予告編
「ルーム」でアカデミー主演女優賞を受賞し、「キャプテン・マーベル」でマーベルヒーロー映画の主演も務めるブリー・ラーソンが、自身の出世作ともいえる「ショート・ターム」のダスティン・ダニエル・クレットン監督と再タッグを組んだヒューマンドラマ。ニューヨークで自立して暮らす主人公の女性が、関係を絶っていたホームレスの父親との再会をきっかけに、本当の幸せをつかむための人生を再び歩み始める姿を描いた。人気コラムニストのジャネットは、恋人との婚約も決まり、順風満帆な日々を送っていたが、ある日、ホームレスになっていた父親のレックスと再会する。かつて家族のために「ガラスの城」を建てるという夢をもっていた父レックスは、仕事がうまくいかなくなり、次第に酒の量が増え、家で暴れるようになっていった。高校生になったジャネットは大学進学を機にニューヨークへ旅立ち、親との関係を絶とうとしたが……。
長年の監禁からの脱出劇を描いた『ルーム』でアカデミー賞®最優秀女優賞を受賞したブリー・ラーソン。彼女の真価が再び発揮されたのが、『The Glass Castle』である。脚本・監督を手掛けたデスティン・ダニエル・クレットンとは2013年の『ショート・ターム』で組んだ仲。様々な事情を抱える10代専用の短期保護施設の所長を演じ、クレットンともども、ブレイクスルーのきっかけとなった。奇しくも、『ショート・ターム』、『ルーム』、そして本作と、特異な子ども時代を送ることになった少女の葛藤と自立をテーマとしたドラマで、複雑な表情を見せる彼女。『The Glass Castle』では高級ブランドのスーツと隙のないメイクで武装し、生き馬の目を抜くニューヨークで人気コラムニストとして生きる女性が抱える親への複雑な感情を生々しく表現する。
原作は2005年3月、スクリプナーから刊行された「The Glass Castle」。ペーパーバック版として売り出されると、全米の売り上げランキングに一年以上、ランクインされるベストセラーとなった。人々がこの本に魅了されたのは、売れっ子コラムニストとして活躍していたジャネット・ウォールズが、それまで築き上げた華麗なるセレブのイメージをかなぐり捨てて、まさに戦いとしか言いようのない過酷な子供時代の思い出を赤裸々に綴っていたことだった。だが、彼女の自叙伝の中で最も驚く部分は、痛ましい暮らしをしているにもかかわらず、家族の深い愛が描かれているところだ。その愛ゆえに、ジャネットは青春時代を大冒険と救済の旅に変えることが出来たのだ。
本書は2006年にアメリカ図書館協会のヤングアダルト図書館サービス協会(YALSA) が主催するアレックス賞(12歳から18歳のヤングアダルトに特に薦めたい大人向けの本10冊に贈る賞)にカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」と共に選ばれ、日本では「ガラスの城の約束」(ハヤカワ文庫)として2019年5月に刊行される。
映画化に際しては、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』、『しあわせの隠れ場所』と孤独な境遇にいる子どもの成長物語を製作してきたギル・ネッター。撮影監督は『ショート・ターム』でもクレットンとコンビを組んだブレット・ポウラク。プロダクション・デザインはベン・アフレック監督の『ザ・タウン』、『アルゴ』のシャロン・シーモア。本作では、ウォールズ家の変遷を時代ごとの家の変化で見せていった。
作品の魅力を支えるのは社会一般のルールや法律をものともしない、ラジカルな生き方を選ぶウォールズ一家の主、レックスと妻、ローズマリーである。財産はなくても、子どもたちに夜空の星を贈り、詩的な世界の広がりを教えるロマンティックな一面を持ちつつ、突然、暴力的な方法で危機を乗り越える術を体に叩きつけようとするレックス。日によっては知的な科学者、時に良き父であり愛すべきヒーローから、ふとした瞬間に飲んだくれでどうしようもないダメ男へと顔を変える複雑怪奇なキャラクターをウディ・ハレルソンが熱演。いつまでも夢見る少女のような天真爛漫さを漂わせる母、ローズマリー役にはナオミ・ワッツ。この二人が演じたことで、単に「毒親」とカテゴライズできない正邪併せ持つ両親像が具現化された。子どもをうまく育てる術を知らない彼らの暗い過去が垣間見えるからこそ、レックスとローズマリーを簡単に憎んだり、捨てたりできない子どもたちの葛藤が浮かび上がる、良質な家族映画が出来上がったのだ。
公式サイト:http://www.phantom-film.com/garasunoshiro/
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Glass_Castle_(2017_film)
http://qualite.musashino-k.jp/movies/7261/
