予告編
本年度アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞最有力!「史上もっともパワフルで重要なドキュメンタリーのひとつ」とマイケル・ムーア監督も絶賛。カンヌ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞ほかすでに55以上の映画賞(2019/12/19現在)を総なめにしている映画史に残る傑作。
母は銃のかわりに、カメラを手に取った。世界に伝えるため、そして戦火の中で生まれた小さな命のためにーー。
死者数十万人。泥沼化する戦地シリア。街で最後となった病院を守る医師の父と、命がけでカメラをまわし続ける母。愛する娘、サマに捧ぐ、いま全世界に伝えたい緊迫のドキュメンタリー!
シアター・イメージフォーラムほかにて、2020年2月29日(土)より公開
内戦の続くシリアでスマホで映像を撮り始めた女学生がやがて母となり、娘のために生きた証を残そうとカメラを回し続ける姿を捉え、カンヌ国際映画祭など各国の映画祭で高い評価を得たドキュメンタリー。ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホで映像を撮り始める。やがて医師を目指す若者ハムザと出会い、夫婦となった2人の間に、新しい命が誕生する。多くの命が失われる中で生まれた娘に、平和への願いをこめて「空」を意味するサマと名づけたワアド。その願いとは裏腹に内戦は激化し、都市は破壊され、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。明日をも知れぬ身で母となったワアドは、家族や愛する人のために生きた証を映像として残そうと決意する。第92回アカデミー長編ドキュメンタリー賞ノミネート。
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/forsama/
https://ja.wikipedia.org/wiki/娘は戦場で生まれた
http://www.imageforum.co.jp/theatre/movies/3159/
INTRODUCTION
マイケル・ムーア、ケイト・ブランシェットら映画人が絶賛、
戦争と人間を赤裸々に映しだす、緊迫のドキュメンタリー!
各国の映画人を衝撃と感動の渦に巻き込み、数々の映画賞を受賞。批評サイト・ロッテントマトにて批評家99%、観客97%(2019年12月12日付)と双方より高評価を獲得している傑作ドキュメンタリー映画がいよいよ公開となる。いまだ解決をみない未曽有の戦地シリア。本作は、2012年から都市アレッポ陥落となる2016年までが、若き母親ワアドの目を通して綴られていく。街で最後の一つとなった病院を運営する夫とともに戦場に残り、真実を映像に残すことを心に決めたワアドは、無差別な空爆で無残にも失われていく命、そして祖国を愛する人々の悲しみをひるむことなくカメラにおさめる。死と隣り合わせの中で彼女がとらえた貴重な映像は、戦争と女性、家族の有り様を現代的に、人間の根源的な愛情をもってつぶさに見つめ世界中を驚愕させた。
STORY
死者数十万人。泥沼化する戦地シリアで、
いま何が起こっているのか――?
ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始める。しかし、平和を願う彼女の想いとは裏腹に、内戦は激化の一途を辿り、独裁政権により美しかった都市は破壊されていく。そんな中、ワアドは医師を目指す若者ハムザと出会う。彼は仲間たちと廃墟の中に病院を設け、日々繰り返される空爆の犠牲者の治療にあたっていたが、多くは血まみれの床の上で命を落としていく。非情な世界の中で、二人は夫婦となり、彼らの間に新しい命が誕生する。彼女は自由と平和への願いを込めて、アラビア語で“空”を意味する“サマ”と名付けられた。幸せもつかの間、政府側の攻撃は激しさを増していき、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。明日をも知れぬ身で母となったワアドは家族や愛すべき人々の生きた証を映像として残すことを心に誓うのだった。すべては娘のために――。
DIRECTORS
監督 / 製作 / 撮影ワアド・アルカティーブWaad al-Kateab
2016年1月、ワアド・アルカティーブは、「チャンネル4ニュース」の「Inside Aleppo(原題)」というドキュメンタリーシリーズで、アレッポの悲劇を記録し始めた。彼女が同番組のために撮影した、シリアの紛争、世界で最も複雑な人道的危機に関するこの映像は、イギリスのニュース番組で最も注目された作品となった。インターネットで約5億回再生を記録し、2016年の国際エミー賞・ニュース速報部門を含む24の賞を受賞した。
2011年、国を巻き込んだアサド政権に対する抗議活動が始まったとき、ワアドはアレッポ大学のマーケティングを専攻する学生だった。何百人もの仲間のシリア人と同様に、彼女は戦争の恐怖を記録することを決意し市民ジャーナリストになった。撮影方法を独学で学び、アサド政権軍がアレッポ支配のために反政府勢力軍に弾圧と攻撃をおこなっていたとき、彼女は周りの人たちの苦しみや絶望を撮影し始め、壊滅的な包囲戦の中とどまり、恐ろしい命の損失を記録し、6年間の紛争の最も記憶に残る映像を収録した。家族と共に2016年12月にアレッポから避難したとき、映像も一緒になんとか逃げ延びることができた。現在ワアドは、夫のハムザと2人の娘と一緒にロンドンに住んでいる。
監督のメッセージ
私にとってこれは、ただの映画ではありません。私の人生そのものです。私は多くの他の活動家たちと同じように、ただスマートフォンでシリアの抗議活動を撮影し、無計画に自分の個人的な物語を記録し始めました。その旅路が、数年を経てどこにたどり着くかなど、想像すらできませんでした。幸福、喪失、愛といった様々な感情の混在や、アサド政権が罪なき一般市民に対して犯した恐ろしい犯罪は、想像を絶するものでした。何とか生き延びることこそできましたが。
