予告編
1997年に韓国で実際におこった通貨危機の裏側を描いた社会派ドラマ。1997年、韓国経済は急成長を遂げ、いつまでも好景気が続くと多くの国民が信じて疑わなかった。そんな中、韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョンは通貨危機を予測していた。政府は非公開の対策チームを招集するが、国家破産まで残された時間はわずか7日間しか残されていなかった。独自に危機の兆候をキャッチし、これを好機と見た金融コンサルタントのユン・ジョンハクがある大勝負に出る。その一方で、経済情勢に明るくない町工場の経営者ガプスは、大手百貨店からの大量発注を手形決済という条件で受けてしまう。シヒョン役をキム・ヘス、ジョンハク役をユ・アイン、ガプス役をホ・ジュノ、IMF専務理事役を韓国映画初出演となるバンサン・カッセルがそれぞれ演じる。
公式サイト:http://kokka-hasan.com
https://ja.wikipedia.org/wiki/国家が破産する日
https://www.twin2.co.jp/distribution/国家が破産する日/
イントロダクション
この国は、滅びるのか……!? 国家破産という、国民の誰もが耳を疑うほどの未曽有の危機が迫ったとき、国民を守るべき政府は何をしたのか? 彼らは何のために事実をひた隠しにし、その裏でどんな画策をしていたのか――? これは、多くの自殺者まで出した韓国の1997年の通貨危機(IMF経済危機)の裏側を赤裸々に暴き、政府を痛烈に批判する衝撃の問題作であり、『タクシー運転手 約束は海を越えて』『1987、ある闘いの真実』そして『工作 黒金星と呼ばれた男』に続いて韓国映画界が放つ、史実に基づく社会派映画の力作である。さらに本作は、韓国政府とIMF(国際通貨基金)との息詰まるような交渉のプロセスをサスペンスフルに描き、設立目的に反するIMFの実態にも斬り込む。今、私たちに必要なことは何か? そう問いかけたかったと本作の脚本家は言う。日本でも今年、国民を裏切り暴走する権力の危険性を鋭く突いた映画『新聞記者』が話題になっている。不都合な事実の隠蔽や、メディアを抱き込んでの情報操作は、私たちの身近で近年ますます頻繁に行われているようだ。そうした嘘の積み重ねがやがて重大な危機を招きかねないとしたら、そうなる前に、あなたならどうする?
Storyストーリー
経済が右肩上がりの成長を遂げ、好景気が続くと信じて疑わなかった1997年。韓国銀行の通貨政策チーム長ハン(キム・ヘス)は通貨危機を予測するが、政府の対応は遅れ、さらには国民には公示せず非公式の対策チームを立ち上げる。同じ頃、危機の兆候を独自にキャッチした金融コンサルタントのユン(ユ・アイン)は、一世一代の大勝負に出る。一方、何も知らない町工場の経営者ガプス(ホ・ジュノ)は、大手百貨店からの大量発注を、手形決済という条件で受けてしまう。自国通貨の価値が加速度的に下落する中、彼ら、そして国家は生き残ることが出来るのか―。
ハン・シヒョン(韓国銀行通貨政策チーム長)
キム・ヘスKIM Hye-Soo
1970年9月5日、釜山生まれ。人気と実力を兼ね備えた韓国のトップ女優のひとり。『カンボ』(86・未)で映画デビューし、清純な学生からセクシーな悪女まで多彩な役を演じてきた。『初恋』(93・未)、『ドクター・ポン』(95・未)、『タチャ イカサマ師』(06)で3度の青龍映画賞主演女優賞、大胆なヌードを披露した『顔のない女』(04・未)で大鐘賞主演女優賞を受賞。暗黒街を舞台にした『コインロッカーの女』(15)でも高く評価された。 他の出演作に『永遠なる帝国』(95)、『ニューヨーク デイドリーム』(98)、『風林高』(01・未)、『THREE/臨死』(02/キム・ジウン篇)、アジア圏で大ヒットした『10人の泥棒たち』(12)、ソン・ガンホ共演『観相師』(13)、妊娠を偽装する女優に扮した『グッバイ・シングル』(16)、本格アクションに初挑戦した『修羅の華』(17)など。近年のTVドラマには「オフィスの女王」(13)、「シグナル」(16)がある。
