予告編
「スイス・アーミー・マン」などの個性派俳優ポール・ダノが初メガホンを取り、 「ドライヴ」のキャリー・マリガンと「ナイトクローラー」のジェイク・ギレンホ ールが夫婦役を演じた人間ドラマ。ダノが「ルビー・スパークス」で共演したパート ナーのゾーイ・カザンと共同で脚本・製作も手がけ、ピュリッツァー賞作家リチャ ード・フォードの小説「Wildlife」を原作に、幸せな家庭が崩壊していく様子を14歳 の息子の姿を通して描き出す。1960年代、モンタナ州の田舎町で暮らす少年ジョー は、仲の良い両親ジェリーとジャネットのもとで慎ましくも幸せな毎日を送ってい た。ところがある日、ジェリーがゴルフ場の仕事を解雇され、山火事を食い止める 危険な出稼ぎ仕事へと旅立ってしまう。残されたジャネットとジョーもそれぞれ仕 事を見つけるが、生活が安定するはずもなく、優しかったジャネットは不安と孤独 にさいなまれるようになっていく。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『プリズナーズ』『スイス・アーミーマン』な ど、独特のナイーヴな演技で、ポール・トーマス・アンダーソン、ドゥニ・ヴィルヌ ーヴら鬼才とのコラボレーションを重ねてきた演技派スター、ポール・ダノ。そんな カリスマ俳優が満を持して鮮烈な監督デビューを飾った。『ルビー・スパークス』 で共演したパートナー、ゾーイ・カザンと共同で脚本・製作も担当し、サンダンス 映画祭やカンヌ映画祭で絶賛を浴びた。 「いつの日か映画を作る時は、きっと、家族についての映画を撮るだろうと思って いた」というダノが、原作として選んだのはピューリッァー賞作家リチャード・フ ォードが1990年に発表した「WILDLIFE」。フォードの小説は、寂獏とした読後感 で世界中の読者を魅了しており、「モントリオールの恋人」(村上春樹訳)や「ロ ック・スプリングス」(青山南訳)などの短編も日本で紹介されている。 物語の舞台は、1960年代、カナダとの国境にほど近いモンタナ州の田舎町。14歳の ジョーは、ゴルフ場で働く父ジェリーと,家庭を守る母ジャネットの1人息子だ。 新天地での生活がようやく軌道に乗り、睦まじい夫婦の姿を息子が安堵の面持ちで 眺めていたのもつかの間、ジェリーが職場から解雇されてしまう。さらに、ジェリ ーは命の危険も顧みず、山火事を食い止める出稼ぎ仕事に旅立ってゆく。残された ジャネットとジョーは働くことを余儀なくされ、母はスイミングプール、息子は写 真館での職を見つけるが、生活が安定するはずもない。やがてジョーは、優しかっ た母が不安と孤独にさいなまれ、生きるためにもがく姿を目の当たりにすることに なる。 長回し撮影を多用して、幸せだった家族が壊れ、バラバラになっていく姿をジョー の目線から静かに深く映し出してゆく『ワイルドライフ』。母との関係、父との関
係、そして夫婦の関係は、もうもとに戻ることはないとわかっていても、それでも ジョーの胸には家族が紡いだ愛情が今も残る。変わりゆく家族の形に戸惑いながら も、父と母の姿を見て、ジョーもまた大人になっていく。彼が両親を写真館に誘 う、実に美しく、切ないラストシーンでは、彼のまっすぐな視線に観客は彼の未来 と生命力を信じずにはいられなくなるだろう。 互いに愛し合いながら、なす術もなく壊れてゆく夫婦。悲嘆と狂おしいジャネット の思いを圧巻の演技で見せるのは、キャリー・マリガン。米アカデミー賞にノミネ ートされた『17歳の肖像』や、『わたしを離さないで』、『ドライヴ』、『未来を 花束にして』で観客を魅了してきた儚げな雰囲気を封印して、1960年代のアメリカ 北西部の主婦が抱えるジレンマを見事に浮かび上げてみせた。 相手役ジェリーには、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『プリズナーズ』でポール・ダノ と共演しているジェイク・ギレンホール。アン・リー監督作『ブロークバック・マ ウンテン』ではアカデミー賞にノミネート。その他、『ゾディアック』でデイヴィ ッド・フィンチャー、『ノクターナル・アニマルズ』でトム・フォードなど話題の 監督と組んでいる若き名優は『ナイトクローラー』では主演だけでなく製作者とし ての道も歩みはじめている。 そして14歳の主人公ジョーの哀しみと動揺をもの言わぬ演技で表現してみせるの は、8歳で故郷オーストラリアのCMでキャリアをスタートさせたエド・オクセンボ ールド。