マーク・マンダースの不在 / The Absence of Mark Manders
he Absence of Mark Manders – Artist Portrait – Bonnefanten, Maastricht
In this artist portrait we interview Mark Manders.
Bonnefanten has started 2020 with the extensive retrospective exhibition The Absence of Mark Manders. The last major solo exhibition of Mark Manders (Volkel, 1968) on Dutch soil was more than 5 years ago. This new overview shows how Manders’ special oeuvre develops organically: from old work that has been revised to his latest creations. The exhibition therefore constitutes both an overview of Manders’ work and a new step in his artist process.
More information: www.bonnefanten.nl
Video by www.strictua.com
マーク・マンダース / Mark Manders
1968年生まれ。現代美術作家。1986年に「建物としてのセルフポートレイト」というコンセプトを得て以来、一貫した制作活動を開始。彫刻や家具、日用品、建築部材などを“想像上の”部屋に配するインスタレーションを手がけている。サンパウロ・ビエンナーレ(1988)やドクメンタ11(2002)などの国際展に招聘され、 2013 年のヴェニス・ビエンナーレではオランダ代表作家としてオランダ館で個展を開催し、2021年には東京都現代美術館にて大規模な個展が開かれる予定。
Born in 1968. Contemporary artist. Since Manders adopted the concept of “Self-Portrait as a Building” in 1986, all his works have constituted part of a single, mammoth, self-portrait. His drawings and sculptures evolve continuously and organically according to how they are combined in his “imaginary rooms.” He participated in various international art exhibitions such as the 24th São Paulo Biennale (1998) and Documenta 11 in Kassel (2002), represented the Netherlands at the Dutch pavilion at the 55th Venice Biennale (2013), and will be presenting a large-scale exhibition at the Museum of Contemporary Art, Tokyo in 2021.
公式サイト:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mark-manders/
触れると崩れそうな彫像、いつどこで作られたのか判然としないオブジェ、
人の立ち去った気配が残るスタジオ、暗く長い廊下、…
静謐と不穏が混交する、マーク・マンダースの世界へようこそ
マーク・マンダース スタジオ風景
東京都現代美術館では、現代のアートシーンに独自の位置を占める作家、マーク・マンダースの、国内美術館では初となる個展を開催します。
マンダースは、1968年オランダのフォルケル生まれ。現在はベルギーのロンセにスタジオを構えています。1986年、18歳のときに、自伝的な要素を含む小説執筆の試みを契機に得たと言う「建物としての自画像」という構想に沿って、以降30年以上にわたって一貫した制作を続けています。その構想とは、自身が架空の芸術家として名付けた、「マーク・マンダース」という人物の自画像を「建物」の枠組みを用いて構築するというもの。その建物の部屋に置くための彫刻やオブジェを次々と生み出しインスタレーションとして展開することで、作品の配置全体によって人の像を構築するという、きわめて大きな、そしてユニークな枠組みをもつ世界を展開しています。この虚構的な枠組みをベースとして類のないビジョンを示す独創的な作品世界は、彫刻の概念を掘り下げる個々の作品の質とあいまって、世界的に高い評価を受けてきました。本展は、作家本人の構想により、展示の全体を一つの作品=想像の建物のインスタレ―ションとして構成するものです。
個々の作品は、過去の美術史や私的な記憶に基づくイメージ、彫像や言葉、家具など様々なオブジェの組み合わせからなり、見る者に複雑な感情や時間感覚、思索と内省の機会を与えます。これらは独立した作品として十分に魅力的ですが、この大きな枠組においてみれば、また新たな表情で私たちを捉えるでしょう。作品はすべてこの架空の建物の一部をなすものとして現れ、作家であるマンダース本人と架空の芸術家マンダースの自画像とが混交しながら消失・生起し、見る者を虚実の空間へと誘います。一方、個々の作品には互換性があり、それぞれは単語のように部屋や構成に従って置き換わることが可能と言います。それによって、この想像の建物全体は、いわば一つの自動的な装置のように不断に改変され、更新されていくことになるのです。タイトルにある「不在(Absence)」は、インスタレーションに見られる時間が凍結したような感覚や静寂、既に立ち去った人の痕跡、作家本人と架空の芸術家との間で明滅する主体など、マンダース作品全体の鍵語として複数の意味を担うものですが、それはまたこの建物が作家の不在においても作品として自律的に存在し続けるものの謂いでもあるでしょう。マンダースの世界は、その中に入る私たちを魅了しつつ、芸術の意味について、想像力や人の生の経験と時間について、あらためて考えることを促すのです。
