映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」予告編(出演:マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ)
「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」作品情報:http://www.kinenote.com/main/public/c…
監督:トッド・ヘインズ
出演:マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ
劇場公開日:2021/12/17
作品情報:http://www.kinenote.com/main/public/c…
公式サイト:https://dw-movie.jp/
(C) 2020 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
「ダーク・ウォーターズ」予告編
『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』アン・ハサウェイ_ロングインタビュー映像
巨大企業の隠蔽を暴き、独りで闘った弁護士の実話を基に描く。
これは―あなたにも起こりうる物語。
12/17(金)TOHOシネマズ シャンテ他ロードショー
https://eiga.com/movie/92287/
環境汚染問題をめぐって1人の弁護士が十数年にもわたり巨大企業との闘いを繰り広げた実話を、環境保護の活動家という一面も持つマーク・ラファロの主演・プロデュース、「キャロル」のトッド・ヘインズ監督のメガホンで映画化。1998年、オハイオ州の名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロットが受けた思いがけない調査依頼。それはウェストバージニア州の農場が、大手化学メーカー・デュポン社の工場からの廃棄物によって土地が汚され、190頭もの牛が病死したというものだった。ロブの調査により、デュポン社が発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流し続けた疑いが判明する。ロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏み切るが、巨大企業を相手にする法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れていく。ロブの妻役をアン・ハサウェイが演じるほか、ティム・ロビンス、ビル・プルマンらが顔をそろえる。
2019年製作/126分/G/アメリカ
原題:Dark Waters
配給:キノフィルムズ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ダーク・ウォーターズ_巨大企業が恐れた男
https://www.focusfeatures.com/dark-waters
公式サイト:https://dw-movie.jp
すべては1本の新聞記事から始まった―
全米を震撼させた実話に基づく衝撃の物語
2016年1月6日のニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたその記事には、米ウェストバージニア州のコミュニティを蝕む環境汚染問題をめぐり、ひとりの弁護士が十数年にもわたって巨大企業との闘いを繰り広げてきた軌跡が綴られていた。そしてこの驚くべき記事は、マーベル・シネマティック・ユニバースのブルース・バナー/ハルク役で絶大な人気を博した実力派俳優マーク・ラファロの心を動かした。環境活動家でもあるラファロは、プロデューサーも兼任して映画化に向けて動き出した。ロブをスーパーヒーローでも聖人でもない生身の人間として体現し、観る者の深い共感を呼び起こす。世界有数の化学企業を敵に回したことで生じる強烈なプレッシャー、公私両面の凄まじいストレスなどの“正義の代償”を伝える一方、弱き者を救おうとする弁護士の揺るぎない信念を感動的に演じきった。人命さえ脅かす化学物質の存在が身近な恐怖として描かれ、闇の中の真実をひたむきに追求するロブの姿から目が離せない。
トッド・ヘインズ監督×マーク・ラファロ×アン・ハサウェイ
世界的な鬼才と実力派キャストの豪華タッグが実現!
ラファロを盛り立てる脇役のキャストにもビッグネームが集結した。『レ・ミゼラブル』でアカデミー賞助演女優賞に輝いたアン・ハサウェイがロブの最大の理解者である妻サラに扮し、『ミスティック・リバー』で同じくアカデミー賞助演男優賞を受賞したティム・ロビンスがロブの威厳ある上司タープを演じる。そしてラファロからの直々のオファーを快諾し、本作のメガホンを執ったのはトッド・ヘインズ。カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『ベルベット・ゴールドマイン』『キャロル』、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた『エデンより彼方に』などで知られる鬼才が、実話に基づく社会派リーガル・ドラマという新境地に挑み、卓越した語り口で観る者を魅了する。
無謀とも思える
巨大企業との闘いに身を投じた
独りの弁護士に光をあてる
STORY
1998年、オハイオ州の名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロットが、見知らぬ中年男から思いがけない調査依頼を受ける。ウェストバージニア州パーカーズバーグで農場を営むその男、ウィルバー・テナントは、大手化学メーカー、デュポン社の工場からの廃棄物によって土地を汚され、190頭もの牛を病死させられたというのだ。さしたる確信もなく、廃棄物に関する資料開示を裁判所に求めたロブは、“PFOA”という謎めいたワードを調べたことをきっかけに、事態の深刻さに気づき始める。デュポンは発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流してきたのだ。やがてロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏みきる。しかし強大な権力と資金力を誇る巨大企業との法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れていくのだった……。
