予告編
ある日、家族が揃った食卓で父ダヤが「わしは死期の訪れを感じている。バラナシに行こうと思う」と告げる。家族の不安をよそに、父の決意は固い。仕事人間の息子ラジーヴは仕方なく付き添うことを決める。
ふたりは長い時間をかけて目的の場所バラナシにある「解脱の家」に辿り着く。そこは幾つかのルールが決められ、様々な理由で人々が暮らしていた。すぐに住民たちに心を開くダヤと、なかなか馴染めないラジーヴ。
「解脱しようとしまいと、滞在は最大15日まで」。
一日一日とその日が近づき、ラジーヴは仕事の為に早く帰りたい気持ちと父が心配でならない思いに揺れる。
はじめは衝突しあうも、雄大に流れるガンジス河は、次第に父子の関係をほぐしていく。旅立つ者の心の動き、それを見守る家族のまなざし。果たして、ダヤは幸福な人生の終焉を迎えられるのか――?
インドの新鋭シュバシシュ・ブティアニ監督が弱冠27歳で手がけ、ベネチア国際映画祭などで賞賛されたヒューマンドラマ。雄大なガンジス河を背景に、誰にでもいつか訪れる「死」というテーマを、ユーモアと人情味を交えて描いた。ある日、不思議な夢を見て自らの死期を悟った父ダヤは、ガンジス河の畔の聖地バラナシに行くと宣言する。家族の反対にも決意を曲げないダヤに、仕方なく仕事人間の息子ラジーヴが付き添うことに。安らかな死を求める人々が集う施設「解脱の家」にたどり着き、ダヤは残された時間を施設の仲間とともに心穏やかに過ごそうとするが、ラジーヴとは何かと衝突してしまう。しかし、雄大なガンジス河の流れが、次第に父子の関係を解きほぐしていく。
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/ganges/
公式HP: http://www.bitters.co.jp/ganges/
https://www.iwanami-hall.com/movie/ガンジスに還る
シュバシシュ・ブティアニ|監督・脚本
1991年7月20日、インド・コルカタ生まれ。インドの小さなヒマラヤの街で育ち、ウッドストック・スクールに通い演技を学ぶ。やがて、演技より脚本や演出に興味を持ちはじめ、2013年からニューヨークのスクール・オブ・ビジュアルアーツで映画製作を学ぶ。1984年の反シーク暴動を題材にした、実話を元にした短編“ Kush”(13)は2013年ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映され、オリゾンティ部門で最優秀短編映画賞を受賞。さらに、2014年アカデミー賞®短編映画部門にも選出され、世界中で25以上の賞を受賞している。『ガンジスに還る』では、監督自らバラナシに行き「解脱の家」のような施設をいくつかまわり、そこに滞在する人やマネージャーに会い話を聞いてリサーチを重ねた。そこで、バラナシで死を迎えたい人の願いとは、息子や娘など家族と一緒に来ることだと気が付き、この父と息子の物語の骨格が出来上がっていった。
監督のことば
バラナシにあるこれらの宿のことを知った時、それを信じるために自分の目で確かめに行かなければと思いました。私は、人びとが自ら死を迎えにいくこの場所に何があるのか知らなかったのです。 驚くことに、これらの宿は全て目立つことなく、町の一部のようでした。小道に隠れるように、そして時にそれぞれが独自のルールや、世界そのものであるように運営されていました。しかし本当の驚きはそこではなく、滞在者との会話やそこで暮らす人々の話の中にありました。最期を迎える父をここに連れてきた息子さんの話を聞き、「解脱の家」を舞台としてだけでなく、そこにいる人たちの関係性を描く場所として考えました。滞在者の誰かについての話にも出来たかもしれませんが、『ガンジスに還る』は、人生における経過のひとつとしてや、祝い事としての“死”を目にするこの町が、ある家族に与える影響について描いた映画なのです。父ダヤの行動によって始まる、解脱という思想や、それが3世代の親子に何を意味するのかを描いています。
岩波ホール:16:00-17:50 (99分)
母なるガンジス河。そこは、幸福で安らかな死を迎えられる心のやすらぎの郷
死期を悟った父と、それを見守る家族たちの日々を綴った、珠玉の感動作。
ある日、不思議な夢を見て自らの死期を悟った父ダヤは、ガンジス河の畔の聖地「バラナシ」へ行くと家族に宣言する。家族の大反対もよそに、決意を曲げない父。仕方なく、仕事人間の息子ラジーヴが付き添うことに…。
辿り着いたのは、安らかな死を求める人々が暮らす施設「解脱の家」。施設の仲間と打ち解けながら、残された時間を有意義に過ごそうとするダヤ。はじめは衝突しあうも、雄大に流れるガンジス河は次第に父子の関係をゆっくりとほぐしていく。果たして、ダヤは幸福な人生の終焉を迎えられるのか─?
旅立つ者、見送る者の両方の感情の機微を丁寧に捉え、家族の強い結びつきを映し出した本作。幸福な最期の迎え方とは?家族はどう受け止め看取るのか?誰にでも訪れる「死」というテーマを、ユーモアと人情味溢れるタッチで描き、心温まる珠玉の感動作が誕生した。
本作は2016年ヴェネチア国際映画祭ビエンナーレ・カレッジ・シネマ部門でワールドプレミアが行われ、上映後には10分間のスタンディングオベーションが起きる盛況となった。映画評論サイト「ロッテン・トマト」では100%の最高点!!さらに、「小津安二郎の『東京物語』を思わせる傑作!」(Financial Times)ほか世界中から賞賛が寄せられている。
主演は『マダム・イン・ニューヨーク』『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』などに出演の、インドを代表する名優アディル・フセイン。生真面目だが家族思いの息子ラジーヴを繊細に演じている。監督・脚本は弱冠27歳の新鋭監督シュバシシュ・ブティアニ。監督自ら、バラナシに現存する「解脱の家」やそこを訪れた人たちに取材を重ね、物語の骨格が出来上がっていった。
生と死が混在する、異国情緒あふれる インドの聖地「バラナシ」
遠藤周作「深い河」、沢木耕太郎「深夜特急」、三島由紀夫「豊饒の海」をはじめ、数多くの名作の舞台にもなっているインドのなかでも有名な聖地「バラナシ」が本作の舞台だ。映画の第二の主役ともいえる、雄大なガンジス河が流れるこの地は、生と死が混沌とする神聖な場所として知られている。ガンジスの水は全てのものを浄化するため、この世の苦しみから解き放たれると言われており、この地で最期を遂げることは最大の喜びとされている。実際に、父ダヤのように死期を悟った人びとが、インド国内から数多く押し寄せる。インド特有の死生観の在り方が、色濃く浮かび上がってくる。
朝日に照らされるガンジス河、迷路のような路地裏、河岸の煙に包まれた火葬場、幻想的な夜の祭り─そのすべてが、流れるようなカメラワークで色彩豊かに映し出される。異国情緒あふれるバラナシの地が、悠久の時の流れを感じさせてくれる。