予告編
1971年のアルゼンチンで12人以上を殺害した連続殺人事件の犯人である少年をモデルに、スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが製作を務めて描いたクライムドラマ。1971年のブエノスアイレス。思春期を迎えたカルリートスは、子どもの頃から他人が持っている物を無性に欲しがる性格だった自分の天職が、窃盗であることに気づいてしまう。新しく入った学校で出会ったラモンという青年にたちまち魅了されたカルリートスは、ラモンの気をひくためにこれ見よがしな対応を取り、2人はいとも簡単に殺人を犯してしまう。次第にカルリートスとラモンの蛮行はエスカレートし、事態は連続殺人へと発展していく。本作が映画デビューとなる俳優ロレンソ・フェロが主人公カルリートスを演じる。
【STORY】
ブロンドの巻き毛に透き通る瞳、艶やかに濡れた瞳、磁器のように滑らかな白い肌―。神様が愛をこめて創ったとしか思えない美しすぎる17歳の少年、カルリートス。彼は欲しい物は何でも手に入れ、目障りな者は誰でも殺す。息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。やがて新しい学校で会った、荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。だが、カルリートスは、どんなに悪事を重ねても満たされない想いに気づき始める―。
公式サイト:https://gaga.ne.jp/eiennibokunomono/
https://ttcg.jp/human_yurakucho/movie/0585900.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/永遠に僕のもの
監督:ルイス・オルテガ Luis Ortega
1980年、アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ。2002年、初監督作品『Caja negra』で国内外の数々の賞に輝き、一躍注目される。その後もコンスタントに映画とTVシリーズを手掛け、様々な国際映画祭で上映され、賞の栄誉も受け続ける。そして、本作がカンヌ国際映画祭「ある視点部門」に正式出品されると共に、アルゼンチンで2018年のNO.1ヒットを記録、世界から最も次回作を期待される監督の一人となる。
ヒューマントラストシネマ有楽町:16:40-18:40 (115分)
アルゼンチンの歴史
https://ja.wikipedia.org/wiki/アルゼンチンの歴史
10 暴力と衝突の時代(1955年-1982年) 10.2アルゼンチン革命の挫折(1966年-1973年)
1966年6月にクーデターで大統領に就任したフアン・カルロス・オンガニーア将軍は、「アルゼンチン革命」を掲げて外国資本を導入し、緊縮政策でインフレを抑制した。アルゼンチンでもブラジル型の官僚主義的権威主義体制が成立したのである。この経済政策は当初は成功し、ブラジル同様に外国資本の大流入による著しい工業成長が1970年まで続いた。コルドバ暴動(コルドバソ)
しかし、オンガニーアの強権的な弾圧政治でもブラジルの軍事政権がコスタ・エ・シルヴァ将軍の時代に達成したような、国民的な抵抗運動の完全な排除にまでは至らず、1969年5月にコルドバ大学の学生運動から始まったコルドバ暴動(コルドバソ)が国内諸都市に波及し、鎮圧のために軍隊が出動するとオンガニーア政権は厳しい立場に立たされた。さらにオンガニーアの就任と時を同じくして、1960年代初頭にキューバ革命の影響を受けて成立したゲリラ組織が隣国ウルグアイのトゥパマロスの影響などを受けて復活し、ペロニスタ武装軍団、アルゼンチン解放戦線を初めとする都市ゲリラが跋扈するようになった。特に、1969年に「青年ペロニスタ」から分離独立したモントネーロスは、1970年5月から6月にかけてペドロ・エウヘニオ・アランブル元大統領を誘拐、暗殺し、この事件が軍の決定的な離反を招いて同年6月8日にオンガニーアは失脚した。
オンガニーアの後を継いで同年6月18日に大統領に就任したロベルト・マルセーロ・レビングストン将軍は、オンガニーア時代の弾圧政治に終止符を打ち、軍部、労働組合、テクノクラートの国民的合意により民族産業を発展させることを目標にしたが、長年の政治的混乱によりこの目標は果たせず、1971年3月の第二次コルドバ暴動により失脚し、同年3月26日にアレハンドロ・ラヌーセ将軍が大統領に就任した。
ラヌーセ大統領はアルゼンチンの政治、経済の大混乱がペロニスタと軍部の泥沼の抗争にあると見て、ペロニスタを議会政治の枠に戻すことにより「国民的大合意」を図り、軍部の抵抗がありながらもマドリードに亡命中のペロンと連絡を取って、ペロンの直接出馬を認めないものの、正義党の出馬を認めた大統領選挙が1973年3月11日に実施された。