CAST / STAFF
ロブ・ビロット/製作
マーク・ラファロ
1967年11月22日アメリカ合衆国ウィスコンシン州ケノーシャ生まれ。舞台で活動をはじめ、最初に注目されるきっかけとなったオフブロードウェイで上演された「This is Our Youth」では、ルシール賞の主演男優賞を獲得した。2006年、リンカーンセンター劇場で上演された「Awake and Sing!」で、ブロードウェイデビューを果たし、トニー賞にノミネートされた。その後、2000年には、『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』(ケネス・ロナーガン監督)で主演に抜擢され、高い評価を得た。『キッズ・オールライト』(10/リサ・チョロデンコ監督)では、アカデミー助演男優賞、映画俳優組合賞、英国アカデミー助演男優賞、そしてインディペンデント・スピリット賞にノミネートされたのに加え、ニューヨーク映画批評家協会の助演男優賞を受賞。さらに世界的大ヒットシリーズとなったマーベルスタジオ『アベンジャーズ』(12~)でブルース・バナー/ハルク役を演じ好評を博す。『フォックスキャッチャー』(14/ベネット・ミラー監督)ではオリンピックに出場したレスリング選手故デヴィッド・シュルツを演じ、アカデミー助演男優賞、ゴールデングローブ賞、映画俳優組合賞、そして英国アカデミー助演男優賞にノミネート。そして2016年アカデミー作品賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』(トマス・マッカーシー監督)で3度のアカデミー助演男優賞にノミネートされている。2011年には、『シンパシー・フォー・デリシャス』で監督デビューを果たす。また、気候変動問題に取り組み、再生可能エネルギーを増進させることを提唱している。2011年3月、エネルギー抽出が水と公衆衛生に及ぼす影響に関するアウェアネスを高めるため、Water Defenseを共同設立。ガーディアン紙とハフィングポストに定期的に寄稿しており、環境に関するリーダーシップを称えるグローバル・グリーン・ミレニアム賞とミーラ・ガンディ・ギビング・バック財団賞を受賞。さらに、タイム誌で、2011年の最も影響力のある人の1人に選ばれたほか、2013年には、リバーキーパーのビッグフィッシュ賞を受賞した。2012年には、再生エネルギーの実現可能性を示す科学、ビジネス、カルチャーを伝えるという使命の一環として、ザ・ソリューションズ・プロジェクトの立ち上げに尽力した。
両親はイタリア系アメリカ人。米ステラ・アドラー音楽学校で学んだ後、舞台役者としてデビューするもなかなか売れずにいたが、2000年に以前から親交のあるケネス・ロナーガンが監督した映画「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」の主演に抜てきされ、インディペンデント・スピリット・アワードにノミネート。その後も演劇界で活動し、ブロードウェイデビュー作「Awake and Sing!」で06年度トニー賞のノミネートを受ける一方で、ハリウッドを代表する監督の作品にも多く出演。「キッズ・オールライト」(10)でアカデミー助演男優賞に初ノミネートされた。10年には初監督作品「シンパシー・フォー・デリシャス」がサンダンス映画祭で特別審査員賞を受賞。世界的大ヒットを記録したマーベルの「アベンジャーズ」シリーズ(12~)では、ブルース・バナー/ハルク役で好評を博す。実話をもとにした「フォックスキャッチャー」(14)で再びアカデミー助演男優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞では同作で映画ドラマ部門の助演男優賞、TV映画「ノーマル・ハート」(14)でテレビ部門(ミニシリーズ・TV映画)の主演男優賞にノミネートされる。翌16年にも「Infinitely Polar Bear(原題)」(15)でゴールデングローブ賞コメディ/ミュージカル部門の主演男優賞にノミネートされ、「スポットライト 世紀のスクープ」(15)でアカデミー助演男優賞の候補となった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/マーク・ラファロ
サラ・バーレイジ・ビロット
アン・ハサウェイ
1982年11月12日アメリカ合衆国ニューヨーク州ブルックリン生まれ。2001年『プリティ・プリンセス』(ゲイリー・マーシャル監督)で映画デビュー。大ヒットした『プラダを着た悪魔』(06/デヴィッド・フランケル監督)で大ブレイク、一躍人気女優となる。高い評価を得た『レイチェルの結婚』(08/ジョナサン・デミ監督)で、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、映画俳優組合賞にノミネートされたほか、全米批評家協会、シカゴ映画非批評家協会、ブロードキャスト映画批評家協会の主演女優賞を獲得した。2012年には、大ヒットミュージカルを映画化した『レ・ミゼラブル』(トム・フーパー監督)でファンテーヌを演じ、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、映画俳優組合賞、そして英国アカデミー賞の主演女優賞を獲得した。