「祈り三部作」予告編
社会の不条理を告発する作品で知られ、20世紀を代表する巨匠として世界の映画人に多大な影響を与えたと言われるジョージアのテンギズ・アブラゼ監督が1976年、当時ジョージアがソ連の構成国だった時代に手がけ、ある一組の恋人の悲劇的な愛を描いた人間ドラマ。20世紀初頭、革命前のジョージア東部カヘティ地方の美しい農村。時代の大きな変化を予感した村人たちは、それぞれに動揺し、美しい娘と青年の純愛が古い因習によって打ち砕かれていく。アブラゼ監督が67年に手がけた「祈り」、84年製作の「懺悔」とあわせて「祈り3部作」とされる。日本では1991年に劇場初公開。
20世紀初頭、革命前のジョージア東部カヘティ地方の美しい農村。時代の大きな変化を予感して村人たちはそれぞれに動揺していた。そのなか美しい娘と青年の純愛は古い掟と因習のために打ち砕かれてゆく。20世紀を代表するギオルギ・レオニゼの短編集が原作。
革命の気運が辺境のグルジアの村にも及び始めた頃、一人の牧童の少年が、村に戻った父に連れられた少女に恋をする。母を亡くし、祖母の下で家事の手伝いに勤しむ彼女も少年にほのかな想いを寄せた。ところが、その彼女に横恋慕する地主の息子。祖母は孫の将来を思って彼に嫁がせる。しかし、格式を重んじる地主の家で姑に冷遇される娘は、戦争に赴いた夫の留守に牧童と再会した所を見つかり、因習に従って雨の中、村中を引き回される。美しい純愛を核に、牧歌的な世界に時代の波が伝わる様を、子供たちにアナーキズムを説いてまわる中年男や、厭世的な警句を吐きながら歩く老人などを狂言廻しに詩情豊かに綴っていく。冒頭の、白い馬が花畑に倒れる場面の斬新な色彩感覚、ラスト・シークェンスの悲痛な長廻し(少女はまさに石もて打たれるのだ)とその唐突な終止符。カンヌで審査員特別大賞に輝く「懺悔」を遺作に’94年死去したアブラゼの瑞々しい映像の力に呑まれる。
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/inori3busaku/
リカ・カブジャラゼLika Kavzharadze
1959年10月26日- 2017年10月11日
出身: ジョージア/トリビシ
岩波ホール:13:00-14:52 (107分)