予告編
世界23カ国で翻訳された感動のベストセラーをアカデミー賞作品賞受賞『それでも夜は明ける』のキウェテル・イジョフォーが初監督。8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国順次公開!ナレーション:伊東健人さん(声優)
2001年に大きな干ばつが襲ったアフリカの最貧国のひとつマラウイを舞台に、飢饉による貧困のため通学を断念した14歳の少年ウィリアム・カムクワンバが、図書館で出会った一冊の本を元に、独学で廃品を利用した風力発電を作り上げ、家族と自身の未来を切り開いた奇跡の実話の映画化。
有料入場者1名様につき50円が、学ぶことが困難な日本の子どもたちのために「一般財団法人あしなが育英会」の奨学金制度を通じ寄付されます。*一部劇場を除く
当時、人口の2%しか電気を使うことができず、世界でもっとも貧しい国のひとつと言われるアフリカのマウアイで、少年が風車で自家発電に成功した実話を収め、世界各国で出版されたノンフィクションを映画化。アカデミー賞を受賞した「それでも夜は明ける」で自身もアカデミー主演男優賞にノミネートされた俳優のキウェテル・イジョフォーがメガホンをとり、映画監督デビューを果たした。2001年、アフリカの最貧国のひとつマラウイを大干ばつが襲う。14歳のウィリアムは貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で出合った1冊の本をきっかけに、独学で風力発電のできる風車を作り、畑に水を引くことを思いつく。しかし、ウィリアムの暮らす村はいまだに祈りで雨を降らそうとしているところで、ウィリアムの考えに耳を貸す者はいなかった。それでも家族を助けたいというウィリアムの思いが、徐々に周囲を動かし始める。
公式サイト:https://longride.jp/kaze/
イントロダクション
2010年に日本でも出版された1冊のノンフィクションが、世界を驚かせ、興奮させた。中等学校を退学になった14歳の少年ウィリアムが、当時人口のわずか2%しか電気を使うことが出来ない、世界で最も貧しい国のひとつアフリカのマラウイで、自分の頭脳と手だけを頼りに電気を起こす風車を作り、自家発電することに成功したのだ。彼は家族と村の人々を救うだけでなく、大学へ進学し、様々な活動を通して2013年にタイム誌の「世界を変える30人」に選ばれるという素晴らしい人生も手に入れた。
この現代の奇跡に感銘を受けた、『それでも夜は明ける』の名優キウェテル・イジョフォーが、10年の歳月をかけて初監督作品として映画化を実現。2019年、サンダンス映画祭を皮切りに、ベルリン国際映画祭でも公式上映され熱い喝采を浴び、NYのプレミア試写会では、国連難民高等弁務官事務所特使も務める、名女優アンジェリーナ・ジョリーからも、愛情に満ちた称賛を贈られた。
学ぶことが、未来を切り開き、人生を豊かにしてくれる。それは子供たちだけではなく、私たちすべての人々が生涯を通して忘れてはならないことなのだ。夢と希望を捨てなければ、どんな人生にも不可能はないと、少年ウィリアムが教えてくれる、感動の実話。
ウィリアムを演じるのは、ケニアとマラウイで行われたオーディションで、傑出した存在感を放っていた少年、マックスウェル・シンバ。これまで全く演技の経験がないにもかかわらず、アカデミー賞®、ゴールデン・グローブ賞のノミネート経験を誇るキウェテル・イジョフォーに、「なぜあんな自然な演技が出来るのかわからない。本当に感心した」と言わしめた逸材だ。逃げ出したくなるほど険しい道も、絶望するほど高い壁も、好奇心と勇気を武器に変えて次々とクリアしていくウィリアムを、生き生きと演じた。
正直者すぎて失敗ばかりを繰り返してきたが、家族への愛だけは誰にも負けないウィリアムの父トライウェルを、キウェテル・イジョフォーが演じる。無学のために息子の計画を理解できなかった父が、息子への愛を信頼へとつなげる姿が、観る者の心を揺さぶる。さらに、新しい時代を見すえ、子供たちに教育を与える必要性に気付き、時には愛する夫にも厳しい言葉を投げかけるウィリアムの強い母アグネスには、アフリカ系フランス人女優として、初のセザール賞にノミネートされたアイサ・マイガ。