近年の主な出演作は、『インターステラ―』(14/クリストファー・ノーラン監督)、『マイ・インターン』(15/ナンシー・マイヤーズ監督)、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(16/ジェームズ・ボビン監督)、『オーシャンズ8』(18/ゲイリー・ロス監督)、『セレニティー:平穏の海』(19/スティーヴン・ナイト監督)、『魔女がいっぱい』(20/ロバート・ゼメキス監督)、Netflixオリジナル『マクマホン・ファイル』(20/ディー・リース監督)など。またテレビ番組のアフレコでも成功を収めており、「ファミリー・ガイ」や「シンプソンズ」ではエミー賞を受賞している。2016年には、国連女性機関の親善大使に任命され、女性のための職場における平等を構築しサポートするため、ポジティブな思考と現実的な取り決めを促進するために尽力している。また、慢性疾患や命に係わる病に苦しむ子どもたちのために、病院で映画を上映する活動をしているロリポップ・シアター・ネットワークの諮問委員も務めている。さらに最近、ナイキ基金の「ガール・エフェクト」の活動も始めた。
監督
トッド・ヘインズ
1961年1月2日アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。子供の頃から芸術に興味を抱くようになり、ブラウン大学では芸術と記号学の学士号を取得。卒業後はニューヨークに移り、1987年に歌手カレン・カーペンターの生涯と死とをバービー人形を使って表現したことで物議をかもした短編映画『Superstar: The Karen Carpenter Story(原題)』を発表する。1991年、長編映画監督デビュー作となった挑発的な作品『ポイズン』は、サンダンス映画祭審査員賞を獲得し、その後ニュー・クイア・シネマと呼ばれるようになったものの先駆けとなった。監督二作目となった『SAFE』(95)では、ジュリアン・ムーアが環境のせいで病気になる主婦を演じた。この作品はその後、ヴィレッジ・ヴォイス紙での評論家たちの投票で、1990年代のベスト映画に選出された1970年代初めのグラムロックブームへのオマージュ作品『ベルベット・ゴールドマイン』(98)は、1998年カンヌ国際映画祭の公式セレクション作品としてプレミア上映され、特別審査員賞を獲得した。続く『エデンより彼方に』(02)は、批評家から高い評価を得るとともに興行的にも成功を収め、脚本賞を含め、アカデミー賞4部門にノミネート、その他にもインディペンデント・スピリット賞の監督賞などいくつかの賞に輝いた。『アイム・ノット・ゼア』(07)は、ボブ・ディランの生涯と作品を、7人の架空のキャラクターを通して想像したもので、再び高い評価をもたらした。2011年、ケイト・ウィンスレットが主演したテレビシリーズ「ミルドレッド・ピアース 幸せの代償」で、共同脚本、監督を兼務し、エミー賞21部門にノミネート5部門で賞を獲得。ゴールデングローブ賞3部門にもノミネートされた。パトリシア・ハイスミスの独創的な小説「キャロル」を元にした『キャロル』を2015年に発表。ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが主演、アカデミー賞6部門、ゴールデングローブ賞5部門、英国アカデミー賞9部門にノミネートされた。また、英国映画協会(BFI)により、史上No1のLGBT映画に選ばれた。ブライアン・セルズニック(著者自ら脚色)の小説を元にした『ワンダーストラック』は、2017年カンヌ国際映画祭のパルムドールにノミネートされたほか、複数の批評家協会や映画関係団体の賞にノミネートされた。
監督トッド・ヘインズからのステートメント
マーク・ラファロからプレゼントをもらうなんて、滅多にないことだ。でもそうとしか説明できないものから始まって、最終的に出来上がったのが本作『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』なのだ。
このプロジェクトが私の元にやってきたのは、ナサニエル・リッチが書いた画期的な記事がニューヨーク・タイムズ誌に掲載されてから、わずか一年後だった。その時点でプロジェクトはすでに、マーク・ラファロとパーティシパント社のもとで、順調に軌道に乗っていた。初めて記事を読んだとき、不屈の企業弁護士ロブ・ビロットのストーリーと、それによって図らずも露呈したデュポン社とテフロンのストーリーに、多くの人同様、私も驚き、憤慨した。
ドラマ化することがどれほど大変になるとしても、そのストーリーは今なお続いている企業の不正を明確に示しており、文化、政治にも強く関連しているものだった。監督には才能ある人々の名前が脳裏をよぎるようなプロジェクトだったけれど、なぜかマークは私のことを思い浮かべてくれた。
マークは知る由もなかったが、私はこのジャンル、つまり内部告発もののひそかなファンだった。アラン・パクラ(とゴードン・ウィリス)による1970年代の『コールガール』、『パララックス・ビュー』、『大統領の陰謀』のパラノイア三部作や、その後のマイク・ニコルズ監督作『シルクウッド』やマイケル・マン監督作『インサイダー』に心底敬服しているのは、私だけではないだろう。ただ、権力が犯した過ちを明らかにすること以外にも、私の心をとらえる何かがこれらの作品にはあった。(リチャード・ニクソンがいかに腐敗していたかを知るために『大統領の陰謀』を見る人はいない)。もちろんこれらの作品では、企業や業界によるものであろうと、政府によるものであろうと、権力の乱用や脅迫や隠ぺいが明かされる。実際、それが物語に期待されるものであり、そうした期待が、物語に先立って実社会で高まることもよくあることだ。しかし、内部告発映画の真に焦点をあてるのは平凡な人間であり、彼または彼女のたどる過程であり、真実に立ち上がることでその人物が直面する、致死的とまではいかないにしても、精神・感情面の危機である。
