知られざるアメリカの女性監督
ニナ・メンケスの作品が日本劇場初公開
『マグダレーナ・ヴィラガ』
『クイーン・オブ・ダイヤモンド』
『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』。
5/10(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー!
ニナ・メンケス監督3作品が日本劇場初公開「ニナ・メンケスの世界」予告編
<作品情報>
作品名:
『マグダレーナ・ヴィラガ』
『クイーン・オブ・ダイヤモンド』
『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』
作品情報ページ:
https://www.cinemacafe.net/movies/35170/
https://www.cinemacafe.net/movies/35171/
https://www.cinemacafe.net/movies/35172/
【解説】
自らプロデューサーや撮影を務める特異な作品づくりと、そこから生み出される研ぎ澄まされた映像世界によって、多様なアメリカ映画界の中でも唯一無二の存在として1980年代初頭から現在まで活動を続けてきた女性監督、ニナ・メンケス。近年、初期作品がレストアされるなど評価の機運が高まり、日本でも昨年国立映画アーカイブで開催された特集「アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション」にて代表作『クイーン・オブ・ダイヤモンド』が上映。その圧倒的な映像に観客の度肝を抜いた。シャンタル・アケルマンやケリー・ライカート、ウルリケ・オッティンガーといった女性監督の上映、再発見に続き、最も注目を集めていると言っても過言ではないメンケス監督の3作品が日本劇場初公開。
2024年5月10日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開
配給元:コピアポア・フィルム
https://eiga.com/movie/101460/
女性が対峙する内面世界や孤独・暴力などを題材に、1980年代初頭より独自の美学で映画制作を続けてきたニナ・メンケス監督が、映画というメディアがいかに「男性のまなざし」に満ちているかを解き明かしたドキュメンタリー。
フェミニストの映画理論家たちが長年にわたって探求し続けてきた「Male Gaze=男性のまなざし」の問題。現在に至るまでの映画がいかに「男性のまなざし」にあふれているか、そしてその表現が我々の実生活に及ぼしてきた影響を、アルフレッド・ヒッチコックからマーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノといった監督たちの作品、さらに2020年代の作品まで、大量の映画のクリップを使用しながら考察していく。
俳優のロザンナ・アークエット、映画監督のキャサリン・ハードウィックらが出演。2024年5月開催の特集上映企画「ニナ・メンケスの世界」上映作品。
2022年製作/107分/アメリカ
原題:Brainwashed: Sex-Camera-Power
配給:コピアポア・フィルム
劇場公開日:2024年5月10日
公式サイト:https://ninamenkesfilmfes.jp
「男性のまなざし」を解き明かすドキュメンタリー
ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー
BRAINWASHED: Sex-Camera-Power
2022年 / カラー / 107分
製作・監督:ニナ・メンケス 撮影:シェイナ・ヘイガン 作曲:シャロン・ファーバー
出演:リアノン・アーロンズ、ロザンナ・アークエット、キャサリン・ハードウィック
©BRAINWASHEDMOVIE LLC
映画というメディアがいかに「Male Gaze=男性のまなざし」に満ち、当然のこととして受け止められてきたか、そして、その表現がいかに我々の実生活に影響を及ぼしているか。この事実と問題点を、ラング、ヒッチコック、スコセッシ、タランティーノといった有名監督の名作から2020年代の最新作まで大量の映画のクリップを用いて、メンケス自ら解き明かしていく傑作ドキュメンタリー。フェミニスト映画理論のパイオニア、ローラ・マルヴィをはじめ業界で活躍する女性陣も次々とインタビューに登場、彼女たちの真摯な闘いの言葉が力強く響きわたる。本作を見終わったあとは、あなたの映画へのまなざしも永遠に変わるかもしれない。
ヒューマントラストシネマ渋谷: 18:35ー20:27 (107分)
ニナ・メンケスの世界
https://ninamenkesfilmfes.jp
公開から30年。私たちはやっとニナ・メンケスのイメージに出会える幸運を味わえる。
スロット・マシーンの音が鳴り響くラスヴェガスのカジノ。真っ赤な爪が光り、黙々とカードを配るディーラーをじっと見つめるカメラ。色鮮やかなウィール・オブ・フォーチュンの前にじっと立つ監督の妹、ティンカ・メンケス。バーバラ・ローデン、シャンタル・アケルマン、ウルリケ・オッティンガー、アニエス・ヴァルダ、ジェーン・カンピオンの孤独なヒロインたちと同じく、ティンカは寡黙だ。内なる抵抗を、怒りを表す女たちの沈黙。ネヴァダの砂漠、ロサンジェルスのモーテル。
メンケスが描く荒涼としたアメリカ西部にジョン・ウェインはいない。そのカラフルでミニマルな映像を一度目にしたら、決して脳裏に焼き付いて離れない。
――斉藤綾子(明治学院大学教授)
