予告編
第2次世界大戦直後のイギリスの島を舞台に、ある作家が魅了された読書会をめぐるミステリー。第2次世界大戦中、イギリスで唯一ナチスドイツに占領されたチャンネル諸島の1つであるガーンジー島。そこに暮らす人々の支えとなっていたのが、島での読書会とその創設者であるエリザベスという女性の存在だった。人と人の心を本がつないだ事実に強く興味を抱いた作家のジュリエットは、読書会に関する記事を書こうと島を訪ねるが、島にはエリザベスの姿はなかった。読書会のメンバーと交流をしていく中で、ジュリエットは彼らが重大な秘密を隠していることに気づいてしまう。ジュリエット役を「シンデレラ」のリリー・ジェームズが演じるほか、ミキール・ハースマン、トム・コートネイらが顔をそろえる。監督は「フォー・ウェディング」「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」のマイク・ニューウェル。
公式サイト:http://dokushokai-movie.com
https://ja.wikipedia.org/wiki/ガーンジー島の読書会の秘密
監督マイク・ニューウェルMike Newell
https://ja.wikipedia.org/wiki/マイク・ニューウェル
リリー・ジェームズ Lily James
英ロンドンのギルドホール音楽演劇学校在学中から舞台に出演。同校を卒業した2010年、「Just William(原題)」でTVドラマに初出演し、長編映画デビュー作「タイタンの逆襲」(12)でハリウッドに進出する。イギリスの人気TVシリーズ「ダウントン・アビー」(12~15)を経て、ディズニーの実写版「シンデレラ」(15)で主演の座を勝ち取り、一躍注目を集める。ゾンビ映画「高慢と偏見とゾンビ」(16)に主演したほか、英BBCの歴史ドラマ「戦争と平和」(16)や、エドガー・ライト監督の痛快カーアクション「ベイビー・ドライバー」(17)でヒロイン役を演じる。大ヒットミュージカル映画「マンマ・ミーア:ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン!(原題)」(18)では、メリル・ストリープの若き日を演じる。「シンデレラ」のケネス・ブラナー監督とは、舞台「ロミオとジュリエット」(16)でもタッグを組んだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/リリー・ジェームズ
https://www.fashion-press.net/words/1818
https://www.vogue.co.jp/celebrity/news/2018-06/08/lily-james/related/1
kino cinema 横浜みなとみらい:10:40-12: (124分)
Mary Ann Shaffer (著), Annie Barrows (著)
The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society Bloomsbury Publishing PLC; Export and UK open market ed版 (2009)
It’s 1946. Juliet Ashton, a 32-year-old writer, has found a certain recognition through her light-hearted column for the Spectator which lifted the spirits of her readers during WW2, but she can’t think what to write next. But then Dawsey Adams writes to her from Guernsey – by chance he’s acquired a book Juliet once owned – and, emboldened by their mutual love of books, they begin a correspondence. Dawsey belongs to the Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society, and as Juliet investigates the strange-named reading group, soon she stumbles upon a whole number of islanders eager to write and tell her of their experiences of the German occupation of Guernsey. Entranced by her new friends, Juliet decides to visit the island to meet them properly A moving tale of friendship, tolerance and forgiveness in the wake of a period of unthinkable hardship and horror, this is set to become a classic.
原題:The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society
作者:メアリー・アン・シェイファー、アニー・バロウズ
訳者:木村博江
出版社:イースト・プレス(2013)
ISBN:4781610986、4781610994
https://timeturner.exblog.jp/25603814/
面白かった。『チャリングクロス街84番地』に似た雰囲気を感じるのは、書簡体小説だからというだけでなく、ちょっと皮肉屋ではあるけれど明るくウィットにとんだ主人公ジュリエットの性格も関係しているのかも。
でも、この本にはそれだけではない魅力がたっぷり詰まっています。まず登場人物たちが魅力的。色々なことを知っていて好奇心旺盛で魔女みたいなイゾラ、無口だけれど人を安心させる力をもつドージー、意志が強く正義感と慈悲心に富んだエリザベス、島から逃げ出した主人になりすました執事のブッカー、孫息子と暮す石工の老人など、登場するひとりひとりが個性的で際立っています。
しかも、こうした人々が語る戦時中のガーンジー島の状況はこれまで考えたこともないようなものでした。本の見返しに地図が載っていたので、それを見て初めて知ったのですが、ガーンジー島を含むチャネル諸島はイギリスよりフランスに近い位置にあるのですね。だから、真っ先にイギリスから切り離され、ドイツ軍に占領されてしまったわけです。
狭い島内で大勢のドイツ兵たちと5年も暮すことになった人たちの苦しみはどれほど大きかったことか。外界との通信はすべて断ち切られ、完全に孤立していたわけで、戦争がいつ終わるかなんて予想もつかなかったことでしょう。人間って、そういう状況でも生き延びられる強さを持っているんですね。
この本で素晴らしいのはそこで、これまで本など読んだことがなかった人たちが、ひょんなことから読書会をするようになり、食べる物はもちろん、生活に必要なものすべてに困窮する中で、本を読み、語り合うことでお互いを支えていくのです。
この本で描かれる読書会は、私が考えていたようなものとは違っていました。何しろ本だって焚きつけに使われてしまっている時代ですから、ひとりに一冊課題本が手に入るわけがありません。だから、それぞれが自分の好きな本を選び、その内容や感想について語り、問題提起をし、それについてみんなが意見を出しあうというもの。読書会とビブリオバトルが混ざったような感じなのかな。
メンバーの読書傾向はバラエティに富んでいて、セネカの書簡集しか読まない人もいれば、シェイクスピア一辺倒の人もいて、実に個性的です。中にはおいしそうな料理のレシピを読み上げたために全員から総スカンを食う人も(^^;)。
戦時下の話にしても、ドイツ軍を悪者にするだけでなく、さまざまな視点から当時の人々のさまざまな反応、行動をバランスよく散りばめていて、悲しくなったり、ほっとしたり、切なくなったり、怒りをかきたてられたりしました。
ジュリエットは30代前半の独身女性という設定なので、当然ながら(?)ロマンス要素もあって、これがまた二転三転して読者をじらすのですけど、正直言ってこれはなくてもよかったかなあという気が。特にハンサムな億万長者を出してきたのはやり過ぎで、ここで一気にハーレクイン臭がしてきました。
作者のメアリー・アン・シェイファーはこれを書いている途中で病に倒れ、後半を姪のアニー・バロウズに託したのだそう。本が刊行されたときにはシェイファーは故人だったそうです。もし、彼女が健康で最後まで自分で書き終えていたら、このロマンスの様相はもう少し違っていたかもしれないなという気がします。
【上巻 誤植メモ】 p.9 9行目 私におごりよ。⇒私のおごりよ。 p.24 6行目 靴のとどれもが冴えない⇒靴のどれもが冴えない p.90 6行目 占領ました。⇒占領しました。 p.92 最終行 義務をはたせねば⇒義務をはたさねば p.135 6行目 片方の足が少し引きずります。⇒片方の足を少し引きずります。 p.139 7行目 従順なるなんて⇒従順になるなんて p.143 14行目 精神医⇒精神科医 p.145 12行目 レイヤードケーキ⇒レイヤーケーキ(誤植とまでは言えないかも) p.168 5行目 呼でくれて⇒呼んでくれて
【下巻 誤植メモ】 p.86 10行目 あなたが彼女にしあわせにする⇒あなたが彼女をしあわせにする p.173 2行目 ギリス海峡⇒イギリス海峡