10.3ペロンの復権(1973年-1976年)
その美しさから「黒い天使」と呼ばれた実在の犯罪者
ルイス・オルテガ監督は、「黒い天使」と呼ばれたカルロス・ロブレド・プッチの半生にインスパイアされて、本作のアイデアがひらめいたという。カルロスは1971年から1972年にかけて強盗と殺人を繰り返した。カルロスにとって、死は単なる抽象概念でしかなかったようだ。つまり、何の実感も罪悪感もなかったということだ。
逮捕後、やはり社会を最も当惑させたのは、その美貌だった。
カルロスはメディアから、「ジャッカル」、「童顔のモンスター」などと呼ばれた。逮捕された当時は、ブロンドの巻き毛にまさに天使のような顔立ちをしていた。その美貌は人々を魅了し、ある警官は「まるで青年版のマリリン・モンローのような美しさだった」と語っている。
インスパイアはされたが、本質は変えたキャラクター
複雑な魅力をあわせ持つ、実在の殺人犯カルロス・ロブレド・プッチからアイデアを得たオルテガ監督だが、映画の主人公としては「怪物カルロス」とはいくぶん異なる、架空のキャラクター「カルリートス」を生み出した。カルリートスは、自分が何をしているのか、自分でも理解していないキャラクターである。
映画化にあたって、カルロスの本質を変更した理由について説明するために、オルテガ監督は自らの少年時代を振り返る。「なぜか幼い頃から、犯罪というものに魅かれていた。映画のさまざまなキャラクターと出会うにつれて、ますます犯罪に魅力を感じるようになった。とにかくはじめは、自分の目で見たいと思っていたけれど、実際は身体がアドレナリンの放出を求めていたようだ。それは、犯罪で得られる感覚と同じものだろう。ティーンエイジャーになって、ストリートにたむろしていた頃に、暴力の現実を目の当たりにしたんだ。そのあまりの過激さは、狂っているという言葉では言い尽くせなかったね」
そんな体験をしたオルテガ監督は、「暴力の本質を見てしまったからこそ、強盗から殺人鬼になった少年の物語を映画に撮ろうと決めた時、悪を描くのではなく、美しいもの、観客への贈りものになるような作品にしようと考えた」と語る。
<黒い天使>を体現する脅威の新人
本作を実現するにあたっては、「カルリートス」を演じられる俳優の発掘が必須案件であった。
キャスティングにあたり、監督は1000人のカルリートス候補に会ったというがフェロにあったときの印象をこう話す。
「監督である僕をまるで無視するようなつれない態度をとった。実際それは、彼がシャイだからなんだけど、そんな態度と危うい魅力に惹かれてね。結局その他の999人の候補はフェロがカルリートスで正しいことを証明するだけのために会ったことになったよ。」と語る。
カルロス・エディアルド・ロブレド・プッチは、1952年1月19日 アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれで、労働者階級の家庭に育ち、幼少期は内気な子供だったようです。
- 1971年3月15日
- カルロスと共犯者:ホルヘ・アントニオ・イバニェスが、ディスコを奪い、35万ペソを盗みます。 逃げる前にカルロスは、ディスコのオーナーと夜警を射殺。
- 1971年8月5日
- 共犯者だったホルヘ・アントニオ・イバニェスは自動車事故で亡くなりましたが、運転していたカルロスは無傷で、そのまま現場から逃走。
- 1971年11月15日
- 新しい共犯者であるヘクトル・ソモザと、ブローニュでスーパーマーケットを襲撃します。
- 1971年11月17日から1971年11月24日
- カルロスとヘクトルは2つの自動車販売店に押し入り、100万ペソ以上を盗んだ上、監視員を殺害しています。
- 1972年2月1日
- カルロスとヘクトルは金物屋に押し入り、警備員を殺害し、警備員が携帯していた鍵で金庫を開けようとしますが失敗。そして、混乱の状態に陥っていたと思われるカルロスは、共犯者のヘクトルを射殺してしまいます。
亡くなったヘクトルの身分証明書がズボンのポケットから見つかったことで、カルロスは20歳になった直後の1972年2月4日に逮捕されます。
1971年から1972年の間に、犠牲者を11人も出す連続殺人犯として終身刑に。
その他、1人の殺人未遂、17件の強盗、1人の強姦、1人の性的虐待、2人の誘拐および2件の窃盗で有罪となり、1973年以来、現在に至るまで刑務所に入っています。
http://syouji.blog.jp/archives/1061694897.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Robledo_Puch