本作の主人公ロブ・ビロットは、思いがけなく卓越したヒーローとなる。デュポン社に関して発見した事実によって、彼がそれまで企業活動に抱いていた憶測が根底から覆される。懐疑的で無党派、そして生まれつき用心深いロブ・ビロットは、多くの典型的な内部告発者同様、物語が始まる段階で既に孤立している。そして予想通り、その後に起きる出来事はどれも、彼の孤立を深めるものばかりだ。そうした孤立やスティグマ(汚名、差別)が、この物語のきっかけとなったウィルバー・テナントも味わうものであり、相互依存関係にある彼らのネットワーク中に広がってゆき、階級の違いを超え、彼らの社会、家庭、教会での生活に害を及ぼす様子から、独特で陰湿な形で波及していくことが見て取れる。(社会、家庭、教会での)人との繋がりがあったとしても、強力な利害関係に立ち向かうことで、自分の世界は縮小し、心身の力は削がれてゆく。『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』のような映画は、そうした分裂を事細かく描写するものだ。
本作では、素晴らしいクリエイティブチームに囲まれながら、ウェストバージニア州シンシナティでロケーション撮影を行った。撮影期間の大半は厳冬期だった。実際のロケーションの多くで撮影することができ、また、地元で活躍する素晴らしい俳優たちを、才能ある出演陣に迎え入れることもできた。対照的な場所同士を冷静で客観的なスタイルで結び付けて、それらの場所が互いに依存し合っていることを強調しようと試みた映像に、時期と場所の特異性が感じ取れる。そこから浮かび上がってくるのは、複雑で、ときに相矛盾するアメリカの風景である。ただし、経済力の境界線は、その限界に直面させられながらも、明確に引かれている。
ウィルバー・テナントの裁判とその後に続いた歴史的な集団訴訟が起こりえたのは、こうした矛盾、またはありえなさの結果によるところが大きい。化学工業界のために働いてきた企業弁護士が、立場を反転させて、デュポン社のような巨大企業に立ち向かう。そんなありえなさこそが、成功するための時間とリソースをロブに与えた。したがって、トム・タープとタフト法律事務所の承認なしには、起こりえなかったことだ。同様に、ウィルバー・テナントやジョー・カイガーの強い意志と粘り強さ、ウェストバージニア州における医療モニタリングに関する裁定、オハイオ州とウェストバージニア州の法律をリンクさせる「2州」戦略、あるいはビロットが妻のサラから得たサポートと平静さ。それらがなかったとしたら、この驚くべき結果を得ることも、パーフルオロオクダンスルホン酸(PFOA)のようなフォーエバーケミカル(永遠の化学物質)が、私たちの生活のあらゆる場所に潜んでいることを世界の人々が知ることができたことも、想像しがたい。
しかしながら、こうした映画がスラムダンクで終わることはほとんどなく(何と言っても、こうした映画は大抵の場合、実話に基づいているから)、本作も例外ではない。勝利から得る恩恵の代わりに、最後に描かれるのは、継続している状況としての戦い、知識と絶望との間で不完全な形で生きるための下地としての戦いである。そうすることで、我々全員を(我々自身のものになる)物語の中に留めているのだ。
この『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』では、一つの地域、一つの国の大気汚染・水質汚染として始まったものが、結果として、世界中の人々の血を汚染する問題になり、資本家やイデオロギーシステムの直接の被害者になっていないとしても、我々を、地球の住民としての相互に結び付けた。この人災の規模の大きさにおいて、我々は常につながっている。正義を求める終わりなき戦いと、自分たちの命を守るための戦いの中で、ロブとウィルバーを、タフト法律事務所とウェストバージニア州のパーカーズバーグをつないだように、我々を互いにつなげてくれるのは、知識とアウェアネスだ。
1978年、高校生の時に初の短編映画「The Suicide(原題)」を監督。名門ブラウン大学を卒業後、ニューヨークで創作活動を行い、バービー人形を使って「カーペンターズ」のカレン・カーペンターの生涯を描いた短編映画「Superstar: the Karen Carpenter Story」(87・日本未公開)が話題を呼ぶ。長編デビュー作「ポイズン」(91)では、3つのストーリーがテレビ番組をザッピングするように入り乱れた斬新な構成でまとめ上げ、サンダンス映画祭グランプリを受賞した。70年代前半に流行したグラムロックをモチーフにした「ベルベット・ゴールドマイン」(98)に続き、メロドラマ「エデンより彼方に」(02)でアカデミー賞やゴールデングローブ賞の脚本賞にノミネート、インディペンデント・スピリット・アワードでは監督賞に輝いた。6人1役でボブ・ディランの半生を描いた「アイム・ノット・ゼア」(07)では、ベネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞。女性同士の恋愛を描いた「キャロル」(15)では、ゴールデングローブ賞作品賞・監督賞にノミネートされた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/トッド・ヘインズ
横浜みなとみらいkinocinema:10:40-12:50 (126分)
https://eiga.com/news/20211211/3/
「世界に問題を警告する」トッド・ヘインズ×ティム・ロビンス 巨大企業が隠蔽した実話を描いた社会派「ダーク・ウォーターズ」を語る
社会派ドラマに挑戦したトッド・ヘインズ監督
環境汚染問題をめぐり、弁護士が十数年にもわたり巨大企業との闘いを繰り広げた実話を、環境保護の活動家という一面も持つマーク・ラファロの主演・プロデュース、「キャロル」のトッド・ヘインズ監督のメガホンで映画化した「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」。大規模水質汚染をめぐり、大企業デュポン社を相手に闘い続ける弁護士ロブの上司を演じたティム・ロビンスとヘインズ監督が、作品の重要性や見どころを語るインタビュー映像が公開された。
