予告編
電話からの声と音だけで誘拐事件を解決するという、シンプルながらも予測不可能な展開で注目され、第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど話題を呼んだデンマーク製の異色サスペンス。過去のある事件をきっかけに警察官として一線を退いたアスガーは、いまは緊急通報指令室のオペレーターとして、交通事故の搬送を遠隔手配するなど、電話越しに小さな事件に応対する日々を送っている。そんなある日、アスガーは、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは事件に対処しなければならず……。
「電話からの声と音だけで、誘拐事件を解決する」というシンプルな設定ながらも、予測不可能な展開で観る者を圧倒させ、第34回サンダンス映画祭では、『search/サーチ』(NEXT部門)と並び、観客賞(ワールド・シネマ・ドラマ部門)を受賞。その後も第47回ロッテルダム国際映画祭観客賞/ユース審査員賞、第44回シアトル国際映画祭監督賞の受賞などに加え、世界中の映画祭で観客賞を総なめにした。第91回アカデミー賞®外国語映画賞デンマーク代表にも選出され、早くも2019年上半期の映画界を席巻する作品としての呼び声が高い。本作が長編映画監督デビュー作となるグスタフ・モーラーは「音声というのは、誰一人として同じイメージを思い浮かべることがない、ということにヒントを得た。観客一人ひとりの脳内で、それぞれが異なる人物像を想像するのだ」と語る通り、人間の想像力を縦横無尽に操るという全く新しい映像表現を見事成功させた。
視覚情報がない中、劇中に溢れる様々な“音”の中から、犯人を見つけ出すことができるのか―。これはあなたの予想を遥かに超える、未だかつてない映画体験となる。
緊急通報指令室のオペレーターであるアスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)は、ある事件をきっかけに警察官としての一線を退き、交通事故による緊急搬送を遠隔手配するなど、些細な事件に応対する日々が続いていた。そんなある日、一本の通報を受ける。それは今まさに誘拐されているという女性自身からの通報だった。彼に与えられた事件解決の手段は”電話”だけ。車の発車音、女性の怯える声、犯人の息遣い・・・。微かに聞こえる音だけを手がかりに、“見えない”事件を解決することはできるのか―。
公式サイト:https://guilty-movie.jp
https://ja.wikipedia.org/wiki/THE_GUILTY/ギルティ
グスタフ・モーラー(監督・脚本)
1988年スウェーデン・ヨーテボリ生まれ。2015年にデンマーク国立映画学校を卒業し、卒業制作『In Darkness』はハウゲスンで行われるノルウェー国際映画祭でネクスト・ジェネレーション賞を受賞する。本作は長編デビュー作である。
エミール・ナイガード・アルベルトセン(脚本)
1988年イギリス・ロンドン生まれ。2013年にデンマーク国立映画学校を卒業。デンマーク放送協会のテレビシリーズを2本手がける。『The Guilty』は2本目の長編。
グスタフ・モーラー監督インタビュー
映画の中で最も力強い映像、最も印象に残る画は、目に見えないものだと私は信じている
Q:「電話の音と声だけで誘拐事件を解決する」というインスピレーションはどこから得たのですか?
作品のプロットはリサーチをしていて思いついたんだ。最初のアイデアはとてもシンプルなものだった。ワンシチュエーションだけど、音と想像力だけで、デンマーク各地に行った気分になれるような作品。そこから始まり、色々と調べていったんだ。緊急指令室に行き、主人公と同じような経験してきた警官にインタビューさせてもらった。
観終ったあとに、偏見や共感や道徳観について話したくなるような作品を目指していく中で、YOUTUBEで偶然、9.11にかかってきた電話の音声を見つけ、その面白さに虜になったんだ。同じ音声を聞いているのに、聞く人によって思い浮かべるものが異なるという点に惹かれた。
Q:脚本および撮影の段階で、緊急指令室について、どのようなリサーチを行ったのですか?
いくつかのセンターを訪れた。特に夜間にだ。そこで働く警官と話をして、入ってくる電話の内容も聞かせてもらった。警官の何名かが、自らの意思とは反してそこで働いていることを知った。通常の任務から外され、そこに配置されたんだ。
そういう状況の中にいると、脚本家として様々なアイデアが浮かんでくる。“なぜこんなことをしているのか?なぜそんな状況に陥るのか?”と。そうして作品の主人公が次第と形成されていった。アスガーと同じ経験をしてきた警官にもインタビューを行ったよ。トラウマになりそうなほど暴力的な現場と、音だけを通して繋がっている彼らの仕事に惹かれていったんだ。誰かと電話をしている時、特にヘッドセットをつけていると、相手と親密になれる。でも同時に相手が経験している危険な状況からは遠く離れている。彼らは遠くにいながら、プロらしく対応するというのが任務の一つだ。親密だけど暴力的、遠いけどプロらしくという対照的な点が面白いと思った。“このプロ意識を一瞬でも忘れさせるためにはどうすればいいのか?それはどのような人物なのか?”そこを考えてみた。
Q:演出する際に影響を受けた作品はありますか?
最も影響を受けた2作品は『タクシードライバー』と『狼たちの午後』だ。『タクシードライバー』については、ものすごく詳細に話し合った。主人公の目を通してニューヨークを見せていて、その手法を生かして、本作では主人公の耳に入ってくる音だけを通して、周辺の状況を描いた。
『狼たちの午後』は、リアルタイムで感じる精神的ストレスを表現する上で参考にした。様々な意味でワンシチュエーション映画と言えると思う。今回、3台のカメラを使って長回しで撮影したのは、この作品のような真実味のあるリアルタイムの演技を引き出したかったからだ。
Q:本作で音はとても重要なテーマです。その設計はどのように構築していきましたか?
どんな作品でも音はゼロから作り上げなければいけない。でも本作の大きな違いは参考にするべきものがないから、何だって可能だったということ。いろんな音を何度も試したから、その分大変だったけどね。例えば雨の音は何種類も聞いた。誘拐されたバンの音を見つけるのは、特に時間がかかったね。何種類ものバンの音を録音しに行ったんだ。あらゆる方向性を探った。普通の映画なら、ドアが開くときドア自体も家も見えて、薄気味悪い家なのかきれいな家なのか分かるから、ドアの音にそれほどこだわる必要がない。でも足音やドアが開く音など、音しかない場合、ドアの音でその家の印象が違ってきてしまう。つまり視覚的要素を、音を通じて伝える必要があった。
どのシーンも、僕には明確にその場所が思い浮かんでいた。部屋やバーやストリートで、どんな音が聞こえてくるのか、頭の中では分かっていたんだ。だからそれをサウンドデザインは、僕がそれを担当者にいかに伝え、彼らがいかにそれを作り上げてくるかに懸かっていた。この作品の面白いところは、観客によって音から思い浮べるイメージが違うということだ。僕の中にあるイメージには忠実に作ったつもりではいるけどね。
Q:今後、どのような監督を目指していますか?
本作で目指したことを今後も続けていく。観客を惹きつけると同時に、チャレンジングな映画を作っていきたい。ハラハラするけど、道徳的に複雑なストーリー。ゆったり座って分析しながら観るのではなく、前のめりになってしまうような作品だ。常に新しいアングルを探し求めていて、それが僕の原動力となっているのさ。本作でもそうだったし、今後の作品もそれは変わらないだろう。
横浜ブルク13: 16:45-18:25 (88分)