NHKBS1スペシャル「欲望の資本主義 特別編 欲望の貨幣論2019 (やめられない止まらない・・・お金の謎)」午後10時00分(110分)
【この番組を企画したきっかけ】
「やめられない、止まらない。欲望が欲望を生む、欲望の資本主義。」
2016年5月、このフレーズで幕を開けた企画は大きな反響をいただき、その後新春恒例の番組となり、さらに「欲望の経済史/民主主義/時代の哲学/哲学史」など様々な広がりのあるシリーズとなりました。
今回は、仮想通貨が生まれ、キャッシュレス化が進む現象を捉え、資本主義の基本を成す貨幣に着目したスピンオフ、特別編。「欲望の貨幣論」です。
「貨幣論」「会社は誰のものか」など、正統的な近代経済学の枠組みに留まらず、実に様々な問いかけ、考察をされてきた日本を代表する経済学者である岩井克人さんの言葉をきっかけに、ジョセフ・スティグリッツ、ジャン・ティロール、トーマス・セドラチェクらの経済学者はもとより、ユヴァル・ノア・ハラリ、マルクス・ガブリエルら、世界の知性たちの未公開の言葉も盛り込みました。
まさに、今だからこそのテーマです。
【制作でこだわった点、もしくは、苦労した点】
貨幣とは何か?その価値の根拠は?
極めてシンプルな問いであり、実は答えようとすると、極めて難しい問いです。資本主義の象徴の価値への問いは、ある意味第一歩の問いであり、同時に究極的な問いとも言えます。
マルクス、ケインズを始め、アリストテレスに到るまで、歴史上の知の巨人たちの様々な格闘、洞察、知見もまじえて考えていきます。
貨幣への過剰な執着と同時に、一方では「お金が無くなる…」といった声もある現代。いよいよねじれ、錯綜する資本主義を考える時、歴史上の巨人たちの格闘から学べることも多いと思います。
【取材をする中で印象に残った言葉】
テクノロジーがすべてをけん引していくこの時代に、いっそ「ビッグデータの言うままになる方が幸せだ」という声もあります。経済の論理が、社会を、世の中の構造を大きく変えていくことを視野に入れていかねばなりませんし、そうしたダイナミックな時空を超えた思考をすることで可能性が開けるのでしょう。
「アダム・スミスさんは、ここを見逃してしまったんですね。」歴史上の巨人を「さん」づけで、まるで友人のように語る岩井さんの姿勢に、共感を覚えました。「歴史の偉業」という物語に飲み込まれることなく、時代のテーマと格闘した等身大の人間として、敬意と親しみを込めた「さん」付け。こうした虚心坦懐な姿勢から、今につながるエッセンスを汲み取れるのだと思います。
マルクスさんも、ケインズさんも、時代のもたらす課題にどんなスタンスで臨み、どんな視野を開いたのか?その可能性と限界は?
大変化の時代だからこそ、考えましょう。そもそもお金とは?資本主義とは?
(番組プロデューサー 丸山俊一)
仮想通貨、GAFA…、技術が市場を変える今、欲望の形も変わる?お金が無くなる?希望と不安が交錯する中、動きが加速化。「貨幣論」他多くの著作を生み、資本主義の抱えるパラドックに半世紀にわたって挑み続けてきた日本を代表する経済学者・岩井克人の言説を軸に、ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ、ティロール、異端のセドラチェク、ハラリ、ガブリエルらの知性も加わり展開するスリリングな異色ドキュメント。
(前編)7月14日(日)22:00放送
(後編)7月14日(日)23:00放送
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225682/index.html
https://www.tvu.co.jp/program/capitalism_2019_currency/
NHKオンデマンドで配信中
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019099787SC000/
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019099788SC000/?np_banID=top_sp0239_099788
変化の中で問われる貨幣の本質
NHKの人気ドキュメンタリーシリーズの続編「欲望の資本主義 特別編 欲望の貨幣論2019」が、7月14日22時から、BS1で放送される。仮想通貨の誕生やキャッシュレス化が進む現象から、貨幣とは何かを探っていく、正統的な近代経済学の枠組みに留まらない前衛的な内容となっている。