Director
チェ・グクヒCHOI Kook-Hee
1976年生まれ。2002~07年に短編映画を4本監督。16年、自作脚本による『パーフェクト・ボウル 運命を賭けたピン』(未)で長編監督デビューを果たす。賭けボウリングの世界をユ・ジテ主演で描いたこの作品で、ファンタジア国際映画祭(カナダ)初監督賞とウーディネ極東映画祭観客賞に輝いた。本作は長編第2作となる。
Production Noteプロダクションノート
韓国の1997年の通貨危機を初映画化
韓国映画で初めて1997年の通貨危機(IMF経済危機)を題材にした本作の企画は、当時、非公開で運営されていた対策チームがあったという短い記事から始まった。「OECD加盟」「経済先進国の仲間入り」「(香港、シンガポール、台湾と並ぶ)アジア四小龍」といった好景気を表す言葉が躍る中、何の前触れもなく迫りつつあった国家破産の危機。そのときの緊迫した状況を、映画的想像力を駆使して7日間という時間の中に盛り込んで構成したのが本作だ。 最悪の事態を回避しようと全力を注ぐ韓国銀行の通貨政策チーム長、危機に“投資”する金融コンサルタント、無防備な町工場経営者という3人の物語を同時進行で描き、IMFとの交渉の本格化とともに、それぞれの人生も大きな転機を迎える。その後の貧富の格差や非正規雇用といった社会問題は、現在も(韓国に限らず)存在し、同時代的な共感を呼ぶとともに、さまざまな問いを投げかけるだろう。
立場の異なる人物たちのキャラクター造形
韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョンは、政府が楽観的な見通しを語る中、国家破産の危機を予測し、対策を考える人物だ。保守的な官僚社会で女性への偏見と闘いながら、強い信念と専門知識で危機に対応する彼女は、国民に現状を知らせるべきだと主張する。中小企業や庶民の側に立つ彼女の姿は、危機のとき本当に必要な人は誰なのかを考えさせる。かたや、危機に乗じて経済構造改革を主張する財政局次官のパク・デヨンは、エリート主義的思考でハン・シヒョンと事ごとに対立。またIMF専務理事は、韓国政府に過酷な支援条件を提示して一切の譲歩を拒否し、圧倒的な緊張感をもたらす。 金融コンサルタントのユン・ジョンハクは、世間の危機を自分のチャンスと見る。勤務先に辞表を出し、顧客を集めてギャンブルのような投資に乗り出した彼は上昇気流に乗るが、自分の予想を一寸も外れない政府を苦々しくも思う。そして政府の発表を素直に信じたばかりに苦境に陥るガプスは、当時の平凡な庶民を代表している。
演技派揃いのグローバルなキャスティング
本作では、韓国の実力派俳優たちに加え、フランスを代表する国際的俳優までグローバルなキャスティングが実現した。 『タチャ イカサマ師』(06)、『10人の泥棒たち』(12)、『コインロッカーの女』(15)などで堂々とした率直なキャラクターを演じてきた女優キム・ヘスは、ハン・シヒョン役を演じる。韓国映画には珍しい強い信念と熱意を持った専門職の女性役であり、映画の中心軸となって物語全体を牽引していく。『ベテラン』『王の運命 歴史を変えた八日間』(15)、『バーニング 劇場版』(18)などで多彩なキャラクターに挑戦し、演技派俳優の地位を固めたユ・アインは、ユン・ジョンハク役だ。進取の気概や桁外れの野心を抱きつつ、政府の無知無能ぶりに複雑な感情を抱く立体的なキャラクターを強烈な演技で表現している。 ガプス役のホ・ジュノは、崖っぷちに立たされた家長の切迫感を繊細に演じて共感を呼び、作品ごとに違った顔を見せるチョ・ウジンは、政治家や財閥と癒着している財政局次官役でエッジの効いた演技を披露。そして、『ブラック・スワン』(10)、『ジェイソン·ボーン』(16)などでハリウッドでも活躍するフランスの国民的スター、ヴァンサン・カッセルが韓国映画に初出演。IMF専務理事役で存在感とカリスマ性を遺憾なく発揮している。
