予告編
2008年北京オリンピックのメインスタジアム「鳥の巣」の設計にも参加した中国の現代美術家アイ・ウェイウェイが監督を務め、難民問題を追ったドキュメンタリー。貧困・戦争・環境問題など、さまざまな理由により世界各地で増え続ける難民たち。本作撮影当時の2016年には6500万人を数えた難民たちは年々増え続け、事態の深刻化はとどまることを知らない。しかし、現実には彼ら難民の受け入れを拒否する国が広がっていく。23カ国を超える40カ所の難民キャンプと国境地帯を訪れ、この世界的な問題となっている難民危機のリアルな現実をとらえていく。
イントロダクション
今、世界に最も影響力がある現代美術家アイ・ウェイウェイが、”大地の漂流者たち”と共に地球を旋回していく。
貧困・戦争・宗教・政治的立場・環境問題など、様々な理由で増え続ける難民たち。
その数は、2018年には過去最高の6,850万人に上り(撮影当時の16年は6,500万人)、深刻化する事態とは裏腹に難民受け入れを拒否する国が広がっている。いま、世界で何が起きているのか。
難民たちが辿り着くギリシャの海岸、四方八方の国に散るシリア難民、ガザに封鎖されるパレスチナ人、ロヒンギャの流入が止まらないバングラデシュ、ドイツの空港跡を利用した難民施設、アメリカとメキシコの国境地帯など、23カ国40カ所もの難民キャンプを巡り、彼らの旅路をなぞってカメラに収めたのは、中国の現代美術家であり社会運動家としても活躍するアイ・ウェイウェイ。11年米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出され、その力強い美術的主張が注視される彼が、祖国を追われ地球上を逃げ惑う人々の日常に肉薄する。自らのスマートフォンやドローンからの空撮を駆使し、地球を巡っていく壮大で圧倒的な映像美は、ヴェネチア国際映画祭を始め各国の映画祭で賞賛された。
“大地の漂流者たち”が味わう苦難の中に、人間の尊厳と希望を、索漠とした光景に息をのむほどの美しさを見つけ打ちのめされる本作は、“観る”のではなく“体験”するためにつくられた。
何度も地図の書き換えが行われてきた動乱の世界で、人間の尊厳への関心を失いつつある社会は予測もつかない分裂の危険に瀕していると、全世界へ警鐘を鳴らす衝撃のドキュメンタリー!
公式サイト:http://www.humanflow-movie.jp
http://www.imageforum.co.jp/theatre/movies/2109/
https://eigaland.com/topics/?p=93084
監督・製作アイ・ウェイウェイ(艾未未)
1957年、北京生まれ。現代美術家、建築家、キュレーター、文化評論家、社会評論家など多数の肩書きを持つ。08年、北京オリンピックのメインスタジアム「鳥の巣」の設計に参加し、一躍その名が世界に知れ渡った。09年に森美術館で開催された日本初の個展“アイ・ウェイウェイ展-何に因って?”には46万人もの来場者が訪れた。11年には、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出。人権活動にも力を入れ、08年の四川大地震で死亡した児童らの当局への責任追及によって、11年に北京の自宅で軟禁された。12年には監視下の中でアーティストとして生きる日々に密着したドキュメンタリー映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』が公開。15年には、ベルリンへ移り住み、ベルリン芸術大学のアインシュタイン客員教授に就任。同年アムネスティ・インターナショナルより「良心の大使賞」を受賞。
https://ja.wikipedia.org/wiki/艾未未
https://eiga.com/news/20181205/11/
イメージ・フォーラム:13:40-16:00 (140分)
公開記念<初日トークイベント>!登壇者:丸山ゴンザレスさん(ジャーナリスト)13:40-14:00
難民とは
難民については、1951年の難民条約に以下のように定められています。
「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」
上記に加えて、「平和に対する犯罪、戦争犯罪、人道に対する犯罪、避難国外での重大な犯罪、あるいは国連の目的や原則に反する行為を行ったことがない」、という条件もクリアする必要があります。
このように、国際法上でいう「難民」の正式な定義は、たいへん狭く限定的なものなのです。
世界の「難民」はここ10年で何とほぼ倍増、国内避難民など強制的な移動を余儀なくされた人を加えると6,850万人にのぼります。
これは世界全人口の1%弱。実に100人に1人が移動を強いられ“難民”あるいは迫害や紛争を逃れるため国内避難民になっていたり、他の国に庇護を求めていたりするという計算になります。
いまや世界は、難民を抜きにして語る事はできません。
Agenda note「国連難民高等弁務官事務所の広報日記」連載より抜粋
執筆:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)/ 駐日事務所広報官守屋由紀
日本の難民問題
日本に庇護を求める難民申請者の数も年々増えています。10年前には難民申請者がわずか1,600人だったのが、昨年は10倍以上、2万人近く(1万9,629人)ありました。日本は1970年代後半からインドシナ難民の大量流出を受け、1981年難民条約に、翌1982年に難民議定書に加入、新たに難民認定制度を導入しています。
日本は、1970年代後半から難民の受け入れを始めてから、インドシナ難民、条約に基づく難民認定された人、難民として認定されなかったものの、人道配慮を理由に在留を認められた人、2010年に開始した第三国定住によって受け入れられた人が延べ1万5,000人近くいます。
そんな私たちの身近にいる難民…、彼らはどんな想いを抱いて過ごしているのでしょうか。
Agenda note「国連難民高等弁務官事務所の広報日記」連載より抜粋
執筆:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)/ 駐日事務所広報官守屋由紀
世界の難民を支える団体「UNHCR」
UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)は、国連機関のひとつで、本部はスイスのジュネーブ。世界中に130カ国、478都市に事務所が置かれています。
UNHCRのトップである国連難民高等弁務官は、フィリッポ・グランディ。イタリア人です。先代は現在の国連事務総長、アントニオ・グテーレス。1990~2000年の10年間は、日本人の緒方貞子さんが務めました。
UNHCRの職員は、各国の首都や地方部に置かれた事務所に所属していますが、その中で直接、難民の方を相手に仕事をする現場を「フィールド」と呼んでいます。1万1,000人ほどの全スタッフのうち88%は現場勤務で、残りはジュネーブの本部などで政策・プログラム形成や予算管理などをしています。スタッフの国籍は、さまざま。必ずしも出身国で仕事をするわけではありません。今までいくつもの過酷な現場を経験した多数のスタッフが、各地に派遣され、世界中の難民を支援しています。(本作には、世界中に派遣されたUNHCRのスタッフの方々の生の声も多く収録されています。)
Agenda note「国連難民高等弁務官事務所の広報日記」連載より抜粋