これまでには、M・ナイト・シャマラン監督作『ヴィジット』で恐怖にお ののく主人公を演じている。 ポール・ダノ、キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール。良質な作品を数多く 世に送り出してきた30代の若き才能たちが作り上げた、普遍的な家族の物語。 そ して、監督ポール・ダノ自身の心情が投影された14歳の少年ジョーの成長物語でも ある。ダノの繊細さと優しさが詰まった『ワイルドライフ』は、観客ひとりひとり の記憶をそっと呼び起こし、温かい余韻をもたらすに違いない。
公式サイト:http://wildlife-movie.jp
1984年、アメリカ・ニューヨーク州出身。17歳の時に出演した『L.I.E(原題)』 (01)で映画デビュー、インディペンデット・スピリット賞最優秀デビュー演技賞 を受賞。『リトル・ミス・サンシャイン』(06)で注目を浴び、2007年、アカデミー 賞作品賞にノミネートされた、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ゼア・ウィ ル・ビー・ブラッド』で、英国アカデミー賞助演男優賞にノミネート。15年『ラブ &マーシー 終わらないメロディー』ではゴッサム・インディペンデント映画賞の最
優秀男優賞を受賞した。その他、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『プリズナーズ』 (13)、アカデミー賞作品賞に輝いたスティーブ・マックィーン監督『それでも夜 は明ける』(13)、パオロ・ソレンティーノ監督『グランドフィナーレ』(15)、 ポン・ジュノ監督のNetflixオリジナル映画『オクジャ/okja』など名だたる監督たち の作品に出演している。また『ルビー・スパークス』(12)では主演&製作を務 め、出演&脚本のゾーイ・カザンとはプライベートでもパートナーで、2018年に第 一子が誕生した。ゾーイ・カザンは本作『ワイルドライフ』でもダノと共同脚本を 務める。
長年、映画を作りたいと思っていました。 そして、いつの日か映画を作る時は、きっと、家族についての映画を撮るだろうと 思っていました。 私が育った家庭には愛情が溢れていましたが、大きな波風が立つこともありまし た。 リチャード・フォードの「WILDLIFE」を読んだ時、その二面性に不意を突かれ、 思わず心の窓を開かれたような感覚でした。この小説を何度も読み直し、動揺し、 不安になり、そしてまたワクワクしました。 それから1年余り、私は小説「WILDLIFE」について思いを巡らしながら過ごしてい ました。 親とは何だろう?という疑問に囚われて、そこから何か答えを見つけたいと自問自 答する日々でした。 そしてある日、私の初めての映画のラストシーンが頭の中に明確にイメージできま した。
この最後の映像に手ごたえを感じ、映画化に向けて歩み始めました。 そこで私は、リチャード・フォードにメールを送り、この本の映画化権を確保しま した。その時のフォードのメールにあった言葉は、私にとって最高の贈り物となり ました。
彼はこう書いています。 「私の本に興味をもってくださり、とても嬉しいです。しかし、私は次のことも言 わねばなりません。それがあなたを励ます言葉になることを願いながら。つまり、 私の本は私の本。あなたが作ろうとしている映画は、あなたの映画だということで す。私の小説に対するあなたの映画製作者としてのリスペクトは強く感じており、 まったく心配していません。あなた自身の価値観、方法、目標を構築してくださ い。そして、この小説は忘れてください。そうすれば、妨げになることもない。そ れが映画化に向けて、一番良い方法だと思います。」 彼の言葉が、パートナーであるゾーイ・カザンとともに脚本を書き始める私に大き な勇気を与えてくれました。私は、誠実で分かち合えるものを作りたいと思ってい ました。必要な時以外は、カメラを動かしたくなかったです。自分自身と素材に誠