ブリー・ラーソンas ジャネット・ウォールズ
1989年10月1日、カリフォルニア州サクラメント生まれ。1998年にトーク番組内のコントで子役としてデビュー。コメディドラマ「ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ」(09~11)ではトニ・コレット演じる主人公の娘役でレギュラー出演するなど、青春映画やテレビドラマを中心に活動。その後、ジョナ・ヒル、チャニング・テイタム主演の『21ジャンプストリート』<未>(12/フィル・ロード、クリストファー・ミラー監督)やジョセフ・ゴードン=レヴィットが監督・脚本・主演を務めた『ドン・ジョン』(13)などに出演。2013年、トラブルを抱える10代が暮らすグループホームのケアマネージャーを演じた主演作『ショート・ターム』(デスティン・ダニエル・クレットン監督)で若手の演技派として注目を集める。15年には、『ルーム』(レニー・アブラハムソン監督)でヒロインを演じ、アカデミー賞®主演女優賞初ノミネートにして初受賞を果たした。『ルーム』での圧巻の演技は高く評価され、ゴールデングローブ賞、全米映画俳優組合賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞など様々な賞を受賞した。主な出演作は、『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』(11/エドガー・ライト監督)、『キングコング:髑髏島の巨神』(17/ジョーダン・ボート=ロバーツ監督)、『フリー・ファイヤー』(17/ベン・ウィートリー監督)、『キャプテン・マーベル』(19/アンナ・ボーデン、ライアン・フレック監督)など。
https://www.cinemacafe.net/article/2019/05/14/61529.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブリー・ラーソン
監督・脚本 デスティン・ダニエル・クレットン Destin Daniel Cretton
https://ja.wikipedia.org/wiki/デスティン・ダニエル・クレットン
1978年11月23日ハワイ州マウイ郡生まれ。サンディエゴ州立大学にて映画制作を学ぶ。2009年、自身4作目の短編映画『ショート・ターム』がサンダンス映画祭審査員賞を受賞。その後、シアトル国際映画祭、シネベガス、ジェンアートでも各賞に輝く。同名の長編映画は、13年SXSW映画祭でプレミア上映され、客賞、最優秀審査員賞のW受賞を果たした。祖父母が沖縄出身の日系3世で日本への造詣も深い。
Filmography
2006年Drakmar: A Vassal’s Journey (日本未公開)
2012年ヒップ・スター
2013年ショート・ターム
2017年アメイジング・ジャーニー 神の小屋より(脚本)
ウォールズ一家のことを社会常識から逸脱した家族として好奇の目で見るのではなく、共感が持てる魅力的な人たちだと捉えるようにした。20代の頃のジャネットが、自らの人生を振り返り、今の自分がどうやって形成されたのか、どう家族に影響を受けたのかを省みる構成にしたんだ。これはドラマであって、真実を追求したドキュメンタリーではない。だが望むべくはジャネットの物語に新しい見方を加えることで、新しい人たちが楽しめて、喜んでもらえるような斬新なものを作りたかった。単なる機能不全を起こした家族の物語として描くのではなく、底知れぬ愛の力を描くというアプローチをしたつもりだ。
また、ある意味で、僕たちは彼らの思い出を記録した“動く家族アルバム”を作ろうとしたんだよ。ウォールズ一家のためにもこの映画を作りたかったんだ。
YEBISU GARDEN CINEMA:15:10-17:30 (127分)
原作者ジャネット・ウォールズ
1960年4月21日生まれ。ニューヨーク在住のコラムニスト。
名門女子大学バーナード・カレッジ卒業後、「エスクワイア」「USAトゥディ」「ニューヨーク」等の各誌を経て、現在はオンライナニュースサイトMSNBC.comで有名人のゴシップ記事を連載している。夫は作家のジョン・テイラー。「The Glass Castle」は270万部以上を売り上げ、今世界中で読まれている。
自叙伝「The Glass Castle」を執筆した経緯
時が過ぎるうちに、両親から得た純粋な愛情の素晴らしさは、どんな家族にも存在し、全ての家族に物語があるということをより強く思うようになったの。私を楽観的すぎると非難する人もいるけれど、そうやって私たち兄弟は大変な時期を乗り切って、喜びを探してきたのよ。そうじゃなきゃ死んでいたかもしれないわ。だから私は自分たちの話を発表することにしたの。どうやって私たちが試練をくぐり抜けることができたのかということを共有できれば、自分でもやれるって感じられるでしょ?