ディテールを重視した撮影、美術、衣装
スタッフは時代のリアリティーを重視した。『群盗』(14)や『華麗なるリベンジ』(15)に参加し、『工作 黒金星と呼ばれた男』(18)では1990年代の空気を捉えた撮影のチェ・チャンミンは、ハン・シヒョン、ユン・ジョンハク、ガプスの3人の異なる状況を、イメージのトーンを変えることで効果的に見せ、手持ち撮影とコントラストの調整によって感情の変化を濃密に表現している。 プロダクションデザインのベ・ジョンユンは、対策チームの会議室、ノンバンク、韓国銀行の通貨政策チームのオフィス、IMFとの交渉の場、ガプスのマンション、大統領の執務室などのセットのため、90年代の雰囲気が残っている場所やオープンセットを訪れ、ディテールを加えて時代の雰囲気を再現。韓国銀行の外観は、当時使われていて現在は貨幣博物館になっている旧館を、許可を取って撮影。また新聞や雑誌、映画ポスターから各種の書類に至るまで小道具を吟味してリアリティーを高めた。 時代感覚のみならず人物の個性を表現するのに重要な衣装は、『哭声/コクソン』(16)、『1987、ある闘いの真実』(17)、『工作 黒金星と呼ばれた男』のチェ・ギョンファが担当。当時の流行を取り入れたハン・シヒョンのスーツをはじめ、江南オレンジ族(過剰な消費に没頭し、性に開放的な富裕層の若者)のファッションと小物まで再現した。
Interviewインタビュー
脚本 オム・ソンミンは語る
この映画は実際のIMF(国際通貨基金)と韓国政府の交渉当時、 非公開で運営された対策チームがあったという記事から始まった物語だ。 韓国人にはとても大きな事件だったが、 未だによく知られていないIMFとの交渉がどのように行われて、 どういう意味を持っていたかに関する話を語りたかった。 国家の危機的状況の中で、解決のために全面的に前に出た人物の物語を通じて、 今、私たちに必要なことは何かという質問を投げかけたかった。 韓国の通貨危機(IMF経済危機)が起きてからいつのまにか21年が過ぎた。 韓国人の人生を大いに変えてしまう結果をもたらした事件を、多くの世代が共に経験した。 1997年の記憶は、年代によって異なるため、 すべての世代が一緒に見て話し合うことのできる映画になることを願う。
本作はどこまでが実話なのでしょうか?
対策チームがあったということと、97年経済危機の前後の状況までは実話をもとにしています。
それぞれの役柄に参考とした実在の人物がいるのでしょうか?
実際の人物を参考にしたということはありませんでした。キム・ヘスさん演じるハン・シヒョンというキャラクターの場合は“こんな人がいたらどれほど良かっただろうか”という気持ちで造った人物です。 ユ・アインさん演じるユン・ジョンハクというキャラクターは危機を対処する人物として考えて書きました。ホ・ジュノさん演じるガプスは当時とても大変な思いをした方々の姿を合わせて一つのキャラクターとして書きました。
IMFとの交渉など、政府の裏側を際どく描いていますが、リサーチはどのように行ったのでしょうか?
経済危機以後に発刊された本と報告書、そしてIMF聴聞会の資料を読み研究しました。また、当時実際に苦労された方々にもお会いし、経験談などを聞き参考にしました。 なぜ今このような作品を作ろうと思ったのでしょうか? 私たちに必要な一人の人間の物語を書いてみたいと思いました。たとえその人物が敗北したとしてもです。 全てにおいて“問題ない”と言う時はだいたいが“問題がある”ということです。自分に与えられた闘いから逃げなかった、一人の人物の物語を97年の経済危機に合わせて書いてみたかったのです。
製作する上で何か障害になったことはありましたでしょうか?