実でありたいと思ったのです。 脚本を書く準備をしていた2013年の私の日記からの抜粋です。“この映画は心で感じる映画にしたい。ジョーを通して、自分の感情を掘り下げた い。家族と親について問いかけたい。希望を失うこと、バラバラになっていく家族 の姿を見つめて、最後に、生き残ることを描きたい。たとえ最悪のことが起こった としても、人間は生き残ることができるということを探求したい。私たちはそれで も家族でいることができる。決して前と同じではないだろう。でも私たちには愛情 がある。そして私たちには生きるための生命力があるのだ。”キャスティングはまずジャネット役から始めました。共同脚本のゾーイは何年も前 にキャリー・マリガンと一緒に仕事をしたことがあって彼女のことを知っていまし た。素晴らしい女優だから、彼女に演じてもらえて光栄でした。それに彼女がジェ イクと知り合いなのを知っていたので、このふたりのコンビネーションはうまくい くと思いました。ジョー役のエド・オクセンボールドを見つけることができたの は、とてもラッキーでした。彼はオーストラリアの俳優で、とても賢い。出会った 時はまだ15歳だったけれど、撮影現場ではジェイクとキャリーに囲まれても一歩も 引けを取らない存在感がありました。 『ワイルドライフ』は、両親が変化し、夫婦が崩壊していく姿を見つめる息子の目 を通して描かれていきます。両親の関係性は崩れていきますが、彼は成長しなくて はならない。母親、父親、そして息子。この3人全員が大人になっていく物語で す。苦悩し、傷つき、幻滅するけれど、愛に導かれた映画でもあります。この映画 を皆さんと分かち合える時がやってきました。受け入れることと手放すことの意味 を問いかけながら、主人公ジョーと同じように、ある家族の肖像をゆっくりと見つ めていただきたいです。
1985年、イギリス・ロンドン出身。『17歳の肖像』(09)でアカデミー賞主演女優 賞、ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞にノミネートされ、英国アカデ ミー(BAFTA)賞最優秀主演女優賞に輝く。『未来を花束にして』(15)で、英国 インディペンデント映画賞最優秀女優賞にノミネート。その他、『ウォール・スト リート』(10)、『わたしを離さないで』(10)、『ドライヴ』(11)、 『SHAME −シェイム−』(11)、『華麗なるギャツビー』(12)、『インサイド・ ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)、『遥か群衆を離れて』(未/15)など、話題作への出演が続く若手実力派女優。
1985年、イギリス・ロンドン出身。『17歳の肖像』(09)でアカデミー賞主演女優 賞、ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞にノミネートされ、英国アカデ ミー(BAFTA)賞最優秀主演女優賞に輝く。『未来を花束にして』(15)で、英国 インディペンデント映画賞最優秀女優賞にノミネート。その他、『ウォール・スト リート』(10)、『わたしを離さないで』(10)、『ドライヴ』(11)、 『SHAME −シェイム−』(11)、『華麗なるギャツビー』(12)、『インサイド・ ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)、『遥か群衆を離れて』(未/15)など、話題作への出演が続く若手実力派女優。
1980年、アメリカ、カリフォルニア州出身。『シティ・スリッカーズ』(92)で映画 デビュー。『ブロークバック・マウンテン』(06)でアカデミー賞助演男優賞にノミ ネート。主演作『ナイトクローラー』(15)では製作も務め、ゴールデングローブ 賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞など多数ノミネートされた。近年の 主な出演作は『ジャーヘッド』(05)、『ゾディアック』(07)、『マイ・ブラザ ー』(09)、『ミッション:8ミニッツ』(11)、『エンド・オブ・ウォッチ』 (12)、『プリズナーズ』(14)、『複製された男』(14)、『雨の日は会えな い、晴れた日は君を想う』(15)、『ノクターナル・アニマルズ』(16)、『ライ フ』(17)、『オクジャ/okja』(17)、『ゴールデン・リバー』(18)など。イン ディペンデント作品とスタジオ作品の両方で、様々な優れた監督からオファーが絶 えない俳優の一人。また、映画製作会社ナイン・ストーリーズを設立し、プロデュ ーサーとしての道も歩み始めている。
kino cinema 横浜みなとみらい:15:50-17:40 (105分)