予告編
シンシア・ニクソン主演。生前わずか10篇の詩を発表し無名のまま生涯を終え、没後発見された1800篇近い作品により“アメリカ文学史上の奇跡”と讃えられる女性詩人エミリ・ディキンスンの素顔とは。
北米の小さな町の屋敷から出ることなく、生前にわずか10編の詩を発表したのみで、無名のまま生涯を終えたディキンスンは、死後に約1800編の詩が発見され、繊細な感性と深い思索の中で編み出された詩の数々で、後世の芸術家たちに大きな影響を与えていると言われる。そんなディキンスンの少女時代から晩年、そして死までを、ディキンスンの愛読者でもあるというニクソンが熱演。実際にディキンスン一家が暮らした屋敷でも撮影が行われた。監督は、レイチェル・ワイズとトム・ヒドルストンが共演した「愛情は深い海の如く」などを手がけたイギリスのテレンス・デイビス。
公式サイト:http://dickinson-film.jp
https://www.iwanami-hall.com/movie/静かなる情熱-エミリ・ディキンスン
https://ja.wikipedia.org/wiki/エミリー・ディキンソン
http://www.emilydickinsonmuseum.org
J・D・エバウェイン編 鵜野ひろ子訳『エミリ・ディキンスン辞典』雄松堂出版 2007
池澤夏樹「映画の中のエミリ・ディキンスン」『図書』823号、岩波書店2017.8, pp.60-63.
http://d.hatena.ne.jp/ujikenorio/20130917/p3
あるいは詩の一行目だけを三十一篇並べた『エミリー・ディキンソン一行目集』。よくこんなことを考えついたと思うが、結果はまるで優れた句集のようなのだ。小説家が最初のページに注ぐ工夫を詩人は最初の行に注ぎ込む。その姿勢は一行だけの詩である俳句に似てくる。「汽車が墓地の門を抜けていった」とか、「夢はいいが目覚める方がもっといい」とか、「死以外はすべて 調整可能である」とか、まったく参ったなあという感じ。
この本は雑多な構成の中にいくつもの挑発を隠している。これまで知らないままに来たエミリー・ディキンソンを丁寧に読みたくなるほどにも。
その挑発に乗って、非礼を承知で、不遜にも、この本に一個だけ魅力的な書き出しの拙訳を追加してみようか--
「スカーレット・オハラは美人ではなかったが、彼女の魅力につかまった男たちは、タールトンの双子がいい例だが、たいていそのことに気づかなかった」は『風と共に去りぬ』。
--「今週の本棚:池澤夏樹・評 『書き出し「世界文学全集」』=柴田元幸・編訳」、『毎日新聞』2013年09月15日(日)付。
監督テレンス・デイヴィス
https://en.wikipedia.org/wiki/Terence_Davies
岩波ホール:13:30-15:40 (125分)