回ナストロ・ダルジェント賞 Silver Ribbon of the Year
* 第24回オンライン映画批評家協会賞 最優秀非アメリカ作品賞
* 第17回セビリヤ・ヨーロッパ映画祭 最優秀撮影賞

BACKGROUND
『国境の夜想曲』を読み解くためのキーワード
舞台となる国と地域
シリア(シリア・アラブ共和国)
首都:ダマスカス|主な言語:アラビア語|主な宗教:イスラム教が大半(スンニ派が多く、その他アラウィー派、ドゥルーズ派など)、キリスト教。
イラク(イラク共和国)
首都:バグタード(バグダット)|主な言語:アラビア語、クルド語など|主な宗教:イスラム教(スンニ派、シーア派)、キリスト教など。
レバノン(レバノン共和国)
首都:ベイルート|主な言語:アラビア語|主な宗教:キリスト教(マロン派、ギリシャ正教、ギリシャ・カトリック、ローマ・カトリック、アルメニア正教)、イスラム教(シーア派、スンニ派、ドゥルーズ派)など。
クルディスタン
トルコ、シリア、イラク、イランの国境にまたがる山岳地域。クルド族の居住地。北西イランのマハーバードでは1946年にクルド人民共和国が樹立されたがイラン軍によって解体された。国連安全保障理事会はイラク北部北緯36度以北の地域をクルド人のための安全地帯と定め、多国籍軍が監視している。
宗教・宗派
ジハード
「全力を尽くして努力する」「真実を知るための努力」などの意味のアラビア語。イスラム教の文脈のなかで、イスラム過激派の解釈では神の道のために異教徒と戦う「聖戦」という限定的な意味も持つ。「ジハーディスト」は9.11米同時多発テロ以降、イスラム過激派のテロ実行者を指す造語として欧米で使われるようになった。
スンニ派
イスラム教の多数派を指し、シーア派と対比して用いられる呼称。スンニはアラビア語のスンナ(範例)の形容詞形。彼らは「スンナと共同体の民」と自らを呼ぶが、その意味はムスリム共同体全体に伝えられた範例に従う者の意である。
シーア派
スンニ派とともにイスラム教を二分する諸分派の総称。スンニ派に比しその数は圧倒的に少ない。スンニ派と大きく異なる点として、イスラム世界の指導者はムハンマド預言者の子孫であるべきと主張。
ヤジディ教(ヤズィーディー、ヤズディ教)
イラク北部などに住むクルド人の一部で信じられている民族宗教。居住区はイラク北部に広がり、周辺の宗教勢力、武装勢力との対抗上、イスラム過激派武装勢力の攻撃対象となる。
武装集団と過激派
タリバン
アフガニスタンの公用語、パシュトゥー語で「学生たち」を意味する。1979~89年のソ連のアフガニスタン侵攻に抵抗したムジャヒディン(イスラム・ゲリラ組織の戦士)によって形成された。タリバンは、2001年9月11日の米同時多発テロが起きるまで、長年にわたって国際テロ組織アルカイダをかくまっていたとされる。2001年10月、アルカイダの撲滅を目指すアメリカ主導の有志連合軍が、アフガニスタンへの攻撃を開始。タリバンを権力の座から追放した。
アルカイダ
2001年9月の米同時多発テロの首謀者とされるサウジアラビア人のビンラディン容疑者が結成した国際テロ組織。旧ソ連のアフガニスタン侵攻と戦うイスラム戦士を支援するために1988年ごろ結成された。91年の湾岸戦争で米軍がサウジアラビアに駐留すると、対アメリカ聖戦に転換し、98年のタンザニア・ケニア米大使館同時爆破事件など複数の大規模テロを行った。11年5月にパキスタンで米軍特殊部隊の攻撃によりビンラディン容疑者は殺害された。
ISIS(イスラム国)
イスラム教スンニ派の過激派組織。一時、シリアやイラクにまたがる地域を支配し、2014年6月、イスラム法の過激な解釈に基づいた「国家」の樹立を一方的に宣言した。国際テロ組織「アルカイダ」を母体とするが、アルカイダの命令に従わず、「破門」にされた経緯がある。イスラム教の預言者ムハンマドの後継者「カリフ」が全世界のイスラム教徒を指導するとした「カリフ制」の再興と、植民地として中東で人為的に引かれた国境線の廃止などを目指している。「ジハード(聖戦)」を呼びかけ、異教徒や外国人、支配を拒否する現地住民などに対する残虐な行為で知られる。指導者・アルバグダディは、2019年にアメリカ軍の作戦によりシリア北西部で殺害したとアメリカ政府が発表。
ムジャヒディン軍
イラク・フセイン政権崩壊後の2004年11月に結成されたスンニ派武力勢力。イラクに駐留する多国籍軍の排除などを掲げてきたが,2011年12月の駐留米軍撤退後は,政府の打倒に重点を置き,主に北部・キルクーク県や西部・アンバール県で治安部隊などに対する攻撃を行ってきたとされる。
ペシュメルガ
イラク北部クルド自治政府の治安部隊。クルド語で「死と対たい峙じ する者」を意味し、強力な装備と練度の高さから、戦闘力は一国の軍隊に匹敵するとされる。兵力は約22万人で、クルド自治区の治安維持を担う。クルド独立を目指す戦闘集団として組織され、一時は内戦で分裂。