「エデンより彼方に」や「キャロル」など情感あふれるドラマ作で知られるヘインズ監督だが、この作品はまさに挑戦そのものだったという。「ずっと興味を持っていた分野だったが、ダークで説得力を持つ“世に警笛を鳴らす”物語だ。これは現実世界で起きていることだからハッピーエンドは存在しない」と強い口調で語る。
弁護士ロブの上司を演じた、ティム・ロビンス
ロビンスは、自身が演じたキャラクターについて言及し「この作品に出た理由は、この物語を広めたかったからだ」と明かす。さらに、「トッドがこの映画で見せてくれたのは、スリル満点で本当に怖いドラマだ。常に緊張感がある。問題を語ろうとする時、人間的なつながりやドラマがなければ何も伝わらない」とこの映画は魅力的な娯楽作品でありながら、問題提起の役割もあると説明する。
さらに「先日、完成した映画を見て感情に圧倒されたよ。見るのは2回目だったが改めて気づいた」と感想を語り、「ロブたちが受けた重圧は相当なものだ。そして孤独感もね。彼らは人生のすべてを危険にさらしたんだ。子どもの安全すらも守れない。残念ながら、これは実話だ」と映画の中だけではない事実の重さを伝える。
最後にヘインズ監督は「政府や法律に任せきりではダメなんだよ。そして“体制”にもね。頼れるのは自分だ。みんなが力を合わせて闘いに加わり、世界に問題を警告するんだ」と、観客にに対しても真剣な面持ちで呼びかけている。「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」は12月17日から公開。
https://eiga.com/news/20211205/7/
【「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」評論】マーク・ラファロと主人公の弁護士の信念がリンクし深い感動を呼ぶ
世界マーケット向けに娯楽超大作を生み出し続けているアメリカ・ハリウッドの映画産業。そんなハリウッド映画のスターであり、実力派俳優のひとりであるマーク・ラファロが主演とプロデューサーを兼任して、全米を震撼させた実話に基づく衝撃の物語を映画化した。巨大企業との闘いを描いた内容のため、場合によってはスターの地位を失う危険性もありそうなもの。しかし、主人公の弁護士と同様に、不屈の精神で本作を製作したラファロの熱い思いが見る者の胸を打ち、映画の持つ力を改めて感じさせてくれる。
もちろんこれまでにも「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」など、巨大企業のスキャンダルを描いたドキュメンタリー映画は数多くある。また、アメリカのタバコ産業の不正を描いた社会派ドラマ「インサイダー」なども製作されて高い評価を受けているが、この「ダーク・ウォーター 巨大企業が恐れた男」もよく映画化することができたなと、久々に感心させられた。
環境汚染問題をめぐって、ひとりの弁護士が十数年にもわたって巨大企業との闘いを繰り広げてきた軌跡が綴られた記事を、環境活動家でもあるラファロが読んで心を動かされ、映画化を決意したという。しかし、その巨大企業とはテフロン加工のフライパンなどで有名な大手化学メーカーのデュポン社である。映画化すれば、主人公のように強大な権力と資金力によって法定闘争に巻き込まれる可能性もあったはずだ。
だが、ラファロの揺るぎない姿勢は、自ら演じた主人公の弁護士ロブとリンクしてくる。しかも、主人公の妻サラ役を演じた「プラダを着た悪魔」「インターステラー」のアン・ハサウェイをはじめ、「ショーシャンクの空に」「ミスティック・リバー」のティム・ロビンス、ビル・プルマン、ビル・キャンプら実力派キャストが集結。さらに「キャロル」「エデンより彼方に」のトッド・ヘインズ監督が、ラファロからのオファーを快諾しメガホンをとっているではないか。
本作のコピーに「真実に光をあてるためにどれだけのものを失う覚悟があるのか―」とある。自らの大切なものを失うかもしれないことを覚悟して、巨大企業の隠ぺいを暴き、弱き者を救おうとすることは並大抵の信念ではないだろう。ラファロは、そんな弁護士ロブをヒーローや聖人として演じるのではなく、プレッシャーやストレスとも闘いながら、真実をひたむきに追及する生身の人間として感動的に演じ切っている。新型コロナウィルスの感染拡大を経験した私たちにとって、水質汚染問題もまた明日自分たちにも起こり得る物語で深い共感を呼び起こすだろう。真実とは、正義とは何か、社会派の法廷ドラマとしても見応え充分である。
(和田隆)
https://miyearnzzlabo.com/archives/77393
町山智浩『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』を語る
町山智浩 映画『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』2021.11.09
ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(原題:Dark Waters)
劇場公開日 2021年12月17日
・環境汚染問題をめぐって1人の弁護士が十数年にもわたり巨大企業との闘いを繰り広げた実話を、環境保護の活動家という一面も持つマーク・ラファロの主演&プロデュースで映画化。
監督 トッド・ヘインズ(キャロル、ベルベット・ゴールドマイン)
主演 マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ、ティム・ロビンス
https://matomame.jp/user/yonepo665/86da24142f7efa0c0c1b
【要注意】フライパンに危険物質「PFOA」(有機フッ素化合物)が含有? ラジオ「たまむすび」で話題に