自らプロデューサーや撮影を務め、過激なまでに独自の美学を貫き通し、ガス・ヴァン・サントをはじめ多くの映画人から愛されるアメリカの孤高の映画監督、ニナ・メンケス。手掛けた作品は数々の国際映画祭に招聘され、シャンタル・アケルマンやケリー・ライカートらを引き合いに称賛されてきたものの、我が国では長い間劇場公開されることはなかった。近年、初期作品がアカデミー・フィルム・アーカイヴとマーティン・スコセッシ設立の映画財団(The Film Foundation)によって修復されるなどさらに評価の気運が高まり、このたびついに代表作3本が初の日本公開決定。

ニナ・メンケス
わたしにとって、映画は魔術。
観客とわたし自身双方の知覚を再編成し、意識を拡げて世界と触れ合う創造的な方法
1963年(55年、65年の説もある)、ナチスの迫害から逃れたユダヤ人の両親の元、ミシガン州アナーバーで生まれる。カリフォルニア州バークレーで育ち、UCLA在学中の1981年に初の短編“A Soft Warrior”を手掛ける。主演は妹のティンカ・メンケスで、以降も多くの作品で協働する。83年にイスラエルと北アフリカで撮影した中編“The Great Sadness of Zohara”を発表、アリソン・アンダース監督から「この10年でベストの作品のひとつ」と評される。91年の初長編作『マグダレーナ・ヴィラガ』はサンダンス映画祭に出品、ロサンゼルス映画批評家協会賞で最優秀インディペンデント/実験映画賞を獲得するなど高い評価を得た。その後もLAを拠点に、ユダヤ系としてのアイデンティティを色濃く反映させながら、女性たちが対峙する内面世界や孤独、暴力、セックスといったテーマを見事に昇華させ、寡作ながら商業主義とは一線を画した妥協のない映画作りを続けている。
ある娼婦が生きる世界と内面を描いた初長編
マグダレーナ・ヴィラガ ※2Kレストア版
Magdalena Viraga
1986年 / カラー / 90分
監督・製作・脚本・撮影:ニナ・メンケス 編集:ティンカ・メンケス、ニナ・メンケス
出演:ティンカ・メンケス、クレア・アギラール
©1986 Nina Menkes ©2024 Arbelos
殺人の容疑で、ひとりの娼婦が捕まった。彼女の名前はアイダ、そしてこうも呼ばれる──マグダレーナ・ヴィラガ。刑務所を、ネオンがきらめくダンスホールを、プールサイドを、彼女が長い時を過ごす寝室(ブドワール)を横断し、時系列を曖昧にしながら、映画は女の肉体的、精神的な細部をとらえ、孤独な<囚われの女>アイダが生きる血濡れた世界と、内なる心の世界を描き出してゆく。静かに沈んだブルーの映像のなか、いくつかの言葉は何度も祈りのように繰り返され──私はここにいる、私はここにいない、私を絶対に縛らないで──突き刺すような美しさとなって燃え上がる。主演は、メンケスの5本の映画に出演した最大の協力者にして実の妹、ティンカ・メンケス。
※アルべロス・フィルムとアカデミー・フィルム・アーカイヴによるレストア版。共同提供:EOS ワールド・ファンド
ラスベガスのディーラーの日常を追った代表作
クイーン・オブ・ダイヤモンド ※4Kレストア版
Queen of Diamonds
1991年 / カラー / 75分
監督・製作・脚本・撮影:ニナ・メンケス 編集:ティンカ・メンケス、ニナ・メンケス
出演:ティンカ・メンケス、エメルダ・ビーチ
©1991 Nina Menkes ©2024 Arbelos
ラスベガスで生きる女性ディーラー、フィルダウス(インドネシア語で“楽園”の意)の倦怠に満ちた日常を描いた傑作。昼間は瀕死の老人を介護し、夜はカジノでカードを配る。時には砂漠に浮かぶ湖に友人と出かけたり、恋人に手を上げる隣人に悪態をついたり、行方不明になった夫の消息を探ろうと施設に足を運ぶものの、放たれる言葉や歌声は誰にも届かず、何も変容しないまま一日が過ぎる。眩暈がするほど煌びやかなネオン、無機質なアパートメント、純白のシーツやウェディングドレス、業火に焼き尽くされる大木。大胆な構図でとらえたショットがことごとく美しく圧倒的で、永遠に続くかのような反復とそこかしこに横たわる暴力に感覚が麻痺していく。
※アカデミー・フィルム・アーカイヴと映画財団によるレストア版。 資金提供:ホブソン/ルーカス・ファミリー・ファウンデーション 共同提供:EOSワールド・ファンド
「男性のまなざし」を解き明かすドキュメンタリー
ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー
BRAINWASHED: Sex-Camera-Power
2022年 / カラー / 107分
製作・監督:ニナ・メンケス 撮影:シェイナ・ヘイガン 作曲:シャロン・ファーバー
出演:リアノン・アーロンズ、ロザンナ・アークエット、キャサリン・ハードウィック
©BRAINWASHEDMOVIE LLC
映画というメディアがいかに「Male Gaze=男性のまなざし」に満ち、当然のこととして受け止められてきたか、そして、その表現がいかに我々の実生活に影響を及ぼしているか。この事実と問題点を、ラング、ヒッチコック、スコセッシ、タランティーノといった有名監督の名作から2020年代の最新作まで大量の映画のクリップを用いて、メンケス自ら解き明かしていく傑作ドキュメンタリー。フェミニスト映画理論のパイオニア、ローラ・マルヴィをはじめ業界で活躍する女性陣も次々とインタビューに登場、彼女たちの真摯な闘いの言葉が力強く響きわたる。本作を見終わったあとは、あなたの映画へのまなざしも永遠に変わるかもしれない。