当初から、私は様々なニュースで取り上げられてきた死や破壊に焦点を当てるのではなく、命と人間愛についての物語を記録することに興味を持っていました。そして私は女性であるために、アレッポの保守的な地域にいながらも、伝統的に男性では近づくことのできない女性や子供たちの経験を追うことができました。そのおかげで、私は自由のための闘争のさなかに普通の生活を送ろうとする、シリアの一般市民たちの知られざる現実を伝えることができました。
同時に、私は自分の人生を生き続けました。私は結婚して子供をもうけました。私は、自分が持つ多くの異なる役割を、うまくバランスを取ろうとしていました。母親のワアド、活動家のワアド、市民ジャーナリストのワアド、そして映画監督のワアド。これらすべての“私”が物語を具体化し、導いてくれました。こういった私の人生の様々な側面が映画に力を与えてくれている、と感じています。
この映画は私の物語であり、私と私の家族に起こったことを映していますが、私たちの経験は特別なものではない、ということを皆さんに理解してほしいと思っています。何十万人ものシリア人が同じような経験をし、今日も悲劇は続いています。これらの罪を犯した独裁者は今も権力を持ち続け、罪のない人々を殺し続けています。私たちの正義への闘いは、革命が始まったときと同じように今も続いているのです。
私はこの街と、そこに生きる人々、そして友人たちに対して大きな責任を感じています。彼らの話をきちんと伝え、彼らが決して忘れ去られてしまわないように、そして私たちが経験したこの真実を誰にも歪められることのないようにするための責任です。
映画を作ることは、アレッポでの数年間と同じくらい大変でした。すべてを何度も追体験しなければならなかったのです。しかし、ありがたいことに、私と私の物語、そしてシリアに深く思いを寄せてくれる素晴らしいチームの手助けを得ることができました。
中でも特別な一人が、共同監督のエドワード・ワッツです。彼は私が負うべき重荷を自分の肩に背負ってくれました。彼の強さを私自身の強さに加えることで、私は非常に複雑な自分の人生と複雑な映像素材を、皆さんにご覧頂く一本の映画という完成された物語に変えることができたのです。
監 督エドワード・ワッツEdward Watts
エミー賞受賞、英国アカデミー賞ノミネート経験を持つ映画監督であり、コンゴでの戦争犯罪からリオデジャネイロのファヴェーラの住民の生活に至るまで、世界中の勇気、英雄、ユーモアの真実を伝える20以上の物語とドキュメンタリー映画を作ってきた。
彼の2015年のテレビシリーズ「Escape from ISIS(原題)」は、イスラム国家の支配下にあった推定400万人の女性への残忍な扱いをテレビで初めて明らかにし、彼女たちを救おうとする地下ネットワークの驚くべき物語を語った。同作でワッツは、エミー賞や英国アカデミー賞のテレビ部門時事賞にノミネートされるなど、数々の国際的な賞を受賞。ガーディアン紙は「息をのむほど大胆なジャーナリズム」と評し、スペクテイター誌は「ベルゼン強制収容所を解放するイギリス軍の映像と並ぶべき重要なドキュメンタリーだ」と述べた。イギリスのデイビッド・キャメロン首相は、ISISに関する主要な政策演説でこの映画を引用した。2015年7月ワッツは、この映画の重要な発見について、米国議会の外務委員会で証言するためワシントンDCに招待された。
最初の短編映画『Oksijan(原題)』(17)は、内部の空気がなくなりつつある冷凍トラックで英国に密輸送された、7歳のアフガニスタンの少年の生き残るための戦いという、驚くべき実話を語った。2017年10月に開催されたロンドン映画祭でプレミア上映され、その後各国の映画祭で上映された。
ワッツの映画制作は、世界の隅々に住む人々についての物語を伝え、私たちの共通の人間性を、その地に住む人々にも印象付けることを目指している。そうすることで、彼の映画が激動の世界での憎しみを減らすことに、ポジティブに貢献することを願っている。恐怖の中の希望を見出し、さらには強く関心を惹くテーマとともに、映画的なイメージを作る映画監督でもある。
監督のメッセージ
これは私がこれまで取り組んだ中で最も重要な映画です。私はシリアでの暴動が始まって以来、その動向を追い続けてきました。この国で実際に起こったことを誤魔化すような嘘やプロパガンダを超え、真実を伝えようとしてきたのです。その真実は、ワアド、ハムザ、サマの勇気や誠実さ、利他主義に具現化されています。彼らは並外れた人々で、この混乱した世界の中で私たちすべてにとって模範となる存在です。
私がドキュメンタリー映画を制作する際はいつも、世界のあちこちで絶望的な状況に生きる人々が持つユーモアや人間性を共有し、それを強調しようと努力してきました。我々を救うのはその真実であり、昨今とても多くの人々が吹聴しているような、誤った分断をすることではありません。無実のシリア人たちが自由のために闘い、アサド政権によって無残に押しつぶされている時、私たちが彼らと共に立ち上がらなかったことが、ISISの誕生から極右の台頭、難民危機や戦争中の民間人に対する無差別攻撃に至るまで、現在も私たち全員が影響を受けている非常に多くの問題に直接的につながったのだと思います。
ワアドの物語を通して、世界はようやく実際に起こったことを認識し、私たちの犯した悲劇的な過ちの深さを理解し、このようなことを二度と起こさないという強い思いをもう一度持ってもらえたらと願っています。彼女とこの映画を監督することは名誉であり光栄なことでした。
J&B: 12:10-13:55(100分)
町山智浩『娘は戦場で生まれた』『The Cave』を語る
https://miyearnzzlabo.com/archives/62354