https://ja.omatomeloanhikaku.com/dark-waters-8069
ダークウォーターを見た後、「永遠の化学物質」が怖いですか?知っておくべきことは次のとおりです。
映画「ダークウォーターズ」では、顧問弁護士のロバートビロットが、ウェストバージニア州の農家であるウィルバーテナントという珍しいクライアントを引き受けています。化学会社のデュポンが家畜が飲んだ小川の上流に埋め立て地を建設した後、テナントの牛は死に始めました。ビロットは現場で廃棄物の調査を開始し、テフロンの鍋、家具、カーペットの撥水および防汚仕上げに使用されたPFOA(ペルフルオロオクタン酸)と呼ばれ
映画「ダークウォーターズ」では、顧問弁護士のロバートビロットが、ウェストバージニア州の農家であるウィルバーテナントという珍しいクライアントを引き受けています。化学会社のデュポンが家畜が飲んだ小川の上流に埋め立て地を建設した後、テナントの牛は死に始めました。ビロットは現場で廃棄物の調査を開始し、テフロンの鍋、家具、カーペットの撥水および防汚仕上げに使用されたPFOA(ペルフルオロオクタン酸)と呼ばれる化学物質に関するデュポン独自の内部調査を明らかにしました。ビロットの研究は、最終的にウェストバージニア州パーカーズバーグの住民の大規模な研究につながり、飲料水からのPFOA曝露と、腎臓がん、潰瘍性大腸炎、甲状腺疾患などの多くの健康状態との明確な関連性を発見しました。デュポンは、EPAの歴史上最大の罰金である1650万ドルを支払い、さらに6億7100万ドルを、人身傷害訴訟を起こしたウェストバージニア州民3,535人に支払いました。
この映画は実話に基づいており、多くの詳細が正しいです(これがニューヨークタイムズマガジンの特集です)。実際、デュポンの労働者は、化学物質の効果をテストするためにテフロンレースのタバコを吸うことを志願した後、病気になりました。そして、テフロンで働いている7人の妊娠中の従業員のうちの2人は目の欠陥のある子供を持っていました。デュポンは、これらの症例と実験動物に関する数十年にわたる研究を何年にもわたって公の手から遠ざけていました。
それ以来、デュポンや他のアメリカ企業はPFOAの使用を段階的に廃止し、EPAはPFOAおよび関連する化学物質PFOSの健全な勧告しきい値を飲料水中70ppmに設定しました。ただし、これは強制力のある制限ではないため、代理店は現在、法的基準に取り組んでいます。しかし、何十年にもわたる汚染の遺産はまだ存在しています。PFOSとPFOAは環境中で長寿命です。そして最近、企業はリスクが少ないと信じている他の同様の化合物に軸足を移しました-PFAS、またはパーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質として知られている何千もの化学物質。これらの分子が今日でも私たちにどのように影響を与えているかについて知っておくべきことは次のとおりです。
パーフルオロ-何?
使用されている約5,000のPFASは界面活性剤であり、油や水を非常によくはじくことができます。それらはフッ素に結合した炭素原子の尾を持っており、この炭素-フッ素結合は壊れにくいです。 PFASの独自の特性により、消火剤、医療機器、焦げ付き防止鍋、防水ジャケット、家具、食品包装など、さまざまな用途に役立ちます。しかし、その化学構造は、PFASが自然に分解するのに数百年または数千年かかる可能性があるため、PFASが「永遠の化学物質」と呼ばれる理由でもあります。クラークソン大学の環境工学教授であるミシェル・クリミは、次のように述べています。 「今、私たちは意図しない結果をもたらしています。その1つは、環境に出た後は故障しない傾向があるということです。」
そして、何十年も使用した後、化学物質は事実上どこにでもあります。それらは永遠に付着するだけでなく、水溶性であるため、非常に動きやすくなっています。 2001年に、研究者は太平洋の真ん中に位置するミッドウェー環礁の砂島の白頭ワシとアホウドリのPFASを報告しました。ノートルダム大学の核物理学者で化学物質を研究しているグラハム・ピーズリー氏は、私たち人間の血液には約5ppbが含まれていると述べています。 PFASは生体内蓄積します。つまり、少量に継続的にさらされると、血液や組織に時間の経過とともに蓄積します。それらはまた生物拡大します、それは彼らが食物連鎖を上るにつれてそれらがより集中することを意味します、それで頂点捕食者は最も高い濃度を持っています。そのため、ホッキョクグマは約300ppbであることがわかっていますとPeasleeは言います。
「より安全な」代替案のリスク
PFASには、長鎖と短鎖の種類があります。 C-8とも呼ばれるPFOAは、8個の炭素原子の鎖を持ち、PFOSの長鎖カテゴリーに属します。現在、多くの主要メーカーがPFOSとPFOAを段階的に廃止し、短鎖の代替品に置き換えています。短鎖分子は体からより早く排出され、より安全になると考えられています。
しかし、短鎖PFASがより安全であることを実証するための研究はそれほど多くありません。そして、行われた研究は、「リスクレベルは少なくとも同等である」ことを示唆しています、とオーバーン大学の環境教授であり、短鎖化学物質に関する最近のレビューの著者であるDongyeZhaoは言います。動物実験では、短鎖PFAS化学物質が肝臓と甲状腺の健康に影響を与えています。
また、少量の長鎖化学物質と同じ非粘着性または撥水性の利点を得るには、より多くの短鎖PFASが必要ですとGraham氏は言います。つまり、業界の転換により、実際にはより多くの化学物質が環境に侵入する可能性があるということです。
