予告編
「タクシードライバー」「レイジング・ブル」といった名作映画の脚本家として知られ、監督としても「アメリカン・ジゴロ」などを手がけてきた名匠ポール・シュレイダーが、「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホークを主演に迎えて描いた人間ドラマ。戦争で息子を失い、罪悪感を背負って生きる牧師が、教会の抱える問題を知ったことから信仰心が揺らいでいく姿を描いた。ニューヨーク州北部の小さな教会「ファースト・リフォームド」の牧師トラーは、ミサにやってきた女性メアリーから、環境活動家である夫のマイケルの悩みを聞いてほしいと頼まれ、彼女の家を訪れる。そこでマイケルが地球の未来を憂うあまり、メアリーのお腹の中にいる子を産むことに反対しているという話を聞かされる。また、トラーは自身が所属する教会が環境汚染の原因を作っている企業から巨額の支援を受けていることを知り……。メアリー役に「マンマ・ミーア!」「レ・ミゼラブル」のアマンダ・セイフライド。
巨匠ポール・シュレイダーが再び、時代を射抜く!
構想50年の末に完成させた渾身作にして最高傑作
『タクシードライバー』『レイジング・ブル』『ザ・ヤクザ』などの傑作を手がけた脚本家として知られ、監督としても『アメリカン・ジゴロ』などの映画史に残る作品を生み出してきた、ポール・シュレイダー。ハリウッドの巨匠が、実に構想50年の末に完成させた渾身作が『魂のゆくえ』だ。戦争で失った息子への罪悪感を背負って暮らす牧師が、自分の所属する教会が社会的な問題を抱えていることに気づき、徐々に諦念と怒りで満ちていく様子を衝撃的に描いていく。聖職者でありながら内なる怒りと葛藤を抱える主人公トラー牧師を熱演するのはイーサン・ホーク。彼を頼る女信徒メアリーに『マンマ・ミーア!』『レ・ミゼラブル』などのスター女優アマンダ・セイフライド。
ヴェネツィア映画祭でお披露目された本作は、ポール・シュレイダー最高傑作と評され、批評家からの絶賛に次ぐ絶賛を浴び、アメリカでは気鋭の配給会社A24による公開でスマッシュヒット。本年度の賞レースでも大きな話題を集め、オスカーの前哨戦として知られるゴッサム賞では作品賞、脚本賞、男優賞の最多3部門でノミネートされ、脚本賞と男優賞を受賞。ナショナル・ボード・オブ・レビューでは脚本賞受賞、ベスト10選出、インディペンデント・スピリット賞でも作品賞、監督賞、主演男優賞の3部門ノミネート、主演男優賞受賞を果たし、一挙に賞レースの最前線へ躍り出た。主演のイーサン・ホークは惜しくもオスカーノミネートは逃したものの、各地の批評家協会賞でブラッドリー・クーパーやラミ・マレックなどの有力候補を上回り最多の男優賞を受賞。そして本年度のアカデミー賞®では、ポール・シュレイダーが自身初となる脚本賞にノミネートされている。
STORY
傷ついた心 聖なる願い 静かなる怒り
ニューヨーク州北部の小さな教会「ファースト・リフォームド」。牧師のトラー(イーサン・ホーク)は信徒のメアリー(アマンダ・セイフライド)から相談を受ける。彼女の夫が地球の環境問題を思い悩むあまり、出産に反対しているというのだ。夫の説得を試みるトラーだったが、逆に教会が汚染企業から間接的に献金を受けている事実を知ってしまう。悩めるトラーは、やがてある決意をする。彼の聖なる願いと魂の行き着く先は…。
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/tamashii_film/
https://ja.wikipedia.org/wiki/魂のゆくえ_(映画)
https://a24films.com/films/first-reformed
ポール・シュレイダー監督・脚本