クルド女性防衛部隊(Women’s Protection Units [略称YPJ])
2012年に左翼民兵クルド人民防衛隊(YPG)の女性旅団として設立された、武装集団。YPGとYPJは、ロジャヴァと呼ばれる、シリア北部から北東部を事実上統治しているクルド人連合の武装部門である。
【参考文献】「中東から世界が見える イラク戦争から「アラブの春へ」」(酒井啓子・岩波ジュニア新書・岩波書店)/「イスラーム国の衝撃」(池内恵・文春新書・文藝春秋)/「ジャスミンの残り香―― 「アラブの春」が変えたもの」(田原牧・集英社)/ 朝日新聞/ 毎日新聞/ 日本経済新聞/ 時事通信/Wikipedia / ニューズウィーク日本版/PRESIDENT Online /NHK NEWS WEB 中東解体新書/WIRED/ withnews
周辺地図
ISIS(イスラム国)は2014~ 15年に中東での支配地域を最大にしたが、アメリカ主導の有志連合やロシアなどが軍事作戦を本格化させたことや、中東の各地域の武装勢力が攻勢を強めたことから退潮した。しかし、2016年以降は世界各国の武装組織とイデオロギー的なつながりにおいて活動地域を拡げ、多くの国の安全にとって脅威とみなされている。
kino cinéma 横浜みなとみらい:10:10-11:55 (104分)
https://www.chunichi.co.jp/article/410480
ドキュメンタリー映画『国境の夜想曲』ジャンフランコ・ロージ監督×『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』濱口竜介監督のスペシャル対談【2022年2月
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』と『海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜』でベルリン、ベネチアをドキュメンタリー映画で初めて制し、アカデミー賞ノミネートも果たした名匠ジャンフランコ・ロージの監督最新作『国境の夜想曲』が、2022年2月11日(金・祝)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開される。
『国境の夜想曲』は、3年以上の歳月をかけて、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影された。この地域は2001年の9.11米同時多発テロ、2010年のアラブの春に端を発し、直近ではアメリカのアフガニスタンからの撤退と、現在と地続きで、侵略、圧政、テロリズムにより、数多くの人々が犠牲になっている。
そんな幾多の痛みに満ちた場所をロージ監督は通訳を伴わずにひとり旅をし、そこに残された母親や子供、若者の声に耳を傾け続けた。母親たちの死を悼む哀悼歌、癒えることのない痛みを抱えた子供たち、精神病院の患者たちによる政治の無意味さについての演劇。そこには夜の暗闇から、一条の希望を見出し生きようとする者達の姿があった──。
このたび、ジャンフランコ・ロージ監督と、現在進行形で全米の映画賞を席巻し続けている『ドライブ・マイ・カー』とベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲得した『偶然と想像』がどちらも大ヒット上映中の濱口竜介監督とのスペシャルな対談が実現。
昨年のベルリン国際映画祭では、審査員を務めたロージ監督から「濱口の言葉は物質であり、音楽であり、素材なのです」と称賛の言葉を受け取った濱口監督。ロージ監督は前作『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』がベルリン国際映画祭で最高賞にあたる金熊賞を受賞、濱口監督はまもなく開幕するベルリン国際映画祭コンペティション部門の審査員を務めるなど深い縁で結ばれたふたり。
予定していた対談時間は30分だったが、対話は白熱し、気がつけば90分経っていた。そのほんの一部が解禁となった。
監督・撮影・音響:ジャンフランコ・ロージ
イタリア・フランス・ドイツ/2020年/104分/アメリカンビスタ(1:185)/アラビア語・クルド語/原題:NOTTURNO
配給:ビターズ・エンド
(C) 21 UNO FILM / STEMAL ENTERTAINMENT / LES FILMS D’ICI / ARTE FRANCE CINÉMA / Notturno NATION FILMS GмвH / MIZZI STOCK ENTERTAINMENT GвR bitters.co.jp/yasokyoku