予告編
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作「夏をゆく人々」などで世界から注目されるイタリアの女性監督アリーチェ・ロルバケルが、死からよみがえったとされる聖人ラザロと同じ名を持ち、何も望まず、目立たず、シンプルに生きる、無垢な魂を抱いたひとりの青年の姿を描いたドラマ。「夏をゆく人々」に続き、2018年・第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、脚本賞を受賞した。20世紀後半、社会と隔絶したイタリア中部の小さな村で、純朴な青年ラザロと村人たちは領主の侯爵夫人から小作制度の廃止も知らされず、昔のままタダ働きをさせられていた。ところが夫人の息子タンクレディが起こした誘拐騒ぎを発端に、夫人の搾取の実態が村人たちに知られることとなる。これをきっかけに村人たちは外の世界へと出て行くのだが、ラザロだけは村に留まり……。
『幸福なラザロ』は、前作『夏をゆく人々』で鮮烈な印象を残し、世界が注目した才能アリーチェ・ロルヴァケル待望の監督最新作である。2018年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』と共にコンペティション部門で話題をさらい、見事脚本賞を受賞。北米公開時には、マーティン・スコセッシが絶賛し、映画完成後にプロデューサーに名乗りを上げる異例のバックアップをするなど、観た人を感動の渦に巻き込んでいる。
実際に起きた詐欺事件から着想された寓話的ミステリー。
ラザロの無垢なる魂がもたらす圧倒的な幸福感に満たされる――。
時は20世紀後半。イタリアの小さな村で純朴なラザロと村人たちは、小作制度の廃止を隠蔽する侯爵夫人に騙され、社会と隔絶した生活を強いられていた。ところが夫人の息子タンクレディが起こした誘拐騒ぎをきっかけに、村人たちは初めて外の世界へ出て行くことになる。だが、ラザロにある事件が起き・・・。
フェリーニ、ヴィスコンティ、パゾリーニ、イタリア映画史に燦然と輝く巨匠たちの遺伝子を受け継ぐロルヴァケル監督は、本作で時空を超えた壮大なドラマを生み出し、新しい地平を切り開いた。
『幸福なラザロ』は、1980年代初頭にイタリアで実際にあった詐欺事件を知った監督の驚きから生まれた。人間が享受してきた文明はそのスピードを加速させ、人間を疲弊させ、世界を荒廃させた。富める者はさらに富み、持たざる者はさらに失う現代に、世界をありのままに見つめるラザロの汚れなき瞳はあまりにも衝撃的だ。その無垢なる魂は観る者を浄化し、かつて味わったことのない幸福感を与えてくれるだろう。そして思いもよらぬ展開を経て迎えるクライマックスは、私たちに忘れがたき至福の映画体験をもたらすはずだ。
息をのむような美しい映像とキャストたち
自然の厳しさと美しさを余すところなくスクリーンに映し出すのは、『夏をゆく人々』でも撮影を担当したエレーヌ・ルヴァール。今作もデジタルではなく、スーパー16mmフィルムで撮影された。
ラザロ役のアドリアーノ・タルディオーロは、高校在学中に1000人以上の同世代男子の中から監督に発掘された新星。その無垢な瞳は見る者の心を溶かし、まさに現代に蘇ったラザロを体現し圧倒的だ。また今やイタリア映画界を代表する女優であり、監督の実の姉であるアルバ・ロルヴァケルが前作に続いて出演。侯爵夫人をロベルト・ベニーニの公私にわたるパートナーであり、『ライフ・イズ・ビューティフル』などで知られる女優ニコレッタ・ブラスキが演じる。
STORY
渓谷で外の世界と隔絶されたインヴィオラータ村(「汚れなき村」の意)。村人たちは領主であるデ・ルーナ侯爵夫人(ニコレッタ・ブラスキ)に支配されていた。
彼らの中に誰よりも働き者の若い農夫がいた。彼の名はラザロ(アドリアーノ・タルディオーロ)。お人好しが過ぎるあまり仲間から軽んじられ、仕事を押し付けられていた。
ある時、侯爵夫人の美しい息子タンクレディ(ルカ・チコヴァーニ)が町からやってくる。タンクレディはラザロを仲間に引き入れて自身の誘拐騒ぎを演出し、二人は強い絆で結ばれるようになる。
その頃誘拐事件を発端に、インヴィオラータ村の存在が、領主による大規模な労働搾取の事件現場として世の中に報道される。結局村人たちは、揃って住み慣れた村から出ることになるのだが、ラザロだけは・・・・・・。
公式サイト:http://lazzaro.jp
https://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/19_lazzaro.html
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケルDirector and Scriptwriter: Alice Rohrwacher
1981年、イタリア・トスカーナ州フィエーゾレ生まれ。ドイツ人の父とイタリア人の母を持つ。トリノとポルトガル・リスボンで学んだ。音楽、ドキュメンタリー制作のほか、劇場での編集者や作曲家としての仕事を経て、初長編劇映画『天空のからだ』(F/11)を発表。レッジョ・カラブリアを舞台に思春期の少女の歩みを瑞々しく描いたこの作品は、第64回カンヌ国際映画祭監督週間に選出され、各地の映画祭で上映された。続いて、自身の体験をもとに養蜂家の家族を描いた『夏をゆく人々』(14)は、長編二作目して、第67回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した。
2015年、ファッションブランドミュウミュウの企画、女性監督が21世紀の女性らしさを称えるショートフィルムシリーズ「女性たちの物語」の第9弾として「De Djess」を発表。この企画には他に河瀬直美、アニエス・ヴァルダ、ミランダ・ジュライ、ダコタ・ファニング等が参加している。そして本作『幸福なラザロ』は、2018年第71回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞するなど、いまやパオロ・ソレンティーノと並び、イタリア映画界を代表する監督の一人である。
フィルモグラフィー
2006年 Checosamanca ドキュメンタリー
2011年 天空のからだ
2014年 夏をゆく人々
2014年 9×10 novanta ドキュメンタリー
2015年 De Djess 短編
2018年 幸福なラザロ
https://note.mu/knightofodessa/n/n1936879ef29b
kino cinema 横浜みなとみらい:10:40-12:55 (127分)