映画化にあたって
今までにも映画化の話はあったけれど、全然進まなかったの。私が書いた本は映画には向かいないとアドバイスを受けたこともあった。でも、ある日、奇跡が起こったの。プロデューサーのギル・ネッターが全てのことを成し遂げてくれたのよ。私は、ギルとデスティン・ダニエル・クレットン監督を全面的に信頼したわ。この物語は全体的に暗い感じにすべきじゃないと常々思っていたんだけど、一方で、取り乱した時代もかき消して、全体的に軽い感じにしたくはなかったの。デスティンはその両方を織り交ぜてくれたわ。
キャストについて
皆、自分のキャラクターをちゃんと理解しようと、とても熱心だったわ。撮影前に彼女たちが聞いてきた質問は、すごく核心をついていて驚かされたの。台本から逸れた時でさえ、いかにも両親が言いそうなことのように聞こえたのよ。考察の深さと心的な理解、愛情を持って私の家族になり切ってくれたこと、そして欠点だらけの家族なのに愛してくれたことに、とても感動したわ。
撮影現場での思い出
セットでウディ・ハレルソンが製図台で作業を始めるシーンがあって、彼を見て息が止まったわ。その仕草といい、姿勢といい、顔の表情といい、“なんてこと?彼は父を蘇らせたわ”ってね。(ジャネット役の)ブリーと家を出ていくことについて、激しいやり取りをするシーンでは、自分の思い出と重なって、心が引き裂かれる思いがしたわ。ウディがとても深くこの恐ろしく複雑な男の痛みや傷、そして愛情を理解していると感じられて、本当に幸運だったと思う。
観客にメッセージを
自分の家族のことを考えながら映画館を出てきてくれたら、すごく嬉しいわ。
ジャネット・ウォールズ(古草秀子訳)『ガラスの城の約束』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 早川書房(2019)
Jeannette Walls .The Glass Castle.Virago Press Ltd; Digital original (2017)
Now a major motion picture starring Brie Larson, Naomi Watts and Woody Harrelson. This is a startling memoir of a successful journalist’s journey from the deserted and dusty mining towns of the American Southwest, to an antique filled apartment on Park Avenue. Jeanette Walls narrates her nomadic and adventurous childhood with her dreaming, ‘brilliant’ but alcoholic parents. At the age of seventeen she escapes on a Greyhound bus to New York with her older sister; her younger siblings follow later. After pursuing the education and civilisation her parents sought to escape, Jeanette eventually succeeds in her quest for the ‘mundane, middle class existence’ she had always craved. In her apartment, overlooked by ‘a portrait of someone else’s ancestor’ she recounts poignant remembered images of star watching with her father, juxtaposed with recollections of irregular meals, accidents and police-car chases and reveals her complex feelings of shame, guilt, pity and pride toward her parents.
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Glass_Castle
https://www.anemo.co.jp/movienews/newmovie/garasunoshiro-2-20190425/
1960年4月21日生まれ。米国の作家・ジャーナリスト。名門女子大学バーナード・カレッジ卒業後、《エスクァイア》誌、《USAトゥデイ》紙等を経て、オンラインニュースサイトMSNBC.comに連載したコラムは高い人気を誇った。現在、再婚した夫で作家のジョン・テイラーとヴァージニア州郊外の農場に暮らし、小説等を執筆している。
https://en.wikipedia.org/wiki/Jeannette_Walls