ソビエト連邦最高指導者として君臨した、ヨシフ・スターリンの国葬を映し出すドキュメンタリー。リトアニアで発見された大量の未公開アーカイブフィルムによって、知られざる国葬の様子がよみがえる。周恩来らをはじめとする指導者の弔問をはじめ、後に最高指導者の地位に就くことになるニキータ・フルシチョフらのスピーチなども公開。監督は『アウステルリッツ』などのセルゲイ・ロズニツァ。
作品情報:https://www.cinematoday.jp/movie/T002…
配給: サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/sergeilozn…
(C) Atoms & Void
劇場公開:2020年11月14日
国際的に高く評価されるウクライナ出身の鬼才セルゲイ・ロズニツァ監督が、ソ連の独裁者スターリンの国葬を記録した貴重なアーカイブ映像を基に製作したドキュメンタリー。1953年3月5日、スターリンの死がソビエト全土に報じられた。その後リトアニアで、国葬の様子を捉えた大量のフィルムが発見される。200人弱のカメラマンによって撮影されたそのフィルムは幻の未公開映画「偉大なる別れ」のフッテージで、モスクワに安置されたスターリンの姿、周恩来ら各国共産党と東側諸国の指導者の弔問、後の権力闘争の中心となるフルシチョフら政府首脳のスピーチ、そしてヨーロッパからシベリアまで、国父の死を嘆き悲しむ数千万人の群衆の姿が鮮明に記録されていた。人類史上最大級の国葬の記録は、スターリンが生涯をかけて実現した社会主義国家の真の姿を明らかにする。
2019年製作/135分/オランダ・リトアニア合作
原題:State Funeral
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/sergeiloznitsa
日本語字幕 守屋 愛
1953年3月5日。スターリンの死がソビエト全土に報じられた。モスクワ郊外で発見されたスターリンの国葬を捉えた大量のアーカイヴ・フィルムは、同時代の200名弱のカメラマンが撮影した、幻の未公開映画『偉大なる別れ』のフッテージだった。そのフィルムにはモスクワに安置された指導者の姿、周恩来など各国共産党と東側諸国の指導者の弔問、後の権力闘争の主役となるフルシチョフら政府首脳のスピーチ、そして、ヨーロッパからシベリアまで、国父の死を嘆き悲しむ幾千万人の人の顔が鮮明に記録されていた。67年の時を経て蘇った人類史上最大級の国葬の記録は、独裁者スターリンが生涯をかけて実現した社会主義国家の真の姿を明らかにする。
セルゲイ・ロズニツァ監督
「粛清裁判」を完成後、私は引き続きスターリン時代の映画を作りたいと思っていました。「国葬」で使われているスターリンの葬儀のアーカイブ映像は「粛清裁判」と同じ保存所に保管されていました。関心があり一部スキャンして確認したところ、そこにはソビエト各地で行われていたスターリンの葬儀が克明に記録されていました。
スターリンの国葬を収めた映像は合計37時間残っていました。当時のソビエトでこれだけまとまったフィルムが残ることは凄いことです。それに加えて当時の国営ラジオ放送局がルポルタージュした音声記録も28時間残っていました。スターリンに別れを告げに来た人々のすすり泣く声や、政府首脳のスピーチなど、当時の貴重な音声記録が鮮明に残っていたのです。記録フィルムにはソビエト全土の人々が悲しむ姿が記録されていました。広大なソビエトで全員が同じ方向を向き、まるでこの世の終わりを見ているかのように悲しむ様子は異常でした。何がこれを可能にしたのか? その疑問こそ「国葬」のテーマなのです。
ソビエトの社会システムはスターリン一人が作ったのではなく、映像に映る一人一人が小スターリンとしてスターリン主義を人々に浸透させたから可能となり、当時のスターリンによる独裁体制はナチスよりも危険なものでした。当時の権力者は恐怖政治によって民衆をコントロールしてきましたが、今の権力者はメディアを巧みに使い感染症だけでも世論を動かすことが可能で、民衆が権力者にコントロールされる危険性は現代のあらゆる社会が抱えている問題です。
イメージ・フォーラム:15:30-17:55 (135分)
「国葬」
2019年/オランダ、リトアニア/ロシア語/カラー・モノクロ/135分
1953年3月5日。スターリンの死がソビエト全土に報じられた。リトアニアで発見されたスターリンの国葬を捉えた大量のアーカイヴ・フィルムは、同時代の200名弱のカメラマンが撮影した、幻の未公開映画『偉大なる別れ』のフッテージだった。そのフィルムにはモスクワに安置された指導者の姿、周恩来など各国共産党と東側諸国の指導者の弔問、後の権力闘争の主役となるフルシチョフら政府首脳のスピーチ、そして、ヨーロッパからシベリアまで、国父の死を嘆き悲しむ幾千万人の人の顔が鮮明に記録されていた。67年の時を経て蘇った人類史上最大級の国葬の記録は、独裁者スターリンが生涯をかけて実現した社会主義国家の真の姿を明らかにする。
この映像を目の前にすると、普通の「映画を見る」という体験とはまったく別の何かを体験することになる。監督が、1953年のスターリンの国葬の記録映像を大量に発見してそれを編集した作品で、ナレーションもなく、音声もその場の音を録音しただけの記録映像、説明もなければストーリーもない。しかしその映像と向かい合っていると、そこに映し出されているものが何なのか、そこにいる多くの人々の顔に浮かんでいる表情にはどんな意味があるのか、目の前にある映像から何かの意味、何らかのドラマを読み取ろうとせずにはいられなくなるのだ。その体験が新鮮で、映画を見るということについて新たな何かが発見できそうな気がしてくる。
平沢 薫
https://brutus.jp/article/927/36616