そして、それは私たちが本当に心配する必要があるときです。当社の消費者製品を介した継続的な曝露は悪影響を与える可能性がありますが、科学者は土壌や水にPFASが蓄積することをより懸念しています。 PFASで裏打ちされたバッグが付いた電子レンジ用ポップコーンを作ると、ほとんどの化学物質は胃ではなく埋め立て地に行き着きます。バッグが劣化した後、「その化学物質は[埋め立て地]浸出液に含まれます。これは、PFASが通常の処理システムによって停止されず、地下水または地表水に入るため、処理システムを直接通過します。または私たちはそれを私たちの作物に入れました」とピーズリーは言います。 「つまり、あなたやあなたの子供たちは、今後500年間このようなものを食べることになるでしょう。」
注意が必要です
200人の科学者が署名した2015年の書簡で、著者は業界や機関にPFASの使用に注意を払うよう促しました。短鎖分子は血液や組織にそれほど蓄積されないかもしれませんが、それでも環境に蓄積します。科学者たちは、可能であれば他の非フッ素化合物を代替として使用するよう促し、政府に「PFASの本質的な使用のみを要求する法律を制定し、使用を示すためにラベルを強制する」よう求めた。
実際、Zhaoと同僚が行ったレビューでは、短鎖PFASについてもっと懸念する理由があるかもしれないと結論付けています。 「これらの短鎖化学物質は、同様の健康問題を引き起こす可能性があります」と彼は言います。 「しかし、それらはより移動性が高く、土壌への吸収性が低く、環境中でより持続性があります。そのため、チェーンが短いほど、さらに長期的な懸念が生じる可能性があると考えています。」
また、既存のPFASを除去するのは困難です。なぜなら、強力な化学結合を切断するには多くのエネルギーが必要だからです、とクリーンアップ方法を研究しているクリミは言います。有望な技術の1つは、化学物質を濃縮し、UV光を照射して化学物質を破壊することです。
PFAS、特に短鎖の種類について私たちが知らないことがまだたくさんあるのは事実ですが、多くの科学者は曝露を制限することが最善であると主張しています。 「私たちが学んでいる間、私たちは理解できる限り保護措置を実施し始める必要があります」とクリミは言います。 「多くの不確実性があるにもかかわらず、私たちはそれに向けて努力し続ける必要があります。」
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/dot/nation/dot-2021121400044
映画「ダーク・ウォーターズ」のモデルとなった弁護士が語る「永遠の化学物質」との20年の闘い
12月17日公開の映画『ダーク・ウォーターズ』は、一本の記事から生まれた。
<デュポンのこれ以上ない悪夢となった弁護士>
2016年1月6日付のニューヨーク・タイムズ紙はそんな見出しを掲げて、ひとりの弁護士の物語をつづった。米大手化学薬品メーカーのデュポンによる環境汚染を突き止め、健康被害を負った原告たちを率いて法廷闘争をつづける姿を紹介するものだった。
どんなに壁が高くても、大切なものを失いかけても、ひとりで挑む――。その姿に深く心を動かされた俳優のマーク・ラファロが主演・プロデュースして映画が生まれた。主人公のモデルとなったロバート・ビロット弁護士がインタビューに応じた。
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――そもそも、なぜこの問題にかかわることになったのですか。
「きっかけはある農夫が訪ねてきたことでした。『牛たちが次々に死んでいる』と言って、ビデオテープに収められた牛たちの無惨な姿を見せられたんです。とんでもないことが起きているとわかって、動かなければ、と。しかも、彼が住んでいるのは私の故郷でもある町でした。1990年代終わりのことです」
――勤務先は企業弁護を専門とする法律事務所だったのに、なぜ個人の依頼を受け、しかも大企業に刃向かう決断をしたのですか。
「まさか、このような争いになるとは想像していませんでした。汚染源がわかれば、簡単に解決できると思っていたのです」
――でも、牧場近くに廃棄物処理場をもっていたデュポンは責任を認めなかった。
「そうです。責任を認めないどころか、牛の飼育に問題があったというのです。農夫の代理人弁護士として訴訟を起こし、裁判所から文書提出命令を出してもらいました。デュポンの内部文書は、11万ページにも及び、段ボールで部屋が埋まるほどでした。古くは半世紀近く前のものもありました。1枚ずつ目を通して時系列に並べ、見慣れない単語を調べ、専門家にたずね……。化学の分野に門外漢の私は手探りで、その作業を繰り返していきました」
――その結果、汚染物質を突き止めたのですね。
「有機フッ素化合物のPFOAという物質です。デュポンは焦げつき防止のプライパンの製造に使ったPFOAを棄てていた。その記録を見つけたのです。ちなみに、沖縄の米軍基地による汚染でも知られているPFOSもそ有機フッ素化合物の一種です」
――法廷で闘いながら、流域住民の健康調査の実施と費用負担をデュポンに認めさせました。
「血液中に蓄積された有機フッ素化合物と病気との因果関係を探る調査ですが、7万人という過去に例のない規模だったこともあり、結論が出るまで7年かかりました。それは、腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎など六つの病気とPFOAの関連がありうる、とするものでした。それが2011年のことです」
――その後、3次にわたる集団訴訟を起こし、デュポン側から少なくとも約760億円を勝ち取ったのですね。
「でもまだ、この問題は解決したわけではありません。有機フッ素化合物が含まれる泡消火剤を使っていた消防士や、汚染された水に触れていた水道事業者など、訴訟は全米に広がっています」
――映画の終盤に印象的なシーンがあります。法廷で、裁判長から「まだ(原告代理人の席に)いるんですね」と声をかけられると、立ち上がった弁護士はこう答えます。「ええ、いまも」と。映画で描かれたとおり、20年以上たっても、闘いはまだ終わっていないのですね。