今回の個展は、このような独特な構造を持つマーク・マンダースの作品を十分に堪能できるきわめて貴重な機会です。ぜひ感覚を研ぎ澄まして、じっくりとその世界に触れていただければ幸いです。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/handout_mm.pdf
展覧会のみどころ
緻密に作られた作品群―「凍結した瞬間」
マンダースの作品一つ一つは、私的な記憶や生活、複数の時代や地域の美術史など様々な要素を含んでいます。風化したように見える今にも崩れそうな脆い質感や、それとは逆に今作られたばかりのような粘土の艶、複数のパーツの緊張感にみちた思いがけない配置と違和感のあるスケール…。計算され、緻密に作られた作品からは、静謐さと不穏さの混交とともに、まるで、あるひとつの瞬間ですべてが停止しているような、時間の流れを失ったような感覚が引き起こされます。「凍結した瞬間」と作家が呼ぶその世界は、一方で朽ちることのない不変への憧憬をも呼び起こし、見る者に強い印象を残します。
マンダースの制作の中心、謎めいたインスタレーション
マンダースの個々の作品は独立していると同時に、「マーク・マンダース」という架空の作家の自画像として構想される「建物」に繋がっています。作品を見る私たちは、今ここで実際に作品を前にしながら、もう一方ではこの想像の部屋の中にも居ることになるでしょう…。この虚と実の重ね合わさった空間こそ、マンダース作品の魅力の一つ。作家は2019年3月から本展の構想を温めており、今回、当館の1フロア全体(1000㎡)を一つの作品として構築します。マンダースの制作においてインスタレーションはその中心をなす仕事。その場に立つことで得られる、彼の作品でなければ知ることのできない世界を存分に味わってください。
ヴェネツィア・ビエンナーレでも展示された代表作を初公開
本展で展示される作品には、近年のマンダースの重要な個展では必ず出品されてきた代表作が含まれます。中でも《夜の庭の光景》、《マインド・スタディ》は、それぞれベルギー、オランダの美術館から借用予定の作品で、本邦初公開となるマンダースの代表作。《マインド・スタディ》は2013年のヴェネツィア・ビエンナーレに出品された作品です。また、作家が「大好きな作品」だと語る、部屋のインスタレーションも展示する予定です。
なお、金沢21世紀美術館でのミヒャエル・ボレマンスとの2人展(2020年9月19日―2021年2月28日)での両者の対話を思わせる展示が印象に残っている方には、その作品の見え方の違いもぜひ味わっていただきたいと思います。本展では展示の仕方が異なるため、特に2人展を御覧になった方には、マンダースの作品の魅力や意味を多面的に知ることのできる稀有な機会となるはずです。
作家プロフィール
マーク・マンダース Mark Manders
1968 年、フォルケル(オランダ)生まれ。現在、ベルギーのロンセを拠点に活動。
1988年から1992年までアーネム市芸術大学でデザインを学ぶ。
1986年より「建物としての自画像」と称した独自のコンセプトを展開。その想像の部屋に置かれる彫刻やオブジェを制作し、一連のインスタレーションとして発表している。また、1998年にはロジャー・ヴィレムスらとともに出版社「ローマ・パブリケーションズ」の設立に関わり、自身のアーティストブックや展覧会カタログをはじめ、他のアーティストの書籍も多く手掛ける。作家の代表作である架空の新聞もこの出版社で制作されている。展覧会としては、これまで、サンパウロ・ビエンナーレ(1998年)、ドクメンタ11(2002年)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(2013年)など多くの国際展に参加。個展として、2008年から2009年にわたるヨーロッパ巡回展、2011年のアメリカ巡回展など多数。2020年にはオランダのボンネファンテン美術館で大規模な個展が開催。近年は、パブリック・アート・ファンド・プログラム(2019年、セントラル・パーク、ニューヨーク、アメリカ)、ローキンスクエア(2017年、アムステルダム、オランダ)で大規模な屋外彫刻を手掛けている。日本での主な展示として《東京 ニュースぺーパー》を含む「テリトリー オランダの現代美術」オペラシティ・アートギャラリー(2000年、東京)、「あいちトリエンナーレ」(2016年、愛知)、「ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース ダブル・サイレンス」金沢 21 世紀美術館(2020年、石川)がある。
https://www.artagenda.jp/exhibition/detail/5499
https://bijutsutecho.com/exhibitions/7135
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/23772
https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/23163
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/22756
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c4110959fb04d785cab412b90463caa2091c655
https://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2020/12/mark-manders.html