1946年7月22日、ミシガン州生まれ。多くの映画祭で受賞歴を持つ脚本家であり、映画監督。厳格なカルヴィン主義者の家庭に生まれ、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の映画学部とAFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)でキャリアを始めた。「シネマ・マガジン」の編集や「ロサンゼルス・フリープレス」などで映画評論家として活躍し、1972年には「聖なる映画―小津/ ブレッソン/ドライヤー」を出版(カリフォルニア大学出版による改訂版が最近発行された)。現在でも彼は、コロンビア大学で教鞭をとり、ニューヨークの「フィルム・コメント・マガジン」に貢献し続けている。脚本家としての最も有名な作品が、マーティン・スコセッシ監督とのタッグで知られる『タクシードライバー』(76)である。同作は1976年のアカデミー最優秀作品賞にノミネートされ、カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得。他のスコセッシ監督作品でも、『最後の誘惑』(88)、『救命士』(99)で脚本を、『レイジング・ブル』(80) ではマーディク・マーティンと共同脚本を務めた。また監督としても、これまでに18の作品を手掛けてきた。監督デビュー作の『ブルーカラー/ 怒りのはみだし労働者ども』(78)は、パリ映画祭にて審査員特別グランプリを受賞。1980年代には、リチャード・ギア主演のサスペンス映画『アメリカン・ジゴロ』(80)、古典ホラーのリメイク作品『キャット・ピープル』(82)を監督。日本人作家、三島由紀夫にインスパイアされた『Mishima: A Life In Four Chapters(原題)』(85)は、三島のエピソードと彼の本の脚色を織り交ぜた作品で、フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが製作総指揮を務め、1985年のカンヌ国際映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞した。また、1974年に発生したハースト社の相続人の誘拐と変容について描いた『テロリズムの夜/パティ・ハースト誘拐事件』(88)を監督、カンヌで上映された。他に、『迷宮のヴェニス<未>』(90)、『ライト・スリーパー』(92)、『白い刻印』(97)、『ボブ・クレイン快楽を知ったTVスター』(02)、『ザ・ハリウッド』(13)、エドワード・バンカーの小説を映画化した『ドッグ・イート・ドッグ』(16)などがある。1999年、これまでの功績に対して全米脚本家組合賞が贈られた。2007年には、ベルリン国際映画祭の国際審査委員長を務め、2009年にはイギリスのノッティンガムで開催されたスクリーンリット・フェスティバルで脚本家生涯功労賞を受賞した。
DIRECTOR’S STATEMENT監督メッセージ
若かりし頃、私はスピリチュアル映画を敬愛していました。批評も書きましたが、自分自身がそれを手掛けるとは想像もしていませんでした。その後、このジャンルの映画(『イーダ』)でアカデミー賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキ監督と夕食を共にした時、私は帰り際にこう言いました。「この手の脚本を書く時が来た」。そしてすぐに書いたのです。
『魂のゆくえ』は私が50年近くも進めてきた脚本です。
書こうと決めてからは、とても早く書き上げました。多くの映画を参照していますが、最後は自分自身の作品にしなければなりませんでした。
キャラクター、テーマ、ダイアログ、プロットを書くと、視覚的に浮かび上がり、こう自問しました。どうすればこれに息吹を吹き込めるだろう?と。そうして新しいプロセスが始まったのです。
通常は、私は特定の俳優のために脚本を書くことはしません。しかし、この脚本を半分程書いたところで、イーサン・ホークのイメージが頭に浮かび、私はこう思いました。「この役はイーサンにこそふさわしい」。それ以来そのイメージが私の脳裏に焼き付いていました。幸運なことに、彼は数日後に脚本を読み連絡をくれ、こう言ってくれました。「この題材に、瞬時に共感しました。本当に、この役を準備するために、これまでの人生があったように感じます」と。
アマンダ・セイフライドが参加してくれたことも喜ばしいことでした。彼女には才能と無垢なオーラがあるだけでなく、妊婦を演じるちょうどその時に、彼女自身も妊娠していたのです。
私は、執筆中は脚本家として考え、演出中は監督として考えます。この作品では、慎重で、制約され、落ち着いたスタイルを選択しました。過去にはこのような方法で映画を作ったことはありませんが、撮影が始まるとすぐ、自然にそのやり方になったのです。
ポール・シュレイダー
ヒューマントラストシネマ渋谷:9:35-11:35 (113分)