予告編
かつて沖縄からニューカレドニアに渡った移民たちの歴史と、時代の波にのまれて引き裂かれてしまった家族たちの姿を描いたドキュメンタリー。「沖縄・西表炭坑史」「『八重山合衆国』の系譜」など沖縄の郷土史に関する著作を数多く手がけたジャーナリストの三木健が、10年間かけて沖縄とニューカレドニア双方の家族をつなぐ活動をまとめた「空白の移民史 ニューカレドニアと沖縄」が原案となっている。1904年から始まった日本からニューカレドニアへの移民者は日系人全体で5581人、うち沖縄からは821人を数えていた。2006年、ニューカレドニアで開催された日系移民の写真展のシンポジウムに参加した三木は、日系沖縄人のある家族から「私たちの父を探して」と懇願される。日本へ戻った三木は、家族たちの父親のルーツを探すために奔走するが、次第に明らかとなっていったのは、ニューカレドニアへ渡った人びとのこれまで語られることのなかった空白の歴史だった。
20世紀初頭、ニューカレドニアに労働移民で渡った日本人移民がいた。彼らは現地の人々と結婚し、幸福な家庭を築き始めたときに戦争が始まる。開戦と同時に日本人移民は家族と引き離され、強制的にオーストラリアの収容所に入れられた。そして終戦後、家族と話をする間もなく、日本へ強制送還されてしまう。日本に帰り孤独な生活をした父親たちと、ニューカレドニアに残り、かえらぬ父を待ち続けた人々の物語。失われたルーツをたどるように子供たちが父親の面影を追う。原作はジャーナリストの三木健。監督は「江戸のぼり〜よみがえる琉球芸能」の本郷義明。音楽をスペシャルユニットa.r.t
公式サイト:https://mabuigumi.com
監督:本郷義明
『よみがえる琉球芸能江戸上り』(’11)で沖縄と日本。『徐葆光が見た琉球〜琉球と冊封』(’13)で琉球と中国、『はるかなるオンライ山〜八重山・沖縄パイン渡来記』(’15)で沖縄と台湾。映画を通して二つの文化の交流を描き続けてきた。
本作でもこれまでの作品同様に、戦争によって引き裂かれた二つの島の家族の歩んだ道のり描き出す。しかし、それだけにとどまらず、そこに至るまでの詳細な歴史の解説も、丁寧に描きだしている。
「はるかなるオンライ山 八重山・沖縄パイン渡来記」
沖縄へパイナップルをもたらした台湾の入植者たちの歴史をひも解き、沖縄と台湾という2つの文化が出会った過去から未来を見つめていくドキュメンタリー。沖縄の特産品として有名なパイナップルは、戦前にパイン缶工場を沖縄に根付かせようと台湾からやってきた人々によってもたらされた。1895年、日清戦争により日本の統治下となった台湾では、日本政府によってパイン缶工場の統合が進んでいく。工場経営者の林発(りんぱつ)は仲間とともに石垣島に渡ることを決め、沖縄にパイン栽培を定着させていくが、そこには数々の苦難があった。差別や偏見を乗り越え、沖縄にパイナップルという財産を残した入植者たちの足跡や、彼らの子孫が取り組む文化交流活動も映し出す。
「徐葆光が見た琉球 冊封と琉球」
18世紀中国の官僚で冊封副使として琉球を訪れ、「中山伝信録」や「奉使琉球詩」など当時の琉球を知ることができる貴重な歴史資料を残した徐葆光(じょ・ほうこう)のドキュメンタリー。研究家たちによる証言や再現場面をまじえながら、徐葆光の足跡をたどり、当時の琉球、中国、日本をわかりやすく解説。武力ではなく儀礼と徳をもって外交を行っていた当時の琉球の交流交易の歴史を振り返ることで、いまを見つめ直していく。ナレーションは俳優の橋爪功。
横浜シネマリン:12:00-13:55 (110分)
上映後、原作者三木 健さんトークショー. (監督:本郷義明 製作:末吉真也)
—14:15
マブイグミ(まぶいぐみ)
マブイ(生きている人の魂)を元に戻す方法のこと。
沖縄では魂のことマブイといいます。
マブイグミとは魂を戻す儀式のことです。
沖縄では、人は魂を結構カンタンに落としてしまうと、考えられていまして、それを戻す儀式というのが、マブイグミなのです。
https://turiguking.com/mabuigumi.html
マブイ(魂)
沖縄の古くからの言伝えでは、人間には七つのマブイ(魂)があり、事故にあったり、怪我をしたり、とてもビックリすることなどの強いショックを受けたときにマブイが体から抜けて落ちてしまい元気がなくなるといわれてきました。
それは、大人でも子どもでも関係ありません。
そんなときは出来るだけ早く落としたマブイを拾い、元あった体の中に戻すことが肝心だと信じられています。
それを「マブイグミ」または「マブヤーグミ」と呼んでいます。
※ちなみにグミは込める(戻す)という意味に当る。
沖縄では魂のことを《まぶい》という。本作のタイトル《まぶいぐみ》とは、ショックを受けたり、悲しい体験の中で《まぶい》を落としてしまった人々に、再び《まぶい》を込めるということを意味している。
ジャーナリストで著述家の三木健が初めてニューカレドニアを訪れた時、彼の目の前に現れたニューカレドニアの家族の言葉が、彼の人生を大きく動かすことになる。家族の長老、カナ・オブリーは、戦後の60年もの間、戦争で引き裂かれた父親の消息を探し求めていた。
沖縄に戻った三木は、あらゆる手を尽くしオブリー家の父親を探し当てるが、すでに他界した後であった。以後、三木は10年の間に11回もニューカレドニアを訪れ、双方の家族をつなげて行く活動を行い、その過程を一冊の本にまとめた。
『西表炭坑史』『「八重山合衆国」の系譜』など、沖縄の郷土史を掘り起こしてきた三木。十数年をかけて取材、出版した『空白の移民史-ニューカレドニアと沖縄』を原作とした本ドキュメンタリー映画でも、三木はナビゲーターを務め、これまで家族探しの経緯を振り返りながら、家族と話を何か、戦争とは何か、民族とは何かを様々な視点から問いかけていく。
三木健「空白の移民史 ニューカレドニアと沖縄」シネマ沖縄2017
Mutsumi Tsuda
津田睦美「マブイの往来」人文書院2009
「FEU NOS PERES~ニューカレドニアの日系人~」青幻舎2006
成安造形大学紀要第3号「ウチナーンチュ大会とニューカレドニア沖縄移民」
Yuriko Nagata
永田由利子「オーストラリア日系人強制収容の記録」高文研2002