ありません。ただし、IMF経済危機は全国民の傷なので気をつけるように心がけました。
韓国での公開時の反応はいかがでしたか?
観客の皆さんが“自分の話”として受け止めてくださっていることに驚きました。その時代に経験した苦労と自分や自分の家族が受けた影響を話す姿を見て97年の傷がまだ癒えていないのだと感じました。
脚本家として影響を受けた作家やクリエイターはいますか?
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の脚本家ジョシュ・シンガー、『マネーボール』などの脚本家アーロン・ソーキン、映画監督兼脚本家のトニー・ギルロイが好きです。
この映画で観客に何を伝えようと思いましたか?
まだ多くの韓国国民が97年の自分の選択によって事業に失敗したり、家庭が上手くいかなくなったと考えています。その当時の各自の選択が間違っていたからではなく、国のシステムに問題があったので、それはあなたのせいじゃないというメッセージが励ましになればと思います。
日本で公開されることについてどう思われますか? 日本の観客にこの映画のどのような部分を見てほしいと思いますか?
危機は国に関係なくやって来るものです。97年の韓国の話ということではなく、危機に対処する人々の姿を日本の方にも観ていただけたら嬉しいです。
シネマート新宿:14:35-16:34 (114分)
韓国経済関連年表
西暦 韓国の出来事 世界の出来事
197712月22日、初の年間輸出100億ドル達成
1979 10月、パク・チョンヒ(朴正煕)大統領暗殺 第2次オ
イルショック
1980 5月、光州事件。9月、チョン・ドゥファン(全斗煥)大
統領就任
1987 六月抗争。六・二九民主化宣言 世界的株価大暴落
(ブラックマンデー)
19889~10月、ソウル・オリンピック開催
チョン・ドゥファン前大統領の不正蓄財が発覚
198912月、ソウルにサンプン(三豊)百貨店開店
海外旅行自由化
1990 日本のバブル経済崩壊
199410月、ソンス(聖水)大橋崩落
19956月、サンプン百貨店崩壊事故で死傷者多数
11月、ノ・テウ(盧泰愚)前大統領が不正蓄財等の容疑
で逮捕される
19963月、失業率が過去最低の2%に
5月、2002年FIFAワールドカップ日韓共催決定
12月、OECDに加盟
19971月、ハンボ(韓宝)鉄鋼倒産
5月、ハンボ疑惑でキム・ヨンサム(金泳三)大統領の
息子が逮捕される
7月、キア(起亜)自動車が不渡りを出す7月、タイを
中心にアジア通貨危機が始まる
8月、IMFなどがタイに172億ドルを融資
10月27日、政府が経済危機説を否定10月、IMFなどが
インドネシアに230億ドルの支援を約束
11月21日、政府がIMFに金融支援を要請すると発表
12月3日、IMFと550億ドル規模(世界銀行、アジア開発
銀行等の資金も含む)の緊急支援協定を締結
12月18日、大統領選挙でキム・デジュン(金大中)候
補が当選
19982月25日、キム・デジュン大統領就任
失業者130万人超。自殺者は前年比42%増
2001 8月、IMFからの借入金を完済し、IMF支援体制から脱却 9月11日、米同時多発テロ
2002FIFAワールドカップ日韓共催
2005アジア開発銀行へ完済
2008 通貨危機(~2009) 9月15日、リーマン・ショック
2017 3月、パク・クネ(朴槿恵)前大統領が収賄容疑で逮捕
される
20182月、ピョンチャン(平昌)冬季オリンピック開催
3月、イ・ミョンバク(李明博)元大統領が収賄容疑な
どで逮捕される
https://ja.wikipedia.org/wiki/IMFによる韓国救済
IMF経済危機・IMF通貨危機・IMF管理体制・IMF時代・IMF事態
「財政再建」「金融機関のリストラと構造改革」「通商障壁の自由化」「外国資本投資の自由化」「企業ガバナンスの透明化」「労働市場改革」など
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2014/2014honbun_p/pdf/2014_02-02-02.pdf
https://ja.wikipedia.org/wiki/アジア通貨危機