撮影は、究極のリアルを求めて、この驚くけれど本当の話が実際に起こったマラウイで敢行された。壮大な自然の恐ろしさによって荒れ果てた土地が、ウィリアムの風車によって息を吹き返すまでを捉えた撮影監督は、『ターナー、光に愛を求めて』で、アカデミー賞®、英国アカデミー賞にノミネートされたディック・ポープ。生きる力を呼び覚ます雄大な音楽は、『コレラの時代の愛』でゴールデン・グローブ賞にノミネートされたアントニオ・ピントが手がけた。
ストーリー
2001年、アフリカの最貧国のひとつマラウイを大干ばつが襲う。14歳のウィリアムは飢饉による貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で一冊の本と出会い、独学で風力発電のできる風車を作り、乾いた畑に水を引くことを思いつく。いまだに祈りで雨を降らせようとする村で、最愛の父でさえウィリアムの言葉に耳を貸さない。
それでも家族を助けたいという彼のまっすぐな想いが、徐々に周りを動かし始める。
1977年、イギリス・ロンドン出身、ナイジェリア系。スティーヴン・スピルバーグ監督の『アミスタッド』(97)でスクリーンデビュー。『堕天使のパスポート』(02)でブレイクし英国インディペンデント映画賞ほか数々の受賞。以降『ラブ・アクチュアリー』(03)、『メリンダとメリンダ』(04)、『キンキーブーツ』(05)、『インサイド・マン』(06)、『トゥモロー・ワールド』(06)、『アメリカン・ギャングスタ―』(07)など次々と話題作に出演。2013年アカデミー賞®作品賞受賞『それでも夜は明ける』(13)では奴隷制度廃止運動家の主人公を演じ、アカデミー賞®、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、英国アカデミー賞主演男優賞を受賞した。近年の作品に『オデッセイ』(15)、マーベルシリーズの『ドクター・ストレンジ』(16)などがあり、最新作は、実写版『ライオン・キング』(19 ※19/8/9日本公開)にメインキャラクターのスカーの声で出演している。また、俳優としてのキャリアに加え、これまで2本の短編映画を監督しており、本作で念願の長編監督デビューを果たす。
監督・脚本 キウェテル・イジョフォー インタビュー
Q:原作を映画化する気になったのは何故ですか?
ウィリアムの物語は感動的だと思った。希望にあふれ楽観的で、インスピレーションをもらえるような物語だと思った。人生で解決策を発見することの大切さについて触れている。ウィリアムが原作で語ってくれたような語り口で、映画も描きたかったし、真実に忠実な物語として語る事ができればと感じた。アフリカの田舎のコミュニティが不可能と思われる様々な問題をかかえ、それを克服した事実はポジティブで、興味深い真実だと思うから。非常にインスパイアーされたんだ。
Q:あなたの監督デビュー作として、テーマがアフリカの物語であるというのは、どれほど重要ですか?
本を読んで様々な理由から感動した、というのが映画化の最大の理由だった。自分自身が関心を持てるテーマであると感じたからだ。そして、自分自身の問題であると感じたテーマだったから。それは監督を決心する大きな要因だったね。
Q:アフリカはあなたにとってどんな場所でしょうか?生きるか死ぬかという場所でしょうか?お父さんはアフリカで亡くなったそうですが。
そうだね。現在のナイジェリアはそうでもないが、ビアフラ戦争など、大規模な飢饉がおこったりした。大きな危険や災害など、壮大な景色とそこに横たわる様々な問題がアフリカにはあると思う。その中には西洋社会で映画のテーマになった出来事もあるし、話題にならなかった出来事もあるし・・・。
Q:マラウイの飢饉について多くの人が知っています。しかし現地の、アフリカの人の視点で語ら れる機会はあまりなかったと思います。その点があなたにとって重要だったのですか?
全くその通りだよ。それが原作を読んだ時の衝撃だったんだ。あの状況を内部から感じること。テレビのニュースやドキュメンタリーを観てこんな事が起こっていますと知るのとは違う。実際にそれを体験するのはどんな気持ちか、体験者の目を通して深く考える機会はあまりないからね。
Q:環境問題などにも関連してくる物語ですが、その点にも関心があったのですか?