「PFOAとPFOSは規制されましたが、有機フッ素化合物は6000種類にのぼるとも言われています。焦げつき防止フライパンだけでなく、防水スプレーやレインコート、ハンバーガーの包装紙、さらには半導体や自動車製造の過程、そして泡消火剤などにも含まれています。アメリカの一企業の話でも過去の話でもない、ということを知ってほしいですね」
――東京でも汚染は確認されています。
「沖縄の米軍基地や大阪のダイキン工業の工場だけでなく、じつは、静岡・清水にあったデュポンの工場でもかつて工場労働者の血液から高濃度で検出されていたのです」
――日本では昨年、はじめて水質管理における有機フッ素化合物の目標値を、PFOSとPFOAの合計で50ナノグラムとしました。アメリカの勧告値を参考にしたものです。
「バイデン政権はつい1カ月ほど前、現在の勧告値(70ナノグラム)に代わる規制値を2022年秋にも打ち出すと発表しました。おそらく一桁になると思われます。いまよりはるかに厳しい値です。それだけ毒性が強いことがわかってきたのです。繰り返しになりますが、この問題は現在進行形でつづいているのです」
(諸永裕司)
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020021300006.html
沖縄の米軍基地から漏れ出す「永遠の化学物質」
米国内では至上命題と位置付けられているのに、沖縄では放置されている環境汚染(上)
島袋夏子 琉球朝日放送記者
2020年02月16日
ダークウォーターズ|米軍基地|PFAS|PFOA|PFOS
去年11月、アメリカで公開された映画「ダークウォーターズ」。
アメコミ映画「アベンジャーズ」シリーズに出演していたマーク・ラファロが主演を務め、アン・ハサウェイ、ティム・ロビンスなど、名だたるハリウッドスターが脇を固める話題作だ。
テーマとなっているのは、1990年代後半にアメリカ・ウェストバージニア州で実際に起きたピーフォア(PFOA)という有機フッ素化合物による環境汚染事件。農場で相次いだ牛の不審死に端を発し、真相究明に乗り出す実在の弁護士ロバート・ビロットと大企業デュポンとの闘いの日々が描かれている。
アメリカでは今、このピーフォアなどによる水の汚染が深刻だ。
ミシガン州では廃棄物処分場に捨てられたピーフォアで地下水が汚染された。また、学校の水が飲めなくなり、子どもたちにペットボトル入りの水を配っている地域もある。
だがここで述べたいのは、この問題が対岸の火事ではないということだ。
2016年1月、沖縄県企業局は沖縄本島中部にある北谷(ちゃたん)浄水場の取水源が、ピーフォス(PFOS)やピーフォアと呼ばれる有機フッ素化合物に汚染されていると発表した。影響を受けていたのは、7つの市町村の約45万人にも上る。
しかし対策を講じようにも、そこにはまた大きな壁が立ちはだかっていた。汚染源は「アメリカ軍基地」の中にあるとみられていたのだ。
アメリカ軍基地は、ブラックボックスだ。企業局の会見から4年が経った今も、責任を認めていない。
沖縄県も、いや、日本政府も、自分たちの土地で起きている問題にもかかわらず、アメリカ軍基地内に入って調査することができず、汚染を食い止めることもできない。
今もずっと、取水源の汚染は続いているのだ。
永遠の化学物質(フォーエバーケミカル)
ピーフォス(PFOS)、ピーフォア(PFOA)とは、どんなものなのか。
撥水性や撥油性が高く、フッ素樹脂加工のフライパンや、ファストフードの包み紙、電子レンジ調理用ポップコーンの袋、絨毯、衣類、そして半導体の部品など、私たちの生活のあらゆる場面で多用されている。
だが一度体内に取り込まれると分解されにくく、蓄積されてしまう。そのため「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれている。
国内外の研究では、肝臓疾患や、コレステロール値の上昇、妊婦の高血圧、低体重児出産などの可能性が考えられている。
また、ピーフォスについては2009年、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で、将来的な廃絶に取り組んでいくことが決定された。
国内では2010年、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で、半導体など不可欠用途以外での製造や輸入が禁止されている。
一方、ピーフォアについては、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)が、動物に発がんの恐れがあると指摘している。近く国内でも規制される見通しだ。
しかしいつ、どこで、そんな有害とされる化合物が取水源に入り込んだのか。
沖縄県企業局が汚染源を「アメリカ軍基地内」だと考えたのは、取水源となっている河川や井戸群で実施した水質調査の結果からだった。
汚染源はアメリカ軍基地の中
実は、日本国内にはまだピーフォス、ピーフォアに関する飲料水の規制基準が定められていない。だから沖縄県は、アメリカ環境保護局(EPA)が定めている、飲料水の健康勧告値を参考にしている。
アメリカでは飲料水1リットルあたりに含まれるピーフォスとピーフォアの合計を70ナノグラム(ナノは10億分の1)以下と設定している。では、7市町村45万人に関わる取水源はどうなっているのか見ていきたい。
https://chikase.exblog.jp/241179438/
http://kyuujoushou.net/inf/pfoa.html
pfoaとは?
https://djanimateurfinistere.com/wiki/Per-_and_polyfluoroalkyl_substances
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/pf7/suisitu/joukyou/yuukihusso.html