今世の中では、「貨幣」は大きな変化の渦中にあるといえるだろう。貨幣がゴールドに裏づけされていた金本位制から、不換紙幣へ。そして現在はデジタル化へ急速に舵を切っている。
そしてその変化の中で浮き彫りになるのは、「お金とは何か」という根本的な問いではないだろうか。ビットコインに象徴される発行体の存在しない仮想通貨など、新たなマネーが誕生する中で、我々はこれまでになくその問いを意識させられているだろう。
またお金が変化するに伴い、金融システムも変革を求められる。今話題のフェイスブックの独自通貨発行プロジェクトが、金融業界に与える影響は大きく、各国が協議を重ねている状況だ。
既存の資本主義が限界を迎えつつあるとも言われる時代の節目において、仮想通貨やGAFAといった新たな潮流からみる「貨幣論」というテーマは非常に示唆に富んだものである。これからの世界の行き先を一考するにあたり、見逃せない内容となるだろう。
また、仮想通貨が生まれ、キャッシュレス化が進む現象を捉え、資本主義の基本を成す貨幣に着目したスピンオフ番組(7月14日(日)夜10時より放送・NHK-BS1スペシャル「欲望の資本主義 特別編 欲望の貨幣論2019」)の見どころもお届けする。
――今もスピンオフ企画が進行中だそうですね。
丸山:はい。この7月にお送りしようと制作中なのは、「欲望の貨幣論」です。仮想通貨が生まれ、キャッシュレス化が進む現象を捉え、資本主義の基本を成す貨幣に着目した特別編です。
『貨幣論』『会社はこれからどうなるのか』など、正統的な近代経済学の枠組みにとどまらず、実にさまざまな問いかけ、考察をされてきた日本を代表する経済学者である岩井克人さんに今回はご出演いただき、岩井さんの言葉をきっかけに、ジョセフ・スティグリッツ、ジャン・ティロール、トーマス・セドラチェクらの経済学者はもとより、ユヴァル・ノア・ハラリ、マルクス・ガブリエルら、世界の知性たちの未公開の言葉も盛り込みました。まさに、今だからこそのテーマです。
貨幣とは何か?その価値の根拠は?
極めてシンプルな問いであり、実は答えようとすると、極めて難しい問いで、資本主義の本質へとつながる問いです。1993年の『貨幣論』、1985年の『ヴェニスの商人の資本論』以来、実はもっと古くは、僕の知る限りでは1983年の『現代思想』でのご発言など……、岩井さんが取り組んでこられたこの問いは、ある意味第1歩の問いであり、同時に究極的な問いとも言えます。
もちろん今回も、マルクス、ケインズを始め、アリストテレスに至るまで、歴史上の知の巨人たちのさまざまな格闘、洞察、知見も交えて考えていきます。
貨幣への過剰な執着と同時に、一方では「お金がなくなる……」といった声もある現代。いよいよねじれ、錯綜する資本主義を考えるとき、歴史上の巨人たちの格闘から学べることも多いと思います。テクノロジーがすべてを牽引していくこの時代に、いっそ「ビッグデータの言うままになるほうが幸せだ」という声があることも承知しています。
経済の論理が、社会を、世の中の構造を大きく変えていくことを視野に入れていかねばなりませんし、そうしたダイナミックな時空を超えた思考をすることで可能性が開けるのではないでしょうか。
――収録時にとくに印象に残った場面はありましたか。
丸山:「アダム・スミスさんは、ここを見逃してしまったんですね」
番組にも登場する、岩井さんの言葉です。歴史上の巨人を「さん」づけで、まるで友人のように語る岩井さんの姿勢に、共感を覚えました。
「歴史の偉業」という物語に飲み込まれることなく、時代のテーマと格闘した等身大の人間として、敬意と親しみを込めた「さん」づけ。こうした虚心坦懐な姿勢から、今につながるエッセンスをくみ取れるのだと思います。
岩井さん、否この話については、岩井先生と言うべきなのかもしれませんが……、実は1985年、まさに『ヴェニスの商人』を出された頃、東大駒場の「経済原論」に潜り、講義後質問させていただいたのが最初の出会いです。
当時まだ学生で、この話は長くなるのでまたの機会にしますが(笑)、自らの将来の選択にもつながる貴重な示唆をいただいたことを覚えています。その頃から一貫して、すべてをつなげ、ジャンルを越えて思考し続けるお姿に敬愛の念を持ってきました。
マルクス「さん」も、ケインズ「さん」も、時代のもたらす課題にどんなスタンスで臨み、どんな視野を開いたのか? その可能性と限界は?
大変化の時代だからこそ、そもそもお金とは何か、資本主義とは何かを読者・視聴者のみなさんとご一緒に考えていければと思っています。
(聞き手:矢作知子)
https://toyokeizai.net/articles/-/288092?page=4