すべては原作に出てくる実話に基づいている。後から僕が意図的に環境問題を織り込んだわけではないんだ。環境の変化によって、降水量が異なったり・・・それは現実として、マラウイや他の国々で起こった事だ。そして一番経済力のない人たちのところにその影響が最も著しく降りかかることになった。彼らの生活に影響を及ぼしたこの変化は、いずれは僕らすべての人間にも影響を及ぼす事になるだろう。
Q:父親役を演じることにした理由は?
最初は自分で演じないと決めていたんだ。10年前のことで、10代の父親役を演じるには若すぎたから。ところが映画化に10年もかかるとは予想していなかったんだ。でも時が流れるにつれて、可能性が出てきたんだ(笑)。また予算を確保するためにも、自分が出演するというのは助けになったしね。
(2019年2月/interview&text高野裕子)
ヒューマントラストシネマ有楽町:14:05-16:05 (113分)
原作者
1987年、マラウイ・リロングウェ出身、7人のこどものうち唯一の男児。国中を襲った大干ばつにより、14歳の時、学費を払えず中学校を退学。以来、NPOの寄贈図書室で物理や化学を独学で学び、廃品を利用して“風力発電のできる風車”を自宅の裏庭に製作。当時人口2%しか電気を使うことができないマラウイで、家に明かりを灯すことに成功する。この出来事が国内外の記事で取り上げられ、国際会議「TEDグローバル」へ招待されるなど、一躍、世界的な名声を獲得。2013年タイム誌「世界を変える30人」に選出。2014年にアメリカの名門ダートマス大学を卒業し現在は同国在住。マラウイにも定期的に帰り、農業、水アクセス、教育など様々なプロジェクトに携わっている。
原作者 ウィリアム・カムクワンバ インタビュー
Q:映画に出てくる発電機を作ったのは何歳の時でしたか?
14歳の時だった。
Q:この映画が完成して観た時、どんな感慨が湧きましたか?
風車を建設している時、将来、自分についての映画ができるなんて想像もしていなかったから、完成した映画を観てとても感激した。でも心境は複雑で、というのも僕と家族がくぐりぬけなければならなかった辛い体験を再度思い起こすことになったから。しかし子供の頃故郷で、友達と楽しく過ごした思い出も戻ってきて、辛い気持ちと楽しい気持ちが入り混じった気持ちになったんだ。
Q:アフリカの多くの国では、義務教育の年齢にあたる時、学校に全員が行けない状況が出てきます。
当時をどう振り返りますか?
確かに困難な時期だった。学校に通えなかったのは辛かった。教育を受ければ、自分の夢がかなうと思っていたから。自分のやりたいことがやれる人生を送りたいと思っていたから。農民にはなりなくなかった。農業がいやというわけではないが、マラウイの農民の多くは自ら選択して農民になったわけではない。他に選択がなかったからだ。そういう人生を僕は送りたくなかったんだ。
Q:風車を作ったことが記事になり、タンザニアに「TEDグローバル」のゲストとして招待され講演したことがきっかけで世界中から注目を集めるようになったそうですが、風車を作ってからあなたの人生はどう変わりましたか?
風車が完成した後も、図書館に通い続けた。僕の村の図書館司書を通して風車の話を知ったジャーナリストが記事を書いたんだ。それでタンザニアに招待されて講演を行ったとき、何か助けられることはないかと多くの人が協力を申し出てくれた。それで僕は風車の開発を続けると同時に、学業も続けることができたんだ。
Q:現在はどんな仕事をなされているのですか?
僕はアメリカの大学を卒業したが、妻が大学を卒業するまでは、アメリカとマラウイを行ったり来たりしながら、プロジェクトに関わっていく予定だ。ゆくゆくはマラウイに戻る。現在はまだ才能ある人たちへの支援が欠けていると思うから、若い人たちが夢を実現できる環境を提供できればと思う。イノヴェーション・センターを立ち上げたので、そこを若い人たちが作りたい機械が作れるような場にしたい。彼らがプロになる道につながってくれればと思う。僕が風車を作った時、誰も僕の案にアドバイスしてくれる人はいなかった。だからイノヴェーション・センターはそんな人たちの助けになれればと思うんだ。
Q:世界中のいろんな人と会ってみて、触発された人はいますか?
