「祈り三部作」予告編
ジョージアを代表する映画監督のテンギズ・アブラゼが1967年、ジョージアが当時ソ連の構成国だった時代に手がけた作品で、76年の「希望の樹」、87年の「懺悔」とあわせて「祈り3部作」として知られる一作。19世紀ジョージアの国民的作家V・ブシャベラの叙事詩をもとに、ジョージア北東部の山岳地帯に住むキリスト教徒とイスラム教徒の因縁の対決を描き、敵味方を超えた人間の尊厳と寛容をうたった。
日本初公開。19世紀ジョージアの国民的作家ヴァジャ・プシャヴェラの叙事詩をもとに、モノクロームの荘厳な映像で描いた作品。ジョージア北東部の山岳地帯に住むキリスト教徒とイスラム教徒の因縁の対立を描き、敵味方を超えた人間の尊厳と寛容を謳う。
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/inori3busaku/
https://natalie.mu/eiga/news/281046
テンギズ・アブラゼ監督(1924-1994)
今年110年を迎えるジョージア映画史の戦後の発展を担ってきた代表的監督。
1924年、ソヴィエト連邦グルジア共和国クタイシ生まれ。モスクワ大学卒業後、友人のレヴァズ・チヘイゼと劇映画第一作『青い目のロバ』(55)を共同監督し、カンヌ国際映画祭短編グランプリを受賞。以降、『祈り』では宗教の対立、『希望の樹』では因習、『懺悔』では独裁者によって困難を強いられる市井の人々を描き、社会的不正義を告発し続けた。しかし、その根底には人間への限りない信頼があり、寛容性、愛、自由への深い祈りが込められている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/テンギズ・アブラゼ
岩波ホール:11:00-12:23 (78分)
監督 生前のインタビュー
新しい作品に取り掛かるとき私はいつも新米の監督です。その作品は私にとって常に最初で最後の映画なのです。遠慮のない親しい人たちは「無邪気すぎる」と私に忠告しますが、無邪気さなくして素晴らしい芸術はあり得ないと思います。永遠の子供のようにあらゆる物事に無邪気に驚くことができたら幸せです。もし芸術家がすべてを知り尽くしたならば、驚くこともできず、もはや芸術家ではなくなってしまうでしょう。
ジョージア人は言います。「歌いたいから歌うんだ」と。そのように、歌いたい気分になると、私は映画をつくり始めます。興味深く、哲学的で、深く力強い考えがなければ、心に残る芸術作品は生まれません。この力強い考えの源泉は強烈な体験や大きな感情、情熱です。このような衝動が体じゅうに満ちたとき、映画をつくらざるを得なくなるのです。映画の製作は気が遠くなるような作業であり、生死をかけた戦いです。同時に、それは大きな喜び、祭りでもあります。自分が好きな興味深い仕事に没頭することはとても幸せなことです。
私の「子供たち」(自分の作品のことです)のなかで、『祈り』は最も不当な扱いを受けた映画です。宣伝もされず、わずかなコピーしかつくられず、映画館でも上映されませんでした。殺されたも同然です。製作から7年後の1974年に第17回サンレモ国際映画祭のグランプリを受賞して、『祈り』はようやく生き返りました。『懺悔』も完成から2年間、日の目を見ることはなく、危うく破棄されるところでした。しかし、ジョージア人の同志シェヴァルドナゼ・ソ連外相(当時)の大きな努力により救い出されて上映された後は、想像をはるかに超えて広まり、ペレストロイカの旗手となったのです。
ヴァジャ・プシャヴェラ
ジョージアの近代文学を代表する作家・詩人の一人。本名ルカ・ラジカシヴィリ。筆名のヴァジャ・プシャヴェラは「プシャヴィ(ジョージア北東部の山岳地域)の息子」の意味。
プシャヴィ地方の山間の小村、チャルガリ村に村の教会の司祭の子として生まれる。ゴリ(ジョージア中部)の学校を卒業後、ロシア・ペテルブルグ大学の聴講生となるが、金銭的に困窮し1884年に帰国。国語教師として数年間働いた後、チャルガリ村に帰り、以降、畑を耕し家畜を世話するかたわら数多くの叙事詩、詩、短編、戯曲、評論を書いた。作品は同時代の人々からも極めて高い評価を受け、死後、首都トビリシの偉人廟に葬られた。
作品にはジョージアの山岳地方の伝統・民俗が色濃く刻まれている。辺境の村から土着の世界に深く根ざした作品を生み出した作家として、ジョージア文学のなかでも特異な位置を占める。
代表作に叙事詩「客と主人」「アルダ・ケテラウリ」「蛇を食う者」、短編「仔鹿の物語」「カケスの結婚式」「鼠取り」「山はたった一度言った」「枯れたブナの木」など。短編「カケスの結婚式」、詩「私の祈り」など映画化された作品もある。作品はこれまで20以上の外国語に翻訳されている。
映画『祈り』では、叙事詩「アルダ・ケテラウリ」「客と主人」の2篇を物語の骨子とし、その他に叙事詩「蛇を食う者」、詩「我が嘆願」「天よ、私に雹を打ちつけよ」の一節が朗読されている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァジャ・プシャヴェラ