前回に紹介したUNDP(国連開発計画)の公表するGEM(ジェンダーエンパワーメント指数)以外にも、国際社会の世界全体における日本の姿を示す調査データが幾つかあります。日本の大学生の多くは、次のような日本のイメージを持って高校を卒業してきているようです。日本は、先進国の一つで、経済大国であり、国民の生活水準は高く、欧米と同じように豊かな社会を享受している世界に冠たる国である、という素朴なイメージです。調査データには、このようなイメージを支持するものもあるし、そうではない事実を示すものもありますが、えてして後者のデータの認知度は高くないようです。
ジェンダーに係るデータを見る前に、こうした世界(192ヶ国)の中の日本の姿を示す調査データを紹介してみます。一国の経済の規模を計る尺度として代表的なGDP(国内総生産)について2007年の世界全体のGDP(世界銀行調べ)は、54兆3476億ドルで、世界第一位のアメリカ合衆国が13兆8112億ドル(世界の約25%)で、日本は世界第2位の4兆3767億ドルで、以下ドイツ・中国・イギリス・フランス・イタリア・ブラジル・ロシア・インドとなっています。(EU27ヶ国合計は16兆7525億ドルで、アメリカ合衆国を抜いています。)確かに経済大国日本の姿を示しています。(もっとも世界のGDPに占める日本の割合は、1994年の最高17.8%から2007年は8.1%に下降していますが。)ところがもう一つの指標「国民一人当たりのGDP」を見ると、第1位はルクセンブルグ(9万9879ドル)で、以下ノルウェ−・アイスランド・アイルランド・サンマリノ・デンマ−ク・スイス・カタ−ル・スウェ−デン・フィンランドであり、アメリカ合衆国(4万5790ドル)は12位に後退し、日本(3万4254ドル)は23位となり、アジアでは22位のシンガポール(3万5160ドル)に抜かれているのです。
格差社会が問題となっていますが、国民の所得格差を示す指標である「ジニ係数」(2005年計算)を見ると、格差が小さい第1位はデンマーク(0.247)で、日本は第2位(0.249)、以下スウェーデン・チェコ・ノルウェー・スロバキア・ボスニアヘルツェゴビナ・ハンガリー・フィンランド・ウクライナです。日本はジニ係数では格差が小さい国なのです。しかし、所得格差を示すもう一つの指標(OECDの)「貧困率」(2000年)(生産年齢人口の可処分所得の中央値の半分以下の割合)では、第1位がアメリカ合衆国(13.7%)で第2位が日本(13.5%)であり、第3位がアイルランド(11.9%)、以下イタリア・カナダ・ポルトガル・ニユージーランド・イギリス・オーストラリア(8.6%)・ドイツ・ノルウェーとなっています。(世界平均は8.4%。)日本は(相対的)貧困率が高い国になっているのです(原因は非正規雇用者の増加など。)
また米政府出資の国際非営利調査機関「ワールド・バリューズ・サーベイ(世界価値観調査)WVS」は2008年に約100ヶ国を対象とした「(主観的)幸福度調査」の結果を発表しています。第1位は、デンマーク、以下プエルトルコ(米自治領)・コロンビア・アイスランド・北アイルランド(英国)・アイルランド・スイス・オランダ・カナダ・オーストリアで、日本は43位です。また2006年の英国レスター大学のエードリアン・ホワイト氏の「国民の幸福度」調査(178ヶ国)の研究結果でも、一位がデンマークで、以下スイス・オーストリア・アイスランド・バハマ・フィンランド・スウェーデン・ブ−タン・ブルネイダルサラーム・カナダであり、日本はなんと90位です。さらにスイスの国際経営開発研究所(IMD)が2008年に発表した「2007年度国際競争力ランキング」は、第1位米国、以下シンガポール・香港・ルクセンブルグ・デンマーク・スイス・アイスランド・オランダ・スウェーデン・カナダであり、日本は24位です。(中国15位、台湾18位、マレーシア23位。)(日本は2006年度版では16位、2005年度版では7位であったのだが。)
こうしたデータでは日本が経済大国だというイメージだけでは現実の姿を把握できないことを確認して、ジェンダーについて考えてみたいと思います。。