尊敬する人は?
風車をそもそも作ったインスピレーションは祖母だった。祖母は自分の手で煉瓦を作っていた。煉瓦作りは男性の仕事とみなされていたが、一般的な男性の仕事、女性の仕事という考え方にとらわれずに祖母は自分で煉瓦を作って家を建てたんだ。人から、何故夫の仕事をしているのか、と言われたが、祖母の答えは、「火事が起きたら誰かが来るのを待てない。すぐに自分で消すしかない」と。自分の問題は誰かの助けを待つのではなく、自分で解決するものなのだと信じていた。そんな祖母にインスパイアーされた。どんな状況においても、自分で解決策を見つけるのが大切だとね。
(2019年2月/interview&text高野裕子)
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウィリアム・カムクワンバ
文庫・単行本
「風をつかまえた少年」文藝春秋刊
ウィリアム・カムクワンバ ブライアン・ミーラー(著)
田口俊樹(訳)池上彰(解説)
絵本
「風をつかまえたウィリアム」
さ・え・ら書房刊
ウィリアム・カムクワンバ ブライアン・ミーラー(著)
エリザベス・ズーノン(絵)さくまゆみこ(訳)
Boy Who Harnessed the Wind: Creating Currents of Electricity and Hope Hardcover – Deckle Edge, September 29, 2009
by William Kamkwamba (Author), Bryan Mealer (Author)
William Morrow (September 29, 2009)
https://williamkamkwamba.typepad.com/williamkamkwamba/book.html
コラム
夜間に自転車を漕ぐときは、前輪に小型のダイナモ(発電機)を接触させて発電し、ライトを点灯させるのが一般的でした。いまでは別の形式もあるとはいえ、私の子どもの頃は、こうしたダイナモでした。
これで、どうして発電できるのか。その理屈は、やがて中学校で「ファラデーの法則」を習うのですが、いまやすっかり忘れてしまった、という人も多いことでしょう。
この仕組みを図書館の本で独学。人々を食料危機から救ったのが、この映画の主人公であるウィリアム・カムクワンバ少年です。
舞台はアフリカ南東部に位置するマラウイ共和国。南北に長い内陸国で、面積は日本の約3分の1。モザンビークやタンザニア、ザンビアと国境を接します。国民の80%は農業に従事していますから、天候には敏感です。国際協力機構(JICA)の2018年のデータによると、8年間の義務教育の小学校は授業料が無償で就学率が92%を超えるものの、4年間の中学校は義務教育でなく、学費が必要なため、就学率は15%だそうです。電気の普及率は当時、全国で2%程度。少年の村にも電気は来ていません。夜は真っ暗。ランプで明かりをとります。
少年が中学校に進学した後の2001年、マラウイを旱魃が襲います。旱魃によって父は息子の学費が払えなくなり、少年は退学を余儀なくされます。授業料を払えずに中学校を退学する。日本では考えられない現実が、マラウイにはあるのです。
普通ならここで学校との縁が切れるのですが、彼は頼みこんで学校の図書館に通います。というのも、自転車の車輪を回すとライトが点灯することに気づき、その仕組みを学びたかったからです。こうして図書館で『エネルギーの利用』という本に出合います。自転車の車輪を人間が回すことで発電できるなら、風車で車輪を回せばいい。発電できたら、それでモーターを回し、井戸の水を汲み上げれば、畑に水を供給することができる。旱魃に負けることはないし、1年に二度収穫できるようになるではないか、というわけです。
ここで学ぶことの意味がわかります。「ファラデーの法則」が何の役に立つんだ。そう思った人もいたでしょうね。生きていく上で教育の力は大切なのです。
映画の中では、しばしば乾燥した土壌が舞い上がるシーンが出てきます。乾いた土地と強い風。この風を生かせば土地を潤せる。それを実現したのが教育の力なのです。
教育で「知恵をつかまえた」少年は、風もつかまえることができたのです。
※劇場用パンフレット解説より一部抜粋
https://diamond.jp/articles/-/10864
https://www.ted.com/talks/william_kamkwamba_how_i_harnessed_the_wind?language=ja
TEDGlobal 2009 | July 2009