予告編
イスラエルの若手監督オフィル・ラウル・グレイツァ監督が、同じ男性を愛した2人の男女の姿を描き、イスラエルのアカデミー賞といわれるオフィール賞で9部門にノミネートされたほか、国外の映画賞でも多数の映画賞を受賞した作品。ベルリンのカフェで働くケーキ職人のトーマスと、イスラエルから出張でやって来る妻子あるなじみの客オーレンは、いつしか恋人関係へと発展していった。「また1ヶ月後に」と言って、オーレンは妻子に待つエルサレムへ帰っていったが、その後オーレンからの連絡は途絶えてしまう。オーレンは交通事故で亡くなっていた。エルサレムで夫の死亡手続きを済ませた妻のアナトは、休業していたカフェを再開させ、女手ひとつで息子を育てる多忙な毎日を送っていた。アナトのカフェに客としてトーマスがやってきた。職を探しているというトーマスにアナトは戸惑いながらも雇うことにするが……。
公式サイト:https://cakemaker.espace-sarou.com
https://ja.wikipedia.org/wiki/彼が愛したケーキ職人
オフィル・ラウル・グレイツァ
OFIR RAUL GRAIZER監督・脚本
1981年9月10日、イスラエル・ラーナナ生まれ。南イスラエルにあるサピル学院大学にて映画制作を学ぶ。在学中に発表した短編映画『A Prayer in January』が20を超える数々の国際映画祭で上映され、劇場公開もされた。卒業制作にあたる『Dor』(短編)は、カトヴィツェ映画祭で一等賞を受賞するほかクレルモン・フェラン短編映画祭などの映画祭で上映され、数々の賞にノミネート。卒業後は、ベルリン国際映画祭がサポートするベルリナーレ・タレントキャンパスにも参加。2015年に監督を務めた『La Discotheque』(短編)がカンヌ国際映画祭の監督週間にて上映された。制作に8年の時間をかけた『彼が愛したケーキ職人』で長編デビューを果たし、2017年カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭コンペティション部門での上映時には、観客から総立ちの拍手喝采で絶賛されエキュメニカル審査員賞を受賞する快挙を成し遂げた。その後70以上の国際映画祭で上映され、数多くの映画賞を受賞。世界各国にて劇場公開された。
監督からのコメント
『彼が愛したケーキ職人』は哀愁漂うエルサレムを舞台に、宗教、セクシュアリティ、国籍にとらわれずに生きる人間を描いた作品です。人生とフードとシネマに捧げる人間賛歌なのです。ベルリンとエルサレムを舞台に現在と過去が交錯し、主人公トーマスは喪失感と向き合いながら、宗教と世俗主義の間で揺れるイスラエルという国のアイデンティティを自ら体現しています。宗教的慣習がトーマスが求める許しを妨げ、一時は自分自身を疑うまでになってしまう。そして彼の愛の記憶まで歪められていく。その中で象徴的な救いとして描いたのがベーキングで、彼の子供時代の記憶や家族の想い出と深く繋がります。ユダヤ教でもベーキングは非常に重要な意味を持つ行為として考えられています。ベーキングにおける宗教的要素こそ、ユダヤ教において何が許され、何が禁じられているのかというシステムを垣間見ることができます。トーマスとアナトは、このようなシステムに立ち向かい周囲と対立することで、彼らは自分の道を探していくのです。
横浜シネマリン:16:10-18:00 (109分)